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第十五部:勇者の活躍
干物の階
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そんなこんなで食材を集めつつ、いや、魔物を倒しつつ地下一〇階に辿り着いた。
「川と海が交互でしたね」
「おかげで万遍なく集まったな。しかもアルベルティーヌのおかげで生きたまま魚がストレージに入れられることが分かった」
「へへへ」
照れるアルベルティーヌの頭を撫でる。
結局のところ、どうしてそうなのかは分からないけど、樽に入れた魚はそのままストレージに入った。海水があるかどうかは関係なかった。今は樽しかないから分からないけど、もしかしたら容器からはみ出ない限りは収納できるのかもしれない。蓋のあるなしは関係なかったけど、樽からはみ出たらストレージには入らなかった。とりあえず生食はダメと表示されている魚は生食しないけど、生きたまま持って帰る魚がたっぷり用意できた。あえて生きたまま持って帰るのは処理の手間が面倒だからだ。
さて、あれがボス部屋だな。海岸のそばにポツンと石造りの建物がある。あの中にボスがいるのかいないのか。これまでボスらしいボスはいなかったからな。別に俺は冒険者じゃないし大冒険がしたいわけでもないけど、ダンジョンを制覇しておいてボスと戦ったことがないってのは正直どうなんだ?
「よし、それじゃ入るぞ。戦闘になる可能性もあるから油断はするな」
「「「はいっ!」」」
扉を押すと、ゴリゴリっと音がして扉がゆっくりと内側に開いたので中に入る。
「魚が落ちてるな」
部屋の奥の方に大きな魚が落ちているのが見えた。腐ってないよな?
「あ、あれはセイレーンさんです」
「あれがか?」
「はい」
魚じゃなくてセイレーンらしい。近寄ってみるとたしかに上半身が女性だった。意識はないけど死んはいないと思う。冷たくなっていないし呼吸はあるようだ。口が「みず……」と動いたように見えたので、スポーツドリンクを飲ませて鱗には水をかけた。そうした方がいいと思ったからだ。さらに回復魔法もかけておく。
「マスター、どこか寝かせられる場所はありませんか?」
「濡れてもいいものとなると……この上にでも寝かせるか」
通常の敷物は濡れたらダメだから、濡れていいのはこれくらいだ。ソープマット。枕部分もあるからここに頭を乗せて寝かせる。もう一度体に水をかけておく。
====================
【名前:セイレーンA】
【種族:セイレーン】
【年齢:二〇】
【状態:脱水症状】
美しい女性の上半身と魚の下半身を持つキメラの一種。尾鰭の先は二股に分かれていて、少しだけならこれを足のように使って地上で歩くことができる。
陽気な性格で歌が上手い。鱗は乾燥に弱い。乾燥がひどくなると鱗が割れる。
【固有スキル:人化】
これを使用することで下半身が人間と同じになる。他種族との性行為によって妊娠と出産が可能になる。妊娠は任意のタイミングで可能。出産は妊娠からおよそ一〇か月で、妊娠中は下半身を魚に戻すことはできない。子供の種族は父親の種族かセイレーンのどちらかになる。
【固有スキル:魅了】
歌で魅了することができる。魅了の強弱は調節可能。弱い魅了なら思考を少し誘導する程度の効果を持つ。強い魅了はそれをかけた者が指示しなければ指一本動かさないほど強固なものになる。
※注記
【愛の男神シュウジの従魔】
====================
何もしてないのに俺の従魔になっていた。介抱したからか? それにしても、明らかに魚とは文体が違うよなあ。
「とりあえずこの上にでも寝かせて様子を見よう。しばらく休憩にする」
「「「はい」」」
セイレーンが目を覚ますまで俺たちは俺たちで休憩する。スキュラたちも慣れてきたとは思うけど無茶をさせるつもりはない。これまでのパターンならここから先は魔物は少ないけどな。
まだ一〇階だし時間もあまり経っていないから軽食とお茶くらいでいいだろう。テーブルと椅子を出してティータイムだ。スキュラの犬たちには骨を与えておこう。
「ぅ、ぅぅ……」
お茶をしつつ様子を見ているとセイレーンが動いた。クレマンティーヌが近寄っていく。
「マスター、Aさんが目を覚ましました」
「よかった。後は倒れていた影響がないかどうかだな」
魔物を助けてよかったも何もないかもしれないけど、スキュラたちの知り合いがここで死んでたら寝覚めが悪い。
「う、ううん……こ、ここは……あれ?」
「セイレーンのAさん、目が覚めましたか?」
「ええっと、スキュラのC? なんでこんなところに?」
「ここに入ったらAさんが倒れてたんですよ」
「倒れてた……あ!」
セイレーンは上体を起こしてクレマンティーヌの手を掴んだ。
「聞いてよ。いきなりこんな部屋に放り込まれたと思ったら扉が開かないの。私は水がなければ死んじゃうのに水はないし出られないし」
「扉の外は海だったんですよ」
「ど、どうしてそんなことに? 嫌がらせ? 私ってそんな悪いことしてた?」
クレマンティーヌから部屋の外の話を聞いたセイレーンAは愕然とした表情をしていた。どうやら元気キャラみたいだな。髪は長いけどポニーテールにしていて、歌姫のセイレーンってイメージじゃない。カラオケで元気に歌っている体育会系の大学生ってところだ。陸上部とかバレーボール部とか。
そこそこ大きめの胸には貝殻のブラというか水着のようなもの付けている。ホタテっぽい貝殻に穴を空けてツタのようなもので繋げたものだ。ミレーヌに付けさせれたら凄いことになりそうだけど、セイレーンは元気過ぎて色気があまり感じられなさそうだ。あえて言うなら健康美だろうか。
「マスター、私も連れてって」
ひとしきりスキュラたちに愚痴ったからか、今度は俺に話しかけてきた。
「もう俺の従魔になったから置いていくつもりはないぞ」
扉が開いたから死ぬことはないと思うけど、従魔を置き去りにするのはおかしいだろう。
「あ、そうそう、不満があるわけじゃないんだけど、いつ従魔なったの?」
「俺にもよく分からないけど、倒れていたのを介抱して、それからステータスを見たらもう従魔になっていたな」
スキュラたちも人懐っこいけど、セイレーンはそれ以上に人懐っこいかもしれない。スキュラたちが仲良くしていたってのがよく分かる。似たもの同士だな。大学に進学した先輩と高校の後輩たちって感じがする。
とりあえずセイレーンAを連れていくのは間違いない。でもどうやって連れていくか。
「【人化】を使って歩けるか?」
「歩けなくはないけど、慣れてないから遅いと思う。ほとんど使ったことがないから」
「そうか……。乾かないように何か容器に入れて……。いや、入れたら運ぶのが大変か」
何かストレージに入ってないか? セイレーンを運べるようなもの。彼女を水の入った容器に入れて、それを運べればいい……ああ、これがあった。
「外を一緒に移動するのと、俺が作った異空間に入るのとどっちがいい? 異空間の方がゆっくりできるのは間違いない」
「う~~~ん、あまり一人は好きじゃないから一緒でいい?」
「それならこれだな」
俺は樽を取り出した。これに水を張る。
「入れるぞ?」
「ええっと……優しくして……」
「違う違う。樽に入れるぞ」
抱きかかえて樽に入れるとセイレーンAは肩まで水に浸かった。五右衛門風呂みたいだ。
「これをこの荷車に乗せるから、五人は交代でこれを引っ張ってくれ」
「「「はい!」」」
下半身の犬も成長してるから引っ張る力は強い。五人いれば階段だって問題なしだ。魔物が少ないからできることだな。
「さて、これから少し急ぐぞ」
「急ぐんですか?」
ブランディーヌが聞いてきたけど、セイレーンAを見てたら急ぐ必要があるだろう。
「お前たちやアラクネたちがどうだったかを考えてみろ。ここにセイレーンAがいたということは何を意味する?」
「Bさんたちもいるかもしれませんね」
「ああ、そして扉が開かない」
「それならできる限り急がないといけませんね」
「そういうことだ」
セイレーンAは水がなくて干からびかけていた。地下五〇階まで辿り着くにはもう少し時間がかかる。残り四人が召喚されているとして、何かがあるまでに辿り着かなければいけない。
「だから樽を倒さない程度に急ぐぞ」
「「「はい」」」
「川と海が交互でしたね」
「おかげで万遍なく集まったな。しかもアルベルティーヌのおかげで生きたまま魚がストレージに入れられることが分かった」
「へへへ」
照れるアルベルティーヌの頭を撫でる。
結局のところ、どうしてそうなのかは分からないけど、樽に入れた魚はそのままストレージに入った。海水があるかどうかは関係なかった。今は樽しかないから分からないけど、もしかしたら容器からはみ出ない限りは収納できるのかもしれない。蓋のあるなしは関係なかったけど、樽からはみ出たらストレージには入らなかった。とりあえず生食はダメと表示されている魚は生食しないけど、生きたまま持って帰る魚がたっぷり用意できた。あえて生きたまま持って帰るのは処理の手間が面倒だからだ。
さて、あれがボス部屋だな。海岸のそばにポツンと石造りの建物がある。あの中にボスがいるのかいないのか。これまでボスらしいボスはいなかったからな。別に俺は冒険者じゃないし大冒険がしたいわけでもないけど、ダンジョンを制覇しておいてボスと戦ったことがないってのは正直どうなんだ?
「よし、それじゃ入るぞ。戦闘になる可能性もあるから油断はするな」
「「「はいっ!」」」
扉を押すと、ゴリゴリっと音がして扉がゆっくりと内側に開いたので中に入る。
「魚が落ちてるな」
部屋の奥の方に大きな魚が落ちているのが見えた。腐ってないよな?
「あ、あれはセイレーンさんです」
「あれがか?」
「はい」
魚じゃなくてセイレーンらしい。近寄ってみるとたしかに上半身が女性だった。意識はないけど死んはいないと思う。冷たくなっていないし呼吸はあるようだ。口が「みず……」と動いたように見えたので、スポーツドリンクを飲ませて鱗には水をかけた。そうした方がいいと思ったからだ。さらに回復魔法もかけておく。
「マスター、どこか寝かせられる場所はありませんか?」
「濡れてもいいものとなると……この上にでも寝かせるか」
通常の敷物は濡れたらダメだから、濡れていいのはこれくらいだ。ソープマット。枕部分もあるからここに頭を乗せて寝かせる。もう一度体に水をかけておく。
====================
【名前:セイレーンA】
【種族:セイレーン】
【年齢:二〇】
【状態:脱水症状】
美しい女性の上半身と魚の下半身を持つキメラの一種。尾鰭の先は二股に分かれていて、少しだけならこれを足のように使って地上で歩くことができる。
陽気な性格で歌が上手い。鱗は乾燥に弱い。乾燥がひどくなると鱗が割れる。
【固有スキル:人化】
これを使用することで下半身が人間と同じになる。他種族との性行為によって妊娠と出産が可能になる。妊娠は任意のタイミングで可能。出産は妊娠からおよそ一〇か月で、妊娠中は下半身を魚に戻すことはできない。子供の種族は父親の種族かセイレーンのどちらかになる。
【固有スキル:魅了】
歌で魅了することができる。魅了の強弱は調節可能。弱い魅了なら思考を少し誘導する程度の効果を持つ。強い魅了はそれをかけた者が指示しなければ指一本動かさないほど強固なものになる。
※注記
【愛の男神シュウジの従魔】
====================
何もしてないのに俺の従魔になっていた。介抱したからか? それにしても、明らかに魚とは文体が違うよなあ。
「とりあえずこの上にでも寝かせて様子を見よう。しばらく休憩にする」
「「「はい」」」
セイレーンが目を覚ますまで俺たちは俺たちで休憩する。スキュラたちも慣れてきたとは思うけど無茶をさせるつもりはない。これまでのパターンならここから先は魔物は少ないけどな。
まだ一〇階だし時間もあまり経っていないから軽食とお茶くらいでいいだろう。テーブルと椅子を出してティータイムだ。スキュラの犬たちには骨を与えておこう。
「ぅ、ぅぅ……」
お茶をしつつ様子を見ているとセイレーンが動いた。クレマンティーヌが近寄っていく。
「マスター、Aさんが目を覚ましました」
「よかった。後は倒れていた影響がないかどうかだな」
魔物を助けてよかったも何もないかもしれないけど、スキュラたちの知り合いがここで死んでたら寝覚めが悪い。
「う、ううん……こ、ここは……あれ?」
「セイレーンのAさん、目が覚めましたか?」
「ええっと、スキュラのC? なんでこんなところに?」
「ここに入ったらAさんが倒れてたんですよ」
「倒れてた……あ!」
セイレーンは上体を起こしてクレマンティーヌの手を掴んだ。
「聞いてよ。いきなりこんな部屋に放り込まれたと思ったら扉が開かないの。私は水がなければ死んじゃうのに水はないし出られないし」
「扉の外は海だったんですよ」
「ど、どうしてそんなことに? 嫌がらせ? 私ってそんな悪いことしてた?」
クレマンティーヌから部屋の外の話を聞いたセイレーンAは愕然とした表情をしていた。どうやら元気キャラみたいだな。髪は長いけどポニーテールにしていて、歌姫のセイレーンってイメージじゃない。カラオケで元気に歌っている体育会系の大学生ってところだ。陸上部とかバレーボール部とか。
そこそこ大きめの胸には貝殻のブラというか水着のようなもの付けている。ホタテっぽい貝殻に穴を空けてツタのようなもので繋げたものだ。ミレーヌに付けさせれたら凄いことになりそうだけど、セイレーンは元気過ぎて色気があまり感じられなさそうだ。あえて言うなら健康美だろうか。
「マスター、私も連れてって」
ひとしきりスキュラたちに愚痴ったからか、今度は俺に話しかけてきた。
「もう俺の従魔になったから置いていくつもりはないぞ」
扉が開いたから死ぬことはないと思うけど、従魔を置き去りにするのはおかしいだろう。
「あ、そうそう、不満があるわけじゃないんだけど、いつ従魔なったの?」
「俺にもよく分からないけど、倒れていたのを介抱して、それからステータスを見たらもう従魔になっていたな」
スキュラたちも人懐っこいけど、セイレーンはそれ以上に人懐っこいかもしれない。スキュラたちが仲良くしていたってのがよく分かる。似たもの同士だな。大学に進学した先輩と高校の後輩たちって感じがする。
とりあえずセイレーンAを連れていくのは間違いない。でもどうやって連れていくか。
「【人化】を使って歩けるか?」
「歩けなくはないけど、慣れてないから遅いと思う。ほとんど使ったことがないから」
「そうか……。乾かないように何か容器に入れて……。いや、入れたら運ぶのが大変か」
何かストレージに入ってないか? セイレーンを運べるようなもの。彼女を水の入った容器に入れて、それを運べればいい……ああ、これがあった。
「外を一緒に移動するのと、俺が作った異空間に入るのとどっちがいい? 異空間の方がゆっくりできるのは間違いない」
「う~~~ん、あまり一人は好きじゃないから一緒でいい?」
「それならこれだな」
俺は樽を取り出した。これに水を張る。
「入れるぞ?」
「ええっと……優しくして……」
「違う違う。樽に入れるぞ」
抱きかかえて樽に入れるとセイレーンAは肩まで水に浸かった。五右衛門風呂みたいだ。
「これをこの荷車に乗せるから、五人は交代でこれを引っ張ってくれ」
「「「はい!」」」
下半身の犬も成長してるから引っ張る力は強い。五人いれば階段だって問題なしだ。魔物が少ないからできることだな。
「さて、これから少し急ぐぞ」
「急ぐんですか?」
ブランディーヌが聞いてきたけど、セイレーンAを見てたら急ぐ必要があるだろう。
「お前たちやアラクネたちがどうだったかを考えてみろ。ここにセイレーンAがいたということは何を意味する?」
「Bさんたちもいるかもしれませんね」
「ああ、そして扉が開かない」
「それならできる限り急がないといけませんね」
「そういうことだ」
セイレーンAは水がなくて干からびかけていた。地下五〇階まで辿り着くにはもう少し時間がかかる。残り四人が召喚されているとして、何かがあるまでに辿り着かなければいけない。
「だから樽を倒さない程度に急ぐぞ」
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