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第十三部:勇者とダンジョンと魔物(二)
シュザンヌ(一)
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アネットに続いて、もう一人契約を変更する。シュザンヌだ。家政婦長という立場のため、ここまで待ってもらった。
「旦那様、シュザンヌです」
「ああ、よく来てくれた。でもその緩み切った顔は主人を前にした態度じゃないなあ」
いつもの真面目な表情からは打って変わってニヨニヨと弛みっぱなしだ。まあ仕方ないけどな。
「も、申し訳ございません」
「ははは、冗談だ。それよりもこれだ」
俺はシュザンヌに書類を見せる。新しい契約書だ。
「今日の夜をもってこれまでの契約は破棄する。そしてこれが新しい契約だ。内容を見て疑問がなければサインしてくれ」
「は、はい」
オレリーと違ってシュザンヌは契約書の端から順にチェックを始めた。契約年数や給料、待遇も含めて色々と書かれている。この国ではわりと契約には煩い方だけど、それって法的なものじゃなく、国が取り締まってるわけでもない。
契約書と言われているけど、実態としては努力目標に近いんだよな。国から「契約は遵守するように」と言われても、本当に守るかどうかは本人たち次第。
取り締まってないってことは、要するに訴える先がないということだ。シュザンヌに手を出して孕ませたとしても、違約金を支払わずに放り出しても俺が罰せられることはない。
彼女が誰かに訴えてもいいけど、訴えたからといって何かが変わるわけでもなく、泣き寝入りをすることがほとんどだ。
一通り目を通したのか、シュザンヌが書類を手にしたままこちらを向いた。
「旦那様、少し間違いがございます」
「どこだ?」
「ここです。契約開始が明後日からになっていますが」
「ああ、それは問題ない。明日一日空けることにしたからだ。つまり今日の夜から明後日の朝までは仕事は休みだ」
「お休みですか?」
疑問に思うのも不思議じゃない。病気にでもならない限りは休みなんてない世界だからな。
もし休みが必要な場合は主人に申し出る。主人が許可を出せば休みになる。許可を出さなければ無断欠勤扱い、つまりクビになる。
俺はそのあたりはもう少し変えるつもりだ。人手も増えたから多少は休みやすくなっただろう。必要に応じて休むように言ってはいるけど、だからといって休もうという気にならないそうだ。
ケントさんもそのあたりは何とかしようとしたけど、こうやって無理に取らせるしかなかったそうだ。たしかに会社と違って職住一体だから、休みにくいというのはある。自分が休んでも他の使用人たちは働いているわけだ。でも全員に一斉に休まれるとそれはそれで困る。だからどうしても交代でということになる。そのあたりを来年から契約に入れることにする。
「今日の仕事が終わったら出かける用意をしてまたここに来い。明日は一日中、俺に付き合え」
「は、はいっ」
◆◆◆
「お待たせいたしました」
部屋に入ってきたシュザンヌは、いつもの服と違って少し質のいい服を着ていた。シュザンヌはメイドじゃないからお仕着せはない。これは俺がちょっといい店で買ってミレーヌに渡し、ミレーヌがシュザンヌに与えたものだ。女性使用人には女主人から渡すことが一般的だそうだ。主人から渡すのはチップくらいのもので、服や化粧品を渡すことはないそうだ。
俺はオレリーとシュザンヌに美容液を渡したけど、あれはミレーヌたちに渡すついでだった。だから値段が一つ下のものを渡したんだけど、それでも二人は一瞬で落ちてしまった。【魅力】が高いのも関係あるんだけどな。意識しなくてもたまに勝手に落ちるらしい。
まあすでに落ちてしまったものは仕方ない。ただ今後のために主人として普通の行動を身に付けようと思って、あれ以降は贈り物はミレーヌを通している。
「似合ってるな」
「ありがとうございます」
褒められて顔を少し赤くするシュザンヌ。年齢のわりに初々しいことこの上ない。擦れてないと言ってもいいだろう。
「よし、それなら出るか」
「はい、よろしくお願いします」
社交の時期に晩餐会に出席した時にはこんな時間に帰ってくることはあったけど、こんな時間から出かけるのはそれほど多くない。目的地までマルクに馬車を走らせる。夜は昼ほど人通りは多くない。馬車はスイスイと王都の通りを進んだ。
「旦那様、到着しました」
「助かった。屋敷に戻ってくれ。迎えは必要ない」
「分かりました」
マルクにチップを渡して屋敷に戻らせた。これからは二人の時間だ。
「旦那様、ここは?」
「王都で一番ノンビリできる場所だ」
「恐れ多い感じがするのですが……」
前にも来たホテルだ。この国で一番のホテルになる。多くのホテルが宿屋のイメージなのに対して、いくつかはホテルという外観と内装をしていた。そのうちの一つだ。
フロントで名前を伝えて鍵を受け取る。シュザンヌは緊張気味だ。
部屋に入ると、そこは俺の寝室くらいの広さがあった。要するにスイートだ。食事などは部屋にはないけど、ストレージに色々と入れてあるから問題ない。
「素晴らしいお部屋ですね」
「ああ、お前のためだけに借りた」
「わ、私のためにですか?」
「ああ、屋敷が一番大変な時期にしっかりと俺を支えてくれた。その褒美だ」
「ご褒美……」
シュザンヌは両手を胸の前で組み合わせ、神に祈るように少し上を向いた。
「明日の夜、ここを出るまではお前が言ってほしいことを言おう。お前がしてほしいことをしよう。ここを出るまではお前だけの俺でいよう」
「私だけの旦那様……」
シュザンヌはたまに夢見がちなことがある。これまでの経歴を考えれば仕方がないだろう。だからこうやってキザっぽい演技をしてみる。
両腕を開いて待ち受けると、シュザンヌが胸の中に飛び込んできた。しばらくそのまま俺の胸にグリグリと顔を埋めていたけど、俺の顔を見上げて口を開いた。
「お願いしたいことがあります」
「聞こう」
「では……私の初めてを貰ってください」
「ああ、おいで」
◆◆◆
そこには三〇代の熟れた肉体があった。オレリーもそうだったけど、やっぱり三〇代には三〇代なりの良さがある。こればっかりは一〇代には真似できない。女を抱いている間に別の女のことを考えるなんて不誠実だと思う人もいるかもしれないけど、比較するためじゃないからな。それぞれに特徴があってそれがいいということだ。
そもそも俺は若ければいいとか初物がいいとかは言わない。処女は面倒だから嫌だとも言わない。誰にだって他人とは違う部分があるのは当然だ。だからこそ人は面白い。男でも女でも。
……何となく発言が神っぽくなった。そんなつもりは全然ないんだけどな。
「旦那様、シュザンヌです」
「ああ、よく来てくれた。でもその緩み切った顔は主人を前にした態度じゃないなあ」
いつもの真面目な表情からは打って変わってニヨニヨと弛みっぱなしだ。まあ仕方ないけどな。
「も、申し訳ございません」
「ははは、冗談だ。それよりもこれだ」
俺はシュザンヌに書類を見せる。新しい契約書だ。
「今日の夜をもってこれまでの契約は破棄する。そしてこれが新しい契約だ。内容を見て疑問がなければサインしてくれ」
「は、はい」
オレリーと違ってシュザンヌは契約書の端から順にチェックを始めた。契約年数や給料、待遇も含めて色々と書かれている。この国ではわりと契約には煩い方だけど、それって法的なものじゃなく、国が取り締まってるわけでもない。
契約書と言われているけど、実態としては努力目標に近いんだよな。国から「契約は遵守するように」と言われても、本当に守るかどうかは本人たち次第。
取り締まってないってことは、要するに訴える先がないということだ。シュザンヌに手を出して孕ませたとしても、違約金を支払わずに放り出しても俺が罰せられることはない。
彼女が誰かに訴えてもいいけど、訴えたからといって何かが変わるわけでもなく、泣き寝入りをすることがほとんどだ。
一通り目を通したのか、シュザンヌが書類を手にしたままこちらを向いた。
「旦那様、少し間違いがございます」
「どこだ?」
「ここです。契約開始が明後日からになっていますが」
「ああ、それは問題ない。明日一日空けることにしたからだ。つまり今日の夜から明後日の朝までは仕事は休みだ」
「お休みですか?」
疑問に思うのも不思議じゃない。病気にでもならない限りは休みなんてない世界だからな。
もし休みが必要な場合は主人に申し出る。主人が許可を出せば休みになる。許可を出さなければ無断欠勤扱い、つまりクビになる。
俺はそのあたりはもう少し変えるつもりだ。人手も増えたから多少は休みやすくなっただろう。必要に応じて休むように言ってはいるけど、だからといって休もうという気にならないそうだ。
ケントさんもそのあたりは何とかしようとしたけど、こうやって無理に取らせるしかなかったそうだ。たしかに会社と違って職住一体だから、休みにくいというのはある。自分が休んでも他の使用人たちは働いているわけだ。でも全員に一斉に休まれるとそれはそれで困る。だからどうしても交代でということになる。そのあたりを来年から契約に入れることにする。
「今日の仕事が終わったら出かける用意をしてまたここに来い。明日は一日中、俺に付き合え」
「は、はいっ」
◆◆◆
「お待たせいたしました」
部屋に入ってきたシュザンヌは、いつもの服と違って少し質のいい服を着ていた。シュザンヌはメイドじゃないからお仕着せはない。これは俺がちょっといい店で買ってミレーヌに渡し、ミレーヌがシュザンヌに与えたものだ。女性使用人には女主人から渡すことが一般的だそうだ。主人から渡すのはチップくらいのもので、服や化粧品を渡すことはないそうだ。
俺はオレリーとシュザンヌに美容液を渡したけど、あれはミレーヌたちに渡すついでだった。だから値段が一つ下のものを渡したんだけど、それでも二人は一瞬で落ちてしまった。【魅力】が高いのも関係あるんだけどな。意識しなくてもたまに勝手に落ちるらしい。
まあすでに落ちてしまったものは仕方ない。ただ今後のために主人として普通の行動を身に付けようと思って、あれ以降は贈り物はミレーヌを通している。
「似合ってるな」
「ありがとうございます」
褒められて顔を少し赤くするシュザンヌ。年齢のわりに初々しいことこの上ない。擦れてないと言ってもいいだろう。
「よし、それなら出るか」
「はい、よろしくお願いします」
社交の時期に晩餐会に出席した時にはこんな時間に帰ってくることはあったけど、こんな時間から出かけるのはそれほど多くない。目的地までマルクに馬車を走らせる。夜は昼ほど人通りは多くない。馬車はスイスイと王都の通りを進んだ。
「旦那様、到着しました」
「助かった。屋敷に戻ってくれ。迎えは必要ない」
「分かりました」
マルクにチップを渡して屋敷に戻らせた。これからは二人の時間だ。
「旦那様、ここは?」
「王都で一番ノンビリできる場所だ」
「恐れ多い感じがするのですが……」
前にも来たホテルだ。この国で一番のホテルになる。多くのホテルが宿屋のイメージなのに対して、いくつかはホテルという外観と内装をしていた。そのうちの一つだ。
フロントで名前を伝えて鍵を受け取る。シュザンヌは緊張気味だ。
部屋に入ると、そこは俺の寝室くらいの広さがあった。要するにスイートだ。食事などは部屋にはないけど、ストレージに色々と入れてあるから問題ない。
「素晴らしいお部屋ですね」
「ああ、お前のためだけに借りた」
「わ、私のためにですか?」
「ああ、屋敷が一番大変な時期にしっかりと俺を支えてくれた。その褒美だ」
「ご褒美……」
シュザンヌは両手を胸の前で組み合わせ、神に祈るように少し上を向いた。
「明日の夜、ここを出るまではお前が言ってほしいことを言おう。お前がしてほしいことをしよう。ここを出るまではお前だけの俺でいよう」
「私だけの旦那様……」
シュザンヌはたまに夢見がちなことがある。これまでの経歴を考えれば仕方がないだろう。だからこうやってキザっぽい演技をしてみる。
両腕を開いて待ち受けると、シュザンヌが胸の中に飛び込んできた。しばらくそのまま俺の胸にグリグリと顔を埋めていたけど、俺の顔を見上げて口を開いた。
「お願いしたいことがあります」
「聞こう」
「では……私の初めてを貰ってください」
「ああ、おいで」
◆◆◆
そこには三〇代の熟れた肉体があった。オレリーもそうだったけど、やっぱり三〇代には三〇代なりの良さがある。こればっかりは一〇代には真似できない。女を抱いている間に別の女のことを考えるなんて不誠実だと思う人もいるかもしれないけど、比較するためじゃないからな。それぞれに特徴があってそれがいいということだ。
そもそも俺は若ければいいとか初物がいいとかは言わない。処女は面倒だから嫌だとも言わない。誰にだって他人とは違う部分があるのは当然だ。だからこそ人は面白い。男でも女でも。
……何となく発言が神っぽくなった。そんなつもりは全然ないんだけどな。
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