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第一章 第一部
東へ向かう、そして新しい関係
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門が見えなくなったあたりでリゼッタがリスに戻った。
《人の姿で歩くのもいいですが、ケネスの肩の上が落ち着きますね》
「隣を歩くよりも肩の上にいる方が長かったからね」
今日はロゼッタのくっつき具合が強いな。やっぱりあれが理由かな。
飛んでいる鳥を矢で落としながらしばらく歩く。このあたりはちゃんと道があるし、五日ほどで隣町に着くらしい。歩けば五日、荷馬車なら三日か四日。どこの世界でもそうだけど、荷馬車はそれほど速くもなく、歩くのと同じくらいの速度。道が悪いしね。それでも歩くよりも早く着くのは休憩の回数が少ないおかげ。
太陽の具合から、そろそろお昼かな。そう言えば、呼び方は太陽でいいのかな? 太陽っぽいものとか月っぽいものはある。星もあるけど星座はぜんぜん違う。星座って、教えてもらったら確かにそのように見えるけど、まったく知らない星を見て想像するのは難しいよ。何でも十字に見えるからね。
少し道から外れ、布を広げて準備をしようとしたら、向こうから荷馬車が五台近付いててきた。あれがエーギルさんの言っていた商人かな? 思ったより多い。いっそのこと村にちゃんとした店を作ったらいいのに。そこまで必要じゃないんだろうか。
「盗賊に襲われている商人を助けるというフラグは回避できたかな?」
《変なことを気にしますよね。盗賊くらい簡単に退治できるでしょう? むしろそこから権力者に気に入られて成り上がるのはダメなのですか?》
「そこから色々なトラブルに巻き込まれる展開がありえるかなと」
《ケネスは物語の読みすぎです》
「そう言うリゼッタも詳しいよね」
他愛もない話をしながら飽きるまで歩く。暗くなる前に異空間に戻って休む。あの森を出てからはそれほど危険がないので、昼食は外で食べるようにしている。異空間にいる時間は減ったけど活用は増えている。前にも言った燻製作り。鉄を加工して燻製器を作った。
とにかく肉が多い。マジックバッグのおかげで腐りはしないけど、多すぎても使い道がないので、ベーコンなどの燻製にでもして食事のバリエーションを増やそうかと。
保存食にするならしっかり塩漬けしてから時間をかけて燻す必要があるけど、どうせ作った後はマジックバッグに入れるし、なんちゃって燻製でも実は問題ない。本来の燻製となんちゃって燻製の両方を作っておく。
普通の燻製肉以外にも香辛料や香草などを加えてソーセージやサラミ、チョリソなども作っている。途中から魔獣の血も[殺菌]してブラッドソーセージの材料にしている。実は血を[浄化]したら消えて困ったのはここだけの話だ。
サラミは乾燥熟成に時間がかかるけど、そのあたりは樽に時空間魔法の[時間加速]を付与してサラミ専用の魔道具にした。『熟成樽』と呼んでいる。エーギルさんの酒場にあった保管庫とは逆で、外よりも時間が少し早く進むようになる。危険なので生き物は入らないように設定しておいた。
これが大森林にいる時から続けている異空間での作業。スローライフなんて言う気はないけど、どうせ食べるなら美味しい方がいい。
それにしても、大森林で狩った魔獣が多すぎて解体が終わらない。最初はその日のうちに全部終わらせようと思ったけどいきなり無理で、そのうちどんどん溜まっていった。家に戻った時には解体をしているけど、それでもまだ大量に残っている。燻製もやっているし、空いた時間に少しずつ進める感じ。解体を手伝ってくれる助手でもいないかな。
◆ ◆ ◆
「いずれは王都にも行くとして、とりあえずはユーヴィ市、それから領都のキヴィオ市かな。途中に小さな村やもあるけど、寄りたい?」
《全部に寄る必要はないと思いますよ。小さな村はどこでもあまり変わりませんし。よほどの名物があれば別ですが。その前にどこかの町でギルドに登録した方がいいと思います》
「ギルドってあれ?」
《はい、おそらくそのギルドです。次に通る予定のユーヴィ市はそこそこの町ですので、いくつかギルドがありますよ》
「やはりギルドカードとかあるの?」
《ありますが、おそらくケネス思い浮かべたものとは違うと思いますよ。そのあたりの違いは私よりヘルプさんがずっと詳しいですね》
《Q>ギルドカードってどういう物?》
《A>マスターがイメージしているのは、ステータスとかスキルを記録したカードでしょうが、そんな便利な物はありません。名前、種族、発行した場所などが記入された名刺のようなものです。公的な身分証明になりますね》
《Q>やっぱりステータスとかスキルとかの概念はあるの?》
《A>管理データとしてはあります。マスターは準管理者ですので、いつでも他人のステータスが見れますよ。でも他人に見せることはできません。色々な項目がデータ化・数値化されていますが、あくまで管理者側のデータ管理のためです》
《Q>管理者側のデータ管理って?》
《A>簡単に言うと、メタデータを使った管理方法です。図書館なら書誌情報ですね。人にはそれぞれ【名前】や【種族】だけでなく、【スキル】や【特徴】など、様々なデータがあります。これらは生きている間に自動で付加され更新されます。それを検索すれば、どんな能力を持った人がどこにどれだけいるかを調べることができます』
『Q>何のためにそんなことを?』
《A>例えば、ある惑星で魔法を使える人が減ってきたと分かったとします。そのままでは魔法の技術が失われ、文明が急激に衰退するかもしれません。そこで準管理者に普通の冒険者のふりをさせ、魔法の指導のために派遣します。他の例だと、もしレベルの平均が下がってくれば、効率よく倒せる魔獣や魔物を増やして冒険者のレベルの底上げをします。文明を悪化させないためですね》
そういう意味の管理ね。でも何だろう? さっきから何か違和感が……。
《Q>スキルはどうしたら得られるの?》
《A>何かの技術を使えるようになれば自動的にステータスに現れます。例えば、[料理]がなくても料理はできますし、料理を続けて上達すれば、そのうち勝手に[料理]が現れます。スキルは与えられるものではなく、自分で生やすものです》
《Q>管理者が与えることはないの?》
《A>あることもありますが、与えてもその時点では使えません。使えるようになって初めてアクティブになります。ゲームで言うところの『実績解除』で得た『バッジ』に近い感じですね》
《Q>じゃあステータスとかスキルとかを口に出すのはおかしい?》
《A>そうですね。神官や神学者たちはなんとなく気付いていますが。まあステータスを見ることはできませんので、それで実際どうなるものでもありませんが》
《Q>了解》
《Q>ところで一つ確認があるんだけど》
《A>何ですか?》
《Q>口調がだいぶ変わってない?》
《A>マスターに気に入ってもらうには、仕事モードじゃなくてくだけた方がいいかなと思いまして。嫌ですか?》
《Q>……中の人、キャラが変わり過ぎじゃない?》
「やっぱり思っていたようなギルドカードじゃなかったよ。それで、僕はステータスが見れるらしいけど、リゼッタのも見ていい? 僕のと比べたいんだけど」
《私のをですか? はい、構いませんが》
「ありがとう。ええと……[鑑定]はほんとに検索画面だな」
プルダウンメニューやチェックボックスなどで絞り込む感じ。今は細かなステータスはガガッと非表示で。スキルを中心に、条件を絞って、戦闘用やありふれたものは表示を除外してリゼッタと並べて表示するようにして……はい。
【名前:[ケネス]】
【名前:[リゼッタ]】
間違いなくケネスに名前が変わってるね。
【種族:[エルフ?]】
【種族:[デュオ(人間/リス)]】
[エルフ?]の『?』が気になる。文字化けなのか疑問なのか。リゼッタはデュオって種族らしい。デュオって二つとか二人ってことだったね。
【年齢:[二三]】
【年齢:[一八]】
僕は一〇歳ほど若返ったね。そのままでも良かったのに。リゼッタは五つ下か。管理者の年齢ってどうなってるの? 止まるの?
【スキル:[念話][不老][地図(管理者用)][鑑定(管理者用)]】
【スキル:[委員長(特)][念話][不老][変身]】
[地図]と[鑑定]に(管理者用)って付いてるのか。(管理者用)ってことは普通ではない? 普通の[地図]や[鑑定]と管理者用の[地図]や[鑑定]があるのか、それとも[地図]や[鑑定]は管理者用しかないのか、どちらだろう。今度ヘルプさんに聞くか。[不老]はそのままかな。不死ではないと。
リゼッタの[委員長(特)]がすごい。何があっても委員長って感じで。[変身]はリスになるやつかな。
【特徴:[リゼッタの恋人][カローラのお気に入り]】
【特徴:[ケネスの恋人]】
……これはなあ……誰が付けているわけでもないんだっけ。そうなった時点で勝手に付くってヘルプさんは言ってたはず。隠しちゃだめだよね。
「……」
《何かおかしな情報でも表示されていたのですか?》
「リゼッタの種族は[デュオ]っていうの?」
《あまり種族名を口にすることはありませんが、一応そうです。[デュアル]と言われることもあります》
「僕は若返って二三歳になってた。リゼッタは一八歳だけど、管理者になった時はもっと若かったの?」
《いえ、管理者として生まれ変わると基本的には若い姿に戻って固定されます。ですが管理者になる時に希望は聞いてもらえますので、中にはもっと下がいいとかもっと上がいいとか言う人もいます。私の上司にそのような人がいました。種族はそのままだったと思います》
「スキルに[委員長(特)]っていうのがある」
《よく委員長っぽいと言われましたので、いつの間にかスキルになっていましたか。後ろについているのはランク的なものですね》
「(管理者用)ってのはそのまま?」
「はい、管理者になった時に与えられる力です。普通の人が身に付けることはあり得ません。一般用の[鑑定]もありますが、そちらは物の価値が分かる魔法です」
「リゼッタの特徴に[ケネスの恋人]ってあるけど、大丈夫?」
《! ……そ、それってこの前の、あれ、でしょうか?》
「この前の、あれ、だろうねえ……僕の方にも[リゼッタの恋人]ってあるし」
《……》
「……」
《……》
「ずっと大事にするね」
《こちらこそ、末永くよろしくお願いします》
お見合いか。
ステータスについてはヘルプさんに簡単に説明されてるけど、確認のためにリゼッタにも色々と教えてもらった。
【スキル】は身に付いた技術のことで、【特徴】は【スキル】とまでは言えないけど特徴的なもの。どちらも勝手に付くらしい。管理者が付けているわけではない。管理者が付けたからといって使いこなせるわけでもない。
ゲームとかのスキルって、神様から与えられた瞬間にいきなり強くなるイメージがあったけど、全然そういうのではないらしい。ヘルプさんの説明にあった『実績解放のバッジ』というのが言い得て妙。
もう一度自分のスキルをざっと見たら、剣術(特)、弓術(特)、料理(特)なんかがあった。確かに剣も弓矢も使ってたし料理もしてたけど、なんか強くなったよね。全然それらしい訓練は受けてないのに。
ヘルプさんによれば、僕は魂がドーピングされてるらしいよ。嫌な表現だなあ。ちなみにランクは上から順に(特)(大)(中)(小)(微)となる。(微)でもずぶの素人よりはマシらしい。
それと、【特徴】のところがむず痒い。こちらに来てからリゼッタに向かって可愛い可愛いと言って撫でてたら、いつの間にか自分もその気になってたらしい。成り行きとはいえキスもしたしね。まあ何かが変わるわけではないけど、恋人が肩に乗っているというのは微妙に気恥ずかしいな。
「そうそう、恋人同士だと分かったところで、そろそろリゼッタに言っとこうと思って。人間の姿になってもらえる?」
《分かりました》
カローラさんの手紙に書いてあったことね。
「思い出すのは嫌かもしれないけど、この世界に来ることになった件ね」
「いえ、もう吹っ切れましたので大丈夫です」
「カローラさんは僕に、リゼッタを話し相手として使ってくださいと言ってたでしょ?」
「はい。案内よりも、むしろ話し相手をするようにと言われました」
「実はカローラさんからの手紙がマジックバッグにあって、そこに書いてあったんだけど」
「はい」
真剣な表情のリゼッタに、カローラさんの手紙に書いてあったことを掻い摘んで説明した。
「『過小評価しがちで自分を抑えがちなリゼッタを、できるだけ褒めて構って愛でて撫でてください』って。『実はこれは仕事ではなく休暇を与えていることになっているので、できる限り息抜きをさせてあげてください』って。『このことは、どこかのタイミングで本人に教えてあげてください』って」
「ケネス……」
一瞬悲しそうな顔をした。『ひょっとしてあれは頼まれたからそうしてただけなのかな?』って思ったのかな? 違うからね。最後まで聞いてよね。
「リゼッタのことを可愛いと言ってたのはもちろん本心からだよ。口に出したきっかけは手紙かもしれないけどね。でもそう思い始めたらどんどん好きになってたんだよね。いつからかだったかは覚えてないけど」
「最初はやたらと構ってくる人だなと思っていて、そこからそれが気にならなくなっていって、それでなんというか、あの、私も気が付いたら好きになっていました」
「そう言えば、最近肩に乗ってる時、耳にキスしてくることが多いよね」
「! 気付いていたのですか?」
「そりゃもちろん、見えてないけど感触が違うしね」
「~~~~~」
リゼッタと恋人同士になった事が、まさかのステータスチェックによって判明。その日は家に戻ってからずっとリゼッタが離れなかったので、次の朝まで一緒だった。まあそういうことがあったということだ。次の朝に真っ赤になった彼女の顔を見たら部屋から出るのがさらに遅くなってしまった。これは僕が悪い。
だからといって家に籠もって一日中するってことがないのは、元が三〇を越えていたからか、魂と肉体がが変わったからか。リゼッタの方は根が真面目だから、昼間っからというのは抵抗があるみたなので、お互いいい感じでやれていると思う。
恋人同士になってから数日はそういう風に過ぎて行った。
《人の姿で歩くのもいいですが、ケネスの肩の上が落ち着きますね》
「隣を歩くよりも肩の上にいる方が長かったからね」
今日はロゼッタのくっつき具合が強いな。やっぱりあれが理由かな。
飛んでいる鳥を矢で落としながらしばらく歩く。このあたりはちゃんと道があるし、五日ほどで隣町に着くらしい。歩けば五日、荷馬車なら三日か四日。どこの世界でもそうだけど、荷馬車はそれほど速くもなく、歩くのと同じくらいの速度。道が悪いしね。それでも歩くよりも早く着くのは休憩の回数が少ないおかげ。
太陽の具合から、そろそろお昼かな。そう言えば、呼び方は太陽でいいのかな? 太陽っぽいものとか月っぽいものはある。星もあるけど星座はぜんぜん違う。星座って、教えてもらったら確かにそのように見えるけど、まったく知らない星を見て想像するのは難しいよ。何でも十字に見えるからね。
少し道から外れ、布を広げて準備をしようとしたら、向こうから荷馬車が五台近付いててきた。あれがエーギルさんの言っていた商人かな? 思ったより多い。いっそのこと村にちゃんとした店を作ったらいいのに。そこまで必要じゃないんだろうか。
「盗賊に襲われている商人を助けるというフラグは回避できたかな?」
《変なことを気にしますよね。盗賊くらい簡単に退治できるでしょう? むしろそこから権力者に気に入られて成り上がるのはダメなのですか?》
「そこから色々なトラブルに巻き込まれる展開がありえるかなと」
《ケネスは物語の読みすぎです》
「そう言うリゼッタも詳しいよね」
他愛もない話をしながら飽きるまで歩く。暗くなる前に異空間に戻って休む。あの森を出てからはそれほど危険がないので、昼食は外で食べるようにしている。異空間にいる時間は減ったけど活用は増えている。前にも言った燻製作り。鉄を加工して燻製器を作った。
とにかく肉が多い。マジックバッグのおかげで腐りはしないけど、多すぎても使い道がないので、ベーコンなどの燻製にでもして食事のバリエーションを増やそうかと。
保存食にするならしっかり塩漬けしてから時間をかけて燻す必要があるけど、どうせ作った後はマジックバッグに入れるし、なんちゃって燻製でも実は問題ない。本来の燻製となんちゃって燻製の両方を作っておく。
普通の燻製肉以外にも香辛料や香草などを加えてソーセージやサラミ、チョリソなども作っている。途中から魔獣の血も[殺菌]してブラッドソーセージの材料にしている。実は血を[浄化]したら消えて困ったのはここだけの話だ。
サラミは乾燥熟成に時間がかかるけど、そのあたりは樽に時空間魔法の[時間加速]を付与してサラミ専用の魔道具にした。『熟成樽』と呼んでいる。エーギルさんの酒場にあった保管庫とは逆で、外よりも時間が少し早く進むようになる。危険なので生き物は入らないように設定しておいた。
これが大森林にいる時から続けている異空間での作業。スローライフなんて言う気はないけど、どうせ食べるなら美味しい方がいい。
それにしても、大森林で狩った魔獣が多すぎて解体が終わらない。最初はその日のうちに全部終わらせようと思ったけどいきなり無理で、そのうちどんどん溜まっていった。家に戻った時には解体をしているけど、それでもまだ大量に残っている。燻製もやっているし、空いた時間に少しずつ進める感じ。解体を手伝ってくれる助手でもいないかな。
◆ ◆ ◆
「いずれは王都にも行くとして、とりあえずはユーヴィ市、それから領都のキヴィオ市かな。途中に小さな村やもあるけど、寄りたい?」
《全部に寄る必要はないと思いますよ。小さな村はどこでもあまり変わりませんし。よほどの名物があれば別ですが。その前にどこかの町でギルドに登録した方がいいと思います》
「ギルドってあれ?」
《はい、おそらくそのギルドです。次に通る予定のユーヴィ市はそこそこの町ですので、いくつかギルドがありますよ》
「やはりギルドカードとかあるの?」
《ありますが、おそらくケネス思い浮かべたものとは違うと思いますよ。そのあたりの違いは私よりヘルプさんがずっと詳しいですね》
《Q>ギルドカードってどういう物?》
《A>マスターがイメージしているのは、ステータスとかスキルを記録したカードでしょうが、そんな便利な物はありません。名前、種族、発行した場所などが記入された名刺のようなものです。公的な身分証明になりますね》
《Q>やっぱりステータスとかスキルとかの概念はあるの?》
《A>管理データとしてはあります。マスターは準管理者ですので、いつでも他人のステータスが見れますよ。でも他人に見せることはできません。色々な項目がデータ化・数値化されていますが、あくまで管理者側のデータ管理のためです》
《Q>管理者側のデータ管理って?》
《A>簡単に言うと、メタデータを使った管理方法です。図書館なら書誌情報ですね。人にはそれぞれ【名前】や【種族】だけでなく、【スキル】や【特徴】など、様々なデータがあります。これらは生きている間に自動で付加され更新されます。それを検索すれば、どんな能力を持った人がどこにどれだけいるかを調べることができます』
『Q>何のためにそんなことを?』
《A>例えば、ある惑星で魔法を使える人が減ってきたと分かったとします。そのままでは魔法の技術が失われ、文明が急激に衰退するかもしれません。そこで準管理者に普通の冒険者のふりをさせ、魔法の指導のために派遣します。他の例だと、もしレベルの平均が下がってくれば、効率よく倒せる魔獣や魔物を増やして冒険者のレベルの底上げをします。文明を悪化させないためですね》
そういう意味の管理ね。でも何だろう? さっきから何か違和感が……。
《Q>スキルはどうしたら得られるの?》
《A>何かの技術を使えるようになれば自動的にステータスに現れます。例えば、[料理]がなくても料理はできますし、料理を続けて上達すれば、そのうち勝手に[料理]が現れます。スキルは与えられるものではなく、自分で生やすものです》
《Q>管理者が与えることはないの?》
《A>あることもありますが、与えてもその時点では使えません。使えるようになって初めてアクティブになります。ゲームで言うところの『実績解除』で得た『バッジ』に近い感じですね》
《Q>じゃあステータスとかスキルとかを口に出すのはおかしい?》
《A>そうですね。神官や神学者たちはなんとなく気付いていますが。まあステータスを見ることはできませんので、それで実際どうなるものでもありませんが》
《Q>了解》
《Q>ところで一つ確認があるんだけど》
《A>何ですか?》
《Q>口調がだいぶ変わってない?》
《A>マスターに気に入ってもらうには、仕事モードじゃなくてくだけた方がいいかなと思いまして。嫌ですか?》
《Q>……中の人、キャラが変わり過ぎじゃない?》
「やっぱり思っていたようなギルドカードじゃなかったよ。それで、僕はステータスが見れるらしいけど、リゼッタのも見ていい? 僕のと比べたいんだけど」
《私のをですか? はい、構いませんが》
「ありがとう。ええと……[鑑定]はほんとに検索画面だな」
プルダウンメニューやチェックボックスなどで絞り込む感じ。今は細かなステータスはガガッと非表示で。スキルを中心に、条件を絞って、戦闘用やありふれたものは表示を除外してリゼッタと並べて表示するようにして……はい。
【名前:[ケネス]】
【名前:[リゼッタ]】
間違いなくケネスに名前が変わってるね。
【種族:[エルフ?]】
【種族:[デュオ(人間/リス)]】
[エルフ?]の『?』が気になる。文字化けなのか疑問なのか。リゼッタはデュオって種族らしい。デュオって二つとか二人ってことだったね。
【年齢:[二三]】
【年齢:[一八]】
僕は一〇歳ほど若返ったね。そのままでも良かったのに。リゼッタは五つ下か。管理者の年齢ってどうなってるの? 止まるの?
【スキル:[念話][不老][地図(管理者用)][鑑定(管理者用)]】
【スキル:[委員長(特)][念話][不老][変身]】
[地図]と[鑑定]に(管理者用)って付いてるのか。(管理者用)ってことは普通ではない? 普通の[地図]や[鑑定]と管理者用の[地図]や[鑑定]があるのか、それとも[地図]や[鑑定]は管理者用しかないのか、どちらだろう。今度ヘルプさんに聞くか。[不老]はそのままかな。不死ではないと。
リゼッタの[委員長(特)]がすごい。何があっても委員長って感じで。[変身]はリスになるやつかな。
【特徴:[リゼッタの恋人][カローラのお気に入り]】
【特徴:[ケネスの恋人]】
……これはなあ……誰が付けているわけでもないんだっけ。そうなった時点で勝手に付くってヘルプさんは言ってたはず。隠しちゃだめだよね。
「……」
《何かおかしな情報でも表示されていたのですか?》
「リゼッタの種族は[デュオ]っていうの?」
《あまり種族名を口にすることはありませんが、一応そうです。[デュアル]と言われることもあります》
「僕は若返って二三歳になってた。リゼッタは一八歳だけど、管理者になった時はもっと若かったの?」
《いえ、管理者として生まれ変わると基本的には若い姿に戻って固定されます。ですが管理者になる時に希望は聞いてもらえますので、中にはもっと下がいいとかもっと上がいいとか言う人もいます。私の上司にそのような人がいました。種族はそのままだったと思います》
「スキルに[委員長(特)]っていうのがある」
《よく委員長っぽいと言われましたので、いつの間にかスキルになっていましたか。後ろについているのはランク的なものですね》
「(管理者用)ってのはそのまま?」
「はい、管理者になった時に与えられる力です。普通の人が身に付けることはあり得ません。一般用の[鑑定]もありますが、そちらは物の価値が分かる魔法です」
「リゼッタの特徴に[ケネスの恋人]ってあるけど、大丈夫?」
《! ……そ、それってこの前の、あれ、でしょうか?》
「この前の、あれ、だろうねえ……僕の方にも[リゼッタの恋人]ってあるし」
《……》
「……」
《……》
「ずっと大事にするね」
《こちらこそ、末永くよろしくお願いします》
お見合いか。
ステータスについてはヘルプさんに簡単に説明されてるけど、確認のためにリゼッタにも色々と教えてもらった。
【スキル】は身に付いた技術のことで、【特徴】は【スキル】とまでは言えないけど特徴的なもの。どちらも勝手に付くらしい。管理者が付けているわけではない。管理者が付けたからといって使いこなせるわけでもない。
ゲームとかのスキルって、神様から与えられた瞬間にいきなり強くなるイメージがあったけど、全然そういうのではないらしい。ヘルプさんの説明にあった『実績解放のバッジ』というのが言い得て妙。
もう一度自分のスキルをざっと見たら、剣術(特)、弓術(特)、料理(特)なんかがあった。確かに剣も弓矢も使ってたし料理もしてたけど、なんか強くなったよね。全然それらしい訓練は受けてないのに。
ヘルプさんによれば、僕は魂がドーピングされてるらしいよ。嫌な表現だなあ。ちなみにランクは上から順に(特)(大)(中)(小)(微)となる。(微)でもずぶの素人よりはマシらしい。
それと、【特徴】のところがむず痒い。こちらに来てからリゼッタに向かって可愛い可愛いと言って撫でてたら、いつの間にか自分もその気になってたらしい。成り行きとはいえキスもしたしね。まあ何かが変わるわけではないけど、恋人が肩に乗っているというのは微妙に気恥ずかしいな。
「そうそう、恋人同士だと分かったところで、そろそろリゼッタに言っとこうと思って。人間の姿になってもらえる?」
《分かりました》
カローラさんの手紙に書いてあったことね。
「思い出すのは嫌かもしれないけど、この世界に来ることになった件ね」
「いえ、もう吹っ切れましたので大丈夫です」
「カローラさんは僕に、リゼッタを話し相手として使ってくださいと言ってたでしょ?」
「はい。案内よりも、むしろ話し相手をするようにと言われました」
「実はカローラさんからの手紙がマジックバッグにあって、そこに書いてあったんだけど」
「はい」
真剣な表情のリゼッタに、カローラさんの手紙に書いてあったことを掻い摘んで説明した。
「『過小評価しがちで自分を抑えがちなリゼッタを、できるだけ褒めて構って愛でて撫でてください』って。『実はこれは仕事ではなく休暇を与えていることになっているので、できる限り息抜きをさせてあげてください』って。『このことは、どこかのタイミングで本人に教えてあげてください』って」
「ケネス……」
一瞬悲しそうな顔をした。『ひょっとしてあれは頼まれたからそうしてただけなのかな?』って思ったのかな? 違うからね。最後まで聞いてよね。
「リゼッタのことを可愛いと言ってたのはもちろん本心からだよ。口に出したきっかけは手紙かもしれないけどね。でもそう思い始めたらどんどん好きになってたんだよね。いつからかだったかは覚えてないけど」
「最初はやたらと構ってくる人だなと思っていて、そこからそれが気にならなくなっていって、それでなんというか、あの、私も気が付いたら好きになっていました」
「そう言えば、最近肩に乗ってる時、耳にキスしてくることが多いよね」
「! 気付いていたのですか?」
「そりゃもちろん、見えてないけど感触が違うしね」
「~~~~~」
リゼッタと恋人同士になった事が、まさかのステータスチェックによって判明。その日は家に戻ってからずっとリゼッタが離れなかったので、次の朝まで一緒だった。まあそういうことがあったということだ。次の朝に真っ赤になった彼女の顔を見たら部屋から出るのがさらに遅くなってしまった。これは僕が悪い。
だからといって家に籠もって一日中するってことがないのは、元が三〇を越えていたからか、魂と肉体がが変わったからか。リゼッタの方は根が真面目だから、昼間っからというのは抵抗があるみたなので、お互いいい感じでやれていると思う。
恋人同士になってから数日はそういう風に過ぎて行った。
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―――――――――
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よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
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こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
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