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第三部:勇者デビュー
パーティーの後
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「疲れたわー」
思わず口から出る言葉が棒読みになる。いや、ホントに疲れた。体もだけど精神的に。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
会話と握手で疲れた俺をミレーヌとエミリアが抱きしめて癒してくれる。ああ、これだ。これだけで勇者になった甲斐がある。幸せだ。女を食い物にしてた俺が女に癒やされるとは、俺も牙の折れた虎か。最初から牙があったかどうかは分からないけどな。
「シュウジさん、気に入った子はいました?」
「俺が女を漁りにパーティーに参加したような言い方はやめてくれ」
「でもチェックくらいはしたんじゃないですか?」
たしかに未婚既婚に関係なく、三〇〇人以上いた女の手は握ったけどな。それでもそれ以上の男とも握手したんだよ。全部で三時間以上。握手会って大変だな。気を抜くと張り付いたような笑顔になりそうだからな。
「貴族様は大変だとお聞きします」
「エミリア、お前もそのうち貴族の妻になるんだから覚悟しておけよ」
「は、はい。そこ心づもりはしていますが、なかなかその実感が……」
「とりあえずアドニス王から、いずれお前が俺の妻になることがあの場にいた全貴族に向けて発表された」
「ええっ⁉」
エミリアはアワアワと驚いて周りを見るけど何もないぞ。隠してもそのうちバレるだろう。それに問題ないことも分かったからな。
「それで、俺がいない間に何かあったか?」
「あ、はい、食事が運ばれてきましたので、その方たちにミレーヌ様を紹介しました」
「どう説明したんだ?」
「そのままです。女神様が力を使って作り出した守護天使で、女神様本人でもあると。そうするとさらにいくつかワゴンが運ばれてきました」
「全部美味しかったですよ♪」
「それは何より」
俺はワインのボトルを持ってテーブルを回っただけだ。腹が減ったから【ストレージ】から干し肉を取り出して囓る。思ったよりも美味い。高級ジャーキー?
「シュウジ様にはどのようなご馳走が出されたのですか?」
「俺か? 俺は三時間以上各テーブルを回って挨拶して握手しただけだ。肉どころかパンの一欠片すら口にできなかった。喋りっぱなしで喉が渇くからワインは飲んだけどな」
「あ、あははは。本当にお疲れ様でした」
エミリアが困った表情で笑い声を上げた。まあ半分は自分から買って出た苦労だ。今後のことを考えれば、愛想を振りまくのも場合には必要だろう。結婚式でも新郎新婦は挨拶を受けるばかりで料理をほとんど口にできないことがあるって聞くから、方向は逆だけどそれと同じようなものだ。毎回これなら大変だけど、一回だけだからな。
「それでシュウジさんはさっきからそれを囓っていたんですね」
「ああ、なかなか美味いな、この干し肉。【ストレージ】にあったやつだけど」
「はい。肉ではなくて魔素ですけど」
「魔素? 肉じゃないのか?」
「肉っぽく加工してある魔素です。魔法を使う時に必要なものと同じものですね」
よく見たら【干し肉(魔素製)】だった。まあ腹は膨れたからいいか。
「それで、もう何日かはここにいる必要がある。その間に何か決めておくとか話し合っておくとか、そういうことはありそうか? 俺は貴族の生活なんて全然想像できないから、まだエミリアの方が分かるだろう」
「まず、シュウジ様は公爵様になるということですよね?」
「ああ」
「それですと、おそらくお屋敷は相当大きくなると思います」
「やっぱりか? そんなに大きくなくていいと思うんだけど、国としても配慮が必要らしくてなあ」
俺としては普通の家でもよかったんだけど、それでは国として恥ずかしいらしい。一五年ぶりに召喚が成功して、しかもやって来たのが期待通りの【勇者】だった。国を挙げて歓迎するので、あまり小さな屋敷は与えられないということだ。
「そうなると相当な人数の使用人を雇う必要があると思います」
「金に関しては元から十分あるし、公爵として中金貨一〇枚が毎年支払われるらしい」
「それだけあれば十分だとは思いますが、使用人を雇うのにはそれなりに手間がかかるそうです」
「手間なんてかかるのか?」
使用人を雇う。要するに店員やバイトだろう。勤務地、勤務時間、勤務内容、時給、福利厚生、交通費と制服の支給があるかどうか、それくらいじゃないか?
「貴族様の使用人なら身辺調査が入るはずです。例え平民でもそれなりにきちんとした家柄で、身内から罪人が出ていないかどうか、借金をしていないかどうか、思想が偏っていないかどうか、そういったことが調査されると聞きました」
警官や自衛官か?
「そこまで必要なのか?」
「はい。屋敷では高貴な方たちが暮らしていて、屋敷の中には高価なものばかりがあります」
「てことは、使用人は探さないといけないことになるかもしれないな。一人もいないことはないと思うけど」
万が一にも「さあどうぞ」って物件だけ渡されても困る。
「そうですね。宰相様に確認なさってはいかがでしょうか?」
「そうだな。まだ時間はあるから、明日にでも確認してくる。ついでに召喚陣のことも俺の方から話しておこう」
思わず口から出る言葉が棒読みになる。いや、ホントに疲れた。体もだけど精神的に。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
会話と握手で疲れた俺をミレーヌとエミリアが抱きしめて癒してくれる。ああ、これだ。これだけで勇者になった甲斐がある。幸せだ。女を食い物にしてた俺が女に癒やされるとは、俺も牙の折れた虎か。最初から牙があったかどうかは分からないけどな。
「シュウジさん、気に入った子はいました?」
「俺が女を漁りにパーティーに参加したような言い方はやめてくれ」
「でもチェックくらいはしたんじゃないですか?」
たしかに未婚既婚に関係なく、三〇〇人以上いた女の手は握ったけどな。それでもそれ以上の男とも握手したんだよ。全部で三時間以上。握手会って大変だな。気を抜くと張り付いたような笑顔になりそうだからな。
「貴族様は大変だとお聞きします」
「エミリア、お前もそのうち貴族の妻になるんだから覚悟しておけよ」
「は、はい。そこ心づもりはしていますが、なかなかその実感が……」
「とりあえずアドニス王から、いずれお前が俺の妻になることがあの場にいた全貴族に向けて発表された」
「ええっ⁉」
エミリアはアワアワと驚いて周りを見るけど何もないぞ。隠してもそのうちバレるだろう。それに問題ないことも分かったからな。
「それで、俺がいない間に何かあったか?」
「あ、はい、食事が運ばれてきましたので、その方たちにミレーヌ様を紹介しました」
「どう説明したんだ?」
「そのままです。女神様が力を使って作り出した守護天使で、女神様本人でもあると。そうするとさらにいくつかワゴンが運ばれてきました」
「全部美味しかったですよ♪」
「それは何より」
俺はワインのボトルを持ってテーブルを回っただけだ。腹が減ったから【ストレージ】から干し肉を取り出して囓る。思ったよりも美味い。高級ジャーキー?
「シュウジ様にはどのようなご馳走が出されたのですか?」
「俺か? 俺は三時間以上各テーブルを回って挨拶して握手しただけだ。肉どころかパンの一欠片すら口にできなかった。喋りっぱなしで喉が渇くからワインは飲んだけどな」
「あ、あははは。本当にお疲れ様でした」
エミリアが困った表情で笑い声を上げた。まあ半分は自分から買って出た苦労だ。今後のことを考えれば、愛想を振りまくのも場合には必要だろう。結婚式でも新郎新婦は挨拶を受けるばかりで料理をほとんど口にできないことがあるって聞くから、方向は逆だけどそれと同じようなものだ。毎回これなら大変だけど、一回だけだからな。
「それでシュウジさんはさっきからそれを囓っていたんですね」
「ああ、なかなか美味いな、この干し肉。【ストレージ】にあったやつだけど」
「はい。肉ではなくて魔素ですけど」
「魔素? 肉じゃないのか?」
「肉っぽく加工してある魔素です。魔法を使う時に必要なものと同じものですね」
よく見たら【干し肉(魔素製)】だった。まあ腹は膨れたからいいか。
「それで、もう何日かはここにいる必要がある。その間に何か決めておくとか話し合っておくとか、そういうことはありそうか? 俺は貴族の生活なんて全然想像できないから、まだエミリアの方が分かるだろう」
「まず、シュウジ様は公爵様になるということですよね?」
「ああ」
「それですと、おそらくお屋敷は相当大きくなると思います」
「やっぱりか? そんなに大きくなくていいと思うんだけど、国としても配慮が必要らしくてなあ」
俺としては普通の家でもよかったんだけど、それでは国として恥ずかしいらしい。一五年ぶりに召喚が成功して、しかもやって来たのが期待通りの【勇者】だった。国を挙げて歓迎するので、あまり小さな屋敷は与えられないということだ。
「そうなると相当な人数の使用人を雇う必要があると思います」
「金に関しては元から十分あるし、公爵として中金貨一〇枚が毎年支払われるらしい」
「それだけあれば十分だとは思いますが、使用人を雇うのにはそれなりに手間がかかるそうです」
「手間なんてかかるのか?」
使用人を雇う。要するに店員やバイトだろう。勤務地、勤務時間、勤務内容、時給、福利厚生、交通費と制服の支給があるかどうか、それくらいじゃないか?
「貴族様の使用人なら身辺調査が入るはずです。例え平民でもそれなりにきちんとした家柄で、身内から罪人が出ていないかどうか、借金をしていないかどうか、思想が偏っていないかどうか、そういったことが調査されると聞きました」
警官や自衛官か?
「そこまで必要なのか?」
「はい。屋敷では高貴な方たちが暮らしていて、屋敷の中には高価なものばかりがあります」
「てことは、使用人は探さないといけないことになるかもしれないな。一人もいないことはないと思うけど」
万が一にも「さあどうぞ」って物件だけ渡されても困る。
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