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第一章 第三部
パルツィ子爵
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パルツィ市が近付いてきた。マイカに話を聞いたら「通過しましょう」と言われた。どうもあまり近寄りたくないらしい。「ああいう下品な人はちょっと」と言っていたので、嫌な記憶でもあるんだろう。だから僕とリゼッタとカロリッタだけで朝に町に入り、宿泊せずに夕方に出るということにした。サランは同行するつもりらしく、僕の頭の上に乗っている。
朝食を取ったら三人でしばらく並んでから町に入る。近隣の村から売りに来た人たちだろうか、荷車を引いた牛やロバが歩いている。朝市を回って食材を買いながら移動する。
《閣下、申し訳ありませんが、あのセロリを購入していただけないでしょうか?》
《あの箱の横にあるやつ?》
《はい、そうです。小官はあれが好物でして》
《じゃあ種も買っておくね》
《感謝します。皆も喜んでおります》
そう言えば、他の分体にも伝わるんだったね。後から聞いた話では、その瞬間に庭のウサギたちが一斉に踊りだしたから、何が起きたのかとざわついたらしい。
サランは何でも食べるけど、やはりニンジンとセロリ、ブロッコリー、カリフラワーあたりが好きらしい。キャベツやレタスは栄養がないからあまり食べないそうだ。サランの好きそうなものを聞いて買っておく。もちろん種があれば買って、牧草地で育ててもいいね。
「王都が近いからか、種類が豊富ですね」
「リゼッタもカロリッタも欲しいものがあったら言ってね」
「ありがとうございます~」
この町はスーレ市よりも人口は少し多いくらいかな。でも人口以上に違って見えるのが、何層にもなっている城壁。
元々は王都を守る砦として作られ、これが大きくなってさらに外側に城壁が作られ、さらに大きくなってもう一つ城壁が作られ、という風に広がっていったので、町が全部で三層になっている。一番外側の第三区画と呼ばれるエリアは庶民の家や庶民向けの店などがある。二番目の第二区画と呼ばれるエリアには公的機関や高級店などがある。そして第一区画と呼ばれる一番内側のエリアが元々あった砦の部分で、今では領主や上流階級の邸宅などがある。まあ一番内側には用はないかな。
第三区画で朝市や商店を見て回ったら、次は第二区画も見ていく。公的機関に用はないので高級店を順に眺めていく。そして高級魔道具店で商品を見ている時にその男は近付いてきた。
「そこのエルフ、頭の上のそれはどこで手に入れた?」
三〇代だろうか、太り気味で額が後退している派手な服を着た男が店の奥から近付いてきた。いきなり命令口調で声をかけてくる人物にロクなのはいないと社会人時代に経験しているので、[鑑定(管理者用)]でチェックして対策を考える。
【名前:[アンスガル]】
【職業:[パルツィ子爵領領主]】
【スキル:[恫喝]】
【特徴:[パルツィ子爵][自己中心的][他人の話を聞かない]】
あ、これはまともに相手をしたらダメなやつだ。どうして領主がいたのかは分からないけど。少しはぐらかすか、適当にあしらうか。
「髪は誰にでもあると思いますが。あなたの頭にもまだ少しは残っているはずですが」
「誰が髪の話をしている! その白いやつだ!」
「もう少し分かりやすく言ってくださいよ。カツラでも探してるのかと思ったじゃないですか。このウサギですか?」
「そうだ」
「一緒に旅をしている子ですが」
「俺に差し出せ」
「何の権利があってそう言っているのかは分かりませんが、家族ですので」
「俺は領主だ!」
「リョーシュさんですか、珍しい名前ですね。では私は旅の途中ですので、そろそろ失礼しますね」
そう言うと店を出た。リゼッタとカロリッタには[念話]で先に出るように伝えてある。ドアを通る際に[施錠]を使って鍵をかけた。子爵は顔からガラスに突っ込んで血を流してるね。ああ大変。
[隠密]を使ってみんなで身を隠しながら様子を伺う。子爵が何か喚いているけど、見物人たちは領主がまた何かやらかしたのかって顔で見てるね。
いきなり領主に絡まれるなんて、この町の評価がだだ下がりだけど、生きていればこういうこともあるだろう。
うちの会社にはああいうタイプはいなかったけど、いるところにはいるよね。怒鳴りつけることで萎縮させて上下関係を作り出そうとするやつ。よその会社に行った時とかよく見たよ。実際領主だから偉いのかもしれないけど。
ああいうタイプとまともに話をしても進まないから、適当に話を切り上げるのが吉。微妙に話をずらしていって煙に巻くというやり方もあるけど、今回は時間がなかったのでしれっと話を切り上げた。これ以上付き合いがるわけでもないだろうし。
《マイカ、今は手は空いてる?》
《大丈夫ですよ》
《いきなり領主に絡まれてね。頭に乗せていたサランを置いていけって》
《あのデブ、白い髪が好きみたいなんですよ、迷惑なことに。わがままな子供がそのまま大人になっただけですね》
《あー、それはそれは》
《先輩、一度徹底的にやってもらっていいですか?》
《暴力は好きじゃないんだけど》
《警告ですよ警告。王都に行けば姉がいますので報告しようと思いますけど。お願いできませんか?》
《それだと今回のもマイカが関係していると思われるんじゃないの?》
《あのハゲが何を言っても実家にも姉にも影響はありませんよ。身分が違いますし》
《分かったよ。じゃあどうしたらいい?》
《ええとですね、一度戻ってもらえますか?》
《いいよ。買い物を続ける気分でもなくなったからね》
僕とマイカ、リゼッタ、カロリッタの四人で考えた警告は、実は実害はほとんどないのに大問題のように見える、非常に嫌らしい内容。
領主邸は第一区画の中央の小高い丘にあり、周囲は見通しが利いている。領主邸以外の建物は敷地からかなり離れているので、領主邸に何か起きても周囲への影響は少ない。ということで……
「なんだこれは?」
目が覚めて窓から外を見たら庭がなかった。
昨日は魔道具店で俺好みの真っ白なウサギを連れたエルフを見かけた。俺に譲るように命じたら、あろう事か拒否しやがった。店から逃げ出そうとしたので追いかけたら、ドアが開かずに顔から突っ込んで大怪我をする羽目になった。くそっ、高い薬を使わせやがって。
ヤツが逃げないように城門を閉めて市中を捜索させたが見当たらなかった。一体どこに隠れやがったのか。ああ、忌々しい。
腹いせに一番高いワインを三本空け、寝て起きたらこうだ。
「おい、誰か来い!」
ドアを開けて叫んでも誰も来ない。しばらく待っても物音一つ聞こえない。一人で服を着たことなんかほとんどないからな、なんて面倒な。揃いも揃ってさぼりやがって。
屋敷の中を歩いたけど誰も出てこない。玄関から外に出たら思った以上に穴が大きかった。屋敷の周囲の地面がない。建物から三メートルくらいのところで地面がなくなってやがる。屋敷の周りぐるっと回ったらどこも同じだ。底が見えない。どれだけ深いんだ? 石を落としてみた。カツンとも何とも音がしない。もしかしてヤバいか?
これはあのエルフがやったのか? 連れがいたけど、三人で作れる穴じゃないだろ。この屋敷は丘の上にある。丘を囲うように壁があり、その壁の中がほぼ穴。どうやって外へ出たらいいんだよ。
出られないなら待つしかないか……あ、食い物は?
厨房はきれいサッパリと片付いていた。保存庫は空。食料庫は……野菜はある。肉はない。チーズもない。ワインもない。チッ、野菜があっても料理なんかできるわけないだろ。厨房の使い方なんか知らないしな。齧るしかないか。
パルツィ子爵邸に掘った穴は、実はいたずら程度のものだった。仮に落ちても怪我もしない。子爵に怪我をさせるつもりはまったくない。
あれから一度家に戻って夕食を取り、リゼッタとカロリッタとサランを連れて夜中に領主邸にやってきた。リゼッタは子爵が僕に手を上げかけたことに腹を立ててたし、カロリッタはいたずらと聞いたら俄然やる気を出していた。
まず[隠密]を使って門衛に近付いたら[睡眠]で眠らせて、新しく作った異空間へ放り込む。それから屋敷の中に入り、見かけた人を片っ端から眠らせて異空間へ。さすがに女性の部屋に入るのは気が引けたので、部屋に入る前にリゼッタとカロリッタに確認してもらった。やってることは不法侵入だけど、『盗まない、傷付けない』は徹底してるよ。『壊さない』は保証できない。
厨房に入ったら、まずは鍋に準備されていた料理などを保存庫の中身と一緒に全て異空間へ移し、食料庫の中身も一部の野菜を除いては全て異空間に移した。
野菜だけ残したのは、救助が来るまでは野菜を食べていれば死ぬことはないだろうし、ちょっと太り気味だからダイエットもたまにはいいだろうというのが理由。基本的には苦くてまずい野菜だけを選んで残しておいた。
それから領主邸の庭で[消音]を使って音を消し、魔法で深さ一〇メートルほどの穴を屋敷の周りに掘った。人が落ちても大丈夫なように、底の近くには[減速]をかけ、怪我をしないように底を柔らかくした。
光が物に反射してから目に入ると僕たちの目はそれを色だと認識する。だから光を吸収する塗料を塗れば一切光を反射せず、吸い込まれるような黒になる。
実際にこのような塗料は地球でもいくつかあったので、そのアイデアを参考にして、穴の底やその周辺に[光吸収]と[消音]と[隠蔽]をかけた。これですべての光と音を吸収させ、落ちた物も見えなくなる。
光が反射しないから底は真っ黒なので深さが分からない。石を投げても音がしないので、音で深さを判断することもできない。
穴の細工自体はこの程度で、長いロープでも垂らせばバレるようなものだ。よく見れば気付くんじゃないかと思うかもしれないけど、それはこういう話を知っているからで、予備知識かなければ気付きようがない。
異空間に入れていた人たちはもちろん作業が終わったらすぐに開放した。彼らに罪はないしね。穴の外側、領主邸の敷地のすぐ外に小屋を用意して並べて寝かせ、夜が明けたら目が覚めるようにしておいた。小屋の中に食料も置いておいた。夜にわざわざ領主邸に近付く人もいないから大丈夫だろう。
一通りの作業が終わったら二人には家に戻ってもらい、僕とサランは町を出てから一時間ほど歩いてから家に戻った。子爵がどうなるかは分からないけど、使用人たちに子爵を助ける気持ちが残っているなら応援を呼んでくれるんじゃないかな。
《小官がもしあの男の部下だとすれば、置いてある食料をみんなで分けて去りますね》
《上司を見捨てると?》
《閣下、恐れ多いことながら、部下の忠誠とは無償で得られるものではありません。忠誠を尽くすのは、見返りがあると思えるからこそです》
《サランに愛想を尽かされないように頑張るよ》
《あの牧草地がある限り、小官の忠誠は常に閣下に捧げられるであります》
《じゃあ、明日はあのセロリを蒔こうか》
朝食を取ったら三人でしばらく並んでから町に入る。近隣の村から売りに来た人たちだろうか、荷車を引いた牛やロバが歩いている。朝市を回って食材を買いながら移動する。
《閣下、申し訳ありませんが、あのセロリを購入していただけないでしょうか?》
《あの箱の横にあるやつ?》
《はい、そうです。小官はあれが好物でして》
《じゃあ種も買っておくね》
《感謝します。皆も喜んでおります》
そう言えば、他の分体にも伝わるんだったね。後から聞いた話では、その瞬間に庭のウサギたちが一斉に踊りだしたから、何が起きたのかとざわついたらしい。
サランは何でも食べるけど、やはりニンジンとセロリ、ブロッコリー、カリフラワーあたりが好きらしい。キャベツやレタスは栄養がないからあまり食べないそうだ。サランの好きそうなものを聞いて買っておく。もちろん種があれば買って、牧草地で育ててもいいね。
「王都が近いからか、種類が豊富ですね」
「リゼッタもカロリッタも欲しいものがあったら言ってね」
「ありがとうございます~」
この町はスーレ市よりも人口は少し多いくらいかな。でも人口以上に違って見えるのが、何層にもなっている城壁。
元々は王都を守る砦として作られ、これが大きくなってさらに外側に城壁が作られ、さらに大きくなってもう一つ城壁が作られ、という風に広がっていったので、町が全部で三層になっている。一番外側の第三区画と呼ばれるエリアは庶民の家や庶民向けの店などがある。二番目の第二区画と呼ばれるエリアには公的機関や高級店などがある。そして第一区画と呼ばれる一番内側のエリアが元々あった砦の部分で、今では領主や上流階級の邸宅などがある。まあ一番内側には用はないかな。
第三区画で朝市や商店を見て回ったら、次は第二区画も見ていく。公的機関に用はないので高級店を順に眺めていく。そして高級魔道具店で商品を見ている時にその男は近付いてきた。
「そこのエルフ、頭の上のそれはどこで手に入れた?」
三〇代だろうか、太り気味で額が後退している派手な服を着た男が店の奥から近付いてきた。いきなり命令口調で声をかけてくる人物にロクなのはいないと社会人時代に経験しているので、[鑑定(管理者用)]でチェックして対策を考える。
【名前:[アンスガル]】
【職業:[パルツィ子爵領領主]】
【スキル:[恫喝]】
【特徴:[パルツィ子爵][自己中心的][他人の話を聞かない]】
あ、これはまともに相手をしたらダメなやつだ。どうして領主がいたのかは分からないけど。少しはぐらかすか、適当にあしらうか。
「髪は誰にでもあると思いますが。あなたの頭にもまだ少しは残っているはずですが」
「誰が髪の話をしている! その白いやつだ!」
「もう少し分かりやすく言ってくださいよ。カツラでも探してるのかと思ったじゃないですか。このウサギですか?」
「そうだ」
「一緒に旅をしている子ですが」
「俺に差し出せ」
「何の権利があってそう言っているのかは分かりませんが、家族ですので」
「俺は領主だ!」
「リョーシュさんですか、珍しい名前ですね。では私は旅の途中ですので、そろそろ失礼しますね」
そう言うと店を出た。リゼッタとカロリッタには[念話]で先に出るように伝えてある。ドアを通る際に[施錠]を使って鍵をかけた。子爵は顔からガラスに突っ込んで血を流してるね。ああ大変。
[隠密]を使ってみんなで身を隠しながら様子を伺う。子爵が何か喚いているけど、見物人たちは領主がまた何かやらかしたのかって顔で見てるね。
いきなり領主に絡まれるなんて、この町の評価がだだ下がりだけど、生きていればこういうこともあるだろう。
うちの会社にはああいうタイプはいなかったけど、いるところにはいるよね。怒鳴りつけることで萎縮させて上下関係を作り出そうとするやつ。よその会社に行った時とかよく見たよ。実際領主だから偉いのかもしれないけど。
ああいうタイプとまともに話をしても進まないから、適当に話を切り上げるのが吉。微妙に話をずらしていって煙に巻くというやり方もあるけど、今回は時間がなかったのでしれっと話を切り上げた。これ以上付き合いがるわけでもないだろうし。
《マイカ、今は手は空いてる?》
《大丈夫ですよ》
《いきなり領主に絡まれてね。頭に乗せていたサランを置いていけって》
《あのデブ、白い髪が好きみたいなんですよ、迷惑なことに。わがままな子供がそのまま大人になっただけですね》
《あー、それはそれは》
《先輩、一度徹底的にやってもらっていいですか?》
《暴力は好きじゃないんだけど》
《警告ですよ警告。王都に行けば姉がいますので報告しようと思いますけど。お願いできませんか?》
《それだと今回のもマイカが関係していると思われるんじゃないの?》
《あのハゲが何を言っても実家にも姉にも影響はありませんよ。身分が違いますし》
《分かったよ。じゃあどうしたらいい?》
《ええとですね、一度戻ってもらえますか?》
《いいよ。買い物を続ける気分でもなくなったからね》
僕とマイカ、リゼッタ、カロリッタの四人で考えた警告は、実は実害はほとんどないのに大問題のように見える、非常に嫌らしい内容。
領主邸は第一区画の中央の小高い丘にあり、周囲は見通しが利いている。領主邸以外の建物は敷地からかなり離れているので、領主邸に何か起きても周囲への影響は少ない。ということで……
「なんだこれは?」
目が覚めて窓から外を見たら庭がなかった。
昨日は魔道具店で俺好みの真っ白なウサギを連れたエルフを見かけた。俺に譲るように命じたら、あろう事か拒否しやがった。店から逃げ出そうとしたので追いかけたら、ドアが開かずに顔から突っ込んで大怪我をする羽目になった。くそっ、高い薬を使わせやがって。
ヤツが逃げないように城門を閉めて市中を捜索させたが見当たらなかった。一体どこに隠れやがったのか。ああ、忌々しい。
腹いせに一番高いワインを三本空け、寝て起きたらこうだ。
「おい、誰か来い!」
ドアを開けて叫んでも誰も来ない。しばらく待っても物音一つ聞こえない。一人で服を着たことなんかほとんどないからな、なんて面倒な。揃いも揃ってさぼりやがって。
屋敷の中を歩いたけど誰も出てこない。玄関から外に出たら思った以上に穴が大きかった。屋敷の周囲の地面がない。建物から三メートルくらいのところで地面がなくなってやがる。屋敷の周りぐるっと回ったらどこも同じだ。底が見えない。どれだけ深いんだ? 石を落としてみた。カツンとも何とも音がしない。もしかしてヤバいか?
これはあのエルフがやったのか? 連れがいたけど、三人で作れる穴じゃないだろ。この屋敷は丘の上にある。丘を囲うように壁があり、その壁の中がほぼ穴。どうやって外へ出たらいいんだよ。
出られないなら待つしかないか……あ、食い物は?
厨房はきれいサッパリと片付いていた。保存庫は空。食料庫は……野菜はある。肉はない。チーズもない。ワインもない。チッ、野菜があっても料理なんかできるわけないだろ。厨房の使い方なんか知らないしな。齧るしかないか。
パルツィ子爵邸に掘った穴は、実はいたずら程度のものだった。仮に落ちても怪我もしない。子爵に怪我をさせるつもりはまったくない。
あれから一度家に戻って夕食を取り、リゼッタとカロリッタとサランを連れて夜中に領主邸にやってきた。リゼッタは子爵が僕に手を上げかけたことに腹を立ててたし、カロリッタはいたずらと聞いたら俄然やる気を出していた。
まず[隠密]を使って門衛に近付いたら[睡眠]で眠らせて、新しく作った異空間へ放り込む。それから屋敷の中に入り、見かけた人を片っ端から眠らせて異空間へ。さすがに女性の部屋に入るのは気が引けたので、部屋に入る前にリゼッタとカロリッタに確認してもらった。やってることは不法侵入だけど、『盗まない、傷付けない』は徹底してるよ。『壊さない』は保証できない。
厨房に入ったら、まずは鍋に準備されていた料理などを保存庫の中身と一緒に全て異空間へ移し、食料庫の中身も一部の野菜を除いては全て異空間に移した。
野菜だけ残したのは、救助が来るまでは野菜を食べていれば死ぬことはないだろうし、ちょっと太り気味だからダイエットもたまにはいいだろうというのが理由。基本的には苦くてまずい野菜だけを選んで残しておいた。
それから領主邸の庭で[消音]を使って音を消し、魔法で深さ一〇メートルほどの穴を屋敷の周りに掘った。人が落ちても大丈夫なように、底の近くには[減速]をかけ、怪我をしないように底を柔らかくした。
光が物に反射してから目に入ると僕たちの目はそれを色だと認識する。だから光を吸収する塗料を塗れば一切光を反射せず、吸い込まれるような黒になる。
実際にこのような塗料は地球でもいくつかあったので、そのアイデアを参考にして、穴の底やその周辺に[光吸収]と[消音]と[隠蔽]をかけた。これですべての光と音を吸収させ、落ちた物も見えなくなる。
光が反射しないから底は真っ黒なので深さが分からない。石を投げても音がしないので、音で深さを判断することもできない。
穴の細工自体はこの程度で、長いロープでも垂らせばバレるようなものだ。よく見れば気付くんじゃないかと思うかもしれないけど、それはこういう話を知っているからで、予備知識かなければ気付きようがない。
異空間に入れていた人たちはもちろん作業が終わったらすぐに開放した。彼らに罪はないしね。穴の外側、領主邸の敷地のすぐ外に小屋を用意して並べて寝かせ、夜が明けたら目が覚めるようにしておいた。小屋の中に食料も置いておいた。夜にわざわざ領主邸に近付く人もいないから大丈夫だろう。
一通りの作業が終わったら二人には家に戻ってもらい、僕とサランは町を出てから一時間ほど歩いてから家に戻った。子爵がどうなるかは分からないけど、使用人たちに子爵を助ける気持ちが残っているなら応援を呼んでくれるんじゃないかな。
《小官がもしあの男の部下だとすれば、置いてある食料をみんなで分けて去りますね》
《上司を見捨てると?》
《閣下、恐れ多いことながら、部下の忠誠とは無償で得られるものではありません。忠誠を尽くすのは、見返りがあると思えるからこそです》
《サランに愛想を尽かされないように頑張るよ》
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