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第十六部:領主になること
バーベキュー
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庭でBBQの準備をしている。なぜBBQなのかはエコに聞いてくれ。彼女のリクエストだからだ。俺が日本で死ぬ少し前に「元気になったらどこか場所を借りてBBQでもやるか」と言っことがあったそうだ。でも厳密に言えばこれはBBQじゃない。単なる焼き肉だ。焼き魚だ。
BBQというのは最低半日かけてじっくりと焼くもので、短時間で火を通すのはグリルになる。焼肉のことをジャパニーズ・バーベキューと説明しているのを聞いて、知り合ったばかりのアメリカ人女性が怒っていた。「あれは単なるグリルドビーフなのデース! BBQとグリルは違いマース!」って詰め寄られたけど俺のせいじゃない。「日本には日本の良さもあるぞ」と言いながらベッドの中で日本の男の良さを教えた。満足してくれたと思う。それから何回か相手を頼まれたからな。
食材はこれまでに行ったダンジョンで確保した肉や魚で、これを適当なサイズに切ってお手製のBBQグリルで朝から焼いている。今で三時間くらいだ。もちろんずっと焼いてるのは肉だけな。魚介類は熱を通しすぎると固くなるから、ある程度火を通してストレージに入れた。
ダヴィドは俺が肉体労働をするのを嫌がるけど、エコが「晩餐会では主人が客のために料理を切り分けるのと同じように、BBQでは一家の主人が家族のために調理をするものですよ」というアメリカンな考えを口にしたらアッサリと首を縦に振った。上下関係に厳しいダヴィドだから王女の言葉に逆らうことはない。今度から何かあったらエコに伝えてもらおう。
BBQ用のグリルは炭を入れて上に網を置くだけのものと、上に蓋があって燻製もできるものを用意してある。一部は燻製にして酒によく合うようにしている。
BBQソースも似たようなものでそれっぽく作った。トマトケチャップをベースにタマネギのみじん切り、ウスターソース、醤油、ワインビネガー、レモン汁、砂糖、塩、ハチミツ、チリパウダー、マスタード、ガーリックパウダーなどなど。何を入れてもいいんだけど、ケチャップベースの甘辛で、やや甘みが強いのがBBQソースだろう。
俺としては甘いソースもいいけど、もっとピリッとしたソースも好きだから何種類か用意しておく。これは焼いてから付ける用だ。
仕込んで調理をしてというのは俺一人では大変……でもなく、化身や複体、分身を駆使して大人数でやっている。火の番くらいならステータスが落ちても問題ない。
◆◆◆
「これはいい香りでございますね。特にトウガラシをよく利かせたあたりが」
ブランシュが女性使用人たちを引き連れてやって来た。鼻をスンスンと鳴らしている。彼女はダヴィドよりも頭が柔軟なので、俺がこうしたいと言えば比較的簡単に首を縦に振る。今回もブランシュは一言も文句を言わなかった。
「ヨランド、そう思いませんか?」
聞かれたヨランドは困った顔しかできなかった。
「自業自得ですが、トウガラシはもう……」
彼女は鼻にトウガラシを詰められた一人だった。
ブランシュが課した罰が終わると同時に、鼻にトウガラシを詰められた一四人は風呂に駆け込んだそうだ。誰が隣にいるかも気にせず、泣きながらトウガラシを鼻から掻き出して水で洗い、それでも痛みが取れずに一晩中苦しんだ。翌朝になってエミリアが治癒魔法をかけたら泣いて拝まれたらしい。
それを聞いたブランシュは「エミリア様は甘いですね」と言ったそうだ。彼女のポジションは家政婦長とメイド長の上だから、立場的にメイドたちに厳しくするのは間違いじゃない。俺やエミリアが甘すぎるんだろう。生まれも育ちも貴族なら、自分を賭けの対象にした使用人にどんな罰を与えるか、ブランシュはそれを知っていただけだ。
「そうだ、ミレーヌ。ちょっといいか?」
「はい、何ですか?」
俺はうっかり忘れていた疑問をここで聞くことにした。
「ストレージに生きたままの魚が入ったんだけど、おかしくないか?」
「魚ですか? 入ってもおかしくはないですよ」
そんなのか? 聞いた話と違うんだけど。
「ストレージには人は入りません。だから魚は入ります。それでも容器に入れないと無理だと思いますけど。はみ出さないようにしてくださいね」
はみ出さなければいいのか。ん?
「スキュラたちは入らなかったんだけど、あいつらは人か?」
「いえ、今でも魔物扱いですね。でもシュウジさんにとっては人なんでしょう。スキルというのはそれを持つ人の影響を多少なりとも受けますから」
そんなことを言われてしまった。てことは俺が人だと思えば入らなくて、人じゃないと思えば入るわけか。
「聞いてばかりで悪いけど、人じゃないと思って入れようと思えば入るのか?」
「いえ、口先だけで誤魔化せるほど融通は利かないと思いますよ」
「そういうものか」
スキュラたちを人だと思ったからストレージには入らない。もし魔物だと思っていれば入る。しかも単なるその場だけの考えで誤魔化せるほど簡単じゃないと。
「スキルってよく分からないな」
「特に固有スキルは文字通り固有ですから、ベースは同じでもその人に合わせて変化するようです」
変化するのか。もしかして意識しなくても【カメラ】が勝手にエロいシーンを撮影してくれるのもそのせいかもしれない。しかも最近はシチュエーションごとに勝手に分類までしてくれる。じっくりと観賞する機会はなかなかないけどな。少し前にストレージの中で魔物が解体できるようになったのもそれかもな。
今回はエコとの結婚が決まったことと領地を持つようになったことを祝って、これまで支えてくれた家族や使用人たちのために俺が料理を振る舞うということになっている。だから今日は俺一人で準備から後片付けまで全てを担当する。俺と化身と複体と分身たちがな。最初俺が増えた時は驚いていた使用人たちだけど、今では慣れたものだ。
飲み物はワインとエール、コーヒー、紅茶、果実水などを用意した。時期的に外で食事をするのがキツく感じるかもしれないけど、今日は天気もいいしわりと暖かい。それにバケツコンロをいくつも用意しているから温かいだろう
バケツコンロっていうのは金属製のバケツに穴を空けて空気が通るようにしたものだ。その中に薪を入れると簡単には火が消えない。上に網を乗せればBBQもできる。そのまま持ち帰ることもできるからソロBBQにピッタリだ。
今日ここにいるのは妻と使用人だけじゃなく、いわゆる情婦扱いになるイネスとエステル、そしてまだ手を出してないけどネリーとサビーも来ていた。イネスとエステルはエサを目の前にした犬みたいになってるけど、ネリーとサビーは少し表情が固い。
「王女様と同席とは思いませんでした」
「仕事で王宮に入った時に遠くでお見かけしたくらいで」
「二人も今後はこっち側だからな。俺としては慣れてくれとしか言えない」
昼食時に来る客はいないから門を閉めて門衛たちにも参加させる。全員参加だ。酒を飲んでも飲みすぎなければいい。
BBQというのは最低半日かけてじっくりと焼くもので、短時間で火を通すのはグリルになる。焼肉のことをジャパニーズ・バーベキューと説明しているのを聞いて、知り合ったばかりのアメリカ人女性が怒っていた。「あれは単なるグリルドビーフなのデース! BBQとグリルは違いマース!」って詰め寄られたけど俺のせいじゃない。「日本には日本の良さもあるぞ」と言いながらベッドの中で日本の男の良さを教えた。満足してくれたと思う。それから何回か相手を頼まれたからな。
食材はこれまでに行ったダンジョンで確保した肉や魚で、これを適当なサイズに切ってお手製のBBQグリルで朝から焼いている。今で三時間くらいだ。もちろんずっと焼いてるのは肉だけな。魚介類は熱を通しすぎると固くなるから、ある程度火を通してストレージに入れた。
ダヴィドは俺が肉体労働をするのを嫌がるけど、エコが「晩餐会では主人が客のために料理を切り分けるのと同じように、BBQでは一家の主人が家族のために調理をするものですよ」というアメリカンな考えを口にしたらアッサリと首を縦に振った。上下関係に厳しいダヴィドだから王女の言葉に逆らうことはない。今度から何かあったらエコに伝えてもらおう。
BBQ用のグリルは炭を入れて上に網を置くだけのものと、上に蓋があって燻製もできるものを用意してある。一部は燻製にして酒によく合うようにしている。
BBQソースも似たようなものでそれっぽく作った。トマトケチャップをベースにタマネギのみじん切り、ウスターソース、醤油、ワインビネガー、レモン汁、砂糖、塩、ハチミツ、チリパウダー、マスタード、ガーリックパウダーなどなど。何を入れてもいいんだけど、ケチャップベースの甘辛で、やや甘みが強いのがBBQソースだろう。
俺としては甘いソースもいいけど、もっとピリッとしたソースも好きだから何種類か用意しておく。これは焼いてから付ける用だ。
仕込んで調理をしてというのは俺一人では大変……でもなく、化身や複体、分身を駆使して大人数でやっている。火の番くらいならステータスが落ちても問題ない。
◆◆◆
「これはいい香りでございますね。特にトウガラシをよく利かせたあたりが」
ブランシュが女性使用人たちを引き連れてやって来た。鼻をスンスンと鳴らしている。彼女はダヴィドよりも頭が柔軟なので、俺がこうしたいと言えば比較的簡単に首を縦に振る。今回もブランシュは一言も文句を言わなかった。
「ヨランド、そう思いませんか?」
聞かれたヨランドは困った顔しかできなかった。
「自業自得ですが、トウガラシはもう……」
彼女は鼻にトウガラシを詰められた一人だった。
ブランシュが課した罰が終わると同時に、鼻にトウガラシを詰められた一四人は風呂に駆け込んだそうだ。誰が隣にいるかも気にせず、泣きながらトウガラシを鼻から掻き出して水で洗い、それでも痛みが取れずに一晩中苦しんだ。翌朝になってエミリアが治癒魔法をかけたら泣いて拝まれたらしい。
それを聞いたブランシュは「エミリア様は甘いですね」と言ったそうだ。彼女のポジションは家政婦長とメイド長の上だから、立場的にメイドたちに厳しくするのは間違いじゃない。俺やエミリアが甘すぎるんだろう。生まれも育ちも貴族なら、自分を賭けの対象にした使用人にどんな罰を与えるか、ブランシュはそれを知っていただけだ。
「そうだ、ミレーヌ。ちょっといいか?」
「はい、何ですか?」
俺はうっかり忘れていた疑問をここで聞くことにした。
「ストレージに生きたままの魚が入ったんだけど、おかしくないか?」
「魚ですか? 入ってもおかしくはないですよ」
そんなのか? 聞いた話と違うんだけど。
「ストレージには人は入りません。だから魚は入ります。それでも容器に入れないと無理だと思いますけど。はみ出さないようにしてくださいね」
はみ出さなければいいのか。ん?
「スキュラたちは入らなかったんだけど、あいつらは人か?」
「いえ、今でも魔物扱いですね。でもシュウジさんにとっては人なんでしょう。スキルというのはそれを持つ人の影響を多少なりとも受けますから」
そんなことを言われてしまった。てことは俺が人だと思えば入らなくて、人じゃないと思えば入るわけか。
「聞いてばかりで悪いけど、人じゃないと思って入れようと思えば入るのか?」
「いえ、口先だけで誤魔化せるほど融通は利かないと思いますよ」
「そういうものか」
スキュラたちを人だと思ったからストレージには入らない。もし魔物だと思っていれば入る。しかも単なるその場だけの考えで誤魔化せるほど簡単じゃないと。
「スキルってよく分からないな」
「特に固有スキルは文字通り固有ですから、ベースは同じでもその人に合わせて変化するようです」
変化するのか。もしかして意識しなくても【カメラ】が勝手にエロいシーンを撮影してくれるのもそのせいかもしれない。しかも最近はシチュエーションごとに勝手に分類までしてくれる。じっくりと観賞する機会はなかなかないけどな。少し前にストレージの中で魔物が解体できるようになったのもそれかもな。
今回はエコとの結婚が決まったことと領地を持つようになったことを祝って、これまで支えてくれた家族や使用人たちのために俺が料理を振る舞うということになっている。だから今日は俺一人で準備から後片付けまで全てを担当する。俺と化身と複体と分身たちがな。最初俺が増えた時は驚いていた使用人たちだけど、今では慣れたものだ。
飲み物はワインとエール、コーヒー、紅茶、果実水などを用意した。時期的に外で食事をするのがキツく感じるかもしれないけど、今日は天気もいいしわりと暖かい。それにバケツコンロをいくつも用意しているから温かいだろう
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