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第三部:勇者デビュー
日報紙という名の新聞
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昨日エミリアから使用人のことを聞いたので、ルブラン侯爵に念のために確認に行くことにした。さすがに使用人がゼロではないと思いたい。
案内されたのは王宮のそれなりに奥の方にある部屋。ここが宰相としての執務室なんだろう。
「ルブラン侯爵、ラヴァル公爵をお連れしました」
「ご苦労。シュウジ様、今日は何用で?」
ルブラン侯爵は書類仕事の手を止めて俺の相手をしてくれることになった。
「忙しいところを申し訳ない。一つは確認、一つは連絡だ」
「まずは確認から伺いましょうか」
「屋敷の使用人のことだ。屋敷を用意してもらえると聞いたが、使用人はいるのか、それともこちらで雇えばいいのかということでな」
「ああ、それは言っておりませんでしたね。こちらで用意しますと言いたいところですが、そこまで人数が揃っておりません。今のところ二〇人少々です。この王宮にいる者を中心にして、そこに余所から集めた者を加えました。今は屋敷の掃除などを兵士たちと一緒に行わせています」
俺が雇うことになる使用人たちは、家具を入れる前に屋敷の中の大掃除をしているそうだ。庭は草が伸びたり木が生えたり、それなりに荒れているらしいので、兵士たちが敷地の片付けをしているらしい。そろそろ家具などの生活な必要なものが入るので、それまで待ってほしいと。
「それでもいるなら安心だ。まあ俺も料理くらいはできるが、一人では限度があるからな」
「ですが足りなくなることは間違いございません。追加を探したいところですが、誰でもいいというわけにもいきませんので」
「やはり適当に探すとかは無理なのか?」
「毎日屋敷のどこかから何かがなくなってもよろしいのでしたら人数だけは揃えられますが。それに仕事が全くできないようでは、どれだけ人数がいても困りましょう」
「そうだな。安全重視で頼む」
「はい。できる限り早めに探しますので、しばらくお待ちください」
ついでに召喚陣のことを説明しておくか。
「ついでに召喚陣のことで少し説明をしてもいいか?」
「そういえば、女神様が降臨なさったと伺っています」
「ああ、たまに分身……ではなくて化身が様子を見に来てくれるらしい。それで召喚陣だが、魔力量よりも質を重視した方がいいそうだ」
「魔力の質ですか?」
「そうだ。できるだけ得意な属性が同じ者を使った方がいいそうだ」
俺はミレーヌが言っていたように、できる限り属性を統一することが望ましい、そして最後の儀式は必ずしも【聖女】でなくても構わないと伝えた。
「そ、そのような内容は初めて伺いました。まさかそのようなことになっているとは……」
侯爵は絶句している。まあこれまで続けていたことが全然違うとは言わないけど、かなり間違った部分があると聞けばそうなるだろう。しかも言っているのが俺でミレーヌもいるから間違った情報であるはずがない。
これまでは宮廷魔術師のように魔力量の多い術者が魔力五年がかりで込めていた。でもそれでは様々な属性の魔力が入ってしまい、魔力が濁るそうだ。濁ると神域に間違って伝わってしまう。そうすると望んでいたのと違う人が来てしまうことにもなる。
それよりも、例え魔力量が少なくてもできる限り属性を統一する方が実は効率もあがり、さらに召喚の儀式も【聖女】でなくても構わないことを伝えた。
「あの召喚陣は【勇者】だけを召喚するものではないそうだ。だから召。願いを伝えるためにはできる限り澄んだ魔力が望ましいということだ。だから最後も必ずしも【聖女】でなくてもいいそうだ。確率的に三パーセントから五パーセントほど確率が上がる。それも魔力が澄んでいればそれほど影響はないそうだ」
「わ、分かりました。【聖女】を使うかどうかはともかく、属性については統一させるように指示をします。ご教授頂きありがとうございました」
「いやいや、これもこっちへ来た俺の仕事の一つだろう。今後はもっと確率が上がるといいな。術者たちの心労が減るだろう」
俺は恐縮しきりで頭を下げ続ける侯爵に声をかけると、彼の執務室を出た。
◆◆◆
「だそうだ」
迎賓館に戻ってエミリアに報告する。ミレーヌは今は神界に戻っているらしい。
「二〇人少々ですか。私もできることがあるなら何か仕事をしたいと思うのですが」
「もう向こうにいる使用人たちに聞いてみて、いいと言えばいいけど、ダメと言われたらやめた方がいいだろうな」
「そうですか……」
エミリア本人がどう思おうと、俺が妻にすると言えば、使用人たちはエミリアを公爵の妻として扱う。貴族についての知識が乏しい俺でもそれがダメなくらいは分かる。エミリアが玄関掃除を始めたら掃除のメイドが泡を吹きそうだ。できれば身分の上下なんか気にしなくていい生活の方が楽だけどな。
少し考えていたエミリアは、思い出したかのように俺の方を向いた。
「あ、そうそう、日報紙が届きました」
「日報紙?」
日報って仕事の連絡や引き継ぎに使うやつだよな。うちの店でも後ろに置いていた。
「はい、昨日の謁見の特集だそうです」
エミリアから日報紙というものを手渡される。新聞か? 小さい方の新聞の……タブロイド判だったか、あれと同じくらいだ。横書きだからこっちが表か……。
『勇者シュウジ様と感動の対面を果たして涙する国王陛下。勇者様は跪く陛下に優しくお声をかけられ、陛下の手をお取りになった。勇者様が陛下をお立たせになった瞬間、謁見の間は万雷の拍手に包まれた』
仕事が早いな。日報紙って新聞のことか。その日にあったことを報じる紙か。
五枚を重ねで二つ折りだから二〇ページ。そのほぼ全てが俺のことだ。アドニス王が俺に向かって跪いた瞬間、俺が膝をついてアドニス王の手を取った瞬間、立ち上がらせて二人で握手をした瞬間などの写真も載っている。
俺の発言も書かれているから、誰か速記ができる役人でもいたのか、それともそういう魔法や魔道具を使ったのか。写真があるくらいだから録音もできそうだよな。【カメラ】は勇者用のスキルらしいけど、一般向けにも色々とありそうだ。
それにしても「お取りになった」とか「お立たせになった」って、皇族の活動記録か? 国王よりも上だからそうなるのかもしれないけど。
「日報紙って普通にあるのか?」
「はい、あります。この日報紙は王立日報紙印刷所のものです」
「それなら王立じゃない、民間のものもあるのか?」
「民間でも五つほど印刷所があって、街角で販売されています」
新聞そのものだな。
「配達とかはあるのか?」
「配達とは、屋敷への配達ですか?」
「いや、庶民の家への配達だ」
「それはないと思います。貴族様のお屋敷へは直接届けてもらうこともできると思いますが、普通は買いに行きます」
日本の新聞のように配達をするのは珍しいとは聞いたけど、ここでもないのか。
「まあないならないで問題ない」
そこまでして読みたいわけじゃない。社会情勢を知るにはいいだろうけど、自分の行動を再確認してもなあ。
案内されたのは王宮のそれなりに奥の方にある部屋。ここが宰相としての執務室なんだろう。
「ルブラン侯爵、ラヴァル公爵をお連れしました」
「ご苦労。シュウジ様、今日は何用で?」
ルブラン侯爵は書類仕事の手を止めて俺の相手をしてくれることになった。
「忙しいところを申し訳ない。一つは確認、一つは連絡だ」
「まずは確認から伺いましょうか」
「屋敷の使用人のことだ。屋敷を用意してもらえると聞いたが、使用人はいるのか、それともこちらで雇えばいいのかということでな」
「ああ、それは言っておりませんでしたね。こちらで用意しますと言いたいところですが、そこまで人数が揃っておりません。今のところ二〇人少々です。この王宮にいる者を中心にして、そこに余所から集めた者を加えました。今は屋敷の掃除などを兵士たちと一緒に行わせています」
俺が雇うことになる使用人たちは、家具を入れる前に屋敷の中の大掃除をしているそうだ。庭は草が伸びたり木が生えたり、それなりに荒れているらしいので、兵士たちが敷地の片付けをしているらしい。そろそろ家具などの生活な必要なものが入るので、それまで待ってほしいと。
「それでもいるなら安心だ。まあ俺も料理くらいはできるが、一人では限度があるからな」
「ですが足りなくなることは間違いございません。追加を探したいところですが、誰でもいいというわけにもいきませんので」
「やはり適当に探すとかは無理なのか?」
「毎日屋敷のどこかから何かがなくなってもよろしいのでしたら人数だけは揃えられますが。それに仕事が全くできないようでは、どれだけ人数がいても困りましょう」
「そうだな。安全重視で頼む」
「はい。できる限り早めに探しますので、しばらくお待ちください」
ついでに召喚陣のことを説明しておくか。
「ついでに召喚陣のことで少し説明をしてもいいか?」
「そういえば、女神様が降臨なさったと伺っています」
「ああ、たまに分身……ではなくて化身が様子を見に来てくれるらしい。それで召喚陣だが、魔力量よりも質を重視した方がいいそうだ」
「魔力の質ですか?」
「そうだ。できるだけ得意な属性が同じ者を使った方がいいそうだ」
俺はミレーヌが言っていたように、できる限り属性を統一することが望ましい、そして最後の儀式は必ずしも【聖女】でなくても構わないと伝えた。
「そ、そのような内容は初めて伺いました。まさかそのようなことになっているとは……」
侯爵は絶句している。まあこれまで続けていたことが全然違うとは言わないけど、かなり間違った部分があると聞けばそうなるだろう。しかも言っているのが俺でミレーヌもいるから間違った情報であるはずがない。
これまでは宮廷魔術師のように魔力量の多い術者が魔力五年がかりで込めていた。でもそれでは様々な属性の魔力が入ってしまい、魔力が濁るそうだ。濁ると神域に間違って伝わってしまう。そうすると望んでいたのと違う人が来てしまうことにもなる。
それよりも、例え魔力量が少なくてもできる限り属性を統一する方が実は効率もあがり、さらに召喚の儀式も【聖女】でなくても構わないことを伝えた。
「あの召喚陣は【勇者】だけを召喚するものではないそうだ。だから召。願いを伝えるためにはできる限り澄んだ魔力が望ましいということだ。だから最後も必ずしも【聖女】でなくてもいいそうだ。確率的に三パーセントから五パーセントほど確率が上がる。それも魔力が澄んでいればそれほど影響はないそうだ」
「わ、分かりました。【聖女】を使うかどうかはともかく、属性については統一させるように指示をします。ご教授頂きありがとうございました」
「いやいや、これもこっちへ来た俺の仕事の一つだろう。今後はもっと確率が上がるといいな。術者たちの心労が減るだろう」
俺は恐縮しきりで頭を下げ続ける侯爵に声をかけると、彼の執務室を出た。
◆◆◆
「だそうだ」
迎賓館に戻ってエミリアに報告する。ミレーヌは今は神界に戻っているらしい。
「二〇人少々ですか。私もできることがあるなら何か仕事をしたいと思うのですが」
「もう向こうにいる使用人たちに聞いてみて、いいと言えばいいけど、ダメと言われたらやめた方がいいだろうな」
「そうですか……」
エミリア本人がどう思おうと、俺が妻にすると言えば、使用人たちはエミリアを公爵の妻として扱う。貴族についての知識が乏しい俺でもそれがダメなくらいは分かる。エミリアが玄関掃除を始めたら掃除のメイドが泡を吹きそうだ。できれば身分の上下なんか気にしなくていい生活の方が楽だけどな。
少し考えていたエミリアは、思い出したかのように俺の方を向いた。
「あ、そうそう、日報紙が届きました」
「日報紙?」
日報って仕事の連絡や引き継ぎに使うやつだよな。うちの店でも後ろに置いていた。
「はい、昨日の謁見の特集だそうです」
エミリアから日報紙というものを手渡される。新聞か? 小さい方の新聞の……タブロイド判だったか、あれと同じくらいだ。横書きだからこっちが表か……。
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仕事が早いな。日報紙って新聞のことか。その日にあったことを報じる紙か。
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俺の発言も書かれているから、誰か速記ができる役人でもいたのか、それともそういう魔法や魔道具を使ったのか。写真があるくらいだから録音もできそうだよな。【カメラ】は勇者用のスキルらしいけど、一般向けにも色々とありそうだ。
それにしても「お取りになった」とか「お立たせになった」って、皇族の活動記録か? 国王よりも上だからそうなるのかもしれないけど。
「日報紙って普通にあるのか?」
「はい、あります。この日報紙は王立日報紙印刷所のものです」
「それなら王立じゃない、民間のものもあるのか?」
「民間でも五つほど印刷所があって、街角で販売されています」
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