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第十部:家族を持つこと
シュウジとワンコの今後
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「ビックリしたんですよぉ、あれを開けた時ぃ」
全然驚いてないような言い方でワンコが言った。
「その顔が見れなかったのが残念だ」
それは事実だ。俺はワンコが驚いた顔なんて見たことない。一度見てみたいよな。
俺はそろそろ自分の体がヤバいと感じると、箱を一つワンコに送った。そこには「俺にはもう不要だから好きに処分しろ」という内容の手紙と一緒に、これまでにもらった時計や指輪などのアクセサリー、そして引き出しておいた現金の大半をまとめて放り込んだ。
他の女に貰ったものを送りつけるって人としてどうかと思うけど、俺が持ってても意味がない。それなら売って金に換えてもいいし、それが嫌なら捨てればいい。金そのものに善悪はない。使い方の問題だ。
最後に面倒を見てくれたアイコは金だけはあった。生活能力はなかったけど商才はあった。迷惑代を渡すと言ったけどいらないと言われたから全部ワンコに渡すことにした。
「シュウジくんが着けていた時計だけ貰ってぇ、それ以外売ってぇお金に換えましたぁ。お金は寄付しましたよぉ」
「そうか」
「一人で生きていくのにぃ困らないくらいはぁ貰ってましたからぁ。あれからのことはぁあまり覚えてないですけどぉ」
結局ワンコはその後のことはあまり覚えてないそうだ。
「多分結婚もしなかったでしょうからねぇ」
「俺としては幸せな結婚をしてくれた方がよかったのにな」
「結婚自体にぃ興味がなかったですからぁ」
「お互いあの頃はそうだったなあ」
俺たちは社会に出る前から人並み以上に爛れた生活をしていた。それだけは分かる。でこぼこコンビだったけど、世の中からズレてるのは自分たちでもよく分かっていた。ズレたやつにはズレたやつが分かる。
「それでこっちに生まれ変わったか」
「はいぃ」
====================
【名前:マルティーヌ】
【種族:犬人】
====================
「マルチーズっぽくなったな。あだ名はマルか?」
「はいぃ。マルちゃんって呼ばれましたぁ。ポチじゃなくてぇまだよかったですけどねぇ」
ホントにマルだったか。マルちゃん。それなら猫人の友達に三つ編みのタマちゃんがいそうだ。
ワンコは初対面では少し人見知りをするけど、基本的には人懐っこい。社交的だけどほどほどだ。犬の中でもトイプーやチワワやポメラニアンじゃなくてマルチーズだ。あまり活動的じゃないからな。積極的なのはソッチ方面だけだ。
「それでぇシュウジくんのところにぃ転がり込んでもぉいいですかぁ?」
「お前はそれで問題ないのか?」
「はいぃ」
「仕事はどうするんだ? 屋敷から通うか?」
「いえぇ、辞めますぅ」
「いきなりだと店に迷惑がかかるだろ」
店にだって都合があるだろう。バイトがいきなり辞めるって言ったら困るぞ。結婚しても仕事は続けるそうだからな。女性が仕事を探しにくい世界だ。それなのに何があったのかって思われそうだ。
「大丈夫ですよぅ。あれはぁ私の家ですからぁ」
「家? さっきの店が?」
「はいぃ。恋人が来たからぁデートしてきますぅって言って出てきましたぁ」
「そうか」
こいつはそうだった。鈍臭そうに見えて微妙な搦手を使ってくる。レストランに毎日来て、オーナーやスタッフに顔を覚えられたくらいだ。俺がワンコと呼ぶからワンコちゃんと呼ばれて俺の彼女扱いされてたからな。いや、俺が脇が甘いだけか。
「親はビックリしてなかったか?」
「お父さんはぁカウンターの中でぇ膝をぶつけてましたぁ」
「これまで恋人がいるって言ったことはあったのか?」
「ないですよぉ。初めてですぅ」
その瞬間の父親の気持ちが分かるなあ。
「分かった。お前がいいなら俺は問題ない。いつ迎えに行ったらいい?」
「明日とかでもぉいいですかぁ? 大した準備もぉ必要ないですからぁ」
「ああ。明日の午前に迎えにいく。荷物はまとめておいてくれ」
「表が店でぇ、裏が家ですぅ。店の前に来てくださいぃ」
「ああ、一番立派な馬車で行くからな」
顔馴染みが現れたからだろうか、少々賑やかになる気がするな。
◆◆◆
家に帰ると妻たちに説明をする。それが終わったら使用人たちにも。部屋は来てから選ばせればいいか。
「昔の知り合いと会った。明日からここで暮らす」
「シュウジ様、それは恋人や妻としてということですか?」
「そういうことだ」
「私たちのお仲間が増えるのですね」
「おそらく気が合うと思うぞ。ノンビリしてるわりに夜は積極的だ。リュシエンヌに趣味が近いな」
エミリアとリュシエンヌは新しい仲間が来るのを楽しみにしているように感じた。いくら俺でも妻たちと合わないやつを連れてくるつもりはない。それはワンコでも同じだ。知り合った順番だと言えばそうかもしれないけど、もしワンコがエミリアと仲良くなれなさそうな性格なら、連れてくるんじゃなくて俺が会いにいく形にしただろう。
「そういやミレーヌは?」
普段彼女の本体は神域にいるけど、分身がこの屋敷にいる。でもその気配がない。
「はい。召喚を行うので戻られました。一時的に分身を回収するということです。何かあれば直接話しかけてほしいと仰っていました」
ベラが淡々と説明してくれる。分身は自分の力の一部を抽出したものだから、神として全力を出すなら分身は回収するそうだ。俺を召喚したときは試験の一部だったから、試験官たちの補助もあったそうだ。でも今後は自分の力だけでやっていくことになる。
「そうか、上手くいくといいな」
「もう女性しか担当しないと仰っていました」
「それはあれか、俺にヤキモチを焼かせないためか。でもそんなことができるんだな」
まああの時も勇者のみの召喚って限定できたんだし、性別で絞るとこもできなくはないか。まあ戻ってきたらその話も聞こう。
俺もいずれはそういう仕事をするんだろう。しばらくは地上でノンビリすればいいらしいけど、今後に備えて話だけでも聞いておきたいからな。
全然驚いてないような言い方でワンコが言った。
「その顔が見れなかったのが残念だ」
それは事実だ。俺はワンコが驚いた顔なんて見たことない。一度見てみたいよな。
俺はそろそろ自分の体がヤバいと感じると、箱を一つワンコに送った。そこには「俺にはもう不要だから好きに処分しろ」という内容の手紙と一緒に、これまでにもらった時計や指輪などのアクセサリー、そして引き出しておいた現金の大半をまとめて放り込んだ。
他の女に貰ったものを送りつけるって人としてどうかと思うけど、俺が持ってても意味がない。それなら売って金に換えてもいいし、それが嫌なら捨てればいい。金そのものに善悪はない。使い方の問題だ。
最後に面倒を見てくれたアイコは金だけはあった。生活能力はなかったけど商才はあった。迷惑代を渡すと言ったけどいらないと言われたから全部ワンコに渡すことにした。
「シュウジくんが着けていた時計だけ貰ってぇ、それ以外売ってぇお金に換えましたぁ。お金は寄付しましたよぉ」
「そうか」
「一人で生きていくのにぃ困らないくらいはぁ貰ってましたからぁ。あれからのことはぁあまり覚えてないですけどぉ」
結局ワンコはその後のことはあまり覚えてないそうだ。
「多分結婚もしなかったでしょうからねぇ」
「俺としては幸せな結婚をしてくれた方がよかったのにな」
「結婚自体にぃ興味がなかったですからぁ」
「お互いあの頃はそうだったなあ」
俺たちは社会に出る前から人並み以上に爛れた生活をしていた。それだけは分かる。でこぼこコンビだったけど、世の中からズレてるのは自分たちでもよく分かっていた。ズレたやつにはズレたやつが分かる。
「それでこっちに生まれ変わったか」
「はいぃ」
====================
【名前:マルティーヌ】
【種族:犬人】
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「マルチーズっぽくなったな。あだ名はマルか?」
「はいぃ。マルちゃんって呼ばれましたぁ。ポチじゃなくてぇまだよかったですけどねぇ」
ホントにマルだったか。マルちゃん。それなら猫人の友達に三つ編みのタマちゃんがいそうだ。
ワンコは初対面では少し人見知りをするけど、基本的には人懐っこい。社交的だけどほどほどだ。犬の中でもトイプーやチワワやポメラニアンじゃなくてマルチーズだ。あまり活動的じゃないからな。積極的なのはソッチ方面だけだ。
「それでぇシュウジくんのところにぃ転がり込んでもぉいいですかぁ?」
「お前はそれで問題ないのか?」
「はいぃ」
「仕事はどうするんだ? 屋敷から通うか?」
「いえぇ、辞めますぅ」
「いきなりだと店に迷惑がかかるだろ」
店にだって都合があるだろう。バイトがいきなり辞めるって言ったら困るぞ。結婚しても仕事は続けるそうだからな。女性が仕事を探しにくい世界だ。それなのに何があったのかって思われそうだ。
「大丈夫ですよぅ。あれはぁ私の家ですからぁ」
「家? さっきの店が?」
「はいぃ。恋人が来たからぁデートしてきますぅって言って出てきましたぁ」
「そうか」
こいつはそうだった。鈍臭そうに見えて微妙な搦手を使ってくる。レストランに毎日来て、オーナーやスタッフに顔を覚えられたくらいだ。俺がワンコと呼ぶからワンコちゃんと呼ばれて俺の彼女扱いされてたからな。いや、俺が脇が甘いだけか。
「親はビックリしてなかったか?」
「お父さんはぁカウンターの中でぇ膝をぶつけてましたぁ」
「これまで恋人がいるって言ったことはあったのか?」
「ないですよぉ。初めてですぅ」
その瞬間の父親の気持ちが分かるなあ。
「分かった。お前がいいなら俺は問題ない。いつ迎えに行ったらいい?」
「明日とかでもぉいいですかぁ? 大した準備もぉ必要ないですからぁ」
「ああ。明日の午前に迎えにいく。荷物はまとめておいてくれ」
「表が店でぇ、裏が家ですぅ。店の前に来てくださいぃ」
「ああ、一番立派な馬車で行くからな」
顔馴染みが現れたからだろうか、少々賑やかになる気がするな。
◆◆◆
家に帰ると妻たちに説明をする。それが終わったら使用人たちにも。部屋は来てから選ばせればいいか。
「昔の知り合いと会った。明日からここで暮らす」
「シュウジ様、それは恋人や妻としてということですか?」
「そういうことだ」
「私たちのお仲間が増えるのですね」
「おそらく気が合うと思うぞ。ノンビリしてるわりに夜は積極的だ。リュシエンヌに趣味が近いな」
エミリアとリュシエンヌは新しい仲間が来るのを楽しみにしているように感じた。いくら俺でも妻たちと合わないやつを連れてくるつもりはない。それはワンコでも同じだ。知り合った順番だと言えばそうかもしれないけど、もしワンコがエミリアと仲良くなれなさそうな性格なら、連れてくるんじゃなくて俺が会いにいく形にしただろう。
「そういやミレーヌは?」
普段彼女の本体は神域にいるけど、分身がこの屋敷にいる。でもその気配がない。
「はい。召喚を行うので戻られました。一時的に分身を回収するということです。何かあれば直接話しかけてほしいと仰っていました」
ベラが淡々と説明してくれる。分身は自分の力の一部を抽出したものだから、神として全力を出すなら分身は回収するそうだ。俺を召喚したときは試験の一部だったから、試験官たちの補助もあったそうだ。でも今後は自分の力だけでやっていくことになる。
「そうか、上手くいくといいな」
「もう女性しか担当しないと仰っていました」
「それはあれか、俺にヤキモチを焼かせないためか。でもそんなことができるんだな」
まああの時も勇者のみの召喚って限定できたんだし、性別で絞るとこもできなくはないか。まあ戻ってきたらその話も聞こう。
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