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第十五部:勇者の活躍
セレンに向けて
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練兵場までほんの一瞬の空の旅だ。フワッと浮いたと思ったら終わり。トゥーリアにしてみれば、ちょっと飛び上がったら到着したようなものだろう。風景を楽しむ時間もない。
練兵場に降りるとそこには見慣れた顔が並んでいた。
「ご無沙汰しております」
「ご無沙汰というほど経ってないけどな」
思わず笑いそうになる。前回サン=フォアの町に一緒に向かった兵士が多い。
「前回ので大体分かった。今回は移動の仕方が違うが、やることは同じだろう」
ここにはおよそ一〇〇人の兵士と六人の役人がいる。
「シュウジ様、ディディエと申します。セレンの町の代官代行を担当することになっています」
役人の中で一番の年長者が代官代行だった。融通が利かなさそうな顔だ。おそらく綱紀の緩みを正すのも彼らの仕事だろう。
「そうか。向こうに行ったら色々と大変だが、できることはサポートする」
「代官代行の仕事そのものは大丈夫だと思いますが、それまでの諸々の処理はシュウジ様とここにいる兵士のみなさんにお願いすることになります」
処理というのはダンジョンの暴走だけではなくて代官の更迭も含んでいる。今回は領都エウロードにいる子爵も含め、それなりの人数を更迭することになっている。だから国中の転移門からできる限り多くの兵士を更迭する相手がいる町の近くへ送り出す。だからセレンに向かう兵士はここにいる一〇〇人だけだ。俺とスキュラたちとこの兵士たちで今回の暴走で出てきた魔物を駆除し、それから代官を捕まえる。まあ自分が捕まるとは思ってないはずだから逃げられることはないと思うけど、早めに済ませる方がいい。
魔物は俺が大半を狩ることになるんだろうけど、狩り残しが絶対に出る。だから兵士たちの力は必要だ。スキュラたちにも干し肉(魔素製)を食べて頑張ってもらうことになる。
「それでは諸君はこの異空間に入ってくれ」
俺は出入り口を開いて兵士たちに促した。
「全員が入れるのですか?」
「このトゥーリアが入れたくらいだから広さは十分なはずだ。小一時間だから我慢してくれ」
「それは大丈夫です」
兵士と役人たちは順に異空間の中に入った。俺は頭を突っ込んで説明する。
「これから一度タイメイユに寄り、それからセレンに向かう。タイメイユに着いたら一度開けて声をかけるから安心してくれ」
俺は出入り口を閉じるとスキュラたちと一緒にトゥーリアの背に乗った。
《それでは飛ぶぞ》
トゥーリアは一つ羽ばたくとぐんぐんと上昇し、あっという間に王都が遙か眼下に見えた。スキュラたちは前回はこの高さを怖がったけど、今回はそうでもないようだ。
「高いところは大丈夫になったのか?」
「大丈夫みたいです。それに【飛翔】というスキルが付きましたので、落ちても何とかなるかもしれません」
「飛翔? あ、俺にもあるな。最近はステータスのチェックもしてなかったからな」
以前母さんが【警告】というスキルについて、ステータスに変更があった時に通知が来るように設定できると教えてくれた。確かに便利かもしれない。でも俺には合わない。前回ダンジョンに潜った時にあまりにもスキルが手に入りすぎてピコピコと喧しかったからだ。結局通知はオフにして、たまにステータスを見るくらいになった。それで十分だな。便利になればいいってわけじゃない。
「あのあたりだな」
ルニエ子爵領は中央に領都エウロードがあり、それに匹敵する規模の町が八つあるという話だ。エウロードを中心にして八方向に町が配置されていて、それが見えるくらいに高い場所に今はいる。こういう構造が珍しいかというとそういうわけでもなく、どこでも似たり寄ったりだ。ただこの領地を設計した者はかなりこだわったんだろうな。道が真っ直ぐだ。
エウロードを中心にして一二時の方向がリユース、一時半がヴィニュエール、三時がデルクイッソン、四時半がターヴェル、六時がミレー、七時半がセレン、九時がヴァルス、一〇時半がアクス。セレンとその北にあったタイメイユも見える。そのタイメイユは町じゃなくて砦という立ち位置らしい。規模としては町でいいと思うけどな。
「トゥーリア、セレンは一番奥じゃなくて、その一つ右にある大きな町だ。魔物が周りにいるだろう」
《分かった。赤い塔のある町じゃな》
「……ああ、そうだ。その手前に小さな町が見えるだろう。そこに降りてくれ」
《了解》
俺とスキュラたちはトゥーリアの背に乗ってタイメイユの町に降りた。ここはサン=フォアにとってのオーリックのような町だ。さっき上空から見たところではサン=フォアよりもさらに魔物が多そうだった。
◆◆◆
「ようこそタイメイユへ。ここの管理をしておりますフェルナンと申します」
「シュウジ・コワレ・ラヴァル公爵だ」
俺はここの代官というか砦の代表からダンジョンの説明を受けている。ここの魔物にはゴブリンとコボルド、さらにオークもいるらしい。オークは食肉として重宝されているそうだ。
「ヘタをすれば半年に一度こうなると思うと、兵士たちもうんざり気味でして」
「そうだろうなあ」
ダンジョンは放置されるとどんどん魔素が濃くなる。そして暴走を起こすわけなんだけど、魔物が増えすぎると本格的な暴走が起きる前魔物が溢れることもあるそうだ。だから放置して慢性的に魔素が濃くなると、常に暴走一歩手前の状態が保たれてしまうそうだ。おそらくルニエ子爵はあえてそうしてるんじゃないかという見立てだ。
最初は本当に手が回らなくなったのかもしれない。でも途中で「この方が楽じゃね?」と気づいたんだろう。放っておけばダンジョンから常に魔物が出てくる。そうすれば中に入らなくても普段から一定の量の素材が確保できる。そうすると短ければ半年に一度は暴走が起きるけど、その度に国中から兵士が派遣されて狩ってくれる。国の金で排除してもらうわけだ。
ルール違反をしてるわけじゃない。でも道義的にどうなのかという話だ。セレンの住民たちには迷惑だろうからな。国も迷惑している。
「ですがシュウジ様が領主になられるなら、こういったこともなくなるでしょう」
フェルナンの口からおかしな言葉が聞こえた。
「俺は代官の代行を連れてきただけだ。俺は領主じゃないぞ?」
「そうなのですか? シュウジ様の代行ではないのですか?」
「いや、国王の代行だろう。国が接収すると言っているわけだからな」
俺と一緒に来たのはディディエという役人で、彼の部下として五人が同行している。まだ異空間の中だけどな。
「とりあえず役人たちだけ外に出すか。役人たちは外に出てくれ。兵士たちはもう少し中にいてくれるか?」
俺は異空間を開けると、ディディエたちが眩しそうに外に出た。
「ここは……たしかに王都ではありませんね」
「ここはタイメイユだ。この砦の管理はそこにいるフェルナンが行なっている。今後のことなどを話し合ってくれ」
「畏まりました」
「俺はこれから魔物の駆除に向かう。終わったら誰かを報告に向かわせるから、一緒にセレンに向かってくれ」
「よろしくお願いします」
さて、とりあえず着任報告みたいなものか、それを済ませるとタイメイユを出て、セレンの町から数キロの地点まで進む。数キロならトゥーリアの背に乗って一瞬だ。ここで異空間を開けて兵士たちを出した。
「ここは……おお、セレンですね」
兵士たちはダンジョンの暴走がある度に派遣されているから、一目見ると分かるようだ。
「さて、とりあえず俺とスキュラたちで魔物の駆除を始める。前と同じように【石の玉】をばら撒くから、魔物がこちらに移動し始めたら迎撃を頼む」
「分かりました」
やり方は前回に近い。でもスキュラたちがいるのが大きな違いだ。俺が【石の玉】をばら撒く横でスキュラたちにも援護をさせる。魔物が町を離れてこっちに近づいてきたら兵士たちが迎え撃つ。
練兵場に降りるとそこには見慣れた顔が並んでいた。
「ご無沙汰しております」
「ご無沙汰というほど経ってないけどな」
思わず笑いそうになる。前回サン=フォアの町に一緒に向かった兵士が多い。
「前回ので大体分かった。今回は移動の仕方が違うが、やることは同じだろう」
ここにはおよそ一〇〇人の兵士と六人の役人がいる。
「シュウジ様、ディディエと申します。セレンの町の代官代行を担当することになっています」
役人の中で一番の年長者が代官代行だった。融通が利かなさそうな顔だ。おそらく綱紀の緩みを正すのも彼らの仕事だろう。
「そうか。向こうに行ったら色々と大変だが、できることはサポートする」
「代官代行の仕事そのものは大丈夫だと思いますが、それまでの諸々の処理はシュウジ様とここにいる兵士のみなさんにお願いすることになります」
処理というのはダンジョンの暴走だけではなくて代官の更迭も含んでいる。今回は領都エウロードにいる子爵も含め、それなりの人数を更迭することになっている。だから国中の転移門からできる限り多くの兵士を更迭する相手がいる町の近くへ送り出す。だからセレンに向かう兵士はここにいる一〇〇人だけだ。俺とスキュラたちとこの兵士たちで今回の暴走で出てきた魔物を駆除し、それから代官を捕まえる。まあ自分が捕まるとは思ってないはずだから逃げられることはないと思うけど、早めに済ませる方がいい。
魔物は俺が大半を狩ることになるんだろうけど、狩り残しが絶対に出る。だから兵士たちの力は必要だ。スキュラたちにも干し肉(魔素製)を食べて頑張ってもらうことになる。
「それでは諸君はこの異空間に入ってくれ」
俺は出入り口を開いて兵士たちに促した。
「全員が入れるのですか?」
「このトゥーリアが入れたくらいだから広さは十分なはずだ。小一時間だから我慢してくれ」
「それは大丈夫です」
兵士と役人たちは順に異空間の中に入った。俺は頭を突っ込んで説明する。
「これから一度タイメイユに寄り、それからセレンに向かう。タイメイユに着いたら一度開けて声をかけるから安心してくれ」
俺は出入り口を閉じるとスキュラたちと一緒にトゥーリアの背に乗った。
《それでは飛ぶぞ》
トゥーリアは一つ羽ばたくとぐんぐんと上昇し、あっという間に王都が遙か眼下に見えた。スキュラたちは前回はこの高さを怖がったけど、今回はそうでもないようだ。
「高いところは大丈夫になったのか?」
「大丈夫みたいです。それに【飛翔】というスキルが付きましたので、落ちても何とかなるかもしれません」
「飛翔? あ、俺にもあるな。最近はステータスのチェックもしてなかったからな」
以前母さんが【警告】というスキルについて、ステータスに変更があった時に通知が来るように設定できると教えてくれた。確かに便利かもしれない。でも俺には合わない。前回ダンジョンに潜った時にあまりにもスキルが手に入りすぎてピコピコと喧しかったからだ。結局通知はオフにして、たまにステータスを見るくらいになった。それで十分だな。便利になればいいってわけじゃない。
「あのあたりだな」
ルニエ子爵領は中央に領都エウロードがあり、それに匹敵する規模の町が八つあるという話だ。エウロードを中心にして八方向に町が配置されていて、それが見えるくらいに高い場所に今はいる。こういう構造が珍しいかというとそういうわけでもなく、どこでも似たり寄ったりだ。ただこの領地を設計した者はかなりこだわったんだろうな。道が真っ直ぐだ。
エウロードを中心にして一二時の方向がリユース、一時半がヴィニュエール、三時がデルクイッソン、四時半がターヴェル、六時がミレー、七時半がセレン、九時がヴァルス、一〇時半がアクス。セレンとその北にあったタイメイユも見える。そのタイメイユは町じゃなくて砦という立ち位置らしい。規模としては町でいいと思うけどな。
「トゥーリア、セレンは一番奥じゃなくて、その一つ右にある大きな町だ。魔物が周りにいるだろう」
《分かった。赤い塔のある町じゃな》
「……ああ、そうだ。その手前に小さな町が見えるだろう。そこに降りてくれ」
《了解》
俺とスキュラたちはトゥーリアの背に乗ってタイメイユの町に降りた。ここはサン=フォアにとってのオーリックのような町だ。さっき上空から見たところではサン=フォアよりもさらに魔物が多そうだった。
◆◆◆
「ようこそタイメイユへ。ここの管理をしておりますフェルナンと申します」
「シュウジ・コワレ・ラヴァル公爵だ」
俺はここの代官というか砦の代表からダンジョンの説明を受けている。ここの魔物にはゴブリンとコボルド、さらにオークもいるらしい。オークは食肉として重宝されているそうだ。
「ヘタをすれば半年に一度こうなると思うと、兵士たちもうんざり気味でして」
「そうだろうなあ」
ダンジョンは放置されるとどんどん魔素が濃くなる。そして暴走を起こすわけなんだけど、魔物が増えすぎると本格的な暴走が起きる前魔物が溢れることもあるそうだ。だから放置して慢性的に魔素が濃くなると、常に暴走一歩手前の状態が保たれてしまうそうだ。おそらくルニエ子爵はあえてそうしてるんじゃないかという見立てだ。
最初は本当に手が回らなくなったのかもしれない。でも途中で「この方が楽じゃね?」と気づいたんだろう。放っておけばダンジョンから常に魔物が出てくる。そうすれば中に入らなくても普段から一定の量の素材が確保できる。そうすると短ければ半年に一度は暴走が起きるけど、その度に国中から兵士が派遣されて狩ってくれる。国の金で排除してもらうわけだ。
ルール違反をしてるわけじゃない。でも道義的にどうなのかという話だ。セレンの住民たちには迷惑だろうからな。国も迷惑している。
「ですがシュウジ様が領主になられるなら、こういったこともなくなるでしょう」
フェルナンの口からおかしな言葉が聞こえた。
「俺は代官の代行を連れてきただけだ。俺は領主じゃないぞ?」
「そうなのですか? シュウジ様の代行ではないのですか?」
「いや、国王の代行だろう。国が接収すると言っているわけだからな」
俺と一緒に来たのはディディエという役人で、彼の部下として五人が同行している。まだ異空間の中だけどな。
「とりあえず役人たちだけ外に出すか。役人たちは外に出てくれ。兵士たちはもう少し中にいてくれるか?」
俺は異空間を開けると、ディディエたちが眩しそうに外に出た。
「ここは……たしかに王都ではありませんね」
「ここはタイメイユだ。この砦の管理はそこにいるフェルナンが行なっている。今後のことなどを話し合ってくれ」
「畏まりました」
「俺はこれから魔物の駆除に向かう。終わったら誰かを報告に向かわせるから、一緒にセレンに向かってくれ」
「よろしくお願いします」
さて、とりあえず着任報告みたいなものか、それを済ませるとタイメイユを出て、セレンの町から数キロの地点まで進む。数キロならトゥーリアの背に乗って一瞬だ。ここで異空間を開けて兵士たちを出した。
「ここは……おお、セレンですね」
兵士たちはダンジョンの暴走がある度に派遣されているから、一目見ると分かるようだ。
「さて、とりあえず俺とスキュラたちで魔物の駆除を始める。前と同じように【石の玉】をばら撒くから、魔物がこちらに移動し始めたら迎撃を頼む」
「分かりました」
やり方は前回に近い。でもスキュラたちがいるのが大きな違いだ。俺が【石の玉】をばら撒く横でスキュラたちにも援護をさせる。魔物が町を離れてこっちに近づいてきたら兵士たちが迎え撃つ。
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