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第十部:家族を持つこと
ワンコの家族
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俺は昨日会ったワンコを妻として迎え入れるため、公爵家の一番いい馬車で彼女の家に乗り付けることにした。俺の乗った馬車の後ろにもう一台幌馬車が続く。そっちはワンコの荷物を乗せるためのものだ。
最初の頃は尻が痛くなるから馬車はあまり好きじゃなかったけど、乗らないと言えば御者や馬番が仕事を失うことになると思って乗っていた。でも衝撃吸収クッションのおかげでかなりマシになった。あのクッションも商会で販売されている。
今では大臣として王宮に行く際に使うようになったし、俺が行かなくてもベラが出勤で使う。それにリュシエンヌが本屋に出かける時に使ってくれる。
それでこういう時に俺が迎えにいく必要があるのかという話だ。実はない。古い考えだけど、輿入れするからには妻の側が夫の家に行く。ベラがそうだった。だから本来はワンコに来させるのが正しいけど、今回俺の方から行くのには理由がある。公爵でありながら平民の娘を妻にするというのを見せるためだ。そういう意味で周囲に見せる場合には積極的に馬車を使う。
ワンコの家は表側が店で裏側が家になっているそうだ。王都の交差点の近くに店があるんだから、それなりに裕福で儲かってるんだろう。
俺が馬車から降りると、ワンコの父親らしい犬人の男性がガチガチに顔を強ばらせながらワンコと一緒に家から出てきた。
「こここれはこれは勇者様、ほほ本日はようこそおおおおいでくださヒまヒたァァァア」
「緊張しすぎだ」
「母がぁ中で待っていますのでぇどうぞこちらへぇ」
「お邪魔する」
ワンコは父親の腕を引っ張りながら俺を案内してくれた。
家の中では母親らしき犬人の女性がお茶の準備をしていた。
「シュウジくんはぁ、ここにどうぞぉ」
「ああ、ありがとう」
ワンコがお茶を出してくれた。
「父のヴィクトルとぉ、母のコラリーですぅ。兄のユーグはぁ店の方ですぅ」
「……」
「お、夫がこうなってしまいまして申し訳ありません。マルティーヌの母のコラリーです。公爵様、娘がお世話になっております」
コラリーさんが顔を引き攣らせながら挨拶する。ワンコが俺に向かって「シュウジくん」と声をかけたからだろう。事情は知ってるはずだけどなあ。ヴィクトルさんは固まったまま動かないので、コラリーさんが代わりに俺と話をしている。
「マルティーヌとは実は元の世界で知り合いだというのは聞いているだろうか」
「は、はい。昨日娘から聞きまして、口から心臓が飛び出すかと思いました。今も娘の話し方を見て、そうだろうとは思いましたが、あまりにも恐れ多いことで……」
貴族のトップだからな。いきなりタメで話しかけたら、知ってたとしても驚くだろう。自分の友人が超有名な俳優に「あ、元気?」と話しかけるようなものだ。横にいるこっちは「はあ⁉️」ってなるよな。
「話し方は気にしなくていい。俺の方からも説明させてもらうと、こちらに来る前、生まれ変わる前のマルティーヌとは親しくさせてもらっていた。向こうでは二人とも同い年で立場も同じ平民だった。昨日は本当にたまたまだったが、この店で休んでいる時に再会した形だ。それで今日は挨拶に伺った」
「娘のことでしたらどうぞお受け取りください。話を聞いた限りでは、娘については私たち以上にお詳しいかと思います。礼儀なども一通り教えていますので、お側においていただいても恥ずかしいことはしないと思っております」
「もちろん掌中の珠のように扱わせてもらう」
「よろしくお願いいたします」
「お願いしますぅ」
俺はコラリーさんとしばらく話すと、そのままワンコを連れて家の外に出た。
外に出ると雑役夫のコランとディオの二人がワンコの荷物を幌馬車に運び込む。思った以上に荷物は少なかったので、馬車は一台でもよかったかもしれない。でもそうすると馬車が窮屈になるか。インドの電車みたいになっても困るからな。
そろそろ馬車に乗り込もうかと思ったら店から若い犬人の男性が出てきた。あれがユーグさんだろうと思ったら、ワンコが小走りに彼のところに行って話しかけていた。挨拶でもしようかと思ったらワンコはすぐに戻ってきて、ユーグさんはこっちに頭を下げた。
「挨拶くらいしてもよかったんだけど、いいのか?」
「いいんですよぉ。そんなに遠くないんですからぁ」
「まあ戻ろうと思えばすぐだからな」
俺はワンコの手を取って馬車に乗せると公爵邸に戻ることにした。
◆◆◆
ワンコは馬車が動き出すとキョロキョロと見回し始めた。
「貴族様の馬車ってぇこんな感じだったんですねぇ」
「乗る機会はないよなあ」
「ないですねぇ」
正直に言えば、あまり乗り心地はよくない。ワンコが乗ってた軽の方がよっぽど乗り心地がいい。衝撃吸収クッションを敷いたからかなりマシになったけどな。それでも車に比べればガタガタと揺れる。
「ところでぇ私はペットですかぁ?」
「ペットがいいならペット扱いするけど、一応は第六か第七夫人だ。いや、順番がどうなるかは分からないか」
結婚式の際には第一夫人(正室)、第二夫人、第三夫人のように順番を決めないといけない。子供の相続の関係もあるからなあ。領地はないから爵位の問題だけのはずだけどな。
「あっという間にぃ七人目ですかぁ。お盛んなんですねぇ」
「そのあたりについては落ち着いてから説明する。俺はお盛んじゃなきゃダメなんだ」
「それならぁ昔みたいにぃこの中でしますぅ?」
「やめとけ。ただでさえ珍しいからジロジロと見られるぞ」
王都の真ん中だ。庶民街は人通りも多い。
「シュウジくん、もしかしてぇ大人しくなりましたぁ?」
「大人しくはなってないと思うけど、立場ってものがあるからなあ。いくらやりたい放題の俺でも、それくらいは考えるぞ」
勇者で公爵で大臣でもある俺が昼間っから平民の女を馬車に連れ込んでヤってたとか、勇者の評判がダダ下がりだ。そんなことがあった上で「私も馬車の中で抱いて」とかいう女が大量にやって来るようならこの国が心配だな。
この昔馴染みは最初の時からそうだったけど、鈍臭そうに見えてそっちは積極的だ。俺が初めて抱いた時、あの大雨の時だ、「ワンコはぁ四本足なんですよぉ」と言って四つん這いになって尻を向けた。そんなやつだ。イネス並みだ。
あり得る範囲でほとんど全てのことは経験済みだ。最初の頃はネジが何本か緩んでるのかと思ったけど、普段はそこまでじゃなく、そっち方面にだけ少しおかしいと分かったのはしばらくしてからだった。
それとさっきワンコが言った「昔みたいに」ってのは、ワンコが免許を取って車を買った直後だ。車を買ったらやりたいことがあるって言うから何かと思えば、車の中でヤることだった。まあ非現実的な行為だと言えばそうだろうなあ。駐車中の車が揺れてるのを見るだけでワクワクするのは間違いない。
まあ実際にやるとなると公然わいせつ罪になることくらいはちょっと調べれば分かった。ニュースで「駐車した車内で男女が語り合っていた」という婉曲的な表現が使われるけど、あれのことだ。
ちなみに外でするのは問題だと思ったから、うちのガレージを使った。ガレージの前に物干し台と物干し竿を移動させて軽く目隠しまでした。ワンコ的には物足りなかったみたいだけど、俺は別に外でするのにそこまで興味はないからな。
最初の頃は尻が痛くなるから馬車はあまり好きじゃなかったけど、乗らないと言えば御者や馬番が仕事を失うことになると思って乗っていた。でも衝撃吸収クッションのおかげでかなりマシになった。あのクッションも商会で販売されている。
今では大臣として王宮に行く際に使うようになったし、俺が行かなくてもベラが出勤で使う。それにリュシエンヌが本屋に出かける時に使ってくれる。
それでこういう時に俺が迎えにいく必要があるのかという話だ。実はない。古い考えだけど、輿入れするからには妻の側が夫の家に行く。ベラがそうだった。だから本来はワンコに来させるのが正しいけど、今回俺の方から行くのには理由がある。公爵でありながら平民の娘を妻にするというのを見せるためだ。そういう意味で周囲に見せる場合には積極的に馬車を使う。
ワンコの家は表側が店で裏側が家になっているそうだ。王都の交差点の近くに店があるんだから、それなりに裕福で儲かってるんだろう。
俺が馬車から降りると、ワンコの父親らしい犬人の男性がガチガチに顔を強ばらせながらワンコと一緒に家から出てきた。
「こここれはこれは勇者様、ほほ本日はようこそおおおおいでくださヒまヒたァァァア」
「緊張しすぎだ」
「母がぁ中で待っていますのでぇどうぞこちらへぇ」
「お邪魔する」
ワンコは父親の腕を引っ張りながら俺を案内してくれた。
家の中では母親らしき犬人の女性がお茶の準備をしていた。
「シュウジくんはぁ、ここにどうぞぉ」
「ああ、ありがとう」
ワンコがお茶を出してくれた。
「父のヴィクトルとぉ、母のコラリーですぅ。兄のユーグはぁ店の方ですぅ」
「……」
「お、夫がこうなってしまいまして申し訳ありません。マルティーヌの母のコラリーです。公爵様、娘がお世話になっております」
コラリーさんが顔を引き攣らせながら挨拶する。ワンコが俺に向かって「シュウジくん」と声をかけたからだろう。事情は知ってるはずだけどなあ。ヴィクトルさんは固まったまま動かないので、コラリーさんが代わりに俺と話をしている。
「マルティーヌとは実は元の世界で知り合いだというのは聞いているだろうか」
「は、はい。昨日娘から聞きまして、口から心臓が飛び出すかと思いました。今も娘の話し方を見て、そうだろうとは思いましたが、あまりにも恐れ多いことで……」
貴族のトップだからな。いきなりタメで話しかけたら、知ってたとしても驚くだろう。自分の友人が超有名な俳優に「あ、元気?」と話しかけるようなものだ。横にいるこっちは「はあ⁉️」ってなるよな。
「話し方は気にしなくていい。俺の方からも説明させてもらうと、こちらに来る前、生まれ変わる前のマルティーヌとは親しくさせてもらっていた。向こうでは二人とも同い年で立場も同じ平民だった。昨日は本当にたまたまだったが、この店で休んでいる時に再会した形だ。それで今日は挨拶に伺った」
「娘のことでしたらどうぞお受け取りください。話を聞いた限りでは、娘については私たち以上にお詳しいかと思います。礼儀なども一通り教えていますので、お側においていただいても恥ずかしいことはしないと思っております」
「もちろん掌中の珠のように扱わせてもらう」
「よろしくお願いいたします」
「お願いしますぅ」
俺はコラリーさんとしばらく話すと、そのままワンコを連れて家の外に出た。
外に出ると雑役夫のコランとディオの二人がワンコの荷物を幌馬車に運び込む。思った以上に荷物は少なかったので、馬車は一台でもよかったかもしれない。でもそうすると馬車が窮屈になるか。インドの電車みたいになっても困るからな。
そろそろ馬車に乗り込もうかと思ったら店から若い犬人の男性が出てきた。あれがユーグさんだろうと思ったら、ワンコが小走りに彼のところに行って話しかけていた。挨拶でもしようかと思ったらワンコはすぐに戻ってきて、ユーグさんはこっちに頭を下げた。
「挨拶くらいしてもよかったんだけど、いいのか?」
「いいんですよぉ。そんなに遠くないんですからぁ」
「まあ戻ろうと思えばすぐだからな」
俺はワンコの手を取って馬車に乗せると公爵邸に戻ることにした。
◆◆◆
ワンコは馬車が動き出すとキョロキョロと見回し始めた。
「貴族様の馬車ってぇこんな感じだったんですねぇ」
「乗る機会はないよなあ」
「ないですねぇ」
正直に言えば、あまり乗り心地はよくない。ワンコが乗ってた軽の方がよっぽど乗り心地がいい。衝撃吸収クッションを敷いたからかなりマシになったけどな。それでも車に比べればガタガタと揺れる。
「ところでぇ私はペットですかぁ?」
「ペットがいいならペット扱いするけど、一応は第六か第七夫人だ。いや、順番がどうなるかは分からないか」
結婚式の際には第一夫人(正室)、第二夫人、第三夫人のように順番を決めないといけない。子供の相続の関係もあるからなあ。領地はないから爵位の問題だけのはずだけどな。
「あっという間にぃ七人目ですかぁ。お盛んなんですねぇ」
「そのあたりについては落ち着いてから説明する。俺はお盛んじゃなきゃダメなんだ」
「それならぁ昔みたいにぃこの中でしますぅ?」
「やめとけ。ただでさえ珍しいからジロジロと見られるぞ」
王都の真ん中だ。庶民街は人通りも多い。
「シュウジくん、もしかしてぇ大人しくなりましたぁ?」
「大人しくはなってないと思うけど、立場ってものがあるからなあ。いくらやりたい放題の俺でも、それくらいは考えるぞ」
勇者で公爵で大臣でもある俺が昼間っから平民の女を馬車に連れ込んでヤってたとか、勇者の評判がダダ下がりだ。そんなことがあった上で「私も馬車の中で抱いて」とかいう女が大量にやって来るようならこの国が心配だな。
この昔馴染みは最初の時からそうだったけど、鈍臭そうに見えてそっちは積極的だ。俺が初めて抱いた時、あの大雨の時だ、「ワンコはぁ四本足なんですよぉ」と言って四つん這いになって尻を向けた。そんなやつだ。イネス並みだ。
あり得る範囲でほとんど全てのことは経験済みだ。最初の頃はネジが何本か緩んでるのかと思ったけど、普段はそこまでじゃなく、そっち方面にだけ少しおかしいと分かったのはしばらくしてからだった。
それとさっきワンコが言った「昔みたいに」ってのは、ワンコが免許を取って車を買った直後だ。車を買ったらやりたいことがあるって言うから何かと思えば、車の中でヤることだった。まあ非現実的な行為だと言えばそうだろうなあ。駐車中の車が揺れてるのを見るだけでワクワクするのは間違いない。
まあ実際にやるとなると公然わいせつ罪になることくらいはちょっと調べれば分かった。ニュースで「駐車した車内で男女が語り合っていた」という婉曲的な表現が使われるけど、あれのことだ。
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