元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第十四部:それぞれの思惑

タイス

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「そういう趣味か」
「お嫌ですか?」
「嫌じゃないさ。好みは人それぞれだ」
 タイスは俺に近寄るとスンスンと鼻を鳴らした。それから俺の胸に顔をうずめながら何度も深呼吸。しばらくすると脇腹から背中へとその場所を変えた。匂いフェチか。
「私は人の匂いで性格が分かる気がするんです」
「匂いでね。一種の才能だな」
 馬車の中で俺にしがみ付いていたのはそれでか。
「でも香水を使われたらどうするんだ? 貴族なら使うことは多いだろう。俺はそんなには使わないけど」
 香水や香油は貴族なら身だしなみの一部としてよく使われる。俺も多少は使うけどそれほど強いものじゃない。
 この国は日本と比べると全体的に体臭が強い。風呂に入る頻度が少ないというのもあるんだろうけど。それを隠すためにもこういったものが使われる。
 体臭に関して、フランスの小咄の一つにこんなのがある。
 ナポレオンが熟睡していたところ、部下が冗談で鼻先にチーズを近づけたら「おお、ジョゼフィーヌ」と言ったとか。ジョゼフィーヌの後に「今日はもう無理だ」と付ける場合もある。
 エロジョークだから本当に妻のジョゼフィーヌのアソコが臭かったのかどうかは分からないけど、風呂に入る習慣がないとそうなるんだろう。
 俺は元が日本人だからゆっくり湯船に浸かるのが好きだし、妻たちにもその方が体が楽になると言った。それで今ではみんなが湯船にゆっくり浸かるようになった。元から風呂好きなワンコは広い湯船で寝そうになるくらいだ。そして風呂を出たらお楽しみの時間だ。
「香水の匂いは意外に感じないんです。肌の匂いだけがハッキリと感じられます」
「マジで才能だな。それで俺の匂いはどんな感じなんだ?」
 それは気になる点だ。どういう受け止められ方なのか。かなりチャラい匂いがしそうだけど。
「シュウジ様は適度に角があり、適度に丸みを帯びた匂いです。私にはその角のある部分が刺激的に思えます」
「刺激的ねえ」
「これから経験させていただけるんですよね?」
「そのためにここに来たんだろ?」
 また正面に回っていたタイスを抱きしめ、耳にキスをしながらささやくように話しかける。
「その言い方はゾクゾクします」
 わざとそういう言い方をしたからな。そのままタイスの耳に舌を這わせつつ、たまに何かを囁く。しばらくするとタイスが俺の足元にしゃがみ込んだ。
「ではお世話になったシュウジ様に私からご奉仕いたします。ズボンを脱いでベッドに腰をかけてください」
「ああ、分かった」

 ◆◆◆

「ああ、この匂いです。心が引き込まれます」
 タイスがうっとりとした表情で匂いを嗅いでいる。その目の前にあるのは俺のアレだ。先に汗は流しているから匂いがあるわけじゃないと思う。匂いを嗅ぎつつチロチロと舌を這わせている。
「これが男の方のアレですか。リュシエンヌさんが言っていたように、たしかにアーケロンのようですね」
「アーケロン?」
 古代の亀だったか? この国ではそれと同じ名前の魔物か。
「はい。アーケロンに蹂躙されるようだと」
「それってリュシエンヌの書いた小説じゃないか?」
 エロ小説だ。俺とのプレイを参考にして新作を書いている。
「そうです。感想を聞かせてほしいと本が送られてきました」
「偽名で出してるのに、バレたらどうするんだ?」
「私以外には見せていないそうです」
「それなら安心……なのか?」
 そんな話を続けていると焦れてきたのか、タイスは目の前のソレを咥えた。
 ……上手い。本人が言うには未経験らしいから、道具か何かで練習したんだろう。そんなことを考えた瞬間にタイスは口から俺の欲棒を抜いた。その時の「チュポッ」という音が艶かしい。
「タイスさんから紹介してもらった道具を使って練習しました。いかがですか?」
「上手いからビックリした」
「それなら続けますね」
 再び咥えると大きく頭を動かす。次第に俺の方も昂ぶってくる。俺はソッチ系のスキルも多いから、いつでも出すことはできる。タイスも疲れるだろうからそろそろだろうか。
 タイス一番深く咥えたタイミングで喉の奥に出した。下を見ると「ウッ」と短い悲鳴のような声が聞こえたけど、すぐにうっとりとした表情になった。
「ああ、この匂い! 喉の奥から鼻にかけて……幸せです♡」
「そ、そうか?」
「はい♪ 甘くも苦くも感じられますが、鼻に抜ける香りがたまりません」
 気に入ってくれたらしい。俺からすると生臭いだけだと思うけどなあ。
「それは何より。でもそろそろベッドに上がろうか」
「はいっ」
 お互いに全裸になってベッドに座る。タイスは太っているわけじゃない。貴族としては細くないだけだった。標準より少し肉付きがいい体格だろう。貴族の娘は痩せよう痩せようとするけど、そういうダイエットはしてなさそうだ。それがちょうどいい感じに俺の手に馴染む。
「シュウジ様、私の胸はどうですか?」
「ああ、いいな。ほら、俺の手が喜んでるのが分かるか?」
 それからしばらくお互いに体をなで回すと、タイスの口から少しずつ艶声が聞こえてきた。
「シュ、シュウジ様。そろそろ……私のシンとシュウジ様のアーケロンを戦わせませんか?」
「シンって……リュシエンヌに影響されすぎだな」
 シンとはしんのことで、蜃気楼を作る伝説上の生き物だ。この言葉は大ハマグリと蛟竜みずちのどちらも表すけど、リュシエンヌがよくハマグリ女性器の意味で作品に使っている。だから俺も知っていた。
「食うか食われるか、熱い戦いになりそうだな。食われるつもりはないけどな」
「はい。存分にお召し上がりください。採れたてのシンを」

 ◆◆◆

 存分にと言われたのでお好きなように頂いた。うん、何だろう。初めて抱いたのに初めてじゃない気がする。この抱き心地は経験があるんだよなあ。ちょっとふんわりした体型で、でも太ってるわけじゃない。ワンコよりも柔らかい。エミリアはこんな感じだけど、そうじゃない。
 日本なら……んん? ああ、アイコが近いか。俺が最後に世話になった女だ。俺が店で働いてた最後あたりに俺の客になってくれて、そいつのところに店を辞めた後に転がり込んだ。
 衣食住の全てにおいて何もできない女だったけど、金があったからまだ迷惑をかけにくいだろうと思って数か月を一緒に過ごした。壊滅的な家事スキルの持ち主で、最初に教えたのはキュウリの切り方だった。凄いだろ? 二〇代半ばの女にキュウリの切り方を教えたんだぞ。
 でもタイスの反応を見る限りはアイコとは違う。オリエのパターンならもう記憶が戻ってるはずだ。これまでとパターンが違うってこともあるかもしれないけど、あまり知り合いばっかり現れるとここは異世界なのかと思ってしまう。ひょっとして夢でも見てるんじゃないかと。実際にはそんなことはないと思うけど。
 俺がタイスを抱きしめながらそんなことを考えていると、タイスは俺のヘソに鼻を押し付けて何かゴソゴソしている。ヘソの匂いなんか嗅いで嬉しいか?
「何をしてるんだ?」
「おヘソの匂いと味を確認しています」
「確認してどうするんだ? 自分のヘソと比較もできないだろう」
 しばらくするとヘソから舌を離した。そしてモゾモゾと体制を整えると、俺の胸にアゴを乗せた。
「ところでシュウジ様、一つ伺ってもよろしいですか?」
「ん? いいぞ。タイスのは素晴らしかったぞ」
「いやん、そういうことではありません」
 タイスはベッドの上に座り直して俺の顔を見た。
「順番にこだわりがあるわけではありませんが、私はこれで何人目の妻になるのでしょうか?」
「人数か? 順番か?」
「もしよろしければどちらも」
「そうだな……」
 俺が抱いた女はタイスを入れて一四人。順番は……現在も話し合い中だな。そのあたりを簡単に説明した。
「正室ですか」
「ああ、まだ決まらなくてな。爵位だけを考えれば、タイスをどこかの貴族の娘にしてもらって正室にっていうのが一番なんだけどな」
「それはそれで揉めそうですよ?」
「そうなるよなあ」
 もしタイスを正室にすればクローディーヌが笑顔で寄ってくる可能性があるし、エミール殿には嫌みだと思われるかもしれない。俺にタイスの後見をしてほしいと言ってたけど、まさか正室にするなんて想像もしてないだろうからな。ただ結婚までにどこかの貴族の娘にしてもらうってのはありだとは思う。
「まだ日はある。式をするのは決まっているし、最悪は直前でもかまわない。それかタイスがリュシエンヌを説得するかだ」
「でも彼女は見た目以上に頑固なんですよ」
「そうだな」
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