元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第五部:勉強と試験

家庭教師と勉強(世界編)

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 貴族としての振るまいの話が終わり、次は地理と社会の勉強になった。
「この国のある大陸の形はこのような形になっております」
「寛永通宝みたいだな」
「その言い方は初めて聞きました。ボタンのようだと仰る方が多うございます」
「そっちのが一般的か」
 少し横長になった丸い大陸の中央に四つの山。四つの頂上を線で結ぶと寛永通宝みたいな形に見えた。
「北にあるのがこのフレージュ王国で、王都はシャンメリエ。東にあるのがカロシュ王国で、王都はシャヴァール。南がクロド王国で、王都はパレイシア。西がテシェル王国で、王都はシント=グランデとなります」
「中央には何もないのか?」
「多くの都市国家が存在します。商業が中心で、冒険者も多いようですね」
 山と山の間はちょっとした丘くらいの高さしかないようで、国と国との間に移動は難しくないそうだ。むしろ交易は活発。中央には商業を中心とした都市国家群。
「それでやっていけるんだな」
「この四つの山の麓にはたくさんダンジョンの入り口があるからでございます。
 それぞれの山の麓にはいくつものダンジョンがあり、その中には多くの魔物がいるそうだ。そしてたまに暴走スタンピードを起こして外に飛び出してくることがある。
 魔物は弱いものが多いそうだけど、それでも何千も何万も町に向かってくればさすがに驚異だ。それを軍と冒険者が協力して駆除すると。
 魔物は解体されて様々な素材になる。ゲームとは違ってドロップアイテムに変わることはないらしい。その代わりに毛皮、肉、脂肪、骨、血液、魔石など、様々な素材が資源として活用されるそうだ。
 魔物の種類によっても違うけど、毛皮は防寒具、肉は食料になるのは分かりやすい。脂肪は料理に使われるだけじゃなく、蝋燭や石けんの原料にもなる。骨は加工されて武器や防具、他にも様々な道具になり、破片は肥料になる。一部の魔物の血液は薬の原料もになる。魔石は魔道具のバッテリーになる他、術者のバッテリーにもなる。こう考えると魔物には捨てる部分はない。クジラみたいだな。
「シュウジ様がダンジョンに入られるかどうかは分かりませんが、入る際にはしっかりと準備をなさってください。奥深くまで入れば戻るのにも同じだけ時間がかかります」
「簡単に帰る方法とかないのか?」
「聞いた限りではありません。帰りに魔力が尽きれば大変なことになります」
「まあ食われるだろうな」
 生きたままガブッと食われるとか、寒気がするわ。
「魔物は女性の体を苗床にして子供を産ませるそうです」
「……マジか?」
「特にオークはエルフに産ませることを好むという記述を読んだことがあります」
「オークとエルフなあ……。情報源はどこだ?」
「ええと、このページでございます」
「このページって……」
 だからエロ漫画じゃねえか。こんなもんをソースにするなよ。
「信憑性はどれくらいだ?」
「さあ? ですがこの臨場感は事実だとしか思えません」
 臨場感ね……。ファンタジーもののエロ漫画。どっかに日本人がいないか?
「臨場感はあるかもしれないけど、あまりエロ本を当てにしない方がいいと思うぞ」
「ですが試しもせずに当てにならないと決めつけるのもいかがでしょうか?」
「いかがでしょうかと言われてもなあ……」
 リュシエンヌは俺の顔をじっと見る。その目の奥に見えるのは……。

 ◆◆◆

「もうこんなことはしないぞ。いいな?」
「……はい。身の毛がよだちました。本当にあのようなことがあれば舌を噛み切ります。もう二度とあのようなことは申しません」
 体を震わせたリュシエンヌは俺に抱きついたままだ。だから彼女を膝の上に乗せて抱きしめる。よっぽど怖かったんだろう。
 写真があるということは魔物の写真もあるわけで、俺はそれを元にオークになった。そしてリュシエンヌはエルフの少女姿。【幻覚】で周りを洞窟のように思わせ、【変装】変装でそれぞれの姿を変え、そして【結界】で音が漏れないようにした。
 そしてオークの姿をした俺は、エルフの姿をしたリュシエンヌを襲う真似をした。あくまで真似だ。
 怪我をしないようにマットを敷いた上にリュシエンヌを引きずり倒し、覆い被さって顔の前で大きく口を開けただけ。でも演技がリアルすぎたらしい。目を見開いて大口を開けた顔を見て「あ、やりすぎた」と思った瞬間にギャン泣きされてしまった。それから一〇分ほどが経ってようやく落ち着いたところだった。
 リュシエンヌはこれまで魔物に襲われるシチュエーションをエロい感じで想像していた。でもエロ漫画のように魔物に服を剥ぎ取られ、快楽でアヘ顔ってのがあり得ないと理解できた。
 俺は魔物が性的な意味で人間を襲うってのはないと思っている。人間が牛や豚を見てヤりたいと思うかどうかと同じなんじゃないかと。そりゃ一部にはそういう性的倒錯の趣味を持ったヤツもいるだろうけど、大半はノーサンキューなはずだ。魔物から見れば人間なんて所詮はエサに違いない。
「……まだ震えが止まりません」
「怖い思いをさせて悪かった。ほら、もっとくっつけ」
 リュシエンヌは俺の首に両腕を回してしがみついている。それ以上くっつくということは顔を近づけるしかないわけだ。当然のように唇と唇が重なる。震えが収まるまでそばらくそうしていた。
「……少し気分が楽になってまいりました」
「他にしてほしいことがあれば何でも言ってくれ」
 できるだけ優しく声をかける。
「では、今からこの体を優しく愛していただけますか?」
 その願いを聞き入れないヤツなんていないだろう。俺がリュシエンヌを抱き上げるとベッドへと向かった。
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