新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

文字の大きさ
33 / 278
第一章 第二部

キヴィオ市での買い物

しおりを挟む
 さて、今回も軍資金が用意できたので、商店を見て回ろう。食材でも雑貨でも、物自体はユーヴィ市にもあったけど、種類に関しては明らかにキヴィオ市の方が多い。さすがは領都。そしてユーヴィ市では手に入らなかったものが魔道具。魔道具とは言っても戦いに使うようなものではなく、日常的に使うものが見たい。実際に買うかどうかはともかく、どういう物があるのかが知りたいんだよね。



 そういうわけで、キヴィオ市の東部、まるでかっぱ橋道具街のように生活用品や厨房用品の店が連なっている区画へ。料理をするのは主に僕とエリーなので、二人で魔道具に限らず使いたいものを選んでいく。もちろんリゼッタとカロリッタも料理をしないわけではないけど、二人とも食べるほうが得意かな。一応気になるものがあれば言うようにと言ってある。

「旦那様、この裏ごし器はすごいですね」
「ムーランって名前だったかな。野菜を粉砕して裏漉しする道具だね」
「たのしそー」
「楽しそうだけど手を入れたら危ないからね」

「このでこぼこのはー?」
「たこ焼き器かな? 生地を入れてくるくる回すと丸く焼けるんだよ」
「たこ?」
「そう、タコ。足が八本ある海にいる生き物」
「これを使った『玉焼き』を屋台で売っている人もいます。具が入っていないものが多いですね」

 たこ焼きは『玉焼き』と言うらしい。このあたりは海が遠いから海産物はほとんど見ないそうだ。あっても干物くらい。タコの代わりに色々な食材を入れて焼いて、具が入ってないものは単なる玉焼き、肉が入れば肉玉焼きなどと呼ぶらしい。



 エリーとミシェルと話しながら見てると、意外にも日本で見たことのある道具や魔道具が多かった。たこ焼き器は作ってなかったから買っていこう。ムーランはミシェルが遊びたがるかもしれないし、買ってからちょっと形を変えるか。ミキサーは買おう。このカセットコンロも買う。鍋にいいね。さすがに炊飯器は売ってなかった。

 リゼッタとカロリッタは食器を見てる。せっかく来たんだから新しいお皿を買ってもいいかな。一般的には木でできた食器が主流で。陶器や磁器のものは割れやすくて高価だから買う人は限られている。

 そうやって色々と買い込んでいくうちに、一人暮らしを始めるから一式買いにきた感じになってしまった。



◆ ◆ ◆



 昨日はキッチン用品を中心に見て回ったので、今日は主に食材かな。朝市はわりとどの場所でも開かれているようで、宿屋から少し行ったところでもやっていた。

 ミシェルを抱っこしながらみんなで町中を歩く。肩車のが楽といえば楽だけど、ちょっと目立つしね。周りに人が多いとミシェルは前の人の背中かお尻しか見えないし危ないんだよね。

「野菜の苗とか種とかも売ってるね。どうせならうちにないやつがいいな。エリーは何か食べたいのはある?」
「そうですね。畑にないものを育てたいですね。それでしたら豆類でしょうか。野菜はかなり種類がありますけど」
「時間はかかるけど、苗木とかも買っていって植えようか。いずれは果物とかナッツとかも採れるだろうし」
「ナッツすきー」

 ナッツ類はリゼッタも好きだから食材としてそれなりに買っているけど、木の実が採れる木はうちにはクリとシイくらいしかない。なぜクリとシイだけが森にあったのかは分からないけど。



 うちの畑はエリーとミシェルに任せてるけど、よく育つんだよね。しかも育つのが早い。それに、最近知ったんだけど、野菜をそのまま放っておくと食べごろで成長が止まる。普通なら育ち過ぎたら固くて食べられないとかしおれるとか、そうなると思うけど、なぜか食べごろのまま止まる。

 少し困るのが、あの畑では大豆が採れないこと。青々としたままの、枝豆にピッタリの状態で止まってしまう。ダイズを植えたままにして枯れさせて採ったのが大豆だからね。枯れないと大豆になってくれない。ものすごく好きなわけじゃないけど、豆腐とか油揚げとかが欲しい時もあるし、醤油と味噌もできれば作りたい。マジックバッグには入ってるけど。

 他には実が大きくなった後で花が咲くニンジンやダイコンなどの根菜は種の採取ができない。実が十分成長すると、花が咲く前に止まってしまう。何かいい方法はないかと試行錯誤中。

 それが分かったのも、野菜が育つのがあまりにも早くて、ミシェルが「このままだとどーなるの? もっとおーきくなるの?」と言ったから。僕も気になって畑の一部を試しに放置したら、そこからまったく変化なし。食べごろだと思って慌てて収穫してたから気付かなかったよ。

 そんなわけで、無理して収穫はしない。保存庫が一杯になるからね、腐るわけじゃないけど。だから使った分の野菜を収穫して保存庫に入れるというローリングストック方式を使うことにした。加工食品じゃないけど。

「ケネス、クルミを植えてもいいでしょうか?」
「クルミは子孫繁栄ですね~」
「いえ、そういうわけ……はい、そうです」
「旦那様、ぜひ植えましょう、何本でも!」
「はいはい、じゃあ買うのはクルミとハシバミ、マカダミア、ピスタチオ、トチノキね。すみません、この五種類を五本ずつお願いします」
「おー、豪勢だね。少しおまけだ。ピーカンを一本持ってってくれ」
「ありがとうございます」

 受け取った苗木をマジックバッグに入れていく。植えるなら森の近くかな。



「こんにちは」
「いらっしゃいませ」

 ここはキヴィオ市の南東部にある食材の問屋。麦や米などの保存が利く物が多い。他にも香辛料なども扱っているらしいというのはギルドで聞いてきた。どちらかと言えば商人ギルドの管轄かもしれないけど、もちろん冒険者ギルドでもある程度の話は聞ける。説明をしてくれたハンナさんだったので、すんなりと聞きたいことが聞けた。

 それでわざわざ問屋に来たのには理由がある。もちろん商店や露店でもある程度は買えるけど、まとめて買うならここ。量も種類もぜんぜん違う。

 問屋は種類が多くて割安だけど、卸だから一度に大量に買わなければならない。露店は種類は少なく割高だけど、欲しい量だけ買うことができる。町の商店はその中間くらい。家でどれだけ料理ができるかという話が関係してくる。

 家にオーブンや窯があって、薪も十分にあって、いつでも自由に料理ができる家は少ない。だから家にはあまり多くの調味料や香辛料はない。ある程度量を使うものは商店で買い、あまり使わないものは露店で買う。問屋は大量に購入する必要がある飲食店などが利用することが多い。

「こちらには米がたくさんあると聞いてきたのですが」
「ええ、ございますよ。種類もそれなりに揃っております」

 店の部分にはサンプルとして精米したものが少しずつ置いてあるだけで、他は倉庫にあるらしい。見せてもらったところ、馴染みのあるジャポニカ米だけでなくインディカ米などもある。色も長さも大きさも違うものがたくさんあり、ミシェルも面白そうに見ている。

「蒸してくと粘りが出るものはありませんか?」
「丸米ですね。こちらがそうです」

 見せてもらったのは、うるち米よりも丸みがあって乳白色、いわゆるもち米。日本で見たもち米よりかなり丸い。丸米やもち米と呼ぶらしい。ジャポニカ米は米とか細米、インディカ米は長米。インディカ米とかジャポニカ米とか言われても、こちらの人には由来も分からないだろうしね。

 長米も色や香りが違うものが何種類もあった。田んぼを作って植えてもいいね。いずれは自家採種したいね。

「では米と丸米、長米はこの二種類、籾殻の付いたのものと精米後のものをぞれぞれ一袋ずつお願いします。それと、この小麦も一袋お願いします」
「かしこまりました。どちらまでお運びすればよろしいでしょうか?」
「いえ、持ち帰りますので、店先に積んでください」

 店先に持ってきてもらい、順番にマジックバッグに入れていく。買い物が終われば次は香辛料の問屋へ。

 香辛料と言っても畑で栽培できるものは栽培している。香辛料って栽培が難しいものが多いはずなんだけど、育つんだよね、うちの畑は。水さえちゃんとやれば。でも木から採れるナツメグやシナモン、ローリエなどはさすがにまだ栽培していない。

 いずれはカレーで使うスパイスをすべて自分で作ることを目標にして、今のところは一通り揃えることを考える。



◆ ◆ ◆



 連日買い物に出かけていればそれなりに出費もする。でも冒険者ギルドに寄って素材を売ってお金を受け取っているから、余裕はかなりある。あのポリーナさんは相変わらずだったよ。ああいう人みたい。通路の角を直角に曲がってたし。ギルドに入る前は舞台女優をしてたとか、前世は劇団員だったとかじゃないだろうか。宝塚歌劇団出身の人って、普段の動作がお芝居っぽくなるって聞くし。

 それはそうと、主にキッチンで使う道具がかなり充実してきた。異空間の僕の家は、簡単に言うと最高の水廻りをを備えた、ただの広い家。それ以外は何もなかったんだよね。

 例えばエアコン、洗濯機、掃除機、食洗機、炊飯器、ハンドミキサー、ミキサー、魔力ケトル、コンポストなどはなかったから、炊飯器とミキサー以外は順番に作っていった。おそらくこの世界にないものは付いてなかったんだろうね。照明器具やオーブンが最初からあったのは、この世界にも普通にあるからだろう。温水洗浄トイレは……僕が強く希望したからかな?

 だから少しずつ魔道具を作ってきたけど、コツを掴むまでが大変だった。エアコンは難しそうに見えてまだ楽な方。[送風]と[加熱]と[冷却]を使い、風量と温度を変えるだけ。掃除機も[送風]で空気を吸って細かな布の袋で漉すだけだし、洗濯機と食洗機は[浄化]と[修復]できれいにしつつ食器や衣類の傷みを治す。ハンドミキサーは[回転]で速度の調節だけ。魔力ケトルも[加熱]と[冷却]で温度を調節するだけ。コンポストは[粉砕]して[分解]するだけ。

 でも炊飯器はものすごく難しい。組込みシステムがないので細かな制御はできない。日本人のお米に対する執念はすごいね。圧力IHで加熱して、真空断熱で保温、超音波や真空で水を吸わせたり、温度センサーや重量センサーで管理。これを魔道具で再現しようとしたら大変なことになるから。あきらめて鍋で炊いたらちゃんと炊けたので、悩んだ時間がもったいなかった。



 それとは別にもう一つ探しているものがある。カローラさんへのお礼。エリーとミシェルの件でね。アクセサリーを続けるというのも芸がないし。

「カローラ様へのお礼ということでしたら、私に何かできればいいのですが」
「エリーができることなら……やっぱり服かな。あのチャイナドレスはなかなか立派だと思うよ」

 女性陣はみんな揃ってチャイナドレス、僕は男性用の長めの旗袍チイパオを着て集まったことがあった。恥ずかしかったけど面白かったけどね。

「ええ、外出用として正式な場にも着ていけるように仕立てました。ちなみに他の服は?」
「他にも作ったの? まだ見せてもらってないけど」
「なら別の機会でしょうね。一度に見せてはもったいないでしょうから」
「じゃあ、カローラさんに服を作るのはどうだろう。僕もある程度なら裁縫もできるし」
「ではいくつかデザインを考えておきます。旦那様はその中から一つ選んでください。私も自分で一つ選びます」



 それから宿屋に戻ると、エリーは一度家に戻ってからデザインを持って戻ってきた。

「先日チャイナドレスを仕立てる時に、他のデザインも考えてみました。リゼッタ様やカロリッタ様にもアイデアを出してもらいまして、今はこれくらい用意できます」
「結構な数があるね。どこかで見たことがあるような……カロリッタは僕の頭の中から抜き取ったね」

 振袖は分かる。これはドイツとかオランダとかだろうか? このあたりは北欧っぽい。これはハワイ。サリーっぽいからインドかな。これはカウガール……セーラー服にメイド服にサンタ服。某国民的RPGの僧侶の服とかビキニアーマーとか、このあたり全部コスプレじゃない? そりゃまあ僕の頭の中にも色々入ってますよ……

「旦那様はパーツ数が少ない着物をお願いします。道具も揃っていますので」
「分かった。じゃあ裁縫用の部屋を一つ用意しようか?」
「よろしくお願いします」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...