13 / 16
進化したぜ
しおりを挟む
食堂へ戻ると、おばちゃんがコロッケをきつね色に仕上げて、紙を敷いたバスケットの中に綺麗に敷き詰めてくれていた。
「入らなかったのつまみ食いしたんだけどこれ美味しいね。メニューに入れてもいいかい?」
「どうぞ! ありがとうございます!!」
私はそういいながら、おばちゃんに場所代を差し出した。
が、おばちゃんは受け取らず。
「だから、余りを食べたっていったろ? それに新メニューも出来たし。お代は十分だよ」
「え……でも」
「いいから行っておいで魔法使いのお嬢ちゃん」
魔法使いの。
その言葉に嫌悪感は感じられず、少しほっとした。
「おばちゃっ」
「それはもういいから。うるさいから。ほらこれに着替えて。おばちゃんの娘のだからちょっと大きいかもだけど」
「っ!」
私は懲りずにもう一度叫んでおばちゃんに飛びつき、二階で着替えさせて貰った。白いブラウスにオレンジのつりスカート。
貰った緑色のリボンで髪を一つに結んで、おばちゃんが用意してくれたバスケットを抱えると、また気力が沸いてきた。
全身を見たわけではないけれど、ものすごく進化した感じがする。
それにサクラのときはなるべく安価で動きやすいものを、キルシェのときは継ぎはぎのドレスを着ていたので。こんなにまともな生地のスカート、子供の時以来だ。
これからはおしゃれも出来るかも……。
なんて、無職家なしが希望で一杯になるほど可愛らしい恰好だった。
「じゃあ行ってきます! また後でお礼に来ます!」
「お礼とかいいけど、戻っておいでね」
「おば……」
「行ってらっしゃい!」
私はおばちゃんに背中を押されて、再びお店を出発した。
気持ちは幾分軽い。が疲労はかなり蓄積している。何せ昨晩は森で野宿。ここまで歩き詰めで、さっきは魔法まで使った。
もう魔法は無理かも。あまり急げないな……。
私は、ときどき立ち止まって休憩を挟みつつ、彼がいつも座っていた噴水広場を目指した。
広場と言っても、さっき見た中央広場と違って、背の高い雑草がはえまくっている錆びれた場所だ。
彼が座っている水周りだけは綺麗にしてあるようだが。
ヴィニアスに場所を聞いた際は、どうしてそんなところ知ってるの? と随分しつこく聞かれた覚えがある。
魔瘴に犯された場所に水辺を作る。という話を聞いたのはたぶんそのときだ。あの場所は、昔魔瘴に犯され、浄化ではなく消毒された場所だから、人が近づかない。
今更その場所が危険ということはないらしいが、城の魔法使いに守られて生きる城下の人々は、あえてそこにはいかない。
供養しに来る人も居ないんだ。
なんて話を一度彼としたけれど、あれは無神経だった。
恐らく、彼が供養しにきている人なのだろう。
彼……いつもあの場所に一人だけど……彼女とか居るのかな。
私は己のアホ思考を振り払おうとふるふる首を振った。
今の私は美少女だが、サクラだ。
もしかしてもしかするのではないかなんて考えては駄目だ。調子に乗らず、目的を果たそう。
優先すべきは、聖女が動いたかどうか。そしてコロッケだ。二兎を追う者、男を得ず。
いや既に二兎だったわ。
「ってツッコんでる場合じゃなくて、次の手を考えながら行くべきだわ」
私は、徐々に人気が少なくなる道に不安を覚えて、独り言を呟きはじめた。
「そもそも授与式があるから、噴水になんて来ない確率の方が高い。っていうかあれよね。そもそもそも、魔瘴騒ぎになってるときに授与式があるのかどうかって問題だわ」
やっぱ最善じゃなかった。コロッケ渡したい一心で、都合よく考えちゃってた。
「いなかった場合。コロッケはもうこの際……置いて行こう。でもって…………会いたくないけど、城の前まで行って、サクラが来たぞ~ってひと騒ぎ起こすしかないかな。まさかこんな早くに魔瘴が起こるなんて思ってなかったから……自分の居場所を知らせずに二人の動向だけ確かめようって考えてたけども……」
ああやだやだ。そりゃ元気なのかなとかは……思うけどさ。顔……まったく見たくないわけでもないけど。見たら文句言いたくなるだろうけど。
私……あんなこと神様に頼んで良かったのかな。薄情すぎるかな。
だんだん足取りが重くなっていく。足場も悪くなっていく。
石畳の隙間から雑草がもりもり生えて、前が見ずらい。
わさわさ緑の草をかき分けながら進み、水の臭いに顔を上げる。
と。
隙間から噴水が……噴水……と黒い隊服を着た彼の姿が見えた。
瞬間、逃げ出したい衝動と飛び出したい衝動で体が固まり、心臓がバクバク鳴った。
「入らなかったのつまみ食いしたんだけどこれ美味しいね。メニューに入れてもいいかい?」
「どうぞ! ありがとうございます!!」
私はそういいながら、おばちゃんに場所代を差し出した。
が、おばちゃんは受け取らず。
「だから、余りを食べたっていったろ? それに新メニューも出来たし。お代は十分だよ」
「え……でも」
「いいから行っておいで魔法使いのお嬢ちゃん」
魔法使いの。
その言葉に嫌悪感は感じられず、少しほっとした。
「おばちゃっ」
「それはもういいから。うるさいから。ほらこれに着替えて。おばちゃんの娘のだからちょっと大きいかもだけど」
「っ!」
私は懲りずにもう一度叫んでおばちゃんに飛びつき、二階で着替えさせて貰った。白いブラウスにオレンジのつりスカート。
貰った緑色のリボンで髪を一つに結んで、おばちゃんが用意してくれたバスケットを抱えると、また気力が沸いてきた。
全身を見たわけではないけれど、ものすごく進化した感じがする。
それにサクラのときはなるべく安価で動きやすいものを、キルシェのときは継ぎはぎのドレスを着ていたので。こんなにまともな生地のスカート、子供の時以来だ。
これからはおしゃれも出来るかも……。
なんて、無職家なしが希望で一杯になるほど可愛らしい恰好だった。
「じゃあ行ってきます! また後でお礼に来ます!」
「お礼とかいいけど、戻っておいでね」
「おば……」
「行ってらっしゃい!」
私はおばちゃんに背中を押されて、再びお店を出発した。
気持ちは幾分軽い。が疲労はかなり蓄積している。何せ昨晩は森で野宿。ここまで歩き詰めで、さっきは魔法まで使った。
もう魔法は無理かも。あまり急げないな……。
私は、ときどき立ち止まって休憩を挟みつつ、彼がいつも座っていた噴水広場を目指した。
広場と言っても、さっき見た中央広場と違って、背の高い雑草がはえまくっている錆びれた場所だ。
彼が座っている水周りだけは綺麗にしてあるようだが。
ヴィニアスに場所を聞いた際は、どうしてそんなところ知ってるの? と随分しつこく聞かれた覚えがある。
魔瘴に犯された場所に水辺を作る。という話を聞いたのはたぶんそのときだ。あの場所は、昔魔瘴に犯され、浄化ではなく消毒された場所だから、人が近づかない。
今更その場所が危険ということはないらしいが、城の魔法使いに守られて生きる城下の人々は、あえてそこにはいかない。
供養しに来る人も居ないんだ。
なんて話を一度彼としたけれど、あれは無神経だった。
恐らく、彼が供養しにきている人なのだろう。
彼……いつもあの場所に一人だけど……彼女とか居るのかな。
私は己のアホ思考を振り払おうとふるふる首を振った。
今の私は美少女だが、サクラだ。
もしかしてもしかするのではないかなんて考えては駄目だ。調子に乗らず、目的を果たそう。
優先すべきは、聖女が動いたかどうか。そしてコロッケだ。二兎を追う者、男を得ず。
いや既に二兎だったわ。
「ってツッコんでる場合じゃなくて、次の手を考えながら行くべきだわ」
私は、徐々に人気が少なくなる道に不安を覚えて、独り言を呟きはじめた。
「そもそも授与式があるから、噴水になんて来ない確率の方が高い。っていうかあれよね。そもそもそも、魔瘴騒ぎになってるときに授与式があるのかどうかって問題だわ」
やっぱ最善じゃなかった。コロッケ渡したい一心で、都合よく考えちゃってた。
「いなかった場合。コロッケはもうこの際……置いて行こう。でもって…………会いたくないけど、城の前まで行って、サクラが来たぞ~ってひと騒ぎ起こすしかないかな。まさかこんな早くに魔瘴が起こるなんて思ってなかったから……自分の居場所を知らせずに二人の動向だけ確かめようって考えてたけども……」
ああやだやだ。そりゃ元気なのかなとかは……思うけどさ。顔……まったく見たくないわけでもないけど。見たら文句言いたくなるだろうけど。
私……あんなこと神様に頼んで良かったのかな。薄情すぎるかな。
だんだん足取りが重くなっていく。足場も悪くなっていく。
石畳の隙間から雑草がもりもり生えて、前が見ずらい。
わさわさ緑の草をかき分けながら進み、水の臭いに顔を上げる。
と。
隙間から噴水が……噴水……と黒い隊服を着た彼の姿が見えた。
瞬間、逃げ出したい衝動と飛び出したい衝動で体が固まり、心臓がバクバク鳴った。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる