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第十六部:領主になること
領地の使用人たちとの顔合わせ(二)
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俺は食事をしながらここにいる使用人たちに今後の予定を説明していた。
俺の横ではララとロラの二人が横笛と竪琴でBGMを流している。二人はパパッと食事を済ませると、今度はもてなす側に回った。味わわなくてもいつでも食べられるからな。
逆にエルネスト以外の使用人たちは、まるでこれが最後の晩餐であるかのように貪り食っていた。マナー的にどうかは今日のところは気にしない。それはエルネストにも言ってある。好きに食べさせろと。仕込みの段階で何となく気づいていたからだ。
「二、三日こちらにいるが、また王都に戻る。年が明けて結婚式が終わったら、中途半端な時期だがこちらで暮らすことになる」
貴族なら冬から春にかけては王都で過ごすのが普通だ。そこでコネを作って情報を交換し、子供の結婚相手を探す。子供たちも社交に出て友人を作り、結婚相手を探す。
貴族に恋人というのはほとんど存在しない。友人の次が婚約者で、その先に進めば夫婦になる。友人の段階で体を重ね、婚約者として相応しいかどうかを確かめることも多いそうだ。体の相性というのも大切だからな。リュシエンヌが引きこもる前に耳にしてしまったのはそういうヒソヒソ話だ。
俺の場合は一月半ばという中途半端な時期に召喚された。それは新年の挨拶も落ち着いたあたりで召喚するという決まりなので仕方ないけど、ちょうど召喚から一年後に結婚式が行われる。
結婚式が終われば俺は領地へ移動し、そのまま領地の方で活動する予定だ。ただ王都の方も放っておくことはできないので、異空間を利用して王都に移動することは決めている。妻たちも結婚式が終わってから順次こちらに引っ越す。
使用人に関しては、上級使用人は基本的に今の場所で働いてもらうとして、下級使用人については必要に応じて職場を変えてもらう。
「全員一度は王都の屋敷を見てもらうつもりだ。それから必要に応じて行ったり来たりして働いてもらうことになる」
「旦那様、それは私たちも王都に行けるということですか?」
唐揚げを口いっぱいに詰め込んだメイド長のクラリスがそう質問した。メイド長なのはメイドの中で年上だからで、そのための教育を受けているとかそういうことではなかった。エルネストがまとめ役として仮のメイド長にしただけで、正式なメイド長ではなかった。
口に入れたまま喋るのは行儀が悪いけど、今日のところは何も言わない。いずれブランシュに叩き直してもらえばいいだろう。
「そうだ。向こうの方が人数が多い。だから基本は向こうの使用人をこちらに連れてくることになる。ただ王都の方が人が多くて華やかなのは間違いないので不満が出ることもあるだろう。だから下級使用人に関しては定期的に入れ替えを行うつもりだ」
「あの~メイド長は~」
「上級か下級かなら下級だろう。だが当初メイド長がいるならそのまま家政婦長になってもらうつもりだった。なりたいか?」
「か、家政婦長ですかあ⁉」
少々お行儀はよくないけど、クラリスはメイドの中で一番年長だ。それでもまだ一〇代後半。他が行儀見習いのような一〇代前半の少女ばかりだから、エルネストはとりあえずクラリスをメイド長にしたということだった。
メイド長はあくまでメイドのまとめ役でしかない。今は女性使用人はほぼメイドしかいないからいいけど、正直なところクラリスには荷が重いだろう。家政婦長になれば女性使用人を取り仕切る必要がある。女性使用人の誰をクビにするか、あるいは誰を新しく雇うか、そういうことをエルネストに提案するのも家政婦長の仕事だ。
「まあ実際クラリスがどういう仕事になるかは向こうの家政婦長に会わせてからでもいい。それに上級使用人だからって王都に連れていかないわけじゃない。ある程度は交流を持たせるつもりだ」
「分かりました。仕事についてはお任せします」
実際に彼女たちを働かせるのは俺じゃない。王都の方で家政婦長になるセリアの判断を仰ぐのが一番いいだろう。ただ年齢を考えればスティルルームメイドのデジレかキトリーをこちらの家政婦長にするのもアリだと思っている。どうせエミリアと一緒にこっちに来るのは間違いないから。
「そのあたりは一度家令のエルネストと向こうにいる執事のダヴィドで話し合いをしてもらうつもりだ。エルネスト、ダヴィドとは顔見知りだったんだな?」
「はい、財務省で働く前に仕事の基礎を教えていただきました」
ミレーヌ経由でダヴィドに手紙を渡して確認したところ、王宮で一緒に働いていたと書いてあった。真面目な男なので信用できると。
「それなら話もしやすいだろう。こことは距離があるが、短時間で移動できる方法がある。使用人をどう融通するか、そのあたりをダヴィドを交えて話をしよう」
「承知いたしました」
数日すれば俺は向こうに戻るけど、その時に複体を一人こちらに残し、その後は王都と領地を異空間で繋げばいい。危険な道中も全てショートカットできる。
ただし移動の途中で金を落とすというのは貴族にとっての務めの一つなのは間違いない。それに自分の領地かそうでないかに関係なく、馬車で移動して途中の領地にいる領主なり代官なりと会うのは礼儀だ。だからいずれはそれもするつもりだ。
俺が領地にいる時には王都の屋敷には複体を置く。俺はどちらにもいるつもりだ。さすがに大臣をする余裕はないけど。そして時期によってはその間を分身に移動させる。つまり俺三人体制だ。そうやって世間体を気にしつつもできる限り楽をする。そのつもりでいる。
俺の横ではララとロラの二人が横笛と竪琴でBGMを流している。二人はパパッと食事を済ませると、今度はもてなす側に回った。味わわなくてもいつでも食べられるからな。
逆にエルネスト以外の使用人たちは、まるでこれが最後の晩餐であるかのように貪り食っていた。マナー的にどうかは今日のところは気にしない。それはエルネストにも言ってある。好きに食べさせろと。仕込みの段階で何となく気づいていたからだ。
「二、三日こちらにいるが、また王都に戻る。年が明けて結婚式が終わったら、中途半端な時期だがこちらで暮らすことになる」
貴族なら冬から春にかけては王都で過ごすのが普通だ。そこでコネを作って情報を交換し、子供の結婚相手を探す。子供たちも社交に出て友人を作り、結婚相手を探す。
貴族に恋人というのはほとんど存在しない。友人の次が婚約者で、その先に進めば夫婦になる。友人の段階で体を重ね、婚約者として相応しいかどうかを確かめることも多いそうだ。体の相性というのも大切だからな。リュシエンヌが引きこもる前に耳にしてしまったのはそういうヒソヒソ話だ。
俺の場合は一月半ばという中途半端な時期に召喚された。それは新年の挨拶も落ち着いたあたりで召喚するという決まりなので仕方ないけど、ちょうど召喚から一年後に結婚式が行われる。
結婚式が終われば俺は領地へ移動し、そのまま領地の方で活動する予定だ。ただ王都の方も放っておくことはできないので、異空間を利用して王都に移動することは決めている。妻たちも結婚式が終わってから順次こちらに引っ越す。
使用人に関しては、上級使用人は基本的に今の場所で働いてもらうとして、下級使用人については必要に応じて職場を変えてもらう。
「全員一度は王都の屋敷を見てもらうつもりだ。それから必要に応じて行ったり来たりして働いてもらうことになる」
「旦那様、それは私たちも王都に行けるということですか?」
唐揚げを口いっぱいに詰め込んだメイド長のクラリスがそう質問した。メイド長なのはメイドの中で年上だからで、そのための教育を受けているとかそういうことではなかった。エルネストがまとめ役として仮のメイド長にしただけで、正式なメイド長ではなかった。
口に入れたまま喋るのは行儀が悪いけど、今日のところは何も言わない。いずれブランシュに叩き直してもらえばいいだろう。
「そうだ。向こうの方が人数が多い。だから基本は向こうの使用人をこちらに連れてくることになる。ただ王都の方が人が多くて華やかなのは間違いないので不満が出ることもあるだろう。だから下級使用人に関しては定期的に入れ替えを行うつもりだ」
「あの~メイド長は~」
「上級か下級かなら下級だろう。だが当初メイド長がいるならそのまま家政婦長になってもらうつもりだった。なりたいか?」
「か、家政婦長ですかあ⁉」
少々お行儀はよくないけど、クラリスはメイドの中で一番年長だ。それでもまだ一〇代後半。他が行儀見習いのような一〇代前半の少女ばかりだから、エルネストはとりあえずクラリスをメイド長にしたということだった。
メイド長はあくまでメイドのまとめ役でしかない。今は女性使用人はほぼメイドしかいないからいいけど、正直なところクラリスには荷が重いだろう。家政婦長になれば女性使用人を取り仕切る必要がある。女性使用人の誰をクビにするか、あるいは誰を新しく雇うか、そういうことをエルネストに提案するのも家政婦長の仕事だ。
「まあ実際クラリスがどういう仕事になるかは向こうの家政婦長に会わせてからでもいい。それに上級使用人だからって王都に連れていかないわけじゃない。ある程度は交流を持たせるつもりだ」
「分かりました。仕事についてはお任せします」
実際に彼女たちを働かせるのは俺じゃない。王都の方で家政婦長になるセリアの判断を仰ぐのが一番いいだろう。ただ年齢を考えればスティルルームメイドのデジレかキトリーをこちらの家政婦長にするのもアリだと思っている。どうせエミリアと一緒にこっちに来るのは間違いないから。
「そのあたりは一度家令のエルネストと向こうにいる執事のダヴィドで話し合いをしてもらうつもりだ。エルネスト、ダヴィドとは顔見知りだったんだな?」
「はい、財務省で働く前に仕事の基礎を教えていただきました」
ミレーヌ経由でダヴィドに手紙を渡して確認したところ、王宮で一緒に働いていたと書いてあった。真面目な男なので信用できると。
「それなら話もしやすいだろう。こことは距離があるが、短時間で移動できる方法がある。使用人をどう融通するか、そのあたりをダヴィドを交えて話をしよう」
「承知いたしました」
数日すれば俺は向こうに戻るけど、その時に複体を一人こちらに残し、その後は王都と領地を異空間で繋げばいい。危険な道中も全てショートカットできる。
ただし移動の途中で金を落とすというのは貴族にとっての務めの一つなのは間違いない。それに自分の領地かそうでないかに関係なく、馬車で移動して途中の領地にいる領主なり代官なりと会うのは礼儀だ。だからいずれはそれもするつもりだ。
俺が領地にいる時には王都の屋敷には複体を置く。俺はどちらにもいるつもりだ。さすがに大臣をする余裕はないけど。そして時期によってはその間を分身に移動させる。つまり俺三人体制だ。そうやって世間体を気にしつつもできる限り楽をする。そのつもりでいる。
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