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第一章 第二部
エリーとミシェルとの会話
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! ここは?
はっと目が覚めた。しばらく天井を見ていると、横から視線を感じました。うっとりするほど美形の男性が、ベッドのすぐ横にある椅子に座ってこちらを見ていました。この方はエルフですね。なんでしょう、この気分は……。
「目が覚めましたか?」
「あの……ここは?」
「ここは僕の家です。たまたまキヴィオ市の方へ向かっている時に、あなたと女の子を見付けまして、それでここに運び込みました」
「そうでしたか……! 娘は?」
荷馬車を森の近くに止めて馬を休ませている時に、何かいきなり大きな音がしてこちらに傾いて……。
「やはり娘さんでしたか。安心してください。娘さんも、大丈夫です。それよりも……」
「はい、なんでしょうか?」
彼は少し言いにくそうにしながら鏡を渡してきました。
「覚悟をしてから、自分の顔を見て下さい」
「顔を?」
ひょっとして大きな傷でも出来たのでしょうか? 私の顔がどうなろうが、娘の命が助かったのなら問題ありませんが。
どうせ田舎に引っ込むつもりで出てきたのですから、娘がいれば大丈夫、と自分に言い聞かせました。そう思って鏡を覗くと……。
「……誰?」
「あなたですよ」
「……どうして鏡にエルフが?」
「ですから、そのエルフが、今の、あなたの顔です」
「……超絶美形ですよ?」
「はい。超絶美形です」
「……これが私ですか?」
「はい、実はお二人に使った薬なのですが……」
彼の話によると、私たちに使った薬というのは『蘇生薬』、つまり『生き返らせる薬』だそうです。私たちは二人とも助からなかったいうとこでした。
街道から逸れて森の近くを歩いていたら潰れた荷馬車を見つけたこと。それを動かすと私たちの遺体があったこと。
見つけた時の様子から、私が娘を庇おうとしていたこと。たまたま蘇生薬を持っていたのでそれを使ったこと。その薬で必ず生き返る保証はなかったけど、たまたま上手くいったことなどを話してくれました。
「その蘇生薬はエルフのある女性が作った物なのですが、彼女の力が強すぎるようで、生き返るとなぜかエルフになってしまうというおかしな副作用があるんです。そのせいでお二人ともエルフになってしまいました」
勝手な事をしてすみませんと彼は私に頭を下げました。
「目が覚めたばかりでしょうが、体の具合はいかがですか?」
「気分は悪くないのですが、少し体がだるいです」
「おそらく体が変わってしまったせいでしょうね。もうしばらく休んでいてください」
娘さんが目を覚まして落ち着いたら下へ来てください、と言って彼は部屋を出て行きました。
彼が座っていた椅子の向こうにはもう一つベッドがあって、そのベッドには可愛らしいエルフの少女が寝ていました。確かに見た目はかなり変わりましたが、寝顔の目元や口元などには娘の特徴が残っていました。
◆ ◆ ◆
「やっぱり母娘だったよ。母親の方が先に目を覚ましたから、簡単に説明しておいたよ。娘さんが目を覚まして落ち着いたら下へ来てください、と伝えておいたから」
リビングに戻るとリゼッタがお茶を淹れてくれたので、それを飲みながら様子を話した。
「でも、目が覚めていきなり自分の顔が変わってたらどう思うんだろうね?」
「本当に申し訳あ……」
「あ、いやいや、リゼッタに言ったわけじゃないって。そもそも僕が自分の顔を見たのはこっちに来てからだったし、種族が変わったと知ってからけっこう時間もあったしね」
「守護妖精にとっては~自分が守る対象が美形なら~やる気は爆上がりがりですよ~」
「だめでしょ、それじゃ」
「美形じゃないからって~手を抜いたりはしませんよ~。通常のやる気にさらに上乗せでドンです~」
「それならいい、のかな?」
「まあ鏡を見て少しショックを受けてたみたいだけど、こればっかりは慣れてもらうしかないよね。二人が落ち着くまで、しばらくはここにいてもらおうと思ってるから、二人にもサポートをお願いね」
「分かりました」
「子供の相手はお任せください~。予行演習です~」
「何の?」
◆ ◆ ◆
「……ん……あれ? ……ここは?」
「ミシェル、大丈夫? 気分は悪くない?」
「うん……だいじょーぶ……」
「……よかった……」
「あれ? え? だれ?」
「ママよ」
「えー?」
「だから、ママよ」
「ママはそんなにきれーじゃない!」
「はうっ!」
「そうだけど~、そうなんだけど~……ミシェル、はい鏡。自分の顔を見て」
「かがみ? うん……これだれ?」
「あなたよ、ミシェル」
「なんでエルフがうつってるの?
「だから、そのエルフが、今の、あなたの顔よ」
「ちょーぜつびけい」
「そうね、超絶美形ね」
「これがわたしのかお……」
似たもの母娘だった。
◆ ◆ ◆
「助けていただいて、本当にありがとうございます」
「ありがとーございます」
「実際には救えなかったからこうなったんだけどね」
しばらくして二人が下りてきたので、お茶を飲みながらあらためて事情を聞く。娘さんにはクッキーとジュースを用意している。
母親はエリーさん、娘はミシェルちゃん。ミシェルちゃんは五歳だとアピールしてきた。エリーさんには聞いてないから分からない。
エリーさんは商人見習いだった頃、行商人だったユベールさんと知り合い、追いかけていって結婚したらしい。二人でキヴィオ市に店を開き、夫は主に仕入れを担当、エリーさんは店で販売をしていた。すぐにミシェルちゃんが生まれたけど、それからしばらくして夫を病気で亡くしてしまったらしい。
「夫は商人としてはやり手で、当時は蓄えも十分にありました。ただ彼が亡くなってからは仕入れに余計にお金がかかるようになりまして、すぐに困窮するほどではなかったのですが、いずれはそうなるに違いありません。それで無一文になって困る前に店を畳みました。移り住む先はキヴィオ市から西へ向かってパダ町か、そこでも無理ならその南にあるヴァスタ村、もしくはずっと西のナルヴァ村のどこかを考えていました」
「話は分かりました。僕から言えるとすれば、『生きてさえいればどうとでもなる』ということくらいですね。身の振り方はこれから考えましょう。この家にどれだけいてもらっても問題ありませんよ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、しばらくここに置いてください。見た目が変わりすぎましたので、正直どうしたらいいのか」
「ママがきれーになったからうれしー」
「ミシェルはそう言うけど、私は綺麗になりすぎたのがちょっとね……」
「そのうち慣れますよ。僕もそうでしたから」
「ケネス様も!?」
「まったく同じではありませんが、僕も元々は人間です。エルフになってから実はまだ一か月くらいです。自分がエルフになったことをよく忘れそうになるくらいです」
「ぐぬぬぬぬ……」
「リゼッタさん、夫の浮気現場を目撃した妻の再現ドラマですか~?」
「なんですか、それは。別に悔しいとかではないですよ?」
「以前マスターに~『そのうちこの家には人が増えますよ~』みたいな事を言ってたじゃないですか~。今さら嫉妬もないでしょう~」
「それを言ったことは覚えていますよ。そうではなくて、あの三人が話している姿があまりにも様になっていて」
「確かにそうですね~。美形の夫と美人の妻~そして可愛い娘~。典型的な幸せ家族ですね~。覗いているこっちが恥ずかしくなってきますね~」
「私もあの薬を使っていっそエルフに……」
「だいぶ丸くなったと思いましたが~思い詰めるところは全然変わってないですね~」
「『パパ』ってよんでいーい?」
「「ブホッ!」」
鼻にお茶が! エリーさんも咳き込んでいる。向こうでガシャンという音がした。
「ごほっごほっ……こら、ミシェル、いきなり失礼でしょ!」
「えー、でもパパほしー……」
「どうしたの? 今までそんなこと言わなかったでしょ?」
「でも……」
あー、この表情は、ずっと我慢してきて耐えられなくなった顔だ。五歳なら普通はもっとわがままを言うものだろうけど、小さいのにずっと空気を読んできたんだろう。お母さんが一人でずっと頑張っていたからね。
「ミシェルちゃん、僕はパパじゃないけど、パパって呼んでもいいよ」
「ほんと?」
「ほんと。僕も『ミシェル』って呼ぶから」
「やったー!」
ミシェルが抱きついてきた。生まれてすぐに父親を亡くしたから、父親のことは知らないだろう。他の家族を見て羨ましいと思ったこともあっただろうし。もう少し大きければいい子のままでいようともっと我慢を続けたかもしれない。
「ケネス様、よろしいのですか? そんなこと言って」
「いいですよ。エリーさんも、もっと楽に話して」
「お世話になっておいてあまり楽にするのも」
「じゃあ僕は『エリー』って呼ぶから、僕のことは『ケネスさん』くらいで」
「いえ、さすがに……」
「ほらほら、エリー、『ケネスさん』でいいから」
「! ……で、では、お言葉に甘えて、こほん……『あなた』」
「ゴホッ!」
「ふふっ、冗談です」
……鼻の奥が痛い……やるな、エリー。
ミシェルも、パパだー、ママだーって笑ってるし、子供は笑顔が一番。
「ぐぬぬぬぬ……」
「リゼッタさん、それ以上続けると顔が崩れますよ~」
「私だって子供くらいは!」
「そのうちできますって~」
「……リゼッタもカロリッタも、そんなところでコント?」
「リゼッタさんが思い詰めてますよ~。マスター、少しかまってあげてください~」
「リゼッタ様、すみません! ほんの冗談ですから!」
「……いえ、大変な思いをされたのはお二人ですから。私も大人気ない態度でした。すみません、エリーさん、ミシェルちゃん」
「まあまあリゼッタもエリーも。しばらくこの顔ぶれで暮らすんだから、細かい事は気にしない気にしない。これからは身内向けの話し方にさせてもらうね」
エリーとミシェルには、リゼッタとカロリッタを紹介しておく。
「それでは、あらためて僕が紹介するということで、まず僕がこの家の持ち主のケネス。それでこっちがリゼッタでこっちがカロリッタ。二人とも僕の恋人。それで、新しい二人は母親のほうがエリー、娘のほうがミシェル。しばらくはこの五人で生活だね」
「あらためまして、しばらくお世話になります」
「おせわになります」
はっと目が覚めた。しばらく天井を見ていると、横から視線を感じました。うっとりするほど美形の男性が、ベッドのすぐ横にある椅子に座ってこちらを見ていました。この方はエルフですね。なんでしょう、この気分は……。
「目が覚めましたか?」
「あの……ここは?」
「ここは僕の家です。たまたまキヴィオ市の方へ向かっている時に、あなたと女の子を見付けまして、それでここに運び込みました」
「そうでしたか……! 娘は?」
荷馬車を森の近くに止めて馬を休ませている時に、何かいきなり大きな音がしてこちらに傾いて……。
「やはり娘さんでしたか。安心してください。娘さんも、大丈夫です。それよりも……」
「はい、なんでしょうか?」
彼は少し言いにくそうにしながら鏡を渡してきました。
「覚悟をしてから、自分の顔を見て下さい」
「顔を?」
ひょっとして大きな傷でも出来たのでしょうか? 私の顔がどうなろうが、娘の命が助かったのなら問題ありませんが。
どうせ田舎に引っ込むつもりで出てきたのですから、娘がいれば大丈夫、と自分に言い聞かせました。そう思って鏡を覗くと……。
「……誰?」
「あなたですよ」
「……どうして鏡にエルフが?」
「ですから、そのエルフが、今の、あなたの顔です」
「……超絶美形ですよ?」
「はい。超絶美形です」
「……これが私ですか?」
「はい、実はお二人に使った薬なのですが……」
彼の話によると、私たちに使った薬というのは『蘇生薬』、つまり『生き返らせる薬』だそうです。私たちは二人とも助からなかったいうとこでした。
街道から逸れて森の近くを歩いていたら潰れた荷馬車を見つけたこと。それを動かすと私たちの遺体があったこと。
見つけた時の様子から、私が娘を庇おうとしていたこと。たまたま蘇生薬を持っていたのでそれを使ったこと。その薬で必ず生き返る保証はなかったけど、たまたま上手くいったことなどを話してくれました。
「その蘇生薬はエルフのある女性が作った物なのですが、彼女の力が強すぎるようで、生き返るとなぜかエルフになってしまうというおかしな副作用があるんです。そのせいでお二人ともエルフになってしまいました」
勝手な事をしてすみませんと彼は私に頭を下げました。
「目が覚めたばかりでしょうが、体の具合はいかがですか?」
「気分は悪くないのですが、少し体がだるいです」
「おそらく体が変わってしまったせいでしょうね。もうしばらく休んでいてください」
娘さんが目を覚まして落ち着いたら下へ来てください、と言って彼は部屋を出て行きました。
彼が座っていた椅子の向こうにはもう一つベッドがあって、そのベッドには可愛らしいエルフの少女が寝ていました。確かに見た目はかなり変わりましたが、寝顔の目元や口元などには娘の特徴が残っていました。
◆ ◆ ◆
「やっぱり母娘だったよ。母親の方が先に目を覚ましたから、簡単に説明しておいたよ。娘さんが目を覚まして落ち着いたら下へ来てください、と伝えておいたから」
リビングに戻るとリゼッタがお茶を淹れてくれたので、それを飲みながら様子を話した。
「でも、目が覚めていきなり自分の顔が変わってたらどう思うんだろうね?」
「本当に申し訳あ……」
「あ、いやいや、リゼッタに言ったわけじゃないって。そもそも僕が自分の顔を見たのはこっちに来てからだったし、種族が変わったと知ってからけっこう時間もあったしね」
「守護妖精にとっては~自分が守る対象が美形なら~やる気は爆上がりがりですよ~」
「だめでしょ、それじゃ」
「美形じゃないからって~手を抜いたりはしませんよ~。通常のやる気にさらに上乗せでドンです~」
「それならいい、のかな?」
「まあ鏡を見て少しショックを受けてたみたいだけど、こればっかりは慣れてもらうしかないよね。二人が落ち着くまで、しばらくはここにいてもらおうと思ってるから、二人にもサポートをお願いね」
「分かりました」
「子供の相手はお任せください~。予行演習です~」
「何の?」
◆ ◆ ◆
「……ん……あれ? ……ここは?」
「ミシェル、大丈夫? 気分は悪くない?」
「うん……だいじょーぶ……」
「……よかった……」
「あれ? え? だれ?」
「ママよ」
「えー?」
「だから、ママよ」
「ママはそんなにきれーじゃない!」
「はうっ!」
「そうだけど~、そうなんだけど~……ミシェル、はい鏡。自分の顔を見て」
「かがみ? うん……これだれ?」
「あなたよ、ミシェル」
「なんでエルフがうつってるの?
「だから、そのエルフが、今の、あなたの顔よ」
「ちょーぜつびけい」
「そうね、超絶美形ね」
「これがわたしのかお……」
似たもの母娘だった。
◆ ◆ ◆
「助けていただいて、本当にありがとうございます」
「ありがとーございます」
「実際には救えなかったからこうなったんだけどね」
しばらくして二人が下りてきたので、お茶を飲みながらあらためて事情を聞く。娘さんにはクッキーとジュースを用意している。
母親はエリーさん、娘はミシェルちゃん。ミシェルちゃんは五歳だとアピールしてきた。エリーさんには聞いてないから分からない。
エリーさんは商人見習いだった頃、行商人だったユベールさんと知り合い、追いかけていって結婚したらしい。二人でキヴィオ市に店を開き、夫は主に仕入れを担当、エリーさんは店で販売をしていた。すぐにミシェルちゃんが生まれたけど、それからしばらくして夫を病気で亡くしてしまったらしい。
「夫は商人としてはやり手で、当時は蓄えも十分にありました。ただ彼が亡くなってからは仕入れに余計にお金がかかるようになりまして、すぐに困窮するほどではなかったのですが、いずれはそうなるに違いありません。それで無一文になって困る前に店を畳みました。移り住む先はキヴィオ市から西へ向かってパダ町か、そこでも無理ならその南にあるヴァスタ村、もしくはずっと西のナルヴァ村のどこかを考えていました」
「話は分かりました。僕から言えるとすれば、『生きてさえいればどうとでもなる』ということくらいですね。身の振り方はこれから考えましょう。この家にどれだけいてもらっても問題ありませんよ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、しばらくここに置いてください。見た目が変わりすぎましたので、正直どうしたらいいのか」
「ママがきれーになったからうれしー」
「ミシェルはそう言うけど、私は綺麗になりすぎたのがちょっとね……」
「そのうち慣れますよ。僕もそうでしたから」
「ケネス様も!?」
「まったく同じではありませんが、僕も元々は人間です。エルフになってから実はまだ一か月くらいです。自分がエルフになったことをよく忘れそうになるくらいです」
「ぐぬぬぬぬ……」
「リゼッタさん、夫の浮気現場を目撃した妻の再現ドラマですか~?」
「なんですか、それは。別に悔しいとかではないですよ?」
「以前マスターに~『そのうちこの家には人が増えますよ~』みたいな事を言ってたじゃないですか~。今さら嫉妬もないでしょう~」
「それを言ったことは覚えていますよ。そうではなくて、あの三人が話している姿があまりにも様になっていて」
「確かにそうですね~。美形の夫と美人の妻~そして可愛い娘~。典型的な幸せ家族ですね~。覗いているこっちが恥ずかしくなってきますね~」
「私もあの薬を使っていっそエルフに……」
「だいぶ丸くなったと思いましたが~思い詰めるところは全然変わってないですね~」
「『パパ』ってよんでいーい?」
「「ブホッ!」」
鼻にお茶が! エリーさんも咳き込んでいる。向こうでガシャンという音がした。
「ごほっごほっ……こら、ミシェル、いきなり失礼でしょ!」
「えー、でもパパほしー……」
「どうしたの? 今までそんなこと言わなかったでしょ?」
「でも……」
あー、この表情は、ずっと我慢してきて耐えられなくなった顔だ。五歳なら普通はもっとわがままを言うものだろうけど、小さいのにずっと空気を読んできたんだろう。お母さんが一人でずっと頑張っていたからね。
「ミシェルちゃん、僕はパパじゃないけど、パパって呼んでもいいよ」
「ほんと?」
「ほんと。僕も『ミシェル』って呼ぶから」
「やったー!」
ミシェルが抱きついてきた。生まれてすぐに父親を亡くしたから、父親のことは知らないだろう。他の家族を見て羨ましいと思ったこともあっただろうし。もう少し大きければいい子のままでいようともっと我慢を続けたかもしれない。
「ケネス様、よろしいのですか? そんなこと言って」
「いいですよ。エリーさんも、もっと楽に話して」
「お世話になっておいてあまり楽にするのも」
「じゃあ僕は『エリー』って呼ぶから、僕のことは『ケネスさん』くらいで」
「いえ、さすがに……」
「ほらほら、エリー、『ケネスさん』でいいから」
「! ……で、では、お言葉に甘えて、こほん……『あなた』」
「ゴホッ!」
「ふふっ、冗談です」
……鼻の奥が痛い……やるな、エリー。
ミシェルも、パパだー、ママだーって笑ってるし、子供は笑顔が一番。
「ぐぬぬぬぬ……」
「リゼッタさん、それ以上続けると顔が崩れますよ~」
「私だって子供くらいは!」
「そのうちできますって~」
「……リゼッタもカロリッタも、そんなところでコント?」
「リゼッタさんが思い詰めてますよ~。マスター、少しかまってあげてください~」
「リゼッタ様、すみません! ほんの冗談ですから!」
「……いえ、大変な思いをされたのはお二人ですから。私も大人気ない態度でした。すみません、エリーさん、ミシェルちゃん」
「まあまあリゼッタもエリーも。しばらくこの顔ぶれで暮らすんだから、細かい事は気にしない気にしない。これからは身内向けの話し方にさせてもらうね」
エリーとミシェルには、リゼッタとカロリッタを紹介しておく。
「それでは、あらためて僕が紹介するということで、まず僕がこの家の持ち主のケネス。それでこっちがリゼッタでこっちがカロリッタ。二人とも僕の恋人。それで、新しい二人は母親のほうがエリー、娘のほうがミシェル。しばらくはこの五人で生活だね」
「あらためまして、しばらくお世話になります」
「おせわになります」
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