元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第八部:なすべきこと

その後のジゼル

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「おかえりなさいませ」
 屋敷に帰ってダヴィドたちの出迎えを受けた。
「ご活躍はこの耳にも入っております」
「毎回思うけど、どこにいたんだろうな」
 俺が不在の間に何かなかったかの報告を受ける。そして報告を受けつつ日報紙を読む。何枚かはジゼルのことが取り上げられていた。顔と名前は出てないけど、後ろ姿を見たら分かる者には分かるだろう。

『ラヴァル公爵家のハウスメイド、故郷の村を疫病から救う』

 そういう壮大な見出しとともに、メイドの一人から話を聞いた俺がベックに出かけ、村人たちに広まっていた病気を治して援助したことが書かれていた。それ自体は何も間違ってない。ジゼルから話を聞いて出かけたわけだから。
 ただこの国では貴族と平民の間には大きくてぶ厚い壁がある。平民を不必要に虐げることはないけど、貴族が平民の願いを聞いて何かをするということは普通ならあり得ない。だから一介のメイドが主人である俺に直言をしたことは、自身の進退をかけた英雄的行為だと見なされた。クビになってもおかしくないからだ。
 日報紙によると、あるメイドの勇気のある行動に対して俺が感動し、彼女自身と彼女を育てたベックの村を高く評価することになったと書かれている。高く評価か……。まあ手を出したからな。
 あれを評価したと呼べるかどうかはともかく、彼女が思った以上に真面目で真っ直ぐだということは分かった。見直したというのは間違いないだろう。大人ぶっても若かったわけで、それで真っ直ぐすぎて周りが見えてなかっただけだ。
 あれから帰ってくるまで毎晩抱いたけど、以前のように俺に積極的に迫ることはなくなった。抱かれて安心したのか落ち着いたのか、俺の側で真面目な顔で控えているだけだ。たまにこちらを向いて目を閉じるから、唇を塞ぐくらいだな。
 とりあえず個人的なことは終わりにしてもいい。ここからは貴族として、商会のオーナーとしてすべき仕事がある。
 村長と話をして海産物の購入をすることに決めた。今までより確実に収入は上がるだろう。捨てるようなものも金になるから。それに関しては領主のクノー子爵に手紙を書く。あの村にうちの商会の支店を置くと。
 村では大きな魚は主に干物にして販売する。小さなものは村で消費する。それでも余ることはあるし、傷むこともあるだろう。貝だって捨てらる殻を回収する。貝によっては貝殻は生薬として使われたはずだし、そうでなくてもカルシウムとして利用できるだろう。それが金になる。
 漁村だからって魚ばっかり食べてるわけじゃない。芋やライ麦もある。野菜だって育てる。魚は食材であると同時に商品でもあるわけだ。だからうちの商会と取引を始めることになった。探せば他に金にできるものもあるはずだ。

 ◆◆◆

「やっぱりジゼルさんとはそうなりましたか」
「そんな風に思えたのか?」
 ミレーヌの感想に俺は首を傾げた。そして「ジゼルさん」と言ったな。使用人は呼び捨てだったのに。
「シュウジさんも気づいたかもしれませんが、精神的な部分が若返っています。そろそろ止まるはずですけど」
「なあ、精神的に若返ると対象年齢も下がるのか?」
 俺にはリュシエンヌでも若いと思ったのに、ジゼルですらOKになった。これ以上若くてもいいのなら少し困るぞ。
「いえ、そういうわけではありません。例えばですね、シュウジさんは小さい頃に好きな女の子をいじめたことはありませんでしたか?」
「んー、あったようななかったような。泣かすことはなかったな。でも素っ気ない態度くらいは取ったかもしれない」
 俺は背が高くて顔がよかったから女子にはキャーキャー言われることもあった。でも片親だから敬遠されることもあった。両極端だったなあ。
 そんな中でも気になる子はいた。たしかにそういう態度を取ったこともあった。向こうから近づいてきたはずだ。あれからどうしたんだっけ?
「それと同じです。ジゼルさんと同じくらいの精神年齢まで下がったので、気になるのに素っ気ない態度を取ったんだと思います」
「なんだ。あれと同じ態度だったのか」
「はい。言うとややこしくなるかもしれませんので黙っていました」
 そういうことだったのか。とりあえず謎は一つ解けた。先に言っておいてほしかった気はするけど、まあいいか。

 ◆◆◆

 あれからジゼルは俺専属のメイドとなり、屋敷の中にいる時には常に側に控えるようになった。アネットが羨ましがったけど、彼女についてもいずれは契約を変更するつもりだ。
 でも専属メイドばかり増やしても意味がないから、何か仕事を作る必要があるな。例えば秘書は……似合わないな。コスプレにもならない。アネットはまだしもジゼルは。
 ジゼルは今でもあの胸元がガッツリと開いたメイド服だけど、ケープを外すことはなく、不用意に肌を見せることはなくなった。
「もう身も心も旦那様の所有物になりましたので」
 ミントの香りを漂わせながらジゼルが近づいてきた。香水を使い始めたのか。色気づいたか?
「なら今ここで好き勝手してもいいんだな?」
「はいどうぞ。お楽しみください」
 そう言ってスカートを摘まんで下着を見せた。うむ。よく見えるな、中身が。ジゼルが着けてたのはガーターベルト、そしてオープンクロッチとかオープンショーツとか呼ばれる、いわゆるセクシーランジェリーだった。履いたままでいつでもどうぞ、ということだ。クロッチ部分が開いてるどころか何もないから、挿れる際にずらす必要すらない。なかなかセクシーなブルーベリー色だった。日本にもありそうだな。商会でも販売はしていないはずだ。
「それはどうしたんだ?」
「リュシエンヌ様から頂きました」
「それでか……」
 一番エロ関係に強いのはリュシエンヌだ。彼女は和裁だけじゃなくて縫い物全般が得意だった。下着も以前から自分で縫っていて、日本で普通に売られてるような、ゴムを使った下着を着けていた。見たことのない色だから、新しく作ってジゼルにプレゼントしたんだろう。
「ところで旦那様」
 下着のことを考えていたらジゼルが真剣な表情でこちらを見ながら話しかけてきた。
「どうした?」
「お屋敷に戻れば後ろも奪っていただけるということでしたが」
「そんなことを言ったな。別に無理しなくてもいいんだぞ?」
 さすがに前も後ろも一度に頂こうとは思わなかった。急ぐ必要もなかったからな。それに無理してまですることじゃない。
「いえ、興味はありますので。イネスさんからこれを頂きましたので、お尻の中をキレイにしてきました」
「お尻の中? 何だそれは?」
 俺はジゼルが手に持っていた瓶を【鑑定】で調べて呆気に取られた。

====================

【腸内清掃薬】
 これは座薬として使用するものである。大腸内に溜まった老廃物を分解・排出し、三時間ほどは大腸内に新たな老廃物が溜まらないようにするものである。同時に雑菌を不活性化するため、大腸内を清潔に保つことができる。
 効き目がある間は素材として使われているミントの香りが漂うため、効き目がなくなるタイミングが分かりやすいのがポイントが高い。後ろがお好きな諸兄の強い味方になるだろう。

====================

 それでさっきからミントの香りがしてたのか。でも「強い味方になるだろう」って、誰の主観だ? 誰が書いてるんだ? それにイネスはいつの間にこんなものを作ったんだ?
 ……まあいいか。何を考えてもどうせ使うんだ。大事の前の小事。いずれ分かるかもしれないし、今は分からなくてもいい。
「よし、ジゼル。そこの扉をキッチリ閉めたらこっちに来い」
「はい」
 俺はジゼルに鍵をかけさせると、音漏れ防止のための結界を張る準備を始めた。
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