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第六章:領主三年目、さらに遠くへ
嫉妬
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「エルマー様が私の方を向いてくれません」
「最初から向く気がないからな」
「そんなことは聞いていません。去年の終わりから奥様が増え続けています。それについてはいかがお考えですか?」
なぜかザーラに問い詰められていた。ザーラはずっと俺の妻になる気だったからだ。しばらく余計なことを言わないと思っていたら、まだ覚えていたのか。
「たしかに俺はザーラにこの町に来てほしいと思った。だがそれはこの町に宿屋を作るためだった。それは知っているだろう」
「はい、もちろんそれは知っています。ですが一緒にカフェをしていたアンゲリカさんだけではなく料理人のラーエルさんとアグネスさん、そしてカリンナさんとコリンナさんまで、私の知っている料理関係者が順番にエルマー様の奥様になっています。そこのところはどうお考えですか?」
どうしてラーエルとアグネスのことまで知っているのか。実は年末にミリヤムの件があってアグネスとはよく話をした。そしてそこにラーエルが乗っかった形になった。そしてカレンがいつものように「二人くらい増えても大丈夫でしょ?」と発言したことにより、そのまま俺の側室になった。
二人は王都の博物館のレストランでの仕事はしばらく続けることになる。二人とも料理が好きだから料理人になったわけで、俺の側室になったからといって何もしないと暇を持て余す。今後はどうするかはゆっくりと考えるとして、しばらくは後任を育てる仕事を頑張ってもらうことになる。
ちなみにカリンナとコリンナには手は出していない。放っておくと危険なので俺が受け入れるしかないということだが、俺自身がその気になれないから手の出しようがない。実はザーラもそうなので、ひょっとして血が繋がっているのではないかと疑ったが、母の出自が分かった以上、そういうことはなさそうだ。
「ではこちらをご覧ください」
「それは手紙か?」
俺はザーラからきちんと認められた手紙を受け取った。受取人はザーラだが、封は切られていない。
「エルマー様が本当に私を貰ってくれるのかくれないのか、いずれにせよその手紙の内容に従います」
「従いますって、これはシビラからか」
「はい。私がエルマー様の妻に相応しいかどうか、シビラ様にお伺いを立てました。もし相応しくないと言われればスッパリと諦めます」
だが相応しいと言われれば俺の妻になるつもりだと。
「一つ聞くが、シビラが何を言おうと最終的には俺次第だ。そこをどう考える?」
「その場合、エルマー様に気に入っていただくために、今まで以上に積極的にアピールするつもりです」
「それは俺が折れるしかないというとこじゃないか?」
「はい、そうなります。ですので早く折れてください」
このままでは堂々巡りだろう。それをどうにかするためにはこの手紙を開ける必要がある。だがシビラが許可をしてもしなくても、最終的にはザーラは俺の妻になりたいわけで、それなら結果がどうあれ、結論は同じだろう。
正直に言えば、今さら一人増えてもあまり変わらない。それくらいは分かっている。一人が二人になるのは大きな違いだが、一五人が一六人になったところで何が違うのか。おそらく違わないな。だからこそ困っている。
これがザーラを妻にすれば何かに影響が出るなら断ることも可能だが、彼女は隣の領地で宿屋をやっている家族の娘だ。何も問題はない。増えても増えなくても変わりがない。それなら増やそうというのがカレンの考えだ。
だが影響がなければ増やせばいいというのも不誠実に思える。婚約者のシビラも入れて一五人。俺が怖いのは、さらに増やしたとして幸せにできるのかということだ。金があるのが幸せと割り切った相手なら問題ないだろうが、そうでなければ単なる一六分の一になってしまう。
「分かった。とりあえず封を切るぞ」
「はい」
俺は丁寧な字で書かれた手紙の封を切ると、中から便箋を取り出した。
『エルマー様の思った通りになさってください』
……。
投げたな。いや、自分が婚約者で止まっているのに妻を増やされても困るのかもしれない。そもそも俺が開けると読んでいたのか?
「ちなみに俺の妻になって何をするんだ?」
「もっと宿屋やカフェを増やして、この領地が潤うように頑張ります」
「それは妻でなくてもいいんじゃないか?」
「立場が物を言うこともあるでしょう」
それは間違いない。妻と単なる雇われ人。どちらが自由に経営できるかは明らかだ。だが……。
「そのためだけに妻になりたいと言ってるのか?」
「そういうわけではありません。初めてお会いした時から気になっていました」
デニス殿の屋敷に手紙を届けに走ってもらった時だな。たしかアルマよりも下だと思って頭を撫でたことがあった。
「それなら……カリンナやコリンナと同じく、いずれはということにする。すぐに手を出すとか、そういうことはないからな?」
「すぐに手を出されてもいいのですが」
「すぐは無理だ」
手を出す気になれないんだが、それもカリンナやコリンナとは違う気がする。好きとか嫌いとか、そういう問題でもない気がする。下手に調べて変なところに繋がっても嫌なんだが……。
「最初から向く気がないからな」
「そんなことは聞いていません。去年の終わりから奥様が増え続けています。それについてはいかがお考えですか?」
なぜかザーラに問い詰められていた。ザーラはずっと俺の妻になる気だったからだ。しばらく余計なことを言わないと思っていたら、まだ覚えていたのか。
「たしかに俺はザーラにこの町に来てほしいと思った。だがそれはこの町に宿屋を作るためだった。それは知っているだろう」
「はい、もちろんそれは知っています。ですが一緒にカフェをしていたアンゲリカさんだけではなく料理人のラーエルさんとアグネスさん、そしてカリンナさんとコリンナさんまで、私の知っている料理関係者が順番にエルマー様の奥様になっています。そこのところはどうお考えですか?」
どうしてラーエルとアグネスのことまで知っているのか。実は年末にミリヤムの件があってアグネスとはよく話をした。そしてそこにラーエルが乗っかった形になった。そしてカレンがいつものように「二人くらい増えても大丈夫でしょ?」と発言したことにより、そのまま俺の側室になった。
二人は王都の博物館のレストランでの仕事はしばらく続けることになる。二人とも料理が好きだから料理人になったわけで、俺の側室になったからといって何もしないと暇を持て余す。今後はどうするかはゆっくりと考えるとして、しばらくは後任を育てる仕事を頑張ってもらうことになる。
ちなみにカリンナとコリンナには手は出していない。放っておくと危険なので俺が受け入れるしかないということだが、俺自身がその気になれないから手の出しようがない。実はザーラもそうなので、ひょっとして血が繋がっているのではないかと疑ったが、母の出自が分かった以上、そういうことはなさそうだ。
「ではこちらをご覧ください」
「それは手紙か?」
俺はザーラからきちんと認められた手紙を受け取った。受取人はザーラだが、封は切られていない。
「エルマー様が本当に私を貰ってくれるのかくれないのか、いずれにせよその手紙の内容に従います」
「従いますって、これはシビラからか」
「はい。私がエルマー様の妻に相応しいかどうか、シビラ様にお伺いを立てました。もし相応しくないと言われればスッパリと諦めます」
だが相応しいと言われれば俺の妻になるつもりだと。
「一つ聞くが、シビラが何を言おうと最終的には俺次第だ。そこをどう考える?」
「その場合、エルマー様に気に入っていただくために、今まで以上に積極的にアピールするつもりです」
「それは俺が折れるしかないというとこじゃないか?」
「はい、そうなります。ですので早く折れてください」
このままでは堂々巡りだろう。それをどうにかするためにはこの手紙を開ける必要がある。だがシビラが許可をしてもしなくても、最終的にはザーラは俺の妻になりたいわけで、それなら結果がどうあれ、結論は同じだろう。
正直に言えば、今さら一人増えてもあまり変わらない。それくらいは分かっている。一人が二人になるのは大きな違いだが、一五人が一六人になったところで何が違うのか。おそらく違わないな。だからこそ困っている。
これがザーラを妻にすれば何かに影響が出るなら断ることも可能だが、彼女は隣の領地で宿屋をやっている家族の娘だ。何も問題はない。増えても増えなくても変わりがない。それなら増やそうというのがカレンの考えだ。
だが影響がなければ増やせばいいというのも不誠実に思える。婚約者のシビラも入れて一五人。俺が怖いのは、さらに増やしたとして幸せにできるのかということだ。金があるのが幸せと割り切った相手なら問題ないだろうが、そうでなければ単なる一六分の一になってしまう。
「分かった。とりあえず封を切るぞ」
「はい」
俺は丁寧な字で書かれた手紙の封を切ると、中から便箋を取り出した。
『エルマー様の思った通りになさってください』
……。
投げたな。いや、自分が婚約者で止まっているのに妻を増やされても困るのかもしれない。そもそも俺が開けると読んでいたのか?
「ちなみに俺の妻になって何をするんだ?」
「もっと宿屋やカフェを増やして、この領地が潤うように頑張ります」
「それは妻でなくてもいいんじゃないか?」
「立場が物を言うこともあるでしょう」
それは間違いない。妻と単なる雇われ人。どちらが自由に経営できるかは明らかだ。だが……。
「そのためだけに妻になりたいと言ってるのか?」
「そういうわけではありません。初めてお会いした時から気になっていました」
デニス殿の屋敷に手紙を届けに走ってもらった時だな。たしかアルマよりも下だと思って頭を撫でたことがあった。
「それなら……カリンナやコリンナと同じく、いずれはということにする。すぐに手を出すとか、そういうことはないからな?」
「すぐに手を出されてもいいのですが」
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