第三部署特戦課機捜隊レディM――最強戦士、ここに降臨――

TOZO

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第6話 囚われの身-1

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 重い足取りで歩く者たちがいた。
 時刻は、既に夜中の一時過ぎ、仲間を失った空虚感で身も引き裂かれんばかりだった。されど、弱音など吐いてはいられない。何故なら彼らには使命があるのだから。
「どうするつもりですか?」トラック内に戻ったところで、おクウが訊いた。
「まだ、あいつは生きている! そうでなければ、奴らが連れていく訳がねえ」と強い口調で工藤が言った。
「でも、居場所が分かりませんわ」
「それだが……俺に一つ、心当たりがある」と次に工藤は、少々自信ありげに答える。
 目指す場所はどこなのか? 彼の頭の中には、手掛かりを得られる方法がおぼろげにも浮かんでいたのだ。そのため、すかさず荷台の作戦室からトラクターに通ずるマイクを使い、進むべき目的地を運転手に指示したのであった。

 ここは早朝の神保町。多くの出版業者が出入りする、本に携わる業界の集う街だ。しかも、至る所に巨大な看板を掲げたビルが、軒を連ねて建っている都市部でもあった。とはいえ、今はちょうど日が昇った直後だ。まだ人影も疎らで静けさが街を覆っていた。
……そこに突如、この静寂を破るかのごとく、或るビル内で大声が飛んだ。 
「おい、植松元太はどこだ!」
 すぐに、三十代らしき女性の受付が現れ、応じてきた。
「ええっと、どちら様ですか?……外部の方は」とその剣幕に尻込みしながらも、当たり障りのない返答で追い帰そうとした。
 だが、訪問者の方は怯むことなく、
「いいから、いるのかいないのかあー?」と強気で叫んだ。
 その大声に、「お、奥にいますが……」女は思わず吐露したよう。
 そこで、「なら、邪魔するぜ」と言ったか言わないうちにズカズカと中へ入り込んだ。 
「お客さん、困ります。勝手に入っては……」それには、受付も真顔で止めに入るしかないと見える。焦り声を立ててうしろを追いかけてきたが、訪問者は全く聞く耳を持たない、奥に進んだなら唐突に別室のドアを開けた!
 すると、中にいた植松がこちらを振り向き、驚いた顔を見せて言った。彼にすれば、再会するなんて考えもしなかったのだろう。
「なんだ、昨日会った刑事さんじゃないですか。確か、お名前は……」
「工藤だ」
 如何にも、この場所に姿を現したのは機捜隊の工藤であった。つまり、この植松こそが頼みの綱だったからだ。
「その……工藤さんが、何の用ですか? こんなに早く」と続いて植松は、不審そうに尋ねてきた。
「少し、お前さんに訊きたいことがあってな」工藤は、苦虫をかみ潰したような顔で答える。
 そうしたところ、受付の方は彼らのやり取りを聞いてその旨を理解したみたいだ。何も言わず部屋を離れていった。
 これで邪魔者はいなくなった。工藤は時間もないことから単刀直入に話を進める。
「植松さん、教えてくれ。あんた、どうやって北条の居場所を知るんだ?」と。
 ただその問いかけには、流石に植松も面を食らったようだ。
「えっー? 何を藪から棒に」と言ったのち、少し考える仕草をしたかと思ったら、「勘弁してくださいよ。そんな大事なこと、言えませんね。……それに、昨夜は僕を袖にしといて今日は内々の秘密を教えろなんて、ちょっと虫が良すぎるんじゃありませんかねー」と当然ながら断ってきた。
 やはりそう来るか……。工藤も大凡予想していた。なので、
「分かっている、重々分かっているさ。だがな、緊急を要する。俺の部下が捕らわれて死の危険に晒されてるんだ! だから頼む。教えてくれ!」とのっぴきならない状況を説明し、さらに詰め寄った。
 この訴えで、植松は多少なりとも動揺した表情を見せる。それなりの事情があることを知ったようだが……
「気の毒だとは、思いますがね。そうそう簡単な話じゃないんですよ。情報源を教えることは、相手にも迷惑がかかる。それくらい分かるでしょ? ネタ元を大切にしないと。もし警戒でもして情報を得られなくなったら、こっちも死活問題ですからねえ」とそれでもかたくなに拒んだ。彼には、人を憐れむ気持ちがないみたいだ。
「てめえ! 人の命と、己の儲けの、どちらが重要なのか分かってんのかー!」その返答に、工藤もとうとう激昂してしまった。
「そう言われてもねえ、赤の他人を助けるのに何で僕が損害までして協力しないといけないのよぉ?」そして、なおも彼の言い分を耳にする。
 なかなかしぶとい聞屋だ。簡単には口を割らなさそうだ……。だったら強引に、署へ引っ立てて吐かせるという手もあるが、そんな悠長なことをしている暇はもうない。……となれば、止むを得ないか。工藤は腹を固めた。攻め方を変えて、人参をぶら下げることにしたのだ。
「いいだろう。それなら、あんたが知りたがってたことを俺が先に喋るってのは、どうだ?」
 忽ち植松の顔が緩んだ。思った通り効果覿面てきめん
「ほほーう、なるほど。そうきましたか。なんだ、最初からそう言ってくれれば早かったんじゃないですか。工藤さん、意外に気が合いそうですねえぇー」

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