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わたしのお兄ちゃん
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「私って……詰めが甘い」
屋根の上で呟いた己の声の情けなさといったらない。
私は今、大広間前まであと一つ屋根を経由すれば、というところで気が緩み、手前の屋根の上に取り残されて、どうすることも出来ずに途方に暮れている。
ここから、大勢の前で演説する凛と美しいメリエルの姿も、片膝をついてそれを聞くおとぎ話の王子様染みたヴィニアスさんの姿も、見えるには見えるが、声をかけたとて届くかどうか。
一度怖いと思うとなかなか自信を持って飛べないものなのね。
キルシェだけのときの方がきっと飛べただろうに。魔法? 何それ超ファンタジーじゃんな世界で生きて来たサクラが邪魔をしてくる。
これなら全力で地面を走った方がマシだったのではないだろうか。私、なんで急に魔法で飛んで行けばいいとか思ったんだろう。
「誰か助けてくれ……」
梯子を持ってきてもらいたいが、生憎みんな広場に集まっている。人っ子一人いやしない。
「ああーーこのままは駄目だっ。私は飛べる飛べる飛べる私飛べる飛べる飛べる」
ぶつぶつ言いながら屋根の端に向かうも。
「飛べる飛べこっわっ」
戻る。
これを何回繰り返しただろう。
「っ?」
そうこうしてる間に広場の方が一層騒がしくなった。
ヴィニアス様っ!! お気をつけて!!
歓声が響く。
きゃーー! ヴィニアス様ぁ!!
先ほど聞いた内容の儀式には到底似合わぬ声が飛び交う。
大変だ。ヴィニアスさんが……歩き始めた。
どうみても出発だ。行ってしまう。
「ヴィニアスさんーーー!!」
私はメリエルの時と同じようにまた叫ぶしかなかった。
「ヴィニアスさんーーー!! ヴィニアスーーーー!! 私だよーーー!! おーーーい!!」
喉が痛くなる程声を出したが、ヴィニアスは気付かない。
駄目だ。ここからじゃ届かないし。みんなの声援に混じってしまう。
ってことは呼び方を変える。気付かせる。そうだっ風。飛べないまでもそよ風程度なら。
焦った私は、方向を見定め、がむしゃらに風を使った。
「おにいちゃーーーーーーーーーーん!! キルシェだよーーーーーーーー!!」
そして全力で叫んだ。
この歳でこの文言は結構きつい。とか頭をよぎったが、たいして周りに響いていないのか、民衆は誰一人としてこっちを見ない。
やっぱりだめか。火とか水とか使えたら気付いてもらえるかもだけど。私はそれらの使い方を知らない。
「お兄ちゃん……」
力なく呟き、項垂れた私に。
一陣の風が吹いた。
柔らかく暖かな風に乗って香る、懐かしさ。
「キル……シェ……」
声はすぐ近くからだった。
見上げると。
見慣れた……遠い日の想い出とは違う……ヴィニアスさんが傍に……すぐ傍に居た。
途端に、膨れ上がる想い。
毎日辛かった。苦しかった。寂しかった。辛くて思い出すのをやめた。けれどやっぱり……会いたかった。
「お兄ちゃん……」
「キルシェ……どうしてこ……」
「なんで連絡くれないの?」
飛び出したのは、そんな言葉だった。
伝えなければならないことがあるのに。
ヴィニアスさんは……ゆっくり口と目を開いて……小さく え? と漏らした。それはサクラの知る、いつでも優しいヴィニアスさんからは到底聞けないであろう、低めの声で。
怒ったのかもしれない。
と不安がよぎるも、まだまだ私の不満は止まらず。
「あの日……家を出てから一度も……いくら忙しいからって、一度も連絡出来ないなんてことないよねっ。城からの手紙とか普通に家に届いてたし……そりゃあんな家……もう忘れてしまいたいかもしれないけど……でもっ心配するしっ私はっ……」
寂しかったのに!!
叫びそうになって、思いとどまった。
ヴィニアスさんは、今まさに、魔瘴に犯された街へ向かうところで。それがどういうことなのか、たぶん私は、まだちゃんと理解できていない。どれほどのことなのか……計り知れない。
けれど。望んで行くわけではない。それだけはわかっていた。ヴィニアスさんもいろいろ我慢しているのに……私は……。
「どういうことかな? キルシェ。お兄ちゃんから連絡一度もないって? なんで? どうして? お兄ちゃんずっと手紙送ってるよね」
「…………え?」「え?」
ヴィニアスさんと私は、屋根の上で数秒固まった。
私は……兄の言葉を、もう一度頭の中で再生してみた。
お兄ちゃんズト手紙オクテルヨネ。
何か違う。何が違うって……さっきの言い方と違う……じゃなくて、いやそうだけどでも違う。
「えっと。手紙……届いてませんけど。えっずっとっていつから?」
「家を出てからずっと。初めは一週間に一通だったけど、あまりに返事がないから毎日送ったらキルシェ…………鬱陶しいから手紙いらないって送って来て……コレなんだけど」
ヴィニアスさんは、着ている白い外套の内ポケットに手を入れて、すっかりくたびれた封筒を出した。
受け取って開き、中を見ると確かに幼い私の字で、そのようなことが書いてある。
私は、内心首を傾げつつも、必死に思い出した。
これ……これを書いたような気はする。けれど、兄に……ではない。これは……これは……。
「コレ書いたの私で間違いないけど。お兄ちゃん宛てじゃない。義姉に代筆頼まれて書いた手紙だよ。なんかしつこい男が居るけど、気色悪くて自分じゃ書きたくないからって書かされたやつ」
現物を見ていたら割と鮮明に思い出せた。
ヴィニアスさんは、私の手から手紙をそっと取って……中身を読み直して、私の顔を見なおして、当時の気分なのかなんなのか、唇を嚙みしめ……ゆっくり首を傾げた。
「キルシェ。でも……鳥かごは? 君の部屋に僕の使い魔の鳥かご置いて行ったよね」
「鳥かご……」
そういえばそんなものがあったような。
「あの鳥かごは僕の使い魔と契約してる。僕の部屋にある鳥かごとキルシェの部屋の鳥かごの間を移動するだけの使い魔。見たことあるよね? カナリアみたいなやつだよ。僕、いつもあれに手紙とかいろいろ運ばせてたんだけど。ドアや窓が閉まってても鳥かごの中に現れるから、確実に届くし」
「カナリア……」
「鳥かご、あの部屋から動かせないよう設置したから、盗られたりもしないはずなんだけど……」
「ああそれならっ」
私はポムっと手を叩いた。
ヴィニアスさんが、パっと顔を明るくさせる。
「部屋ごと取られた」
ヴィニアスさんの顔が明るいまま凍った。
兄が出て行ってすぐのことだったので、あの鳥かごにそんな機能があったなんて知らなかった。
「とられた? どういうこと? だってあの部屋は、父がまだ子供に興味あった頃、キルシェのために作った部屋だよね。ベッドも家具も全部、キルシェのためにって特注で作って固定してある……」
ヴィニアスさんからはもう、先ほど感じた懐かしい匂いは一切ない。暗い淀んだ気配に、私の思うヴィニアスさんらしさというものが刻一刻と覆われてゆくのを感じる。
「うん。豪華だったから。長女のものだろうって。義姉の部屋になった。お兄ちゃん出てってすぐ。その日の晩だったかな」
兄は一瞬遠い目をした。
己を省みて後悔でもしているのか、ギリギリと拳を握りしめて、ギュっと目を閉じ。
カっと見開いた。
その綺麗な瞳の奥に不思議な光が煌めいている。
そういえば。
兄と目が合うと、ときどき瞳の奥に光が見えていた。というのを今思い出した。
当時の私は、それをちっとも不思議だと思っていなかったが、よくよく考えたらこれってなんだろう。この光。煌めき。
「キルシェ……怪我してるね。それにその恰好…………どうしてここに来たの?」
ヴィニアスは、目つきを鋭くさせた。
「何があったの?」
言葉遣いは優しいが、声音はどことなく事務的だ。
感情を押さえ、冷静に物事を判断して、適切な質問をする。
仕事中の兄はもしかしたらこんな雰囲気だったりするのだろうか。もしもそうだったら、部下は怯えているだろう。
「はい。えっと……あの……」
有無を言わせぬ空気に、私は戸惑った。
正直に話すにはいろいろと……不甲斐ないとか恥ずかしいとか告げ口感あるなとかこう……部屋の話でここまで怒ってるのに、あれらを言うとどうなるやら。
「キルシェ。広場を見て」
「え?」
「見て」
「あ。うん」
私は、しかたなく兄越しに広場を見た。
騒がしい声。声しか聞こえない。広場は濃い霧に覆われて、何も見えない。メリエルの姿も見えなくて、時計塔だけが霧からにょっきり頭を出している。
「あれね。お兄ちゃんがやったんだよ。呼ばれて慌てて、霧出しちゃったんだ」
「は……はい」
「お兄ちゃん申し訳ないなって思う。あんなことしちゃって」
「そ……そうですね」
「でもね。お兄ちゃん戻らないよ。霧もあのままにしておく」
「……へ」
「キルシェがちゃんと話してくれるまで戻らない」
なんと。それは。えっと。
私……。
私、は兄……を……止めに来たわけで。戻らないと言うならばそれは、好都合なわけで。しかしあの中にはたくさんの人たちが居て。メリエルも居て。魔瘴をなんとかしようって出発しようとしていた他の魔法使いの方々なんかも居たりして、でも私はそれを止めたくて……。
「お兄ちゃん聞いて」
「うん。お兄ちゃん聞くよ」
「私ね。サクラなの」
「うん。知ってる……って……え? あれ? 記憶があるの?」
「え? 知ってるの?」
驚いて目を瞬かせたら、ヴィニアスも、同じように目をぱちくりさせて、二度頷いた。
「それはもちろん。こうして目を合わせばわかるよ。魔法使いだからね。その人の持つ魔力が見えるんだ。まあ、弱かったり濁ったりと見えないこともあるけど。この世に同じ輝きは一つもない。だからサクラはキルシェだってわかってたよ。どういう経緯で二人が同じなのかまではわからなかったけどね」
「あっそっかそれで……」
とわたしが言ったのは、さっきふと思い出した兄の瞳の中の輝きのことで。
「っあ! そっか! それで!!」
と二度同じことを言ったのは、鏡越しに出会ったヴィニアスが最初からものすごく優しくて、お兄ちゃんって呼んでとか意味不明なことを言っていた理由に合点がいったからだ。
なんだ早くいってくれれば……くれてもあんまりピンとはこないか。
でも……同じ輝きはないってことはメリエルとも目を合わしたら私だってわかってくれるかもしれない。
一つ希望が湧いたところで、私はギュっと散らかっていた諸々を集めて結んだ。
気合一つ。私にはやるべきことがある。
「私こっちに転生したらしいの」
「……そっか……」
ヴィニアスは、呟いて、眉間に皺をよせた。
「サクラ…………は……どうして死んでしまったの? いったいいつ頃……」
「それは置いといて」
「え」
「私神様的なあの……こっちに聖女を送り込んだ存在と話したの。それで、まあ今後姉と妹は聖女としてちゃんと動くと思う。いろいろ端折って申し訳ないけど」
「うん。ちょっとついていけてないよお兄ちゃん。でもサク……キルシェは今時間がなくて、そんな中で、お兄ちゃんを止めに来たんだね」
「うん。そう」
時間がないってこともないのについ、頷く。
「お願いだから出発を遅らせて。きっと……ううん絶対聖女二人共動くから。だからもう行かないで。二度と。お願い。あんな家のために……」
「家のためじゃないよ」
「あ……うん。私のせいかもしれないけど……」
昔義母としていた話によれば、私を預かってもらう代わりに、義兄と義姉の出向をなくすということだった。
「せいとかじゃない。僕のためだから」
「……僕の?」
「僕はここで……生涯過ごすことになる」
ヴィニアスの静かな声に、心臓がキュっとなった。
「今まで作り出した光景に背を向ける勇気はない。だからもう……他のことは出来ない。今後、キルシェの言う通り、聖女がすべてを解決してくれるとしても、争いが消えない限り、僕のような人間は必要とされるだろう」
首を振りたい。衝動にかられたが、堪える。
ぬくぬくと……いや温くはなかったが、命のやりとりとは無縁の場所で暮らしてきた私なんかが、目の前で感情を殺して話す兄の言葉を否定出来るはずもない。
それでも何かあれば。
兄にかけられる言葉。行動。兄のために何かできたら。
考えれば考えるほど深みに嵌まる。サクラとして生きた時間、キルシェとして生きた時間、二つ合わせても何も生み出せない。
「でもそれじゃあキルシェのこと一生見られない。一緒には居られないとしても、せめて見たい」
ん?
いろいろと堪えた首があっさり傾いだ。
「だからといってキルシェを城へ来させるなんてありえない。キルシェが危険な任務についたりなんかしたら僕は……」
ヴィニアスは、ひどく辛そうな顔をして、たっぷり間をとった。
「死ぬ」
ここいちの重すぎる声だった。
ヴィニアスは悪い想像でもしたのか、ぶんぶん首を振って、重苦しいため息をつき、顔を上げた。
「だから契約したんだ。生涯ここで働くから。妹を魔法使いではない良家の養子にしてくださいって。僕は国に保護してもらわなければならないほど弱くないし、家を守る義理もない。本来の契約でここに縛り付けることは出来ない」
ヴィニアスがにっこり笑った。
背景が霧がかっているせいか、申し訳ないことにちょっと薄気味悪かった。
「今はあの家にお金が入るようになってるけど、キルシェが養女になったらキルシェに入るようにしてもらうつもりだよ。だからあの家は義弟にあげる。で、義妹のことは、魔法が使えない所謂無能だって報告してるあげてるから出向はないだろうけれど。魔法使いとの縁談はいつまでたっても来ないだろうね」
優しかった兄さん。
城に来てすっかり……いやでもこの計画は遥か昔にたてたもののはず。
まああれだ。よくよく考えたら、母は逃亡、父はネグレクト、変な義母が来たりして、家の中はちゃめちゃなのに、まっすぐ育つはずないわな。
「キルシェをこっちに迎えるまであと少しだったのに。十年働いたらって契約だったし……」
十年。だとしたら本当にあとすこしで私はあの家を脱出出来たということか。それなら教えておいてくれたら我慢……無理か、昨日のあれを我慢は出来ない。
「で。あの家で何があったの? 僕はあのおばさんに、キルシェが平穏無事にあの家で過ごせるようにしろって言ったはずなんだけど」
話し戻された。
辛い気持ちとか吐露し始めたから、ちゃんと聞かなきゃって身構えてしまって、言い逃げするタイミングを逃した。
私は、答えそうになる口を両手で抑えて、飲み込み、なんとか気持ちを切り替えた。
「あれなの。反抗期で家出した。じゃ。用事あるから」
無理矢理話を切って、兄に背を向ける。
ここに長居しても仕方がない。ヴィニアスには今すぐ戻って霧ではないなにかで現場へ向かう人たちを足止めしてもらわなければならない。その方法を丸投げするのは我ながらむちゃくちゃだと思うが。
私は私で……コロッケより先に聖女が動くかどうかを確認するべきだった。
「キルシェ。ちゃんと教えて」
とはいえ私一人が城へ出向いたところで入れてはもらえな……。
あ……そう言えば彼が勲章か何かを貰うのって城じゃないだろうか。いつだったか部下の人が、いっつもここに居ますね的なこと言ってたし、勲章貰う前か後かはわからないが、空いてる時間にあの場所に来たりしないだろうか。
城の内部の様子を聞けて、コロッケも渡せて一石二鳥……にしてもらえないかな。
「キルシェっお兄ちゃんの目を見てきちんと説明して」
いやいや。聖女のことと言えば神子であるメリエルに頼んだ方がいい気もする。
だとしたら、霧の中に居るメリエルにもう一度会いに行くべき?
でもお風呂場で聞いた話だと、病の姉は城の豪華な一室で買い物しまくり、妹は第二だか第三だかの王子と二人で城に引きこもり、二人共メリエルが近づいて説教かまそうもんなら、大騒ぎするとも聞いている。
二人はメリエルみたいなタイプ絶対苦手だ。超美人で責任感も正義感もある。あきらかに二人より弁が立つというのも、きっと駄目だろう。
「キルシェ~」
今、二人が聖女として動こうと決めたと仮定して、そこにメリエルが現れたとしたら。メリエルに無理難題を言ってきそうだ。
日ごろの鬱憤とか逆恨みとか、やりたくもないことをやらされるときの二人はマジで面倒くさい。
絶対最善じゃないけど、都合のいい考えかもだけど、当初の予定通りコロッケ渡しに行くことにしよう。
「キルシェ……お兄ちゃん涙でそう」
「お兄ちゃん。お願いだから、聖女の動向がわかるまで現場には行かないで」
涙を出されたらほだされそうなので、背は向けたままにした。
「うん。それはいいんだけどお兄ちゃんはキルシェがなんでここにきたのかってことが聞きたくて」
「今すぐ行動してくれなきゃ今後私を見るのも禁止!! じゃっあとでいつもの食堂集合!」
私は、大声で無責任宣言をして。
もうどうとでもなれと、屋根を走り、思い切って飛んだ。
後ろから兄の声がしたけれど、魔法に集中する。
「っ……!」
落下はせず。無事、風が巻き起こり、体が浮いた。
しかしほっとしちゃだめ。バランスよく風を操って次の屋根を蹴る。
行ける。行ける。どこまでも。私は出来る子。風の子。魔法使いキルシェ。
それから暫し前へ進むことに集中していたので、ヴィニアスがどうしたのかはわからないが、追ってくることはなかった。
咄嗟に叫んだ言葉が効いたのだろうか。
割とひどいことを言ったような、自意識過剰なことを言ったような。
兄って…………どういうものなんだっけ。わからない。
屋根の上で呟いた己の声の情けなさといったらない。
私は今、大広間前まであと一つ屋根を経由すれば、というところで気が緩み、手前の屋根の上に取り残されて、どうすることも出来ずに途方に暮れている。
ここから、大勢の前で演説する凛と美しいメリエルの姿も、片膝をついてそれを聞くおとぎ話の王子様染みたヴィニアスさんの姿も、見えるには見えるが、声をかけたとて届くかどうか。
一度怖いと思うとなかなか自信を持って飛べないものなのね。
キルシェだけのときの方がきっと飛べただろうに。魔法? 何それ超ファンタジーじゃんな世界で生きて来たサクラが邪魔をしてくる。
これなら全力で地面を走った方がマシだったのではないだろうか。私、なんで急に魔法で飛んで行けばいいとか思ったんだろう。
「誰か助けてくれ……」
梯子を持ってきてもらいたいが、生憎みんな広場に集まっている。人っ子一人いやしない。
「ああーーこのままは駄目だっ。私は飛べる飛べる飛べる私飛べる飛べる飛べる」
ぶつぶつ言いながら屋根の端に向かうも。
「飛べる飛べこっわっ」
戻る。
これを何回繰り返しただろう。
「っ?」
そうこうしてる間に広場の方が一層騒がしくなった。
ヴィニアス様っ!! お気をつけて!!
歓声が響く。
きゃーー! ヴィニアス様ぁ!!
先ほど聞いた内容の儀式には到底似合わぬ声が飛び交う。
大変だ。ヴィニアスさんが……歩き始めた。
どうみても出発だ。行ってしまう。
「ヴィニアスさんーーー!!」
私はメリエルの時と同じようにまた叫ぶしかなかった。
「ヴィニアスさんーーー!! ヴィニアスーーーー!! 私だよーーー!! おーーーい!!」
喉が痛くなる程声を出したが、ヴィニアスは気付かない。
駄目だ。ここからじゃ届かないし。みんなの声援に混じってしまう。
ってことは呼び方を変える。気付かせる。そうだっ風。飛べないまでもそよ風程度なら。
焦った私は、方向を見定め、がむしゃらに風を使った。
「おにいちゃーーーーーーーーーーん!! キルシェだよーーーーーーーー!!」
そして全力で叫んだ。
この歳でこの文言は結構きつい。とか頭をよぎったが、たいして周りに響いていないのか、民衆は誰一人としてこっちを見ない。
やっぱりだめか。火とか水とか使えたら気付いてもらえるかもだけど。私はそれらの使い方を知らない。
「お兄ちゃん……」
力なく呟き、項垂れた私に。
一陣の風が吹いた。
柔らかく暖かな風に乗って香る、懐かしさ。
「キル……シェ……」
声はすぐ近くからだった。
見上げると。
見慣れた……遠い日の想い出とは違う……ヴィニアスさんが傍に……すぐ傍に居た。
途端に、膨れ上がる想い。
毎日辛かった。苦しかった。寂しかった。辛くて思い出すのをやめた。けれどやっぱり……会いたかった。
「お兄ちゃん……」
「キルシェ……どうしてこ……」
「なんで連絡くれないの?」
飛び出したのは、そんな言葉だった。
伝えなければならないことがあるのに。
ヴィニアスさんは……ゆっくり口と目を開いて……小さく え? と漏らした。それはサクラの知る、いつでも優しいヴィニアスさんからは到底聞けないであろう、低めの声で。
怒ったのかもしれない。
と不安がよぎるも、まだまだ私の不満は止まらず。
「あの日……家を出てから一度も……いくら忙しいからって、一度も連絡出来ないなんてことないよねっ。城からの手紙とか普通に家に届いてたし……そりゃあんな家……もう忘れてしまいたいかもしれないけど……でもっ心配するしっ私はっ……」
寂しかったのに!!
叫びそうになって、思いとどまった。
ヴィニアスさんは、今まさに、魔瘴に犯された街へ向かうところで。それがどういうことなのか、たぶん私は、まだちゃんと理解できていない。どれほどのことなのか……計り知れない。
けれど。望んで行くわけではない。それだけはわかっていた。ヴィニアスさんもいろいろ我慢しているのに……私は……。
「どういうことかな? キルシェ。お兄ちゃんから連絡一度もないって? なんで? どうして? お兄ちゃんずっと手紙送ってるよね」
「…………え?」「え?」
ヴィニアスさんと私は、屋根の上で数秒固まった。
私は……兄の言葉を、もう一度頭の中で再生してみた。
お兄ちゃんズト手紙オクテルヨネ。
何か違う。何が違うって……さっきの言い方と違う……じゃなくて、いやそうだけどでも違う。
「えっと。手紙……届いてませんけど。えっずっとっていつから?」
「家を出てからずっと。初めは一週間に一通だったけど、あまりに返事がないから毎日送ったらキルシェ…………鬱陶しいから手紙いらないって送って来て……コレなんだけど」
ヴィニアスさんは、着ている白い外套の内ポケットに手を入れて、すっかりくたびれた封筒を出した。
受け取って開き、中を見ると確かに幼い私の字で、そのようなことが書いてある。
私は、内心首を傾げつつも、必死に思い出した。
これ……これを書いたような気はする。けれど、兄に……ではない。これは……これは……。
「コレ書いたの私で間違いないけど。お兄ちゃん宛てじゃない。義姉に代筆頼まれて書いた手紙だよ。なんかしつこい男が居るけど、気色悪くて自分じゃ書きたくないからって書かされたやつ」
現物を見ていたら割と鮮明に思い出せた。
ヴィニアスさんは、私の手から手紙をそっと取って……中身を読み直して、私の顔を見なおして、当時の気分なのかなんなのか、唇を嚙みしめ……ゆっくり首を傾げた。
「キルシェ。でも……鳥かごは? 君の部屋に僕の使い魔の鳥かご置いて行ったよね」
「鳥かご……」
そういえばそんなものがあったような。
「あの鳥かごは僕の使い魔と契約してる。僕の部屋にある鳥かごとキルシェの部屋の鳥かごの間を移動するだけの使い魔。見たことあるよね? カナリアみたいなやつだよ。僕、いつもあれに手紙とかいろいろ運ばせてたんだけど。ドアや窓が閉まってても鳥かごの中に現れるから、確実に届くし」
「カナリア……」
「鳥かご、あの部屋から動かせないよう設置したから、盗られたりもしないはずなんだけど……」
「ああそれならっ」
私はポムっと手を叩いた。
ヴィニアスさんが、パっと顔を明るくさせる。
「部屋ごと取られた」
ヴィニアスさんの顔が明るいまま凍った。
兄が出て行ってすぐのことだったので、あの鳥かごにそんな機能があったなんて知らなかった。
「とられた? どういうこと? だってあの部屋は、父がまだ子供に興味あった頃、キルシェのために作った部屋だよね。ベッドも家具も全部、キルシェのためにって特注で作って固定してある……」
ヴィニアスさんからはもう、先ほど感じた懐かしい匂いは一切ない。暗い淀んだ気配に、私の思うヴィニアスさんらしさというものが刻一刻と覆われてゆくのを感じる。
「うん。豪華だったから。長女のものだろうって。義姉の部屋になった。お兄ちゃん出てってすぐ。その日の晩だったかな」
兄は一瞬遠い目をした。
己を省みて後悔でもしているのか、ギリギリと拳を握りしめて、ギュっと目を閉じ。
カっと見開いた。
その綺麗な瞳の奥に不思議な光が煌めいている。
そういえば。
兄と目が合うと、ときどき瞳の奥に光が見えていた。というのを今思い出した。
当時の私は、それをちっとも不思議だと思っていなかったが、よくよく考えたらこれってなんだろう。この光。煌めき。
「キルシェ……怪我してるね。それにその恰好…………どうしてここに来たの?」
ヴィニアスは、目つきを鋭くさせた。
「何があったの?」
言葉遣いは優しいが、声音はどことなく事務的だ。
感情を押さえ、冷静に物事を判断して、適切な質問をする。
仕事中の兄はもしかしたらこんな雰囲気だったりするのだろうか。もしもそうだったら、部下は怯えているだろう。
「はい。えっと……あの……」
有無を言わせぬ空気に、私は戸惑った。
正直に話すにはいろいろと……不甲斐ないとか恥ずかしいとか告げ口感あるなとかこう……部屋の話でここまで怒ってるのに、あれらを言うとどうなるやら。
「キルシェ。広場を見て」
「え?」
「見て」
「あ。うん」
私は、しかたなく兄越しに広場を見た。
騒がしい声。声しか聞こえない。広場は濃い霧に覆われて、何も見えない。メリエルの姿も見えなくて、時計塔だけが霧からにょっきり頭を出している。
「あれね。お兄ちゃんがやったんだよ。呼ばれて慌てて、霧出しちゃったんだ」
「は……はい」
「お兄ちゃん申し訳ないなって思う。あんなことしちゃって」
「そ……そうですね」
「でもね。お兄ちゃん戻らないよ。霧もあのままにしておく」
「……へ」
「キルシェがちゃんと話してくれるまで戻らない」
なんと。それは。えっと。
私……。
私、は兄……を……止めに来たわけで。戻らないと言うならばそれは、好都合なわけで。しかしあの中にはたくさんの人たちが居て。メリエルも居て。魔瘴をなんとかしようって出発しようとしていた他の魔法使いの方々なんかも居たりして、でも私はそれを止めたくて……。
「お兄ちゃん聞いて」
「うん。お兄ちゃん聞くよ」
「私ね。サクラなの」
「うん。知ってる……って……え? あれ? 記憶があるの?」
「え? 知ってるの?」
驚いて目を瞬かせたら、ヴィニアスも、同じように目をぱちくりさせて、二度頷いた。
「それはもちろん。こうして目を合わせばわかるよ。魔法使いだからね。その人の持つ魔力が見えるんだ。まあ、弱かったり濁ったりと見えないこともあるけど。この世に同じ輝きは一つもない。だからサクラはキルシェだってわかってたよ。どういう経緯で二人が同じなのかまではわからなかったけどね」
「あっそっかそれで……」
とわたしが言ったのは、さっきふと思い出した兄の瞳の中の輝きのことで。
「っあ! そっか! それで!!」
と二度同じことを言ったのは、鏡越しに出会ったヴィニアスが最初からものすごく優しくて、お兄ちゃんって呼んでとか意味不明なことを言っていた理由に合点がいったからだ。
なんだ早くいってくれれば……くれてもあんまりピンとはこないか。
でも……同じ輝きはないってことはメリエルとも目を合わしたら私だってわかってくれるかもしれない。
一つ希望が湧いたところで、私はギュっと散らかっていた諸々を集めて結んだ。
気合一つ。私にはやるべきことがある。
「私こっちに転生したらしいの」
「……そっか……」
ヴィニアスは、呟いて、眉間に皺をよせた。
「サクラ…………は……どうして死んでしまったの? いったいいつ頃……」
「それは置いといて」
「え」
「私神様的なあの……こっちに聖女を送り込んだ存在と話したの。それで、まあ今後姉と妹は聖女としてちゃんと動くと思う。いろいろ端折って申し訳ないけど」
「うん。ちょっとついていけてないよお兄ちゃん。でもサク……キルシェは今時間がなくて、そんな中で、お兄ちゃんを止めに来たんだね」
「うん。そう」
時間がないってこともないのについ、頷く。
「お願いだから出発を遅らせて。きっと……ううん絶対聖女二人共動くから。だからもう行かないで。二度と。お願い。あんな家のために……」
「家のためじゃないよ」
「あ……うん。私のせいかもしれないけど……」
昔義母としていた話によれば、私を預かってもらう代わりに、義兄と義姉の出向をなくすということだった。
「せいとかじゃない。僕のためだから」
「……僕の?」
「僕はここで……生涯過ごすことになる」
ヴィニアスの静かな声に、心臓がキュっとなった。
「今まで作り出した光景に背を向ける勇気はない。だからもう……他のことは出来ない。今後、キルシェの言う通り、聖女がすべてを解決してくれるとしても、争いが消えない限り、僕のような人間は必要とされるだろう」
首を振りたい。衝動にかられたが、堪える。
ぬくぬくと……いや温くはなかったが、命のやりとりとは無縁の場所で暮らしてきた私なんかが、目の前で感情を殺して話す兄の言葉を否定出来るはずもない。
それでも何かあれば。
兄にかけられる言葉。行動。兄のために何かできたら。
考えれば考えるほど深みに嵌まる。サクラとして生きた時間、キルシェとして生きた時間、二つ合わせても何も生み出せない。
「でもそれじゃあキルシェのこと一生見られない。一緒には居られないとしても、せめて見たい」
ん?
いろいろと堪えた首があっさり傾いだ。
「だからといってキルシェを城へ来させるなんてありえない。キルシェが危険な任務についたりなんかしたら僕は……」
ヴィニアスは、ひどく辛そうな顔をして、たっぷり間をとった。
「死ぬ」
ここいちの重すぎる声だった。
ヴィニアスは悪い想像でもしたのか、ぶんぶん首を振って、重苦しいため息をつき、顔を上げた。
「だから契約したんだ。生涯ここで働くから。妹を魔法使いではない良家の養子にしてくださいって。僕は国に保護してもらわなければならないほど弱くないし、家を守る義理もない。本来の契約でここに縛り付けることは出来ない」
ヴィニアスがにっこり笑った。
背景が霧がかっているせいか、申し訳ないことにちょっと薄気味悪かった。
「今はあの家にお金が入るようになってるけど、キルシェが養女になったらキルシェに入るようにしてもらうつもりだよ。だからあの家は義弟にあげる。で、義妹のことは、魔法が使えない所謂無能だって報告してるあげてるから出向はないだろうけれど。魔法使いとの縁談はいつまでたっても来ないだろうね」
優しかった兄さん。
城に来てすっかり……いやでもこの計画は遥か昔にたてたもののはず。
まああれだ。よくよく考えたら、母は逃亡、父はネグレクト、変な義母が来たりして、家の中はちゃめちゃなのに、まっすぐ育つはずないわな。
「キルシェをこっちに迎えるまであと少しだったのに。十年働いたらって契約だったし……」
十年。だとしたら本当にあとすこしで私はあの家を脱出出来たということか。それなら教えておいてくれたら我慢……無理か、昨日のあれを我慢は出来ない。
「で。あの家で何があったの? 僕はあのおばさんに、キルシェが平穏無事にあの家で過ごせるようにしろって言ったはずなんだけど」
話し戻された。
辛い気持ちとか吐露し始めたから、ちゃんと聞かなきゃって身構えてしまって、言い逃げするタイミングを逃した。
私は、答えそうになる口を両手で抑えて、飲み込み、なんとか気持ちを切り替えた。
「あれなの。反抗期で家出した。じゃ。用事あるから」
無理矢理話を切って、兄に背を向ける。
ここに長居しても仕方がない。ヴィニアスには今すぐ戻って霧ではないなにかで現場へ向かう人たちを足止めしてもらわなければならない。その方法を丸投げするのは我ながらむちゃくちゃだと思うが。
私は私で……コロッケより先に聖女が動くかどうかを確認するべきだった。
「キルシェ。ちゃんと教えて」
とはいえ私一人が城へ出向いたところで入れてはもらえな……。
あ……そう言えば彼が勲章か何かを貰うのって城じゃないだろうか。いつだったか部下の人が、いっつもここに居ますね的なこと言ってたし、勲章貰う前か後かはわからないが、空いてる時間にあの場所に来たりしないだろうか。
城の内部の様子を聞けて、コロッケも渡せて一石二鳥……にしてもらえないかな。
「キルシェっお兄ちゃんの目を見てきちんと説明して」
いやいや。聖女のことと言えば神子であるメリエルに頼んだ方がいい気もする。
だとしたら、霧の中に居るメリエルにもう一度会いに行くべき?
でもお風呂場で聞いた話だと、病の姉は城の豪華な一室で買い物しまくり、妹は第二だか第三だかの王子と二人で城に引きこもり、二人共メリエルが近づいて説教かまそうもんなら、大騒ぎするとも聞いている。
二人はメリエルみたいなタイプ絶対苦手だ。超美人で責任感も正義感もある。あきらかに二人より弁が立つというのも、きっと駄目だろう。
「キルシェ~」
今、二人が聖女として動こうと決めたと仮定して、そこにメリエルが現れたとしたら。メリエルに無理難題を言ってきそうだ。
日ごろの鬱憤とか逆恨みとか、やりたくもないことをやらされるときの二人はマジで面倒くさい。
絶対最善じゃないけど、都合のいい考えかもだけど、当初の予定通りコロッケ渡しに行くことにしよう。
「キルシェ……お兄ちゃん涙でそう」
「お兄ちゃん。お願いだから、聖女の動向がわかるまで現場には行かないで」
涙を出されたらほだされそうなので、背は向けたままにした。
「うん。それはいいんだけどお兄ちゃんはキルシェがなんでここにきたのかってことが聞きたくて」
「今すぐ行動してくれなきゃ今後私を見るのも禁止!! じゃっあとでいつもの食堂集合!」
私は、大声で無責任宣言をして。
もうどうとでもなれと、屋根を走り、思い切って飛んだ。
後ろから兄の声がしたけれど、魔法に集中する。
「っ……!」
落下はせず。無事、風が巻き起こり、体が浮いた。
しかしほっとしちゃだめ。バランスよく風を操って次の屋根を蹴る。
行ける。行ける。どこまでも。私は出来る子。風の子。魔法使いキルシェ。
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咄嗟に叫んだ言葉が効いたのだろうか。
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