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第一章 第二部
畑と森の謎、そしてラクヴィ市を望む
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キヴィオ市で買った苗木は家の近くの森に植えられた。元からあった木はほとんど食用になる種類はなかった。クリはそれなりにあって、他にはシイが少し。だからキヴィオ市の朝市で苗木を見つけた時にまとめて買ってきた。
買ったのはクルミとハシバミ、マカダミア、ピスタチオ、トチノキ。これらを五本ずつ。このハシバミはセイヨウハシバミっぽいからヘーゼルナッツが採れるね。店主がピーカンを一本おまけで付けてくれたのでそれも植えた。採取を楽にするために種類ごとにまとめて植える。そこでふと思い出したんだけど、うちの畑の野菜は枯れない。
枯れずに食べごろで止まるのはいいけど、困るのが枯らしてから利用するもの。大豆を蒔いておくと枝豆に丁度いい青さで止まってしまった。ちなみに枝豆として食べることはあまり考えてないので、大豆用の豆を蒔いた。だから大豆にしたい。品種がちょっと違うんだよね、もちろん食べられるけど。
シャベルで穴を掘る。植える。穴を掘る。植える。淡々と作業を進める。横を見るとミシェルが木に登っていた。
最初の頃はミシェルを一人で遊ばせると危ないかなと思っていたけど、彼女の身体能力なら大丈夫だろうとエリーと話し、お手伝いが終われば森へ行ってもいいということになった。ただし暗くなる前に帰ること。
ちなみにこの森にはミツバチやマルハナバチやかクマバチに似た蜂がいた。フサフサした特徴はたしかにそうなんだけど、サイズは大きなものでゴルフボールくらいある。最初はびっくりして逃げそうになった。このサイズなのにホバリングの音がそれほどやかましくないので助かる。
この蜂は針がなくて人を襲うことがない大人しい蜂で、人が近付くと寄ってくる。人懐っこくてまるでペットみたい。邪魔な時には「離れてね」と言うと離れてくれる。エルフだからかもしれないけど、なんとなく意思疎通ができる。この蜂が夜中に畑にやって来てこっそり野菜や花の受粉をしていてくれていたらしい。
木に登って蜂と遊んでいるミシェルを眺めながら休憩を取る。
苗木を植え終わったら、次は果物の種を蒔いた。食べた果物から取り出したものだ。さすがにそのままでは難しいかもしれないので、根が生えた種を持ってきて穴に入れた。うまく育つかどうか分からないけど。
全て終わったので、あらためて先ほどの問題を考える。どうして野菜が枯れないのか。やっぱり土かな、と考えていたら、近くで花が枯れていたのが目に入った。ここの花は枯れる。少し花と土を持っていこうか。
畑の方へ移動して端の方に植木鉢を用意した。一つには森から持ってきた土を入れ、そこに森から持ってきた赤い花を植え直し、『森の土』と書いた札を立てた。もう一つの植木鉢には畑の土を入れ、同じ花を植え、こちらには『畑の土』と書いた札を立てた。水は与えない。
森で逆のことも試してみた。一つの植木鉢には畑の土を入れて畑の端に咲いていた白い花を植え、『畑の土』と書いた札を立てた。もう一つの植木鉢には森の土をそのまま入れ、同じ花を植え、『森の土』と書いた札を立てた。水は与えない。
我ながら面倒なことをしたと思うけど、これでしばらく待ってどうなるかを見てみたい。
結果から言うと、畑に置いた花はどちらも枯れなかった。一方で、森に置いた花はどちらも枯れた。土は関係なさそう。余計に分からなくなった。
こうなってくると、この異空間そのものしか原因がなさそう。この異空間の中心はこの家だから、この家を中心として魔素と魔力の流れを調べていく。どちらもこの家の周辺が一番多い。当たり前だけどこの家はオール電化ならぬオール魔化。庭や畑にも魔素や魔力が行き渡っている。
少し離れると魔素も魔力も減ってくる。森のあたりまで行くとかなり少ない。もちろんゼロにはならない。これは関係ありそう。
僕が作った異空間なので、多少の変更は可能。でも環境を大きく変えることはできない。これまで変えたことがあるのは出入り口に機能門柱を設置しただけ。そもそもあれは魔道具だし、エリーかミシェルが安定して[念話]を使えるようになればほとんどいらなくなるけどね。そういうわけで、この異空間自体はほとんど作った時のまま。
「空間を調整したらいいんじゃないでしょうか~」
「そういうことができるなら早く教えてよ」
「一から十まで知ってしまうと~楽しみがなくなる~って言ってましたよね~」
「言ったね、たしかに」
カロリッタは知ってたみたいだけど、完全に詰まったら教えてくれるつもりだったらしい。もう少し早くてもよかったんじゃないかなと思うんだけど。
設定は[念話]の要領で『設定を変更しよう』と思い浮かべたら画面が出てきた。しばらく暮らしてきたけど知らなかった。そもそも設定を変える方法なんて考えたこともなかった。
ほう。これはタブレット? タッチパネルみたいなものが出た。気温とか天気とかの項目があるね。環境はエリアごとに細かく設定できるらしい。エリアは自分で好きなように作れると。一歩出たら気温が変わる厳密な境目を作ることもできるし、境目に近付くにしたがって少しずつ変わるようにもできるらしい。
この異空間は気温は上限が摂氏三五度、下限が摂氏五度まで設定可能。今は上が昼間の二五度、下が明け方の一五度の範囲で変わる。常春を思い浮かべたらそうなった。時間をかければ上限と下限を少しずつ広げられるらしい。
ここで魔素と魔力の分布をチェック。魔力は家を中心に四方八方へと広がっている。魔力が多いこの部分は……水道か。水道は魔力で水を出しているので、周囲は魔素も濃い。魔力は魔素に戻るから。森の方は魔素も魔力も庭よりは少ない。
他に違いは見つけられないので、原因は魔素と魔力あたりだと思う。そうだと仮定して、このあたりを柵で囲って、この中だけは魔素が少なくなるように調整。そして大豆を土ごと移し替えてしばらく様子を見る。
「パパー、だいずがかれたよー」
「これは枯れるようにしたんだよ。そうしないと料理に使えないからね」
「そっかー」
それからこの柵の中は種を取るものや枯らして使うものなどを育てる畑になった。ミシェルは干して乾燥した大豆をバンバン叩いて脱穀するのが気に入ったらしい。
「ミシェル、それをそのまま撒いちゃダメ。それは食べる用」
◆ ◆ ◆
先日はキヴィオ市で買った苗木などを植えたから、今日はそのチェック。リゼッタは「ちゃんとレモンも植えましたよね。そのうち必要になりますから」って言ってたけど、その心配はまだ早いんじゃないの?
いや、できてる可能性もなくはないけど、エルフは男女ともに子供はかなりできにくいらしいよ。それに酸っぱい物が欲しければピクルスでもいいと思うんだけどね。
エルフは手足が伸びるのは人間とたいして変わらないけど、精神的に成長するのはやや遅め。だから僕の歳では精神的に大人になりきっていないことが多いらしい。一〇〇歳を超えたら落ち着きが出て、その頃から子供もできやすくなるらしいね。
種と言えば、最初は果物の種は捨ててたんだけど、生えるかもと思って植えてみた。植えるとすれば森だろうということで先日植えたんだけど、うん、目の前には立派なレモンの木があるね。
種から木を育てる場合、まずは種が発芽しやすい状態にする。硬い皮は内部の保護のために存在することがほとんどだから、根や芽を出すためには邪魔になる。
そのためには種の表面を削って薄くしたり、種を水に浸けるか湿らせたキッチンペーパーの上に置いたり、そんなことをして根が出やすい状態にする。
根が生えるか、もしくは双葉が出るまで待ってから土に植える。柿、ビワ、アボカド、マンゴーなどはそうやって育てたことがある。さすがにあまり高くはできなかったけど、観葉植物にはなったよ。
森に果物の種を植えたとは言うけど、種が隠れるくらいの穴を掘って根が生えた種を入れて土を被せただけ。水はやったけどね。そもそもこのあたりは普段は水やりはしてないし、雨が降るわけでもないから、どうして木が枯れないのかも不思議なんだけど。
野菜の成長がすごいんだから木も同じように育ってもおかしくはないけど……伸びてるね、目の前で、今も。どれくらいで成木になるんだろ。
苗木も種もすくすく育ってるみたいだから、もう数日もすれば実ができてもおかしくなさそう。水撒き用の魔道具を持ってきたけど、いらないかもしれない。とりあえず置くだけは置いておくけど。
◆ ◆ ◆
ようやくラクヴィ市の手前にあるエス町まで辿り着いた。そしてここで一泊。この町から北へ抜ける分かれ道がある。
この国の北側には大きな湖があり、そのさらに北はヴェリキ王国の領土。でもヴェリキ王国とはうまくやっていて、湖を使った湖上交易も盛んだという。そのあたりの地理はエリーに教えてもらった。
地球と違って、「この線までがうちの土地」というような境界はないし、杭や立て札があるわけじゃない。「この町の周辺までがうちの土地」という曖昧な感じだから、ある程度町から離れてしまうと、そこは誰の土地でもなくなってしまう。そういう場所には目が届きにくい。だから貴族領と貴族領の間が一番危険な場所になっている。
領内は領軍の兵たちが巡回するから盗賊や魔獣などもある程度は排除されている。盗賊の類には今のところ遭遇していない。
盗賊は捕まえて突き出せば報奨金が出る。賞金首でもない限りは大した金額にはならないそうだけど。捕まえたら鉱山に連れて行って強制労働させるんだそうだ。
以前リゼッタが言っていた『鉱山で働く労働者』は一部がこういった犯罪者らしい。ちなみに奴隷ではないそうだ。奴隷という表現が使われていないだけかもしれないけど。
もちろん体力さえあれば技術がなくてもできる仕事だから、自ら望んで鉱山で働く人もそれなりにいるみたい。それに落盤が起きないように魔法で壁を補強しながらだから、わりと安全らしいね。
魔獣については、今のところは最初の大森林がちょっとおかしかっただけだと思う。もちろんエリーたちを襲ったと思われるサイレントベアなどの魔獣も森にいる。森から出てきて襲ってくることもあるから、見かけたら小遣い稼ぎに狩るようにしてる。
カローラさんは、僕が大森林で魔獣をまとめて狩って今後の資金にできるようにしてくれたのかもしれない。あの場所で剣や魔法の経験を積めるようにしてくれたのかもしれない。そんな憶測を口にすると、「いや~、単なるうっかりミスだと思いますよ~。もしくは~、目が濁ってるから~座標を読み間違えたとか~」とカロリッタが言った。正直どうなんだろ?
ここの宿は普通だった。そして平穏。さすがに宿では普通に寝るからね。ミシェルもいるし。
あ、もちろん家でも一人で寝る日はあるよ。たまにカローラさんの写真集を見てコメントをしないといけないしね。
女性に意見を求められたら具体的に答えよう。これよりはこれの方が好きとか、これならこうした方がいいと思うとか。これの方が似合うとか。『どれでも似合う』は絶対ダメ。
買ったのはクルミとハシバミ、マカダミア、ピスタチオ、トチノキ。これらを五本ずつ。このハシバミはセイヨウハシバミっぽいからヘーゼルナッツが採れるね。店主がピーカンを一本おまけで付けてくれたのでそれも植えた。採取を楽にするために種類ごとにまとめて植える。そこでふと思い出したんだけど、うちの畑の野菜は枯れない。
枯れずに食べごろで止まるのはいいけど、困るのが枯らしてから利用するもの。大豆を蒔いておくと枝豆に丁度いい青さで止まってしまった。ちなみに枝豆として食べることはあまり考えてないので、大豆用の豆を蒔いた。だから大豆にしたい。品種がちょっと違うんだよね、もちろん食べられるけど。
シャベルで穴を掘る。植える。穴を掘る。植える。淡々と作業を進める。横を見るとミシェルが木に登っていた。
最初の頃はミシェルを一人で遊ばせると危ないかなと思っていたけど、彼女の身体能力なら大丈夫だろうとエリーと話し、お手伝いが終われば森へ行ってもいいということになった。ただし暗くなる前に帰ること。
ちなみにこの森にはミツバチやマルハナバチやかクマバチに似た蜂がいた。フサフサした特徴はたしかにそうなんだけど、サイズは大きなものでゴルフボールくらいある。最初はびっくりして逃げそうになった。このサイズなのにホバリングの音がそれほどやかましくないので助かる。
この蜂は針がなくて人を襲うことがない大人しい蜂で、人が近付くと寄ってくる。人懐っこくてまるでペットみたい。邪魔な時には「離れてね」と言うと離れてくれる。エルフだからかもしれないけど、なんとなく意思疎通ができる。この蜂が夜中に畑にやって来てこっそり野菜や花の受粉をしていてくれていたらしい。
木に登って蜂と遊んでいるミシェルを眺めながら休憩を取る。
苗木を植え終わったら、次は果物の種を蒔いた。食べた果物から取り出したものだ。さすがにそのままでは難しいかもしれないので、根が生えた種を持ってきて穴に入れた。うまく育つかどうか分からないけど。
全て終わったので、あらためて先ほどの問題を考える。どうして野菜が枯れないのか。やっぱり土かな、と考えていたら、近くで花が枯れていたのが目に入った。ここの花は枯れる。少し花と土を持っていこうか。
畑の方へ移動して端の方に植木鉢を用意した。一つには森から持ってきた土を入れ、そこに森から持ってきた赤い花を植え直し、『森の土』と書いた札を立てた。もう一つの植木鉢には畑の土を入れ、同じ花を植え、こちらには『畑の土』と書いた札を立てた。水は与えない。
森で逆のことも試してみた。一つの植木鉢には畑の土を入れて畑の端に咲いていた白い花を植え、『畑の土』と書いた札を立てた。もう一つの植木鉢には森の土をそのまま入れ、同じ花を植え、『森の土』と書いた札を立てた。水は与えない。
我ながら面倒なことをしたと思うけど、これでしばらく待ってどうなるかを見てみたい。
結果から言うと、畑に置いた花はどちらも枯れなかった。一方で、森に置いた花はどちらも枯れた。土は関係なさそう。余計に分からなくなった。
こうなってくると、この異空間そのものしか原因がなさそう。この異空間の中心はこの家だから、この家を中心として魔素と魔力の流れを調べていく。どちらもこの家の周辺が一番多い。当たり前だけどこの家はオール電化ならぬオール魔化。庭や畑にも魔素や魔力が行き渡っている。
少し離れると魔素も魔力も減ってくる。森のあたりまで行くとかなり少ない。もちろんゼロにはならない。これは関係ありそう。
僕が作った異空間なので、多少の変更は可能。でも環境を大きく変えることはできない。これまで変えたことがあるのは出入り口に機能門柱を設置しただけ。そもそもあれは魔道具だし、エリーかミシェルが安定して[念話]を使えるようになればほとんどいらなくなるけどね。そういうわけで、この異空間自体はほとんど作った時のまま。
「空間を調整したらいいんじゃないでしょうか~」
「そういうことができるなら早く教えてよ」
「一から十まで知ってしまうと~楽しみがなくなる~って言ってましたよね~」
「言ったね、たしかに」
カロリッタは知ってたみたいだけど、完全に詰まったら教えてくれるつもりだったらしい。もう少し早くてもよかったんじゃないかなと思うんだけど。
設定は[念話]の要領で『設定を変更しよう』と思い浮かべたら画面が出てきた。しばらく暮らしてきたけど知らなかった。そもそも設定を変える方法なんて考えたこともなかった。
ほう。これはタブレット? タッチパネルみたいなものが出た。気温とか天気とかの項目があるね。環境はエリアごとに細かく設定できるらしい。エリアは自分で好きなように作れると。一歩出たら気温が変わる厳密な境目を作ることもできるし、境目に近付くにしたがって少しずつ変わるようにもできるらしい。
この異空間は気温は上限が摂氏三五度、下限が摂氏五度まで設定可能。今は上が昼間の二五度、下が明け方の一五度の範囲で変わる。常春を思い浮かべたらそうなった。時間をかければ上限と下限を少しずつ広げられるらしい。
ここで魔素と魔力の分布をチェック。魔力は家を中心に四方八方へと広がっている。魔力が多いこの部分は……水道か。水道は魔力で水を出しているので、周囲は魔素も濃い。魔力は魔素に戻るから。森の方は魔素も魔力も庭よりは少ない。
他に違いは見つけられないので、原因は魔素と魔力あたりだと思う。そうだと仮定して、このあたりを柵で囲って、この中だけは魔素が少なくなるように調整。そして大豆を土ごと移し替えてしばらく様子を見る。
「パパー、だいずがかれたよー」
「これは枯れるようにしたんだよ。そうしないと料理に使えないからね」
「そっかー」
それからこの柵の中は種を取るものや枯らして使うものなどを育てる畑になった。ミシェルは干して乾燥した大豆をバンバン叩いて脱穀するのが気に入ったらしい。
「ミシェル、それをそのまま撒いちゃダメ。それは食べる用」
◆ ◆ ◆
先日はキヴィオ市で買った苗木などを植えたから、今日はそのチェック。リゼッタは「ちゃんとレモンも植えましたよね。そのうち必要になりますから」って言ってたけど、その心配はまだ早いんじゃないの?
いや、できてる可能性もなくはないけど、エルフは男女ともに子供はかなりできにくいらしいよ。それに酸っぱい物が欲しければピクルスでもいいと思うんだけどね。
エルフは手足が伸びるのは人間とたいして変わらないけど、精神的に成長するのはやや遅め。だから僕の歳では精神的に大人になりきっていないことが多いらしい。一〇〇歳を超えたら落ち着きが出て、その頃から子供もできやすくなるらしいね。
種と言えば、最初は果物の種は捨ててたんだけど、生えるかもと思って植えてみた。植えるとすれば森だろうということで先日植えたんだけど、うん、目の前には立派なレモンの木があるね。
種から木を育てる場合、まずは種が発芽しやすい状態にする。硬い皮は内部の保護のために存在することがほとんどだから、根や芽を出すためには邪魔になる。
そのためには種の表面を削って薄くしたり、種を水に浸けるか湿らせたキッチンペーパーの上に置いたり、そんなことをして根が出やすい状態にする。
根が生えるか、もしくは双葉が出るまで待ってから土に植える。柿、ビワ、アボカド、マンゴーなどはそうやって育てたことがある。さすがにあまり高くはできなかったけど、観葉植物にはなったよ。
森に果物の種を植えたとは言うけど、種が隠れるくらいの穴を掘って根が生えた種を入れて土を被せただけ。水はやったけどね。そもそもこのあたりは普段は水やりはしてないし、雨が降るわけでもないから、どうして木が枯れないのかも不思議なんだけど。
野菜の成長がすごいんだから木も同じように育ってもおかしくはないけど……伸びてるね、目の前で、今も。どれくらいで成木になるんだろ。
苗木も種もすくすく育ってるみたいだから、もう数日もすれば実ができてもおかしくなさそう。水撒き用の魔道具を持ってきたけど、いらないかもしれない。とりあえず置くだけは置いておくけど。
◆ ◆ ◆
ようやくラクヴィ市の手前にあるエス町まで辿り着いた。そしてここで一泊。この町から北へ抜ける分かれ道がある。
この国の北側には大きな湖があり、そのさらに北はヴェリキ王国の領土。でもヴェリキ王国とはうまくやっていて、湖を使った湖上交易も盛んだという。そのあたりの地理はエリーに教えてもらった。
地球と違って、「この線までがうちの土地」というような境界はないし、杭や立て札があるわけじゃない。「この町の周辺までがうちの土地」という曖昧な感じだから、ある程度町から離れてしまうと、そこは誰の土地でもなくなってしまう。そういう場所には目が届きにくい。だから貴族領と貴族領の間が一番危険な場所になっている。
領内は領軍の兵たちが巡回するから盗賊や魔獣などもある程度は排除されている。盗賊の類には今のところ遭遇していない。
盗賊は捕まえて突き出せば報奨金が出る。賞金首でもない限りは大した金額にはならないそうだけど。捕まえたら鉱山に連れて行って強制労働させるんだそうだ。
以前リゼッタが言っていた『鉱山で働く労働者』は一部がこういった犯罪者らしい。ちなみに奴隷ではないそうだ。奴隷という表現が使われていないだけかもしれないけど。
もちろん体力さえあれば技術がなくてもできる仕事だから、自ら望んで鉱山で働く人もそれなりにいるみたい。それに落盤が起きないように魔法で壁を補強しながらだから、わりと安全らしいね。
魔獣については、今のところは最初の大森林がちょっとおかしかっただけだと思う。もちろんエリーたちを襲ったと思われるサイレントベアなどの魔獣も森にいる。森から出てきて襲ってくることもあるから、見かけたら小遣い稼ぎに狩るようにしてる。
カローラさんは、僕が大森林で魔獣をまとめて狩って今後の資金にできるようにしてくれたのかもしれない。あの場所で剣や魔法の経験を積めるようにしてくれたのかもしれない。そんな憶測を口にすると、「いや~、単なるうっかりミスだと思いますよ~。もしくは~、目が濁ってるから~座標を読み間違えたとか~」とカロリッタが言った。正直どうなんだろ?
ここの宿は普通だった。そして平穏。さすがに宿では普通に寝るからね。ミシェルもいるし。
あ、もちろん家でも一人で寝る日はあるよ。たまにカローラさんの写真集を見てコメントをしないといけないしね。
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