元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第十五部:勇者の活躍

再びダンジョンへ

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「我々はこれからタイメイユに戻ります」
 逃げ出した役人たちは全て捕縛されたようだ。ていうか逃げだそうとしたやつらを住民たちが捕まえたらしい。まとめて檻のような馬車に入れられている。さすがにオラースは別の馬車のようだ。
「向こうにも俺がいるが、あれは複体だから驚かないでくれ。オラースの移送が終わるまではタイメイユで周囲の警戒をさせる。終わったら自然にいなくなるから気にしないでくれ」
「分かりました」
 俺に同行していたタイメイユの警備兵たちが馬車と一緒に戻っていった。

 俺たちは再びトゥーリアの背に乗るとダンジョンへ向かうことにした。すでに二度目だ。ダンジョンそのものは違うだろうけど、前のダンジョンと大きく違わないという情報は得ている。
 ダンジョンというのはミレーヌやフランにとっても謎の存在で、人間からすると体に付着しているバクテリアのようなものらしい。気がつけば少しずつ変異し、場合によっては別の場所に移動し、あるいは勝手に増えたりする。内部もバラバラで、前に出かけたサン=フォアは石壁のダンジョン、今回のセレンの第一ダンジョンは土壁のダンジョンらしい。ちなみに第二ダンジョンは全く違うそうだ。川の階と海の階が交互にあり、魚介類が豊富らしい。魚介類か。暴走スタンピードが落ち着いたら探索しても面白いだろうな。それくらいはいいだろう。

 ◆◆◆

「「「えいえいおー!」」」
「お前たち、元気だな」
 俺以上にスキュラたちが張り切っていた。彼女たちは俺の従魔だ。それなら俺が戦うなら彼女たちは付き従う。俺がダンジョンに潜るなら彼女たちも潜る。それだけと言えばそれだけなんだけど。
「マスターのお役に立てるのが一番です」
「頑張ってマスターに付いていきます」
「頑張っているマスターの顔が大好きです。特にベッドの中で」
「終わった後の表情も大好きです」
「戻ったら夜が楽しみですね」
「だから話を少しずつずらすのはやめろ」
 今からダンジョンに潜るところだからな。それほど問題はないとは思うんだけど、それでも万が一を考えて気は抜けない。暴走スタンピードの真っ只中のダンジョンだからな。
「トゥーリア、助かった」
《我にとっては散歩にもならん。それでは一足先に町に戻っておる》
「ああ、帰りは自力で帰るから問題ない。ゆっくりしていてくれ。町に何か問題が起きないかだけ見ておいてほしい」
 タイメイユにいる複体はオラースの移送が完了すればセレンに戻す。そして冒険者に変装した上で町の周囲で魔物狩りをさせることにした。まだハグレがいるからな。それに複体がセレンにいれば異空間に入ってすぐにセレンに戻れる。
 正直なところ移動だけなら大した距離じゃない。異空間にスキュラたちを入れて俺一人で走ればあっという間だ。でも町の周囲を警戒するために複体を残しておくなら移動に使える。使える者は使おうって感じだ。
《うむ、分かった。怪我をせぬようにな》
 そう言い残すとトゥーリアはセレンの町に戻っていった。

 俺たちはこれから暴走スタンピードを起こしている第一ダンジョンに潜る。今回は地図を用意した。これで最短距離で下に向かうつもりだ。
 このダンジョンも地下五〇階まであるらしい。そして普段はボス部屋のようなものはあってもボスはいないのは確認済みだ。魔物が出ないので休憩所のようになるらしい。でも領主が金を出さないので、奥深くまで潜る冒険者はあまりいない。
 スキュラたちは暴走スタンピードの少し前にダンジョンに召喚されたようだ。だからもしかしたらこのダンジョンにも何かがいるかもしれない。
「誰がいるのか楽しみです」
「いや、普通に魔物がいるだけかもしれないぞ」
 一〇階ごとに判で押したように同じ顔をしたスキュラが五人いるのは普通おかしい。あまりにも適当だろう。ダンジョンは不思議な存在だ。たまに増えることもあれば減ることもある。いきなり階が増えることもあるし減ることもある。なぜなのかはミレーヌにもフランにも分からない。人間が人体の全てを理解できないのと同じで、神であってもダンジョンが何かまでは分からないそうだ。
「それじゃそろそろ入るぞ」
「「「はいっ!」」」
 スキュラたちの元気な声を聞きながら、俺はダンジョンへと入っていく。これが二つ目のダンジョンになる。前回は地上階には魔物はいなかった。地下一階から地下七階くらいまでは魔物が山のようにいた。そこから数が減り、地下一〇階のボス部屋を抜けたらたまにしか現れなかった。
 さて、このダンジョンは土壁だな。前は石造りだったから若干雰囲気が違う。石だと足音が反響したけど、土だからそこまでは響かない。
「魔物がいませんね」
「ここはまだ地上階だからな。一つ下にはワンサカいるぞ」
「ワンサカですか」
 ここも同じかどうかは分からないけど、何となく同じ気がする。
「そこに下に向かう階段がある。地下一階はおそらく山盛りだぞ」

 ◆◆◆

「マスターはっ、これをっ、一人でっ、クリアしたんですねっ?」
「ああ、そうだ。なかなか大変だろう」
「かなりっ、キツいですっ」
「お前たちがいたダンジョンと同じなら、これも地下八階くらいまでだ。そのうち減ってくる」
 俺の左右でスキュラたちが魔物を狩っている。彼女たちの下半身は大型犬六匹の上半身でできているので、普通に剣が持てない。持っても敵まで届かないからだ。だから魔法で狩っている。前回と同じく【氷の矢】や【石の矢】を使って目を狙う。
 一方で下半身の犬たちは敵が近づけば飛び上がって頭を噛み潰す。頭はそれほど素材としては使われないから問題はない。魔物の頭をそのまま噛み砕いて飲み込んでいるようだ。腹の足しにはなるか。
 スキュラたちはなかなか強いとはいえ、そこまで戦闘慣れしてるわけじゃない。だから俺の右に二人、左に二人が並び、後ろで一人が交代で休憩する形になっている。俺の化身アバターや複体に戦わせることもできるけど、今はそれなしで頑張ってもらっている。要するに経験値稼ぎをしているわけだ。
 この世界のレベルシステムがどうなっているのかは詳しくは分からないけど、キャラクターとしてのレベル、スキルごとのレベル、そしてレベルアップするための熟練度がある。熟練度は表示されなくて、一定の基準まで達すればレベルが上がることになる。でもレベルというのはあくまで分かりやすくするための表示なので、同じレベル二でも、熟練度一〇パーセントと八〇パーセントでは、八〇パーセントの方が威力が増す。
 俺個人の感覚としては、〇から九九九まで熟練度があって、一〇〇に達すればレベル一、二〇〇に達すればレベル二になるんじゃないかと思う。レベル〇ってのは熟練度が〇から九九の間なんだろう。
 俺は生き返った時はキャラクターレベルは一だったけど、今では四八七だ。成長率が三〇二パーセントだから経験値が溜まりやすいけど、四八七というレベルがそれだけ高いのか分からない。
 ただレベルの数字は上がってもステータスの数字は微増だ。一番低かった脚力が二七五から三〇〇になって、これで全部が三〇〇を超えた。生命力、体力、精力、魔力の四つは三〇〇〇超えた。ミレーヌが言ってたけど、成長率は高いけどすでにステータスが高いからほとんど成長しないと。でも俺でも成長することは分かった。でもほぼ頭打ちのようだ。
 スキュラたちが従魔になった時はキャラクターレベルは一で、生命力、体力、精力、魔力は八〇〇前後、他の能力値は二〇〇前後だった。サン=フォアのダンジョンを出た時点で二五、このダンジョンに入ってからかなり戦闘を繰り返したので、今で八六になった。腕力や脚力は二一〇を超えたけど、レベルの上昇を考えるとあまり上がっていない。俺と一緒で最初から高めみたいだからあまり伸びないのかもしれない。でも少しずつは伸びているから、もう少し成長すれば五人それぞれに個性が出てくるかもしれない。
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