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第一章 第二部
キヴィオ市の冒険者ギルド
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今日は朝から町を見て回る予定だったけど、一つ思い出したことがあった。
「町を見て回る前に、少し冒険者ギルドに寄っておきたいんだけど」
「何か用でもありましたか?」
「用というわけじゃないけど、挨拶かな。ほら、ユーヴィ市のルボルさんからここのギルド長への紹介状を貰ってるでしょ。素材を売ったりするかもしれないし、挨拶くらいはね」
「挨拶したついでに~素材を売って帰ればいいんですよ~」
「そうだね。エリーとミシェルは町への出入りを考えたら、冒険者として登録した方がいいかな」
「以前の商人ギルドのカードはもう使えませんし、ご一緒して登録します」
「いくー」
「じゃあまずは冒険者ギルドで挨拶、それから素材を売れそうなら売って、そのお金で買い物かな」
「かいものー」
みんなで固まって移動。やはりエルフが三人いるのは人の目を集めやすいね。今さらだけど帽子をかぶってもいいのかも。
「要件を伺います」
「二件あるのですが。まずこちらの手紙ですが、ユーヴィ市のギルド長のルボルさんから預かったものです。こちらのギルド長のレオニートさんへの紹介状だそうです。レオニートさんに時間があるようでしたらお会いしたいのですが。それともう一つはこの二人の登録です」
「少々お待ちください。確認してまいります。この紹介状はお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。お願いします」
そう言うと受付のお姉さん、ハンナさんは手紙を持って裏へ消えていった。しばらくすると戻ってきて、「こちらへどうぞ」とドアの方へ通してくれた。
ギルド長の執務室は三階にあった。部屋の前まで来るとハンナさんがドアをノックした。
「どうぞ」
ハンナさんに続いて部屋に入ると、中には細身の男性がいた。この人がレオニートさんか。
「では私はここで。お二人のギルドカードはこの仮証明書の通りに作成しておきますので、後ほど受付にいる私のところへ来てください」
そう言うとハンナさんは出て行った。
「ようこそ、ユーヴィ市冒険者ギルドへ。ギルド長のレオニートです」
「初めまして、ケネスです。こちらからリゼッタ、カロリッタ、エリー、ミシェルです」
「エリーさんはケネス君の奥さ「はい、そうで「ちょっと静かにしようか、エリー」
「賑やかにしてすみません」
「いえいえ、賑やかなくらいはいいですよ。まあお茶でもどうぞ。ゆっくり話を聞きたいですしね。お嬢ちゃんはお菓子もどうぞ」
「ありがとーございます」
ミシェルがぺこりと頭を下げる。
「それはルボルさんから預かったものです。出すか出さないかは任せる、使う必要があれば使うようにと」
「彼らしいですね。雑なわりには気配りができる男です。それで、私のところへ来たということは、さっそく渡したくなるようなことがあった、ということでしょうか?」
「いえ、さすがにまだ来たばかりですし、そこまで波乱万丈の人生は送っていませんよ。まだ数日はこの町にいますので、挨拶をと思いまして」
「冒険者としては律儀な方ですね」
お茶をいただきながらユーヴィ市でのことを話したり、レオニートさんのことを聞いたりする。レオニートさんは魔法使いとして、ルボルさんと一緒に冒険者をしていたこともあるらしい。引退する際に王都の魔術学校などからも声をかけられたけど、向いていないと言って冒険者ギルドで働くことに決めたのだとか。選べるほど優秀だったんだろうね。
「ところでケネス君、一つお聞きしたいのですが、ユーヴィ市からここまでは大丈夫でしたか?」
「大丈夫とは?」
「ユーヴィ市からパダ町、そしてこの町にかけて大きな森があるでしょう。最近あの森で魔獣の活動が急に増えているようで、先日もサイレントベアが森から出てきて暴れたようです」
「……僕たちは見ませんでしたね」
「あれは直接人を襲うことはありませんが、牛やロバなどの駄獣を襲う際に近くにいる人が巻き込まれることがありますので注意して下さい。領軍の兵と傭兵で山狩りをしているところです」
ひょっとしたらエリーたちが襲われたのはそれかな? 横を見るとエリーが少し顔色を悪くしていた。
「ご心配ありがとうございます」
「さて、あまり時間を取らせても仕方ありませんのでこのあたりにしましょうか。そういえばケネス君、この町の次はどちらへ向かいますか?」
「とりあえず王都へ向かいますので、ラクヴィ市は通るでしょうね」
「それならちょうど良かった。ラクヴィ市の領主邸に配達してもらいたい物があります。個人的なものなのでギルドの依頼にはできませんが、お願いできませんか? もちろん依頼料は払います」
「僕でよければ大丈夫ですが……僕でいいのですか?」
「ルボルが君のことを信頼できると言っていますからね。彼の口の悪さはどうにもなりませんでしたが、人を見る目だけは確かでしたから。明日には用意しておきます。町を出る前に、いつでも構いませんので立ち寄ってください。その時に渡します。この手紙を受付で渡せばすぐにここに通すように伝えておきます。そして、これはまた別ですが、ユーヴィ市で色々売ってくれたとルボルに手紙で自慢されましたので、ここでも何か売ものがあればお願いしますね」
「分かりました。これから依頼票を見ていくつもりでしたので。では失礼します」
冒険者ギルドのギルド長っぽくないレオニートさんの部屋を出てギルドのホールへと下りてきた。エリーの顔色は戻ったようだ。
「じゃあ下でちゃちゃっと素材を売ってから町を見て回ろうか」
「うん!」
少し退屈していたミシェルが僕の腕にぶら下る。
キヴィオ市の冒険者ギルドは上品なギルドだと言われている。『常に礼儀正しく冷静に』というのがこのギルドの標語であって、壁面に掲げられている。
トップが魔法使いということもあって、荒くれ者が多いという感じはない。もちろん冒険者はたくさん来ている。言葉の受け取り方は個人によって違うだろうけど、受け取り方を間違えるとおかしなことになるのはどんな言葉でも同じだ。
依頼票……の前に、まずはエリーとミシェルのギルドカードを受け取る。さて、依頼票の貼られている掲示板もユーヴィ市にあったものよりも落ち着いた感じ。ユーヴィ市のは単なる木の板だったけど、ここのはきちんと掲示板になっている。
依頼票もきちんと内容別に分かれていて見やすい。大都市だから依頼も多く、それでも見やすいレイアウトになっている。元々がこうだったのか、レオニートさんがギルド長になってからこうなったのかは分からないけど。
あ、ちょうどいいのがあるな。
「これならいくらでもあるんだけどね」
「それほど食べませんでしたね。淡白でクセがないので、料理によってはこれが一番合うと言われることもありますが」
「唐揚げはこれがいいですね~」
「あの唐揚げという料理は美味しかったですね」
「うん、すきー」
「さすがに食べきれないから、一部はここで売るね」
依頼票を剥がして受付に向かう。ユーヴィ市のギルドとは違うので、そのあたりはきちんとしよう。いや、きちんとしたつもりなんだけどね。あそこでも。えーと、ハンナさんは……並ばれたか。人がいない受付は……向こうか。
「すみません、この依頼票の手続きをお願いします。手持ちにありますので、受付と完了をまとめてお願いできますか?」
「はい、私ポリーナが担当いたします。それでは依頼票を確認いたしま……はっ!」
ポリーナさん、なぜか左手を胸に当て胸を反り、右手を前にすっと伸ばして依頼票を受け取った。そして顔に縦線が入って白目って、美内すずえ作品か何かですか?
「失礼ですが、見たところお持ちではないようですが」
「マジックバッグに入っています」
「では横の引き渡し窓口でお願いします」
上体を回してすっと片手を伸ばす。なんでポーズを付けるのかな?
「それがですね、頭を潰しただけの状態で丸ごと入ってます。カウンターが血だらけになりますので、別室などに桶か樽か、何か容器を用意していただければ。今日のところはとりあえず三〇本で」
「……少々お待ち下さい」
ポリーナさん、落ち着いているように見えるけど、縦線が入ったままだよ。大丈夫? こちらも仕事だからね。嫌がらせじゃないよ。
「お待たせいたしました。そちらのドアから裏へ回っていただけますか?」
「分かりました」
やはり「そちら」で手を伸ばすね、この人。
みんなでぞろぞろと移動する。案内されたのはテーブルと椅子だけがある部屋。やはり休憩室とかだろうか。すると男性職員が樽を転がしてきた。
「ではこの樽にお願いいたします」
「では入れていきます。ところで、気分は大丈夫ですか?」
「……仕事ですので」
やはり白目を剥いているけど、決意は見て取れた。
並べられた樽に次々と蛇を放り込む。頭を下にして、やばいものは見えないようにできる限り配慮はしている。ただ一匹が三メートルくらいあって、太さだって僕の腕よりも太いから、樽一つに三匹から五匹くらいしか入らない。地面から飛び出してくるくらいから筋肉が発達してるんだね。尻尾の先がでろんと樽の端から垂れ下がっている。
樽をどんどん追加してもらって、全部で七つ。ポリーナさんは青い顔をしてるけど、ミシェルは垂れ下がった蛇の尻尾をペシペシと叩いている。この子は大物になるな。
とうとう限界がきたのか、ポリーナさんは片手を顔の前に持ってきて、「ああっ……」と言いながら崩れ落ちるように、わざわざ僕の方に倒れてきた。
舞台女優?
少女漫画というか宝塚というか、そういう感じに倒れたポリーナさんを男性職員に託し、代金を受け取ってギルドを出た。うん、おかしなくらい上品というか演技的だったね。まだ冒険者ギルドは二つしか見ていないけど、普通ってなんだろう?
「リゼッタ、冒険者ギルドの受付って、ミリヤさんとマノンさん、ハンナさん、それとさっきのポリーナさんしか喋ったことないけど、この四人はどうなの?」
「どうと聞かれても困りますが……ハンナさんはものすごく普通でしたね。ミリヤさんとポリーナさんはマノンさんを中心にしてずっと右端とずっと左端というところではないでしょうか」
「中心になったマノンさんも~少しあざといところがありましたよね~。あれが地ならすごいですよね~」
「そこは触れてはいけないところだと思うよ、蹴り飛ばされたくなければ」
「町を見て回る前に、少し冒険者ギルドに寄っておきたいんだけど」
「何か用でもありましたか?」
「用というわけじゃないけど、挨拶かな。ほら、ユーヴィ市のルボルさんからここのギルド長への紹介状を貰ってるでしょ。素材を売ったりするかもしれないし、挨拶くらいはね」
「挨拶したついでに~素材を売って帰ればいいんですよ~」
「そうだね。エリーとミシェルは町への出入りを考えたら、冒険者として登録した方がいいかな」
「以前の商人ギルドのカードはもう使えませんし、ご一緒して登録します」
「いくー」
「じゃあまずは冒険者ギルドで挨拶、それから素材を売れそうなら売って、そのお金で買い物かな」
「かいものー」
みんなで固まって移動。やはりエルフが三人いるのは人の目を集めやすいね。今さらだけど帽子をかぶってもいいのかも。
「要件を伺います」
「二件あるのですが。まずこちらの手紙ですが、ユーヴィ市のギルド長のルボルさんから預かったものです。こちらのギルド長のレオニートさんへの紹介状だそうです。レオニートさんに時間があるようでしたらお会いしたいのですが。それともう一つはこの二人の登録です」
「少々お待ちください。確認してまいります。この紹介状はお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。お願いします」
そう言うと受付のお姉さん、ハンナさんは手紙を持って裏へ消えていった。しばらくすると戻ってきて、「こちらへどうぞ」とドアの方へ通してくれた。
ギルド長の執務室は三階にあった。部屋の前まで来るとハンナさんがドアをノックした。
「どうぞ」
ハンナさんに続いて部屋に入ると、中には細身の男性がいた。この人がレオニートさんか。
「では私はここで。お二人のギルドカードはこの仮証明書の通りに作成しておきますので、後ほど受付にいる私のところへ来てください」
そう言うとハンナさんは出て行った。
「ようこそ、ユーヴィ市冒険者ギルドへ。ギルド長のレオニートです」
「初めまして、ケネスです。こちらからリゼッタ、カロリッタ、エリー、ミシェルです」
「エリーさんはケネス君の奥さ「はい、そうで「ちょっと静かにしようか、エリー」
「賑やかにしてすみません」
「いえいえ、賑やかなくらいはいいですよ。まあお茶でもどうぞ。ゆっくり話を聞きたいですしね。お嬢ちゃんはお菓子もどうぞ」
「ありがとーございます」
ミシェルがぺこりと頭を下げる。
「それはルボルさんから預かったものです。出すか出さないかは任せる、使う必要があれば使うようにと」
「彼らしいですね。雑なわりには気配りができる男です。それで、私のところへ来たということは、さっそく渡したくなるようなことがあった、ということでしょうか?」
「いえ、さすがにまだ来たばかりですし、そこまで波乱万丈の人生は送っていませんよ。まだ数日はこの町にいますので、挨拶をと思いまして」
「冒険者としては律儀な方ですね」
お茶をいただきながらユーヴィ市でのことを話したり、レオニートさんのことを聞いたりする。レオニートさんは魔法使いとして、ルボルさんと一緒に冒険者をしていたこともあるらしい。引退する際に王都の魔術学校などからも声をかけられたけど、向いていないと言って冒険者ギルドで働くことに決めたのだとか。選べるほど優秀だったんだろうね。
「ところでケネス君、一つお聞きしたいのですが、ユーヴィ市からここまでは大丈夫でしたか?」
「大丈夫とは?」
「ユーヴィ市からパダ町、そしてこの町にかけて大きな森があるでしょう。最近あの森で魔獣の活動が急に増えているようで、先日もサイレントベアが森から出てきて暴れたようです」
「……僕たちは見ませんでしたね」
「あれは直接人を襲うことはありませんが、牛やロバなどの駄獣を襲う際に近くにいる人が巻き込まれることがありますので注意して下さい。領軍の兵と傭兵で山狩りをしているところです」
ひょっとしたらエリーたちが襲われたのはそれかな? 横を見るとエリーが少し顔色を悪くしていた。
「ご心配ありがとうございます」
「さて、あまり時間を取らせても仕方ありませんのでこのあたりにしましょうか。そういえばケネス君、この町の次はどちらへ向かいますか?」
「とりあえず王都へ向かいますので、ラクヴィ市は通るでしょうね」
「それならちょうど良かった。ラクヴィ市の領主邸に配達してもらいたい物があります。個人的なものなのでギルドの依頼にはできませんが、お願いできませんか? もちろん依頼料は払います」
「僕でよければ大丈夫ですが……僕でいいのですか?」
「ルボルが君のことを信頼できると言っていますからね。彼の口の悪さはどうにもなりませんでしたが、人を見る目だけは確かでしたから。明日には用意しておきます。町を出る前に、いつでも構いませんので立ち寄ってください。その時に渡します。この手紙を受付で渡せばすぐにここに通すように伝えておきます。そして、これはまた別ですが、ユーヴィ市で色々売ってくれたとルボルに手紙で自慢されましたので、ここでも何か売ものがあればお願いしますね」
「分かりました。これから依頼票を見ていくつもりでしたので。では失礼します」
冒険者ギルドのギルド長っぽくないレオニートさんの部屋を出てギルドのホールへと下りてきた。エリーの顔色は戻ったようだ。
「じゃあ下でちゃちゃっと素材を売ってから町を見て回ろうか」
「うん!」
少し退屈していたミシェルが僕の腕にぶら下る。
キヴィオ市の冒険者ギルドは上品なギルドだと言われている。『常に礼儀正しく冷静に』というのがこのギルドの標語であって、壁面に掲げられている。
トップが魔法使いということもあって、荒くれ者が多いという感じはない。もちろん冒険者はたくさん来ている。言葉の受け取り方は個人によって違うだろうけど、受け取り方を間違えるとおかしなことになるのはどんな言葉でも同じだ。
依頼票……の前に、まずはエリーとミシェルのギルドカードを受け取る。さて、依頼票の貼られている掲示板もユーヴィ市にあったものよりも落ち着いた感じ。ユーヴィ市のは単なる木の板だったけど、ここのはきちんと掲示板になっている。
依頼票もきちんと内容別に分かれていて見やすい。大都市だから依頼も多く、それでも見やすいレイアウトになっている。元々がこうだったのか、レオニートさんがギルド長になってからこうなったのかは分からないけど。
あ、ちょうどいいのがあるな。
「これならいくらでもあるんだけどね」
「それほど食べませんでしたね。淡白でクセがないので、料理によってはこれが一番合うと言われることもありますが」
「唐揚げはこれがいいですね~」
「あの唐揚げという料理は美味しかったですね」
「うん、すきー」
「さすがに食べきれないから、一部はここで売るね」
依頼票を剥がして受付に向かう。ユーヴィ市のギルドとは違うので、そのあたりはきちんとしよう。いや、きちんとしたつもりなんだけどね。あそこでも。えーと、ハンナさんは……並ばれたか。人がいない受付は……向こうか。
「すみません、この依頼票の手続きをお願いします。手持ちにありますので、受付と完了をまとめてお願いできますか?」
「はい、私ポリーナが担当いたします。それでは依頼票を確認いたしま……はっ!」
ポリーナさん、なぜか左手を胸に当て胸を反り、右手を前にすっと伸ばして依頼票を受け取った。そして顔に縦線が入って白目って、美内すずえ作品か何かですか?
「失礼ですが、見たところお持ちではないようですが」
「マジックバッグに入っています」
「では横の引き渡し窓口でお願いします」
上体を回してすっと片手を伸ばす。なんでポーズを付けるのかな?
「それがですね、頭を潰しただけの状態で丸ごと入ってます。カウンターが血だらけになりますので、別室などに桶か樽か、何か容器を用意していただければ。今日のところはとりあえず三〇本で」
「……少々お待ち下さい」
ポリーナさん、落ち着いているように見えるけど、縦線が入ったままだよ。大丈夫? こちらも仕事だからね。嫌がらせじゃないよ。
「お待たせいたしました。そちらのドアから裏へ回っていただけますか?」
「分かりました」
やはり「そちら」で手を伸ばすね、この人。
みんなでぞろぞろと移動する。案内されたのはテーブルと椅子だけがある部屋。やはり休憩室とかだろうか。すると男性職員が樽を転がしてきた。
「ではこの樽にお願いいたします」
「では入れていきます。ところで、気分は大丈夫ですか?」
「……仕事ですので」
やはり白目を剥いているけど、決意は見て取れた。
並べられた樽に次々と蛇を放り込む。頭を下にして、やばいものは見えないようにできる限り配慮はしている。ただ一匹が三メートルくらいあって、太さだって僕の腕よりも太いから、樽一つに三匹から五匹くらいしか入らない。地面から飛び出してくるくらいから筋肉が発達してるんだね。尻尾の先がでろんと樽の端から垂れ下がっている。
樽をどんどん追加してもらって、全部で七つ。ポリーナさんは青い顔をしてるけど、ミシェルは垂れ下がった蛇の尻尾をペシペシと叩いている。この子は大物になるな。
とうとう限界がきたのか、ポリーナさんは片手を顔の前に持ってきて、「ああっ……」と言いながら崩れ落ちるように、わざわざ僕の方に倒れてきた。
舞台女優?
少女漫画というか宝塚というか、そういう感じに倒れたポリーナさんを男性職員に託し、代金を受け取ってギルドを出た。うん、おかしなくらい上品というか演技的だったね。まだ冒険者ギルドは二つしか見ていないけど、普通ってなんだろう?
「リゼッタ、冒険者ギルドの受付って、ミリヤさんとマノンさん、ハンナさん、それとさっきのポリーナさんしか喋ったことないけど、この四人はどうなの?」
「どうと聞かれても困りますが……ハンナさんはものすごく普通でしたね。ミリヤさんとポリーナさんはマノンさんを中心にしてずっと右端とずっと左端というところではないでしょうか」
「中心になったマノンさんも~少しあざといところがありましたよね~。あれが地ならすごいですよね~」
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