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第二部:勇者と呼ばれて
貴族と平民の結婚の話
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謁見が終わって広間を出ると、さっきとは別の役人が俺たちを待っていた。
「勇者様、陛下と宰相閣下から個人的に話があるそうです。貴賓室でお待ち頂けますか?」
「分かった。案内を頼む」
「エミリア殿は一度お戻りください」
「はい。ではシュウジ様、私は先に戻らせて頂きます」
エミリアはそう言って頭を下げると迎賓館に戻り、俺だけが貴賓室に案内さキンキラキンた。
貴賓室は名前から想像できたけど、まあ豪華だ。よくある言い方だけどキラキラだ。コーヒーを飲みつつしばらく待つと、アドニス王と、さっき国王の近くにいた年配の男が入ってきた。
「勇者様、こちらは宰相のルブラン侯爵になります」
「宰相をしておりますギャエル・バシュレ・ルブラン侯爵と申します。お見知りおきください」
宰相だったか。国王の近くにいるならそうだろうなあとは思った。
「こちらこそよろしく頼む。だがアドニス王、一つ頼みがあるのだが」
「はっ。何でございましょうか?」
「面と向かって勇者様と呼ぶのは、できればやめてほしい。せめてシュウジ殿で頼む」
「お気に召しませんでしたか」
「いや、気に召すとか召さないとかではなく、馴染みがなくてな」
俺は自分が国王や貴族のいない国の生まれなので、あまり畏まられると身構えてしまうと伝えた。それに爵位を貰うという話が本当なら、貴族が国王より上というのは違和感を感じると。
「アドニス王は俺の親世代ほど上でもないだろう。できれば少し年上の友人で、この世界で頼れる相談役あたりになってくれれば嬉しいと思っている。俺の方からはアドニス殿と呼ばせてもらいたい」
「いきなり勇者様の友人というのは恐れ多いですが、分かりました、できる限り畏まらないように努めましょう。では今後はシュウジ殿と呼ばせていただきます」
「それくらいで頼む」
あまりにも恭しくされるのは落ち着かないという俺からの頼みをアドニス王が受け入れてくれた形だ。
「それでは我々はシュウジ様とお呼びいたします」
「そちらの方がまだ気が楽だ。それで頼む」
宰相たちには勇者様ではなくシュウジ様と名前で呼んでもらうことになった。あまり勇者勇者と呼ばれると疲れるからだ。それに調子に乗って何かやらかしそうだからな。
さすがに全ての国民に対して勇者と呼ぶなと言うつもりはない。せめて国王や貴族からだけでも普通に爵位で呼ばれる方が少しは気が楽になると思っただけだ。
それから俺はこの際聞いておきたいことをまとめて聞くことにした。一番は貴族と平民の結婚についてだ。
「アドニス殿、この国では貴族は平民の妻を娶ることができないと聞いたのだが、それは本当か?」
「それを言ったのは……おそらく今の段階では一人しかいないでしょうが、エミリアですか?」
「そうだ。彼女にはよくしてもらった。たった一日しか一緒にいなかったのにおかしく聞こえるかもしれないが、俺をこの国に招いてくれた恩人だ。いずれ彼女を娶りたいと思っている」
ここはストレートに言っておくべきだろう。ダメならダメで次の手を考えればいい。
「なるほど、それでしたら問題はありません」
「大丈夫なのか?」
思った以上にあっさりしていた。エミリアがあんなに泣いたのは何だったんだ?
「はい。実は決まりがあるわけではないのです。貴族は金がかかるので貴族しか娶らないようになってしまっただけです」
俺が理解できずに首を傾げると、さらに説明をしてくれた。
「屋敷や馬車の維持、馬の世話、使用人の雇用、屋敷で行うパーティー、パーティーに呼ばれた際の手土産。王都と領地の移動。貴族として恥ずかしくない生活をしようとすると、とにかく金がかかるのです。そのため結婚の際には妻の実家から持参金を受け取るのが一般的です」
「そうか、平民ではそれが期待できないということか」
並以下の生活をしていた俺に持参金とか言われてもピンと来ないけど、日本でも結納とかあったか。あれは男側が渡すんだったか?
「はい。そのため正室であれ側室であれ愛妾であれ、ほぼ貴族出身です。裕福な平民の娘を娶る者もいることはいます」
「そうか。ゼロではないと」
「何人かは。ルブラン侯爵、名前を挙げられるか?」
「そうですね。男爵あたりなら裕福な商家の娘を娶ることはございます。上級貴族では珍しいですが……ピトル伯爵の正室は商家の出身です。彼には妻はその一人しかおりません」
決まりがあるわけじゃないけど、平民の女を妻にしても何のメリットもないと。女の側としても肩身が狭くなるだろうな。
「その名前は聞いた。前回の召喚で来た人だったか」
「はい。彼が社交の場に妻を同伴させることは滅多にありません。今回も一人のはずです。平民出身の妻を同行させてはいけないという決まりもございません」
ルブラン侯爵は俺の歓迎パーティーを取り仕切っているそうだ。
「それならアドニス殿、とりあえずエミリアを妻にするのに問題はないと」
「はい、問題ありません。それに先ほどの謁見の際におっしゃられた『人は平等』という考えをお持ちなら、文句を言う者はいないでしょう」
「それなら安心だ。だがあの発言は問題なかったか? 封建制の全否定と受け取られかねないと、言った後で気づいたんだが」
「あれくらいでしたら問題ありません。こちらに来ていただいたわけです。異世界には様々な思想を持った人がいることは誰でも分かっております。ピトル伯爵も同じようなことを口にしています」
「それならよかった」
先ほどの福沢諭吉の言葉をちょっとだけ変えたアレのことだ。国王に向かって言うべき言葉じゃなかったかもしれないと思って、後になって汗が噴き出た。
そしてエミリアのことも問題ないそうだけど、それはすぐじゃない。ミレーヌの試験の合否がどれくらいで出るか次第だ。普通なら五年はかからないらしい。とりあえずこの国で暮らすことは決めているし、まあゆっくりとな。
「勇者様、陛下と宰相閣下から個人的に話があるそうです。貴賓室でお待ち頂けますか?」
「分かった。案内を頼む」
「エミリア殿は一度お戻りください」
「はい。ではシュウジ様、私は先に戻らせて頂きます」
エミリアはそう言って頭を下げると迎賓館に戻り、俺だけが貴賓室に案内さキンキラキンた。
貴賓室は名前から想像できたけど、まあ豪華だ。よくある言い方だけどキラキラだ。コーヒーを飲みつつしばらく待つと、アドニス王と、さっき国王の近くにいた年配の男が入ってきた。
「勇者様、こちらは宰相のルブラン侯爵になります」
「宰相をしておりますギャエル・バシュレ・ルブラン侯爵と申します。お見知りおきください」
宰相だったか。国王の近くにいるならそうだろうなあとは思った。
「こちらこそよろしく頼む。だがアドニス王、一つ頼みがあるのだが」
「はっ。何でございましょうか?」
「面と向かって勇者様と呼ぶのは、できればやめてほしい。せめてシュウジ殿で頼む」
「お気に召しませんでしたか」
「いや、気に召すとか召さないとかではなく、馴染みがなくてな」
俺は自分が国王や貴族のいない国の生まれなので、あまり畏まられると身構えてしまうと伝えた。それに爵位を貰うという話が本当なら、貴族が国王より上というのは違和感を感じると。
「アドニス王は俺の親世代ほど上でもないだろう。できれば少し年上の友人で、この世界で頼れる相談役あたりになってくれれば嬉しいと思っている。俺の方からはアドニス殿と呼ばせてもらいたい」
「いきなり勇者様の友人というのは恐れ多いですが、分かりました、できる限り畏まらないように努めましょう。では今後はシュウジ殿と呼ばせていただきます」
「それくらいで頼む」
あまりにも恭しくされるのは落ち着かないという俺からの頼みをアドニス王が受け入れてくれた形だ。
「それでは我々はシュウジ様とお呼びいたします」
「そちらの方がまだ気が楽だ。それで頼む」
宰相たちには勇者様ではなくシュウジ様と名前で呼んでもらうことになった。あまり勇者勇者と呼ばれると疲れるからだ。それに調子に乗って何かやらかしそうだからな。
さすがに全ての国民に対して勇者と呼ぶなと言うつもりはない。せめて国王や貴族からだけでも普通に爵位で呼ばれる方が少しは気が楽になると思っただけだ。
それから俺はこの際聞いておきたいことをまとめて聞くことにした。一番は貴族と平民の結婚についてだ。
「アドニス殿、この国では貴族は平民の妻を娶ることができないと聞いたのだが、それは本当か?」
「それを言ったのは……おそらく今の段階では一人しかいないでしょうが、エミリアですか?」
「そうだ。彼女にはよくしてもらった。たった一日しか一緒にいなかったのにおかしく聞こえるかもしれないが、俺をこの国に招いてくれた恩人だ。いずれ彼女を娶りたいと思っている」
ここはストレートに言っておくべきだろう。ダメならダメで次の手を考えればいい。
「なるほど、それでしたら問題はありません」
「大丈夫なのか?」
思った以上にあっさりしていた。エミリアがあんなに泣いたのは何だったんだ?
「はい。実は決まりがあるわけではないのです。貴族は金がかかるので貴族しか娶らないようになってしまっただけです」
俺が理解できずに首を傾げると、さらに説明をしてくれた。
「屋敷や馬車の維持、馬の世話、使用人の雇用、屋敷で行うパーティー、パーティーに呼ばれた際の手土産。王都と領地の移動。貴族として恥ずかしくない生活をしようとすると、とにかく金がかかるのです。そのため結婚の際には妻の実家から持参金を受け取るのが一般的です」
「そうか、平民ではそれが期待できないということか」
並以下の生活をしていた俺に持参金とか言われてもピンと来ないけど、日本でも結納とかあったか。あれは男側が渡すんだったか?
「はい。そのため正室であれ側室であれ愛妾であれ、ほぼ貴族出身です。裕福な平民の娘を娶る者もいることはいます」
「そうか。ゼロではないと」
「何人かは。ルブラン侯爵、名前を挙げられるか?」
「そうですね。男爵あたりなら裕福な商家の娘を娶ることはございます。上級貴族では珍しいですが……ピトル伯爵の正室は商家の出身です。彼には妻はその一人しかおりません」
決まりがあるわけじゃないけど、平民の女を妻にしても何のメリットもないと。女の側としても肩身が狭くなるだろうな。
「その名前は聞いた。前回の召喚で来た人だったか」
「はい。彼が社交の場に妻を同伴させることは滅多にありません。今回も一人のはずです。平民出身の妻を同行させてはいけないという決まりもございません」
ルブラン侯爵は俺の歓迎パーティーを取り仕切っているそうだ。
「それならアドニス殿、とりあえずエミリアを妻にするのに問題はないと」
「はい、問題ありません。それに先ほどの謁見の際におっしゃられた『人は平等』という考えをお持ちなら、文句を言う者はいないでしょう」
「それなら安心だ。だがあの発言は問題なかったか? 封建制の全否定と受け取られかねないと、言った後で気づいたんだが」
「あれくらいでしたら問題ありません。こちらに来ていただいたわけです。異世界には様々な思想を持った人がいることは誰でも分かっております。ピトル伯爵も同じようなことを口にしています」
「それならよかった」
先ほどの福沢諭吉の言葉をちょっとだけ変えたアレのことだ。国王に向かって言うべき言葉じゃなかったかもしれないと思って、後になって汗が噴き出た。
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