6 / 26
私が笑顔に負ける訳
しおりを挟む
いつもより少しばかり清々しい気分で先輩との待ち合わせ場所に向かう。
悩みは一つたりとも解決していないのに足取りが軽い。
「すみません。お待たせしました」
立っているだけで女子を振り返らせる男が、私の一声で振り返り微笑む。なんとも贅沢なことで悩んでいるなと思ったりするほど。
ポジティブな気分。
「今日は、映画に行こうか」
佐原先輩はいつも待ち合わせの時間と場所だけ指定してくる、そして、デートの定番ぽい所へ行こうとする。
「先輩。そんなに毎日いろいろなところ行けません。お金が尽きます」
私はそれを大抵断る。良い気分でも断る。
「俺が払うから」
「割り勘でなきゃ行きません」
学生なのだから割り勘が当たり前だと説明したはずなのだが、この押し問答は毎回行われる。いつか私が折れるとでも思っているのだろうか。
「どこかのベンチで暖かい飲み物でも飲んで帰りましょう」
どっかいった父がときどき思い出したように振り込んでくる仕送り、祖父母の年金、母が残した貯金。どう節約するか妹と祖母とで頭を悩ませる日々に、デート資金なんて盛り込めるわけがない。
「……わかった。今日は何時まで?」
納得してくれたはずの佐原先輩の目力がすごい。この強い眼差しに、いつまでも……と答えたくなる女子がどれほどいるだろう。
なんて、これも毎回聞かれることなので慣れてしまった。
「晩御飯の当番なんで、十七時には家に着きたいです」
「スーパーで買い物する?」
「今日はしません」
先輩は毎回家まで送ってくれる。
この間、スーパーに行くから送らなくてもいいと言ったら、買い物についてきて、すべての荷物を持って家まで送ってくれた。
それはそれは助かった。けれど、もう二度と一緒に行きたくない。
なぜって、試食のおばちゃんがやたら寄ってくるわ、馴染みのレジ打ちさんにニヤニヤされるわ、とにかく恥ずかしかったからだ。せめて、レジに一緒に並ぶのはやめてと言えれば良かったのだが。
先輩が嬉しそうだから……。
あれには弱いなぁ私。
怒られたり泣かれたりすることは過去何度も何度も何度も経験しているが、喜んでもらうというのは……覚えていられる程度にしかない。
人助けのために戻っても助けられなかったり、おせっかいだったりが多いもんで。こんなにも、それもたいして何もせずとも嬉しそうにされると、どうにも……動けない。
「そっか」
佐原先輩。がっかりしている。それはもうあからさまに。
買い物についてきたかったんだろうな。ということはわかるが、今日も今日とて先輩が何を考えているのかわからない。一緒に過ごす……付き合う? ことに了承したものの、先輩の要望は私の金銭的理由であまり聞けておらず、こうしてベンチでぼーっとするばかりになっているし、これって先輩にとって意味あるのだろうか。
私が話題を出さない限り佐原先輩から話し出すことも少なく、沈黙が多いのも気になる。
「あの……あっ。そういえばですね。私今日、お昼ご飯、あまりしゃべったことのない子たちと食べたんです」
「ん。そうか」
「先輩のおかげで」
「……俺?」
「はい」
さて、これなら会話になるだろうか。
なんて期待したが。
「そっか」
駄目だった。
会話は出来なかった……けれど。
「よかったな」
嬉しそうに笑ってくれた。
「はいっ」
私も、つられて笑う。
毎日毎日。
一緒に居るだけで、何もしていない。
これはこれで楽しいと思わなくもない。うん。悪くない。良い。結構いい。かもしれない。
と。
浮かれている場合でもないのである。
先日、電車を待っていた際、向かいのホームに先輩を見つけ手を振ったら、先輩と同じ学校の女子に睨まれ……ふと考えた。
これは果たして青春なのだろうか。私のやってることって、ただ優越感に浸っているだけなのではないだろうか。軽率に転がり込んだ、自らの手で手に入れたわけではない優越感に……。
このままだとまた周りに空気読んで貰うことになりかねない気がする。
従兄だなんだと誤魔化さずにきちんと佐原先輩との関係を答えられるようにしておかなければ、楽しいなぁなんてふわふわ思っている間に落とし穴に落ちるってのは定石だ。
一歩ずつ地道に進むなら、まず地盤を固めなければ。
となるとまず自分がどうしたいのかということになってくるのだが、それがいかんせん一番難しい。正直、今のこの楽しい感じを失くしたくはないな……と思う……。
そろそろ。もう一回くらい、どういう意味合いで付き合いたいと言ってきたのか聞いてみてもいいだろうか。
「あの先輩ちょっと話変わるんですけど」
「ん?」
笑顔に負けるな私。頑張れ私。
「毎日毎日こうしててその……あれだ。えっと。私のこと……は……どういう……ふうに思ってるんですか? 先輩って距離感がこう、悪く言えばストー……いやあの、一緒に居すぎかなって思うんですけど」
この間、友達とか彼女居ないんですかと聞いてみたが 「そのうち」 なんて曖昧な答えが返って来た。
私と一緒に居て楽しですか? と聞いてみたら 「まあ」 と返ってきた。ニュアンス的には、まぁまぁって意味より、さも当然と言わんばかりだった。
「君と同じ気持ちにしてるつもりだけど。俺、距離図り損ねてるか?」
同じ気持ち。にする。て。そこがわからんのだよ。それって私が先輩を嫌ったら先輩も私を嫌いで、私が先輩を好きだったら先輩もそう……ということになるという。
謎。
「先輩。ときどき何言ってるかわかりません」
ちょっとイラっときて言うと、くすくす笑われた。
「うん。わかってる。話の逸らし方が下手なんだなたぶん」
わかってやってるのか。っていうか逸らしてるのか。
「それだと。何か裏があるって言ってるようなもんですけど。あとたぶん図り損ねてますよ」
「ははっ」
佐原先輩は、いつもその場の流れに合わない反応をする。私はそれに照れたり焦ったり、面白いときも多いけれど、振り回されてばかりだ。
「何かしてほしいことがあるなら言ってくれたら検討しますよ。お金使わない範囲でですけども。もう私と先輩知らない人ってわけじゃないですし。友達っていうか」
言いながら妙に照れた。
友達であるとわざわざ言うことなんてないので恥ずかしすぎたけれど、これを否定されなかったら、私の気持ちや佐原先輩の企み? はさておき、一応関係性を説明することはできる……かな。
「あるよ。やってほしいこと」
ベンチで横並びに座っていた佐原先輩が私の前に来て、しゃがんだ。
またも読めない動きをされ、身構える。
「明日も明後日も。ずっと一緒に居てほしい」
「……はっ?」
これは。
さすがにドキドキが止まらない。
何が何だかわからないのにただドキドキだけさせられている。
騙されないぞ。私は絶対騙されないぞと抵抗しているのに、目の前の先輩の顔……破壊力抜群の、少し影を帯びた微笑みに身動きとれなくなる。
絶対おかしいって。絶対変だって。こんなに変なことはないって。
「う……」
「ん?」
先輩の声に首を振る。
「私も先輩も受験勉強とかいろいろあると思うんで、毎日は無理です」
「教えるけど」
「先輩の周りすぐ人が寄ってくるから集中出来ないと思います」
なんとか論破してやる。
「じゃあ君の家で」
「散らかってるし狭いし無理です」
「俺の家来る?」
「無理無理無理無理」
「……じゃあ一日置きならいいの?」
「…………週一とか」
「週七」
「いやそれ毎日」
思わずツッコんだら、先輩はボケたわけじゃないのか、あっと口を開けた。
「週三で。それ以上は譲歩しません。今後も週七って言うなら、それなりの理由を、話をそらさずにきちんと答えてください」
はっきりきっぱりこの関係を断ることが出来ない私が、先輩にはっきりしろというのもおかしな話なのかもしれないが。
とにかく先輩の数々の謎言動をスッキリさせたいのは確かだ。
それがわかるまで会うってことにすればいい。
よし。これで地盤はしっか固まっ……てはいない。
「じゃあ」
佐原先輩はどことなく嬉しそうに、いや、ちょっと怪し気な笑みで私を見た。
「名前で呼んでもいいか?」
「はっ!?」
「君も俺のこと名前呼びで。敬語もなし。それなら週四でいいよ」
「いや三」
「四」
暫し三と四だけのやりとりが続いた。
犬の散歩をしているおじさんが、眉間に皺を寄せてチラ見して行ったし、小学生があからさまに速足で通り過ぎていった。
いつもうんうんと話を聞いてくれる佐原先輩なのに、こういうときだけ頑固とは。
「五」
何気に増えてるし。
「コウっ」
いい加減にしてほしくて呼び捨ててみた。
すると、佐原先輩は……大きく目を見開いて唇を噛みしめ……
俯いてしまった。
「えっ……と」
少し、肩が震えている。
「……先輩?」
怒った? それとも笑ってる? でも先輩が名前を呼べっていったのに。
あ。あれか。寒いんだ。怒ってない怒ってない。怒ってないでください。
変な間に恐怖を感じた私は、自分の首に巻いているマフラーを外して、先輩の首に巻きつけた。
驚いたのか先輩の肩が大げさに反応したが、まだ顔はあげてくれない。
「これ……」
「女物ですけど、よろしければどうぞ。今度返してくれれば大丈……」
言い切るまえに勢いよく首に巻き返された。
勢いが良すぎて殆ど顔に巻きつけられ、前が見えない。
「っ……」
ほんの一瞬。暖かいものに包まれた……ような気がした。
私は、マフラーを取ろうと引っ張り、後ろでくくられていたので、ぐいっと下にずらした。
「寒くないから大丈夫。でもそろそろ帰ろうか。俺もう限界」
佐原先輩はいつのまにかまた隣に座っていた。
「限界?」
先輩は、こっちを見ず、わざとらしく両手で自分を抱きしめる動作をした。
「寒さが」
いやさっき寒くないって言ったのに。
「寒さ」
二度も言うか。
「だったらマフラー」
「それはいらない」
拗ねた子供のような言い方に、私は思わず笑ってしまった。
悩みは一つたりとも解決していないのに足取りが軽い。
「すみません。お待たせしました」
立っているだけで女子を振り返らせる男が、私の一声で振り返り微笑む。なんとも贅沢なことで悩んでいるなと思ったりするほど。
ポジティブな気分。
「今日は、映画に行こうか」
佐原先輩はいつも待ち合わせの時間と場所だけ指定してくる、そして、デートの定番ぽい所へ行こうとする。
「先輩。そんなに毎日いろいろなところ行けません。お金が尽きます」
私はそれを大抵断る。良い気分でも断る。
「俺が払うから」
「割り勘でなきゃ行きません」
学生なのだから割り勘が当たり前だと説明したはずなのだが、この押し問答は毎回行われる。いつか私が折れるとでも思っているのだろうか。
「どこかのベンチで暖かい飲み物でも飲んで帰りましょう」
どっかいった父がときどき思い出したように振り込んでくる仕送り、祖父母の年金、母が残した貯金。どう節約するか妹と祖母とで頭を悩ませる日々に、デート資金なんて盛り込めるわけがない。
「……わかった。今日は何時まで?」
納得してくれたはずの佐原先輩の目力がすごい。この強い眼差しに、いつまでも……と答えたくなる女子がどれほどいるだろう。
なんて、これも毎回聞かれることなので慣れてしまった。
「晩御飯の当番なんで、十七時には家に着きたいです」
「スーパーで買い物する?」
「今日はしません」
先輩は毎回家まで送ってくれる。
この間、スーパーに行くから送らなくてもいいと言ったら、買い物についてきて、すべての荷物を持って家まで送ってくれた。
それはそれは助かった。けれど、もう二度と一緒に行きたくない。
なぜって、試食のおばちゃんがやたら寄ってくるわ、馴染みのレジ打ちさんにニヤニヤされるわ、とにかく恥ずかしかったからだ。せめて、レジに一緒に並ぶのはやめてと言えれば良かったのだが。
先輩が嬉しそうだから……。
あれには弱いなぁ私。
怒られたり泣かれたりすることは過去何度も何度も何度も経験しているが、喜んでもらうというのは……覚えていられる程度にしかない。
人助けのために戻っても助けられなかったり、おせっかいだったりが多いもんで。こんなにも、それもたいして何もせずとも嬉しそうにされると、どうにも……動けない。
「そっか」
佐原先輩。がっかりしている。それはもうあからさまに。
買い物についてきたかったんだろうな。ということはわかるが、今日も今日とて先輩が何を考えているのかわからない。一緒に過ごす……付き合う? ことに了承したものの、先輩の要望は私の金銭的理由であまり聞けておらず、こうしてベンチでぼーっとするばかりになっているし、これって先輩にとって意味あるのだろうか。
私が話題を出さない限り佐原先輩から話し出すことも少なく、沈黙が多いのも気になる。
「あの……あっ。そういえばですね。私今日、お昼ご飯、あまりしゃべったことのない子たちと食べたんです」
「ん。そうか」
「先輩のおかげで」
「……俺?」
「はい」
さて、これなら会話になるだろうか。
なんて期待したが。
「そっか」
駄目だった。
会話は出来なかった……けれど。
「よかったな」
嬉しそうに笑ってくれた。
「はいっ」
私も、つられて笑う。
毎日毎日。
一緒に居るだけで、何もしていない。
これはこれで楽しいと思わなくもない。うん。悪くない。良い。結構いい。かもしれない。
と。
浮かれている場合でもないのである。
先日、電車を待っていた際、向かいのホームに先輩を見つけ手を振ったら、先輩と同じ学校の女子に睨まれ……ふと考えた。
これは果たして青春なのだろうか。私のやってることって、ただ優越感に浸っているだけなのではないだろうか。軽率に転がり込んだ、自らの手で手に入れたわけではない優越感に……。
このままだとまた周りに空気読んで貰うことになりかねない気がする。
従兄だなんだと誤魔化さずにきちんと佐原先輩との関係を答えられるようにしておかなければ、楽しいなぁなんてふわふわ思っている間に落とし穴に落ちるってのは定石だ。
一歩ずつ地道に進むなら、まず地盤を固めなければ。
となるとまず自分がどうしたいのかということになってくるのだが、それがいかんせん一番難しい。正直、今のこの楽しい感じを失くしたくはないな……と思う……。
そろそろ。もう一回くらい、どういう意味合いで付き合いたいと言ってきたのか聞いてみてもいいだろうか。
「あの先輩ちょっと話変わるんですけど」
「ん?」
笑顔に負けるな私。頑張れ私。
「毎日毎日こうしててその……あれだ。えっと。私のこと……は……どういう……ふうに思ってるんですか? 先輩って距離感がこう、悪く言えばストー……いやあの、一緒に居すぎかなって思うんですけど」
この間、友達とか彼女居ないんですかと聞いてみたが 「そのうち」 なんて曖昧な答えが返って来た。
私と一緒に居て楽しですか? と聞いてみたら 「まあ」 と返ってきた。ニュアンス的には、まぁまぁって意味より、さも当然と言わんばかりだった。
「君と同じ気持ちにしてるつもりだけど。俺、距離図り損ねてるか?」
同じ気持ち。にする。て。そこがわからんのだよ。それって私が先輩を嫌ったら先輩も私を嫌いで、私が先輩を好きだったら先輩もそう……ということになるという。
謎。
「先輩。ときどき何言ってるかわかりません」
ちょっとイラっときて言うと、くすくす笑われた。
「うん。わかってる。話の逸らし方が下手なんだなたぶん」
わかってやってるのか。っていうか逸らしてるのか。
「それだと。何か裏があるって言ってるようなもんですけど。あとたぶん図り損ねてますよ」
「ははっ」
佐原先輩は、いつもその場の流れに合わない反応をする。私はそれに照れたり焦ったり、面白いときも多いけれど、振り回されてばかりだ。
「何かしてほしいことがあるなら言ってくれたら検討しますよ。お金使わない範囲でですけども。もう私と先輩知らない人ってわけじゃないですし。友達っていうか」
言いながら妙に照れた。
友達であるとわざわざ言うことなんてないので恥ずかしすぎたけれど、これを否定されなかったら、私の気持ちや佐原先輩の企み? はさておき、一応関係性を説明することはできる……かな。
「あるよ。やってほしいこと」
ベンチで横並びに座っていた佐原先輩が私の前に来て、しゃがんだ。
またも読めない動きをされ、身構える。
「明日も明後日も。ずっと一緒に居てほしい」
「……はっ?」
これは。
さすがにドキドキが止まらない。
何が何だかわからないのにただドキドキだけさせられている。
騙されないぞ。私は絶対騙されないぞと抵抗しているのに、目の前の先輩の顔……破壊力抜群の、少し影を帯びた微笑みに身動きとれなくなる。
絶対おかしいって。絶対変だって。こんなに変なことはないって。
「う……」
「ん?」
先輩の声に首を振る。
「私も先輩も受験勉強とかいろいろあると思うんで、毎日は無理です」
「教えるけど」
「先輩の周りすぐ人が寄ってくるから集中出来ないと思います」
なんとか論破してやる。
「じゃあ君の家で」
「散らかってるし狭いし無理です」
「俺の家来る?」
「無理無理無理無理」
「……じゃあ一日置きならいいの?」
「…………週一とか」
「週七」
「いやそれ毎日」
思わずツッコんだら、先輩はボケたわけじゃないのか、あっと口を開けた。
「週三で。それ以上は譲歩しません。今後も週七って言うなら、それなりの理由を、話をそらさずにきちんと答えてください」
はっきりきっぱりこの関係を断ることが出来ない私が、先輩にはっきりしろというのもおかしな話なのかもしれないが。
とにかく先輩の数々の謎言動をスッキリさせたいのは確かだ。
それがわかるまで会うってことにすればいい。
よし。これで地盤はしっか固まっ……てはいない。
「じゃあ」
佐原先輩はどことなく嬉しそうに、いや、ちょっと怪し気な笑みで私を見た。
「名前で呼んでもいいか?」
「はっ!?」
「君も俺のこと名前呼びで。敬語もなし。それなら週四でいいよ」
「いや三」
「四」
暫し三と四だけのやりとりが続いた。
犬の散歩をしているおじさんが、眉間に皺を寄せてチラ見して行ったし、小学生があからさまに速足で通り過ぎていった。
いつもうんうんと話を聞いてくれる佐原先輩なのに、こういうときだけ頑固とは。
「五」
何気に増えてるし。
「コウっ」
いい加減にしてほしくて呼び捨ててみた。
すると、佐原先輩は……大きく目を見開いて唇を噛みしめ……
俯いてしまった。
「えっ……と」
少し、肩が震えている。
「……先輩?」
怒った? それとも笑ってる? でも先輩が名前を呼べっていったのに。
あ。あれか。寒いんだ。怒ってない怒ってない。怒ってないでください。
変な間に恐怖を感じた私は、自分の首に巻いているマフラーを外して、先輩の首に巻きつけた。
驚いたのか先輩の肩が大げさに反応したが、まだ顔はあげてくれない。
「これ……」
「女物ですけど、よろしければどうぞ。今度返してくれれば大丈……」
言い切るまえに勢いよく首に巻き返された。
勢いが良すぎて殆ど顔に巻きつけられ、前が見えない。
「っ……」
ほんの一瞬。暖かいものに包まれた……ような気がした。
私は、マフラーを取ろうと引っ張り、後ろでくくられていたので、ぐいっと下にずらした。
「寒くないから大丈夫。でもそろそろ帰ろうか。俺もう限界」
佐原先輩はいつのまにかまた隣に座っていた。
「限界?」
先輩は、こっちを見ず、わざとらしく両手で自分を抱きしめる動作をした。
「寒さが」
いやさっき寒くないって言ったのに。
「寒さ」
二度も言うか。
「だったらマフラー」
「それはいらない」
拗ねた子供のような言い方に、私は思わず笑ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜
白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。
私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。
けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?
関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。
竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。
『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』
❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。
*乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。
*表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。
*いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。
*他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
妾に恋をした
はなまる
恋愛
ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。 そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。
早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。
実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。
だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。
ミーシャは無事ミッションを成せるのか?
それとも玉砕されて追い出されるのか?
ネイトの恋心はどうなってしまうのか?
カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる