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第1話 恐れられた頭文字、再び(4)
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轟くエンジン音! 突然、全身を揺るがすほどのビート音が聞こえてきた。一台の流線型を極めた、黒い大型バイクが、高速道路上で激走していたのだ。しかも、前方の走行車を、息を呑む速さで次々と抜き去っていた。
……が、次の一瞬! そのバイクが、直前を走っていたポルシェの上に乗り上げたなら……まさかの、大ジャンプ! 宙を舞い、高速道路から一気に飛び降りてきた。ちょうどその真下二十メートルには、化け物とおクウがいる所で、それを見越しているかのごとく、バイクは太陽の光を遮りつつ落ちてきたのだ!
ならば、上空に忽然と現れたその黒い影に、化け物の方も気づいたであろう。
――ただ、寸時の油断が生死を分ける――
忽ちバイクの運転席から、奴に向かって鎖分銅が目にも留まらぬ速さで飛び出した! そしてあっという間に、途轍もなく長い鎖の先端が化け物の首に巻きつく。
ライダーが投げ出したのか? いかにも、もう一方の端を力強く握り締め、鉄鎖をムチのように操っていた。続いてライダーは、すかさず前方に張り巡らされた電線の一つを跳び越え、鎖をケーブルに引っ掛けた。と言うことは、これでバイクの落ちる重力が鎖に伝わり、相手に張力を加えることができる……それがライダーの狙い?
立ち所に化け物を、有無も言わせず高々と引っ張り上げ、電線の真下で宙吊りにさせていた! こうなると、流石に化け物の方も慌てるしかないようだ。鎖を解こうと宙で激しく暴れ始めた。けれどそのことがさらに首を絞め、とうとう気を失ったのか、四肢を垂らし全く動かなくなってしまった!
何と、突如登場したライダーによっておクウが助けられたのだ! このライダーはいったい何者だ?
バイクからゆっくりと降りる人影。黒革のコンバットブーツで地面を踏み締め、フルフェイスのヘルメットを外し、空を見上げたその顔には、長い髪が靡いていた。
……女? 確かに、黒いバイクスーツを着た若い娘が、この地にすっくと降り立っていた!
「あっ!」途端におクウは声を上げる。驚きのあまり目を見開いた。何故なら、女の正体を知っていたからだ。
おクウはよろけながらも立ち上がり、そして興奮して叫んでいた。
――「レディM!」――と。
そう、ここに現れし若き戦士こそ、その名も〝レディM〟遂に姿を現したのだ!
「……桃夏!」工藤もその登場に気づいた様子だ。おクウの元へと駆けつけいている途中で、驚愕した顔を見せて女の名を呼んでいた。
レディMは髪をうしろで束ねつつ、ゆっくりと近づいてきた。
次に工藤を睨んで開口一番、「おい、工藤のおっさん、何度言えば分かるんだ。俺の名はMだ!」と相当のじゃじゃ馬振りを披露した。
その言葉を受けて、「そうだったな。Mだ……」と工藤は一旦、伏せ目がちに言い直したものの、即座に「やっと現れたな、お前今までどこにいた?」と責める口調で訊いた。
するとレディの方は、平然とした顔を見せ「俺がどこにいようと関係ないだろう」と返す。
だが工藤の方も、それでは納得がいかないようで言い合いを始めた。
「関係ないとはなんだ。お前を育てるのに、いくらかかっていると思ってんだ。欧州外人部隊への戦闘訓練に、国家が金払って参加させてんだぞ」
「だけどよ。その分俺たちはあんたらの駒になって、働いてきただろうが。最上級の危険な仕事は俺に押しつけ、あんたは命令するだけの楽な役回りてな」
「当たり前だ。それがお前たち、警察第三部署特……」と言ったところで、
「まあ、お二人さん、ここは穏便に。久々の再会では御座いませんか」とおクウが、警官に肩を借りることで何とか立ち上がり、二人の間へ割って入った。
その声で、どうにか場を収めることにした彼女たち……
側では警官たちが化け物の処理を進め、ただちに車両に収容して研究室へ運ぶ作業に取りかかっていた。
漸く奇怪な、今回の捕り物劇だけは終りを迎えたのだ。
……が、次の一瞬! そのバイクが、直前を走っていたポルシェの上に乗り上げたなら……まさかの、大ジャンプ! 宙を舞い、高速道路から一気に飛び降りてきた。ちょうどその真下二十メートルには、化け物とおクウがいる所で、それを見越しているかのごとく、バイクは太陽の光を遮りつつ落ちてきたのだ!
ならば、上空に忽然と現れたその黒い影に、化け物の方も気づいたであろう。
――ただ、寸時の油断が生死を分ける――
忽ちバイクの運転席から、奴に向かって鎖分銅が目にも留まらぬ速さで飛び出した! そしてあっという間に、途轍もなく長い鎖の先端が化け物の首に巻きつく。
ライダーが投げ出したのか? いかにも、もう一方の端を力強く握り締め、鉄鎖をムチのように操っていた。続いてライダーは、すかさず前方に張り巡らされた電線の一つを跳び越え、鎖をケーブルに引っ掛けた。と言うことは、これでバイクの落ちる重力が鎖に伝わり、相手に張力を加えることができる……それがライダーの狙い?
立ち所に化け物を、有無も言わせず高々と引っ張り上げ、電線の真下で宙吊りにさせていた! こうなると、流石に化け物の方も慌てるしかないようだ。鎖を解こうと宙で激しく暴れ始めた。けれどそのことがさらに首を絞め、とうとう気を失ったのか、四肢を垂らし全く動かなくなってしまった!
何と、突如登場したライダーによっておクウが助けられたのだ! このライダーはいったい何者だ?
バイクからゆっくりと降りる人影。黒革のコンバットブーツで地面を踏み締め、フルフェイスのヘルメットを外し、空を見上げたその顔には、長い髪が靡いていた。
……女? 確かに、黒いバイクスーツを着た若い娘が、この地にすっくと降り立っていた!
「あっ!」途端におクウは声を上げる。驚きのあまり目を見開いた。何故なら、女の正体を知っていたからだ。
おクウはよろけながらも立ち上がり、そして興奮して叫んでいた。
――「レディM!」――と。
そう、ここに現れし若き戦士こそ、その名も〝レディM〟遂に姿を現したのだ!
「……桃夏!」工藤もその登場に気づいた様子だ。おクウの元へと駆けつけいている途中で、驚愕した顔を見せて女の名を呼んでいた。
レディMは髪をうしろで束ねつつ、ゆっくりと近づいてきた。
次に工藤を睨んで開口一番、「おい、工藤のおっさん、何度言えば分かるんだ。俺の名はMだ!」と相当のじゃじゃ馬振りを披露した。
その言葉を受けて、「そうだったな。Mだ……」と工藤は一旦、伏せ目がちに言い直したものの、即座に「やっと現れたな、お前今までどこにいた?」と責める口調で訊いた。
するとレディの方は、平然とした顔を見せ「俺がどこにいようと関係ないだろう」と返す。
だが工藤の方も、それでは納得がいかないようで言い合いを始めた。
「関係ないとはなんだ。お前を育てるのに、いくらかかっていると思ってんだ。欧州外人部隊への戦闘訓練に、国家が金払って参加させてんだぞ」
「だけどよ。その分俺たちはあんたらの駒になって、働いてきただろうが。最上級の危険な仕事は俺に押しつけ、あんたは命令するだけの楽な役回りてな」
「当たり前だ。それがお前たち、警察第三部署特……」と言ったところで、
「まあ、お二人さん、ここは穏便に。久々の再会では御座いませんか」とおクウが、警官に肩を借りることで何とか立ち上がり、二人の間へ割って入った。
その声で、どうにか場を収めることにした彼女たち……
側では警官たちが化け物の処理を進め、ただちに車両に収容して研究室へ運ぶ作業に取りかかっていた。
漸く奇怪な、今回の捕り物劇だけは終りを迎えたのだ。
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