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第一章 第一部
独白:あるギルド長の愚痴
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誰も来ねえな。他の二人の前には人がいるのにな。
ユーヴィ市冒険者ギルドのルボルだ。若い頃は冒険者をしていてな、体格が良かったから前衛だった。重戦士ってやつだな。パーティーの中では一番怪我をしやすいから、いつも傷だらけだった。怪我をしてもすぐに肉体回復薬を使えば傷跡は残らねえが、当時はそんな金もなかったからな、薬草を乗せて包帯を巻くだけだった。
そうやってそれなりの年まで働けば、どんどん傷も増えるし表情も険しくなる。自分で言うのもなんだが、子供の頃は可愛かったぞ? それを怖いだのゴツいだの、みんな好き勝手言いやがって。こんな見てくれでも妻も子供もいるし、もうすぐ孫ができるそうだ。
そんな俺がどうして受付にいるかというと、単に受付が足りねえからだ。あまり人員に余裕もねえし、ギルド長なんて折衝くらいしか仕事がないからな。逆にギルド長に仕事がありすぎるのも問題だろう。どんな危険地帯に町があるんだよ。まあ俺が下りても役には立たねえがな、この窓口には誰も来ねえから。意味があるとすれば空席を埋める、ただそれだけだ。
そんな事を考えていると、二人連れが入ってきた。見たことねえな。エルフの男はとびきりの美形だ。これだからエルフは……チッ。人間の女も背は低いがキリッとかなりの美人、いや若そうだから美少女だな。二人揃うと様になるな。それでそのエルフが俺の方を向いた。なんでこっちに来る?
『なんで俺の方に来たのか』と聞いてみたら、『登録するなら誰でも同じだ』と言いやがった。『美人の方がいいと思うがな』と言ったら笑ってやがった。こいつはあれだ、見た目は単なる優男だが、一本芯が通ったやつだ。
エルフの男はケネス、人間の女はリゼッタという名前だった。手続きを済ませて簡単に説明すると、さっそく掲示板から依頼票を一枚持ってきた。手持ちにある素材だと言ったのはホーンラビットの角だ。武器の材料になる。これは領主からの依頼で、だいぶ前から貼ってあるものだ。ここに持ち込まれれば送るようにしているが、複数持ち込まれることはあまりねえ。だから貼りっぱなしだ。実質的な常時依頼ってやつだ。
依頼票には具体的な数が書いてねえから『どれだけ出せるか』と聞いたら、『どれだけ必要なのか』と聞いてきた。こいつらはヤバい。見た目は優男と美少女だが、あれを軽々と狩れるなら相当な実力者だ。腹の探り合いじゃねえが、『二〇から三〇は欲しい』と言ってみたら、『とりあえず五〇出しましょう』ときた。
窓口で出してもらおうと思ったら、首を落としてそのままって、頭ごとか! これだからマジックバッグを持ってるヤツは……窓口を血だらけにするわけにもいかねえから裏へ回ってもらって休憩室で出してもらった。二つの桶を山盛りにしてギリギリだ。何度も凄惨な情景を見てきたが、さすがにこれは心が冷えるな。
『どこで狩ってきたのか』と聞いたら、『西の大森林を通って来た』と返ってきた。行ってきたんじゃなくて抜けてきたと。どこから入ったのかは知らねえが、その実力があれば一〇〇や二〇〇は狩ってるだろう。
それにしても、あの森かあ……尻に噛み付く毒蛇がいるんだよな。
血気盛んな若い頃の話だが、二つのパーティー合計八人で西の大森林に狩りに行ってな、そこまで奥に入ったわけじゃねえがそれなりの収穫はあった。ただあの森は油断ならねえ。特にあの蛇は地面からいきなり飛び出してくるんだよ。しかも後ろから。
噛まれそうになった魔法使いが慌てて避けたら、前にいた僧侶が驚いて振り返ってな。それで分かるだろ? あの蛇が最初に狙うのはなぜか尻だ。だが目の前に噛むものがあれば、どんなバカでも普通はそのままそこに噛み付くよな。あの瞬間、みんな内股になったな。[解毒]と[回復]のおかげで一命は取り留めたが、あいつは心が折れたらしくてな、信仰に命を捧げるとか言って冒険者を辞めた。あれから王都に行ったはずだ。今はどうしているのか……。
話が逸れた。
この二人はしばらくこの町にいてくれるらしいから、他に売れるものがあれば売って欲しいと頼んでおいた。あんまり物がねえんだよこの町には。
帰り際に燻製肉をくれた。あの森の猪で作ったものだそうだ。今日の晩酌のつまみだな。
あいつらが帰った後、隣の席のミリヤが血相変えて飛んできた。どうして自分にあいつの担当を振ってくれなかったのかと文句を言ってきた。あいつらがこっちに来たんだよ。俺が呼んだんじゃねえよ。
こう言っちゃなんだが、ミリヤは顔もスタイルもいい。それにあの胸だ。見た目だけならいくらでも男が寄ってくる。みんなすぐに逃げるがな。
それにしてもでけえ声だな。耳が痛えわ。大声で言いたいことだけ言って休憩に行きやがった。受付が一人減ったけど、俺のところにはやっぱり誰も来ねえなあ。マノンが一人で頑張ってる。悪いなあ、マノン。こいつは既婚者で余裕があるからな。美人で落ち着きもあるし、あれで腕も確かだ。嫁にするならこういう女のほうがいいだろうよ。
とりあえず一つやっかいな依頼が片付いたな。領主もあれだけあればしばらく無理は言ってこねえだろう。
……って、兎の頭、休憩室に置いたままだった!
ユーヴィ市冒険者ギルドのルボルだ。若い頃は冒険者をしていてな、体格が良かったから前衛だった。重戦士ってやつだな。パーティーの中では一番怪我をしやすいから、いつも傷だらけだった。怪我をしてもすぐに肉体回復薬を使えば傷跡は残らねえが、当時はそんな金もなかったからな、薬草を乗せて包帯を巻くだけだった。
そうやってそれなりの年まで働けば、どんどん傷も増えるし表情も険しくなる。自分で言うのもなんだが、子供の頃は可愛かったぞ? それを怖いだのゴツいだの、みんな好き勝手言いやがって。こんな見てくれでも妻も子供もいるし、もうすぐ孫ができるそうだ。
そんな俺がどうして受付にいるかというと、単に受付が足りねえからだ。あまり人員に余裕もねえし、ギルド長なんて折衝くらいしか仕事がないからな。逆にギルド長に仕事がありすぎるのも問題だろう。どんな危険地帯に町があるんだよ。まあ俺が下りても役には立たねえがな、この窓口には誰も来ねえから。意味があるとすれば空席を埋める、ただそれだけだ。
そんな事を考えていると、二人連れが入ってきた。見たことねえな。エルフの男はとびきりの美形だ。これだからエルフは……チッ。人間の女も背は低いがキリッとかなりの美人、いや若そうだから美少女だな。二人揃うと様になるな。それでそのエルフが俺の方を向いた。なんでこっちに来る?
『なんで俺の方に来たのか』と聞いてみたら、『登録するなら誰でも同じだ』と言いやがった。『美人の方がいいと思うがな』と言ったら笑ってやがった。こいつはあれだ、見た目は単なる優男だが、一本芯が通ったやつだ。
エルフの男はケネス、人間の女はリゼッタという名前だった。手続きを済ませて簡単に説明すると、さっそく掲示板から依頼票を一枚持ってきた。手持ちにある素材だと言ったのはホーンラビットの角だ。武器の材料になる。これは領主からの依頼で、だいぶ前から貼ってあるものだ。ここに持ち込まれれば送るようにしているが、複数持ち込まれることはあまりねえ。だから貼りっぱなしだ。実質的な常時依頼ってやつだ。
依頼票には具体的な数が書いてねえから『どれだけ出せるか』と聞いたら、『どれだけ必要なのか』と聞いてきた。こいつらはヤバい。見た目は優男と美少女だが、あれを軽々と狩れるなら相当な実力者だ。腹の探り合いじゃねえが、『二〇から三〇は欲しい』と言ってみたら、『とりあえず五〇出しましょう』ときた。
窓口で出してもらおうと思ったら、首を落としてそのままって、頭ごとか! これだからマジックバッグを持ってるヤツは……窓口を血だらけにするわけにもいかねえから裏へ回ってもらって休憩室で出してもらった。二つの桶を山盛りにしてギリギリだ。何度も凄惨な情景を見てきたが、さすがにこれは心が冷えるな。
『どこで狩ってきたのか』と聞いたら、『西の大森林を通って来た』と返ってきた。行ってきたんじゃなくて抜けてきたと。どこから入ったのかは知らねえが、その実力があれば一〇〇や二〇〇は狩ってるだろう。
それにしても、あの森かあ……尻に噛み付く毒蛇がいるんだよな。
血気盛んな若い頃の話だが、二つのパーティー合計八人で西の大森林に狩りに行ってな、そこまで奥に入ったわけじゃねえがそれなりの収穫はあった。ただあの森は油断ならねえ。特にあの蛇は地面からいきなり飛び出してくるんだよ。しかも後ろから。
噛まれそうになった魔法使いが慌てて避けたら、前にいた僧侶が驚いて振り返ってな。それで分かるだろ? あの蛇が最初に狙うのはなぜか尻だ。だが目の前に噛むものがあれば、どんなバカでも普通はそのままそこに噛み付くよな。あの瞬間、みんな内股になったな。[解毒]と[回復]のおかげで一命は取り留めたが、あいつは心が折れたらしくてな、信仰に命を捧げるとか言って冒険者を辞めた。あれから王都に行ったはずだ。今はどうしているのか……。
話が逸れた。
この二人はしばらくこの町にいてくれるらしいから、他に売れるものがあれば売って欲しいと頼んでおいた。あんまり物がねえんだよこの町には。
帰り際に燻製肉をくれた。あの森の猪で作ったものだそうだ。今日の晩酌のつまみだな。
あいつらが帰った後、隣の席のミリヤが血相変えて飛んできた。どうして自分にあいつの担当を振ってくれなかったのかと文句を言ってきた。あいつらがこっちに来たんだよ。俺が呼んだんじゃねえよ。
こう言っちゃなんだが、ミリヤは顔もスタイルもいい。それにあの胸だ。見た目だけならいくらでも男が寄ってくる。みんなすぐに逃げるがな。
それにしてもでけえ声だな。耳が痛えわ。大声で言いたいことだけ言って休憩に行きやがった。受付が一人減ったけど、俺のところにはやっぱり誰も来ねえなあ。マノンが一人で頑張ってる。悪いなあ、マノン。こいつは既婚者で余裕があるからな。美人で落ち着きもあるし、あれで腕も確かだ。嫁にするならこういう女のほうがいいだろうよ。
とりあえず一つやっかいな依頼が片付いたな。領主もあれだけあればしばらく無理は言ってこねえだろう。
……って、兎の頭、休憩室に置いたままだった!
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