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第6話 囚われの身ー3
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一方、工藤たちの乗ったトラックは、都心から程遠い内陸部を進んでいた。
そして山の奥へと、益々入り込んだ途端……突如として異質な光景に出くわす。道沿いに並べられた背の低いフェンスの先に、びっしりと蔦が絡みつた建物が見えてきたのだ。たぶん巨大な施設の一部であろう、何十年にも亘って放置されたため、まるで植物に丸呑みされたかのごとく建っていた。
何とか、広大な敷地を持つ米軍基地跡に到着したみたいだ。ただし、この付近は入場門に近く、おそらく北条の部下が監視していると推測され、そうそう不用意には近づけない。暫く車を流すしかないようだ。
そうすると、この地は実に辺鄙な所であるということが、車窓を通してありありと彼らの目に映った。それも当然か、立ち入り禁止地域でもあるのだから人の気配は全く感じられず、加えて跡地になった広い基地を今さら管理する者など存在する道理もなかった。
そこで工藤たちは、北条の慢心――誰も基地内に潜入するはずがないと高を括っているであろう――を見越して、比較的木々が鬱蒼と生い茂る道沿いの、入場門から遠い側壁を選び出し、そこを越えて進入する計画を立てた。
彼らはすぐさま基地の裏側へと回り込む。次に条件に合う壁を探したところ、すぐにお誂え向きの代物に目が留まる。森林の中を貫くように、高々と聳え立つ五メートル以上もあるコンクリート製の側壁が現れたのだ。
「よし、準備はいいか?……なら、行いぞ!」早速、工藤が号令をかける。彼らはトラックを降りて壁の前に進み出た。
続いて、先ずはおクウとセブンの出番とばかりに、鉤のついたロープを投げて壁上部の縁に引っ掛けた。そうして後は、力任せにロープを手繰り寄せ一気に天辺まで上り切る。あっと言う間の早業を披露していた。彼女たちの腕力からすれば、造作もないことのようだ。
けれど工藤の方は、そう簡単にはいかない。
「おおい、俺を忘れるな。お前たちと違って外回りは苦手なんだ。……若くもないしな」と一人愚痴を洩らす。
それには、おクウの方も重々承知していた?
「工藤刑事、私たちのロープを持ってください」との答えが返る。
工藤は、言われるがまま垂れ下がった二本の縄を持った。その瞬間、彼女たちによる力強い引き上げを受けて、「おっととっとっ!」彼は壁面を懸命に蹴りつつ、何とか上がっていくことができた。
これで全員、上手く壁の頂上に到達した訳だ。ただし、ここでおクウが小首をかしげる。どうやら工藤の体重に違和感を覚えたようだ。
「意外と重いですね。何を持ってきたんです?」と問いかけてきた。
工藤はその声にニンマリとする。そして口で説明するより手っ取り早いとの思惑で、己のコートを広げて懐を見せた。
その結果、仰天の色を浮かべるおクウたち。彼女たちにすれば全くあり得ない、多量の武器を目前にしたせいだ。ベルトに数十個の手榴弾をぶら下げ、首から機関銃を垂らし、両脇腹には二丁の拳銃入りホルダーと腹にも小銃を挟むという、ありとあらゆる飛び道具を工藤は体中に装着させていたのだ。
これを目にしては、流石におクウも呆れ気味だ。
「あら、だから重かったのですね。そんなに必要でしょうか?」と訊いてきた。
そこで工藤は、「いいんだよ、射撃も下手なんだから。これでちょうどいいさ。なあセブン、いつも射撃場にいるお前なら、知ってるよな?」と反論しながらセブンの方へ話を振って、半ば強引な口調で味方に引き入れようとした。
「…………」とはいえ、セブンは無口な娘、ただ微笑みを返すのみか。
結局、まるで期待はずれの返答……ではあったものの、「お前の顔を見ていると癒されるよ」と彼は一旦救われた気がする。だが次に、本当はこの作戦自体が釈然としなかったため、「でもなあ、外回りなんか……体も動かねえし、行きたかねえんだよー!」と思わず心の声を吐露してしまう。彼には戦闘行為そのものが重荷だったのだ。
すると、その本音に、おクウの方でも然もありなんと感じたに違いない。彼女の皮肉交じりのダメ押しが容赦なく聞こえてきた。
「足手まといにはならないでくださいよ。ご老体!」
ならば彼も、精一杯の強がりで答えよう。
「うるへえー!」
そして山の奥へと、益々入り込んだ途端……突如として異質な光景に出くわす。道沿いに並べられた背の低いフェンスの先に、びっしりと蔦が絡みつた建物が見えてきたのだ。たぶん巨大な施設の一部であろう、何十年にも亘って放置されたため、まるで植物に丸呑みされたかのごとく建っていた。
何とか、広大な敷地を持つ米軍基地跡に到着したみたいだ。ただし、この付近は入場門に近く、おそらく北条の部下が監視していると推測され、そうそう不用意には近づけない。暫く車を流すしかないようだ。
そうすると、この地は実に辺鄙な所であるということが、車窓を通してありありと彼らの目に映った。それも当然か、立ち入り禁止地域でもあるのだから人の気配は全く感じられず、加えて跡地になった広い基地を今さら管理する者など存在する道理もなかった。
そこで工藤たちは、北条の慢心――誰も基地内に潜入するはずがないと高を括っているであろう――を見越して、比較的木々が鬱蒼と生い茂る道沿いの、入場門から遠い側壁を選び出し、そこを越えて進入する計画を立てた。
彼らはすぐさま基地の裏側へと回り込む。次に条件に合う壁を探したところ、すぐにお誂え向きの代物に目が留まる。森林の中を貫くように、高々と聳え立つ五メートル以上もあるコンクリート製の側壁が現れたのだ。
「よし、準備はいいか?……なら、行いぞ!」早速、工藤が号令をかける。彼らはトラックを降りて壁の前に進み出た。
続いて、先ずはおクウとセブンの出番とばかりに、鉤のついたロープを投げて壁上部の縁に引っ掛けた。そうして後は、力任せにロープを手繰り寄せ一気に天辺まで上り切る。あっと言う間の早業を披露していた。彼女たちの腕力からすれば、造作もないことのようだ。
けれど工藤の方は、そう簡単にはいかない。
「おおい、俺を忘れるな。お前たちと違って外回りは苦手なんだ。……若くもないしな」と一人愚痴を洩らす。
それには、おクウの方も重々承知していた?
「工藤刑事、私たちのロープを持ってください」との答えが返る。
工藤は、言われるがまま垂れ下がった二本の縄を持った。その瞬間、彼女たちによる力強い引き上げを受けて、「おっととっとっ!」彼は壁面を懸命に蹴りつつ、何とか上がっていくことができた。
これで全員、上手く壁の頂上に到達した訳だ。ただし、ここでおクウが小首をかしげる。どうやら工藤の体重に違和感を覚えたようだ。
「意外と重いですね。何を持ってきたんです?」と問いかけてきた。
工藤はその声にニンマリとする。そして口で説明するより手っ取り早いとの思惑で、己のコートを広げて懐を見せた。
その結果、仰天の色を浮かべるおクウたち。彼女たちにすれば全くあり得ない、多量の武器を目前にしたせいだ。ベルトに数十個の手榴弾をぶら下げ、首から機関銃を垂らし、両脇腹には二丁の拳銃入りホルダーと腹にも小銃を挟むという、ありとあらゆる飛び道具を工藤は体中に装着させていたのだ。
これを目にしては、流石におクウも呆れ気味だ。
「あら、だから重かったのですね。そんなに必要でしょうか?」と訊いてきた。
そこで工藤は、「いいんだよ、射撃も下手なんだから。これでちょうどいいさ。なあセブン、いつも射撃場にいるお前なら、知ってるよな?」と反論しながらセブンの方へ話を振って、半ば強引な口調で味方に引き入れようとした。
「…………」とはいえ、セブンは無口な娘、ただ微笑みを返すのみか。
結局、まるで期待はずれの返答……ではあったものの、「お前の顔を見ていると癒されるよ」と彼は一旦救われた気がする。だが次に、本当はこの作戦自体が釈然としなかったため、「でもなあ、外回りなんか……体も動かねえし、行きたかねえんだよー!」と思わず心の声を吐露してしまう。彼には戦闘行為そのものが重荷だったのだ。
すると、その本音に、おクウの方でも然もありなんと感じたに違いない。彼女の皮肉交じりのダメ押しが容赦なく聞こえてきた。
「足手まといにはならないでくださいよ。ご老体!」
ならば彼も、精一杯の強がりで答えよう。
「うるへえー!」
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