新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

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第一章 第二部

独白:ある冷静なギルド長の回想

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 キヴィオ市冒険者ギルドのレオニートです。荒くれ者をまとめる組織のトップに魔法使いというのは珍しいと思うかもしれませんが、これでも腕っ節にはそれなりの自信があります。そうでなければギルド長など務まりません。王都で教鞭を取らないかとお誘いもありましたが、断りました。貴族の子女の顔色を伺うのは肩が凝りそうですし。冒険者ギルドというのは国の公的機関です。そのため、領主などからやや面倒な話が来ることもありますが、それは仕方がありません。



 ある時、少し珍しい内容の手紙が届きました。これは隣のラクヴィ伯爵のご令嬢からの依頼、というかお願いでした。『ケネスいう名前のエルフの男性がギルドに来たら連絡してほしい。彼を賓客として迎えたい。数年以内には来ると思う。こちらから探す必要はない。あまり大事おおごとにはしたくないので配慮をしてほしい。できる限りうちの両親には分からないように』と。金貨五枚が同封されていました。

 ……

 正直なところ、厄介ごとの臭いがプンプンしますが、隣の領主です。しかもうちよりも上ですしね。手紙を見る限り、すぐに何かがあるわけではないでしょうが、もし名前を聞いたら思い出せるくらいにはしておきましょう。

 それにしても……他人様ひとさまの恋愛事情を詮索する趣味はありませんが、ラクヴィ伯爵は犬人で、令嬢も同じだったはずですね。王都に出かけた時にお会いしたことがありますが、利発な子でしたね。そろそろ一〇代の半ばでしょうか。まあお年頃ですね。しかしどこかでエルフと繋がりがあったのでしょうか。ただ、あの父親には秘密にしておきたいのはよく分かります。

 私としては、厄介ごとに巻き込まれたくはありませんが……できる範囲で助力をしたいですね。



 数年経ったころ、知り合いの紹介状を持った男性が現れました。エルフでケネスという名前です。妻と子供、そして護衛の女性が二人かと思いましたが、どうやら違ったようです。何やら訳ありのような気がしましたので、それ以上は触れませんでした。

 彼があのご令嬢の探し人かどうかは分かりませんが、エルフでケネスという名前であれば、まず間違いないでしょう。私としては頼まれた事をするだけですね。

 彼にラクヴィ市の領主邸へ手紙と荷物の配達をお願いしましたが、嫌な顔一つせずに引き受けてくれました。『ラクヴィ市の領主邸』と聞いても何も思わなかったようなので、もしかしたらご令嬢の探し人ではないのかもしれませんが、それはどうしようもありません。彼がそうであることを祈りましょう。

 ケネス君に渡した私の荷物の中身は、私からご令嬢へのさほど重要でもない手紙と四枚の金貨でした。ご令嬢から受け取った金貨五枚のうち、一枚はケネス君に依頼料として渡し、残りの四枚は荷物に同封してお返しすることになりました。手紙の方は根回しですね。彼が確実にご令嬢に会えるよう、まずはケネス君をあの家の執事に紹介するためでした。伯爵に追い出される前にね。

 その荷物と手紙を彼に言付けてからしばらく経ったころ、私のもとに荷物が一つと手紙が二通が届きました。荷物の中には、かのご令嬢の母親からの礼品と丁寧な礼状が入っていました。そして二通の手紙は、『なんと余計なことをしてくれたとのか』という苦情をつらつらと書き連ねた、ご令嬢の父親と兄からのものでした。

 ……

 ラクヴィ伯爵と息子の親馬鹿、兄馬鹿ぶりには本当に呆れますね。いい年をして恥や分別という言葉を知らないのでしょうか。聞こえてくる話だけでも相当恥ずかしいものがあります。



 さて、そろそろ退勤時間ですね。早く帰って我が孫娘マイエンジェルの笑顔を堪能しなければ。



 じぃじは今から帰るよー。
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