新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

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第一章 第二部

二人のこと

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 エリーとミシェルがこの家で暮らすにあたって、まずは部屋を用意することになった。最初に二人を寝かせていた部屋をそのまま使うことになったけど、元が空き部屋にベッドを入れただけだったので、他に必要な物をエリーに聞きながら並べていく。

 棚、タンス、机、椅子などの家具は僕が作ったものがかなり多い。器用さが最初からかなり高いからスキルが身に付きやすく、早いうちからかなりのものが作れた。もちろん失敗作もあったけど。でもさすがにガラスまでは作れないから鏡は買ってきたものだ。

 ミシェルにはお絵描き用の黒板とチョークもあげる。チョークは青、赤、黄、緑も。ミシェルはさっそく絵を描き始めた。

「ミシェル、床はだめ床はだめ。いい子だからこの黒板だけにしようね」
「わかったー」

 消すことはできるけど、器用だからそのうち壁や天井まで使って大作を描き始めるかもしれない。

 この二人も人間からエルフになったんだよね。それは僕と同じだけど、二人は薬で無理やり変えられたからおかしなことになっていなければいいんだけどね。僕と違いはあるのかな。気になることもあったので、念のためにステータスを見せてもらおう。

「エリー、ここにいる三人は人間からエルフになったんだけど、二人と僕の違いを見せてもらっていいかな?」
「それは構いませんが……娘が見ていてはさすがに落ち着きませんので、隣の部屋でよろしいでしょうか? あるいは夜までお待ちいただければ、一晩中お相手をさせていただきますが」
「ごめん、今のは言い方が悪かった。そういうのじゃないから」



 三人分を並べて表示するようにする。細かな能力はいらないので、スキル周辺を重点的に、戦闘系は減らして、[鑑定]。


【名前:[ケネス]】
【名前:[エリー]】
【名前:[ミシェル]】

【種族:[エルフ?]】
【種族:[エルフ(元人間)]】
【種族:[エルフ(元人間)]】

【年齢:[二三]】
【年齢:[二一]】
【年齢:[五]】

【スキル:[念話][不老][地図(管理者用)][鑑定(管理者用)]】
【スキル:[料理(小)][計算(中)][交渉(中)][念話][精霊魔法(微)]】
【スキル:[木登り(大)][念話][精霊魔法(微)]】

【特徴:[リゼッタの恋人][カロリッタの恋人][エリーの想い人][カローラの想い人]】
【特徴:[ケネスの愛人][積極的][愛嬌]】
【特徴:[前向き][愛嬌]】

 二人とも種族が[エルフ(元人間)]か。僕は[エルフ?]だから微妙に違う。特徴にまた変なのがある……。



「ええとね。僕はこういうことを隠すのは苦手だから、正直に言うね」
「はい」
「もしかしたら意味が分からないかもしれないけど、僕は人がどんな能力を持っているのか分かる力があるんだ。その力で調べたら、二人はまだ弱いけど精霊魔法が使えるようになってるね。それと念話も」
「え? 精霊魔法ですか?」
「そう。エルフになったからだろうね。おそらく念話もそうだね」

 精霊魔法は精霊と念話で意思疎通をするからセットになってるんだろうね。でもエルフになったといえ元が人間だから、使いこなすには時間がかかるかもしれない。そのあたりも説明をした。

「ミシェルはものすごく木登りが得意になってるよ」
「あの子は外で遊ぶのが好きでしたから。あそこまで飛び回ることはありませんでしたけど」
「それは絶対エルフになった影響だね」

 エルフは森で暮らしているので樹木や草花とは相性がいい。とはいえミシェルはちょっと特殊かな。いきなり[木登り(大)]だし。

「エリーの方は、商人をしていたからか、計算や交渉が得意だね。それと料理も」
「料理はミシェルに食べさせるくらいでしたので腕の方は大したことはありませんが、昔からずっと続けていました。計算や交渉などは仕事で必要でしたから必死に覚えました」
「最後に、少々ややこしいのがあるんだけど……」
「何かおかしなことですか?」
「どちらかというと、僕にとっての覚悟かな。あー……」
「何を聞いても驚きませんので」
「……うん、分かった。ええと、エリーの、これは能力じゃなくて、あくまで特徴なんだけど、[ケネスの愛人]って出てるね。僕の方には[エリーの想い人]っていうのがある。これ絶対さっきのミシェルとのやりとりだよね」
「あ、ミシェルに話しながら、そうなったらいいなとは思っていましたが……」
「思ったよりも積極的そうだし」
「惚れた行商人を追いかけて、なし崩し的に結婚して子供を作りました。夫は行商ばかりでほとんど家にいませんでした。ミシェルが生まれて一年ほどで亡くなりましたので、私の中の女が少々うずいています」
「いきなりぶっちゃけた!」
「すみません、少し冗談が過ぎました。ですが隠しておいてもいずれ分かるのなら、最初から言っておいてもいいかと思いして。少しは意識していただけるかと」

 いきなり死角からズバッと来た。やはり話術が得意なのか。

「こんな話を始めておいて今さらだけど、みさおとかは?」
「それが不思議なのですが……夫のことは心から愛していましたし、以前は彼以外に触れられたいとは思いませんでした。彼が亡くなって寂しくしていたのも間違いありません。ですが、どうも目が覚めて旦那様の顔を見ていたら、私の中からふっと彼が抜けていったように思えまして。もちろん隣のベッドに寝ていたミシェルは大切な自分の娘だと分かりましたし、夫のことも忘れてはいないのですが」
「僕とは違った形でエルフになったからね。やっぱり体が変わったのとかも影響してるかもしれないし。あの薬を作った人に確認してみるね」

 うずくだの何だのはエリーの冗談みたいだけど、絶対にあの薬の影響はあるよなあ。急にテンションが変わるしね。

 他には、エルフになるだけなら一万歩譲って仕方ないとしても、まあできれば同じ種族のまま生き返らせたかったけど、夫のことが少し引っかかったかな。頭から抜けていったって言ってたから。あの薬を作ったのはカローラさんだろうし、何か仕込んでいてもおかしくないよなあ。

 こんなことを聞く相手はカローラさんしかいないよね。すごく嫌な予感がするけど。



◆ ◆ ◆



 カローラさん、ご無沙汰していますがお元気でしょうか。あれから一か月ほど経ち、こちらの世界にもようやく慣れてきたところです。

 お忙しいところ申し訳ありませんが、マジックバッグに入れていただいた蘇生薬の件で少し確認したいことがあります。

 たまたま見つけた母娘おやこにその蘇生薬を使ったところ、無事に生き返りましたが、母親の方に精神的な変化があったようです。

 具体的には、娘のことは大切に思ったままなのに、以前に亡くした夫のことが頭から抜けていったと言っています。記憶としては残っているようなので、全てを忘れてしまったわけではないようです。あの蘇生薬を使ったことで、何か内面に変化が起きたように思えるのですが、何か心当たりはないでしょうか?

 カロリッタ経由で大まかな事情は把握されていると思いますので、蘇生薬の製作者だと思われるカローラさんの意見を聞きたくてこの手紙を書いています。何か思い当たることがありましたら、お手隙の時にでも連絡ください。

 ケネス



 追伸

 この薬がなければ二人を助けることはできませんでした。ありがとうございました。後日あらためてお礼を贈ります。



◆ ◆ ◆



 職場の先輩に送るメールのような、敬語なのか何なのかよく分からない微妙な感じになった。まあいいか。いつ返事が返ってくるかは分からないけど、とりあえずこれをマジックバッグに入れておこう。

 !

 手紙が引っ張られた? え? もう持っていかれた? 入れた瞬間だったけど……もしかしてもう読んでるとか?

 待っていたら返事が来るかもしれないけど、そろそろ夕食を作らないとね。カローラさんには申し訳ないけど下へ行くか。マジックバッグに『離席中』とメモを入れておこう。

「ミシェル、一度お絵かきはやめようか。下へ戻るよ」
「はーい」

 エリーとミシェルの部屋を整えてから下へ降りた。外を見ると、もうそれなりの時間かな。

「そろそろ夕食を作ろうか。エリーもキッチンのどこに何があるか確認しながら手伝ってくれる?」
「はい」

 ミシェルはリゼッタとカロリッタが相手をしてくれている。お菓子を食べるのはいいけど、食べすぎると夕食が入らないよ。
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