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第二章 第一部
久しぶりのユーヴィ市
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あまり遅くなるのも申し訳ないので、そろそろユーヴィ市へ行くことにした。いつもの三人でいいだろう。
一度行ったところなので[隠密]と[転移]で街道から少し外れたところに出る。
「とりあえずギルドに行っておこうか」
「そうですね。用事は早めに済ませましょう」
「それから宿屋ですね~」
ユーヴィ市ではみんなで宿泊する意味はないので、泊まるつもりはないんだけどね。
城門で手続きを済ませたら、久しぶりのユーヴィ市の町並みを眺める。
「王都を見た後だからか、やっぱり小さいね」
「地方都市はどこも似たようなものでしょうけど」
「市としては小さいですからね~」
この国の半分を歩いた中では市としては小さい。でももっと小さい市もあるらしい。
この国では、貴族領の領都は市として扱われる。地方の男爵領の領都は一〇〇〇人を切ることも珍しくはなく、それでも市なんだそうだ。さすがに領都が町や村では格好が付かないからだろう。
また王都から東へ進むけど、そうするとこれまでとは逆に人が少ない方へ向かうから、それもまた何か新しい発見がありそう。
そんなことを言っているうちに冒険者ギルドに着いた。
「ルボルさんはミリヤさんに相手ができたって言ってたね」
「あの方のノリに付いていくのは大変だと思いますが」
「相手も似たような人なのでは~?」
怖いもの見たさで中に入る。そもそも仕事中だから相手さんがいるわけではないか。
それにしても、相変わらす人は少ないね、ここは。
「あ! ケネスさん! お久しぶりです!」
「ミリヤさん、お久しぶりです……けど……立ち上がらなくてもいいですよ」
「やですねー、お客さんを迎えるんだから立つのは普通じゃないですか!」
「でもミリヤさんしか立ってないですよ?」
「座りっぱなしだから、みんな腰痛持ちなんですよ! 一番若い私は大丈夫ですガッ――」
「「「……」」」
「ミリヤさんは急な体調不良のようで、私が担当いたします。レナーテです。よろしくお願いします」
「いえ、急に一人抜けると大変ですね」
「そうなんですよ。たまにこうなるので困ったもので。ギルド長が下りてきてもあまり役に立ちませんし。それで、えっとケネスさんでしたね。ギルド長に用があるということで間違いないですか?」
「はい。『先日の件で』と言えば分かると思います」
「上にいると思いますが、一応確認してきます。しばらくお待ちください」
「分かりました」
レナーテさんか。前にも向かって右に座っていた女性だね。一瞬でミリヤさんを締め落としたよね、チョークスリーパーで。怖いから触れなかったけど。
そのレナーテさんはミリヤさんを引きずって奥へ行った。
「あら~、ケネスさん、お久しぶりですねぇ」
「お久しぶりです、マノンさん。お元気でしたか?」
他に誰も人がいないからか、マノンさんがカウンターから出てきて僕の目の前まで来たけど、近いよ。
「ええ、体の方は元気ですよ。ミリヤちゃんに恋人ができて、ここは少し騒がしくなりましたけど」
愁いを帯びた表情でマノンさんが一歩近付く。
「らしいですね。先日ルボルさんから聞きました。どんな人なんですか?」
僕が一歩下がる。
「若い冒険者の男性ですよ。かなり見込みがありそうですねぇ」
マノンさんがさらに一歩近付く。
「いや、あの、マノンさん? そこまで近付く必要はないのでは?」
僕がさらに一歩下がる。
「あら~、人と話をする時は正面から目をしっかりと見て話すのが普通ですよねぇ」
マノンさんが一歩近付く。近い近い。
「あっ、マノンさん! 何をしてるんですか!」
戻ってきたレナーテさんが声をかけてくれたから、とりあえずマノンさんが止まってくれた。
「マノンさん……ここ数日、やたらと短いスカートを履いているかと思ったらそういうことですか……」
「だって~、レナーテちゃん。ケネスさんが来るって聞いたら~、それはもう……ね~、ケネスさん?」
「ね~って……僕に聞かれても困りますけど、どういうことなんですか?」
「それが、あの人とは別れたんですよ。結婚前から私より若い恋人がいたのは知っていましたけど、あまり粗略に扱われるとねぇ。そもそも、結婚してから一度も会ってくれないんですよねぇ。おかしいなと思っていたら、あんなことだったなんて」
頬に手を当てて少し困ったように……って、重い内容を気軽に話しますね。
「久しぶりに会って、そんな生々しい話をされても困るんですが」
「それで、そんな時にミリヤちゃんが恋人を作って毎晩ウハウハらしいんですよねぇ。私よりもずいぶん若いのに。それを聞いているこっちは、ねぇ?」
「それでなんで僕なんですか?」
「それは、前から気にしていましたよ。それに、回し蹴りはお好きですよねぇ?」
「おーい、マノン。そろそろ落ち着けや」
「ルボルさん、助かりました……」
受付に下りてきたルボルさんに呼ばれて執務室までやってきた」
「マノンのやつは気立てはいいんだが、少し気が強くてな」
「あれは……気が強いって言うんですか?」
「ギルドの受付の仕事なんて半分は苦情処理だからな。適当に受け流すか、言い返すか、あるいは手を出すか。あいつの場合は足も出すなあ。まあそのあたりだろう。気立てもいいし人当たりもいいが、気が強いし腕っ節も強い。そこに来て旦那の浮気だそうだ。どうやら結婚した時から気付いていたらしいが……それでピリピリしていた時期もあって、ついに旦那とその相手をボコボコにして町から追い出したらしい。俺の紹介で結婚した形だから申し訳なくてな……」
「ボコボコって……」
「まあ、あのおっとりした見た目だからな。気を許して油断したらイチコロってやつだ。戦闘でも日常でもな。でも気立てがいいのは間違いねえ。ミリヤは貰い手が見つかったが、マノンが空いた。どうだ? 尽くす女だぞ?」
「いえ、遠慮します」
「いい女だと思うんだがなあ。明らかにミリヤよりは静かでいいぞ。年は少し上かもしれんが」
「ケネス、マノンさんはかなりの実力者ですよ。目端も利きますね」
「回し蹴りをしながら~マスターの目線を追えるとは~なかなかですよ~」
「助け船を出してよ……」
あの時『ありがとうございました』って思ったのがこう返ってくるとは……。
「まあマノンはそのうち持ち帰ってくれ。退職願は預かっているが、今のところ保留だが、いなくなったら退職扱いだ。それで、この前のことだが、領主には報告済みだ。余計なことをしないようにも言ってある。それでこれが、順番がごちゃごちゃだが、例の報酬だ」
「何があってもマノンさんを持ち帰らせる気かもしれませんが、いりませんよ? それに人手が足りないって言ってたじゃないですか」
「そうか? 仕方がない。それじゃ本人に任せる。お前を追いかけて行ったら諦めてくれ。で、あれから森はどうなった?」
「……魔素を吸収する丸太を追加で置いてきました。今後も暇を見て追加します。置いた周辺の魔素はちゃんと減っているようなので、しばらくは様子見ですね」
「ギルドの方で人員を募集できればいいんだが、その作業に耐えられそうなやつがいなくてな」
「あの森は過酷ですからねえ」
「ああ、そう言えば、ミロシュに会ったんだよな。元気にしてたか?」
「はい、たまたまですが、大聖堂に行ったらミロシュさんに話しかけられました。蛇に噛まれて冒険者をやめたという話を聞いたので、ひょっとしてルボルさんを知ってるかなと思って聞いたら当たりでした。アシルさんという方と途中まで一緒だったと言っていましたね。それと、ルボルさんとレオニートさんに手紙を送ると言っていました。僕が急いでこちらに来たので入れ違いになったと思いますけど」
「そうか。アシルは東の出身だと言ってたからそっちに戻ったかもしれねえな。もし会ったらよろしく言っといてくれ」
「会う可能性は低いですけどね」
「万が一会ったら、でいいさ」
キヴィオ市でレオニートさんと会ったこと。そのおかげでラクヴィ市でマイカと会えたこと。さらにそのおかげでレオンツィオ殿下と会ったこと。そのあたりはルボルさんのおかげでもあるので伝えておいた。もちろん僕とマイカの前世のことは言っていない。
最後に、今後もたまにナルヴァ村を訪れることを伝えてギルド長室を出た。
一階に下りるとマノンさんは自分の席に戻っていた。ミリヤさんはいない。レナーテさんは別の冒険者の相手をしている。
「ケネスさん、今後もよろしくお願いしますねぇ」
「はい、また来ることもありますからね」
「あら~、頻繁に来てくださってもかまいませんのに」
「一応旅の途中ですから」
「おや~、ナルヴァ村にはたまに来てくださるんですよねぇ?」
ルボルさん、なんで余計なことを言うんですか……。
「たまにですよ」
「ええ、それでかまいませんよ。その時には、構ってくださいねぇ?」
胸の前で手のひらを合わせ、首を傾げながらにっこり。
「あっはっは……それでは失礼します!」
無理無理無理。ヤンデレとは言わないけど、何かが怖い。とりあえずギルドを出た。
「あー、怖かった」
「でもケネス、あそこまで想ってくれる相手はそうはいないとおもいますが」
「形は少し違いますが~エリーさんと同じですよ~」
「エリーはあそこまで病んで……ないことはないか……似てるのかなあ……似てるね……」
「はい。カローラ様もマイカさんも基本的には同じです。おそらくですが、私もカロリッタさんもよく似たものだ思います。愛情表現の方法は違いますが、大きく違うわけではありません。周りを押しのけて自分だけ愛されたいのではなく、みんなと一緒に自分も愛してほしいという感じですね」
「よくあれで分かったね」
「女の直感です」
「だからって愛情を押しつけられてもね……」
「でも~マノンさんのことは~嫌いじゃないですよね~」
「嫌いじゃなければいいってわけじゃないでしょ?」
「それはもちろんですが……この世界はそれなりに過酷です。生きていくだけならなんとかなりますが、それでは人生に全く余裕がなくなります。生活に余裕のある人が余裕のない人の面倒を見ることは、どこでも当たり前のように行われています。だからケネスはより多くの女性の面倒を見るべきだ、というのがみんなの考えです」
「いきなりそんなこと……って、みんな?」
「はい、そうです。ケネス隊の総意です」
「ケネス隊って、ひょっとして前に言ってた、お互いに協力するってやつ? そもそも、いつできたの?」
「かなり前からですね~。骨格部分は~エリーさんが合流する前に~リゼッタさんと二人で考えました~。マリアンさんとセラさんとキラさんは~まだ手を出されていないので正式な妻ではありませんが~その考えには賛成してくれてますよ~」
「こっちにも一言くらい相談してよ」
「あの頃のケネスは一夫一妻にこだわっていました。それでは救われるべき人が救われないだろうと考えた結果です」
「一体どこまで増やすの?」
人助けをするのはいいんだけど、あまり押しかけられるのもねえ。別にマノンさんは僕が助けたわけじゃないし。
水戸の御老公の後ろに、助けられた人がぞろぞろ付いて歩くのはおかしいでしょ? 「ありがとうございました」「いえいえ、どういたしまして。お気を付けて」って別れるものじゃないかなあ。僕がおかしい?
一度行ったところなので[隠密]と[転移]で街道から少し外れたところに出る。
「とりあえずギルドに行っておこうか」
「そうですね。用事は早めに済ませましょう」
「それから宿屋ですね~」
ユーヴィ市ではみんなで宿泊する意味はないので、泊まるつもりはないんだけどね。
城門で手続きを済ませたら、久しぶりのユーヴィ市の町並みを眺める。
「王都を見た後だからか、やっぱり小さいね」
「地方都市はどこも似たようなものでしょうけど」
「市としては小さいですからね~」
この国の半分を歩いた中では市としては小さい。でももっと小さい市もあるらしい。
この国では、貴族領の領都は市として扱われる。地方の男爵領の領都は一〇〇〇人を切ることも珍しくはなく、それでも市なんだそうだ。さすがに領都が町や村では格好が付かないからだろう。
また王都から東へ進むけど、そうするとこれまでとは逆に人が少ない方へ向かうから、それもまた何か新しい発見がありそう。
そんなことを言っているうちに冒険者ギルドに着いた。
「ルボルさんはミリヤさんに相手ができたって言ってたね」
「あの方のノリに付いていくのは大変だと思いますが」
「相手も似たような人なのでは~?」
怖いもの見たさで中に入る。そもそも仕事中だから相手さんがいるわけではないか。
それにしても、相変わらす人は少ないね、ここは。
「あ! ケネスさん! お久しぶりです!」
「ミリヤさん、お久しぶりです……けど……立ち上がらなくてもいいですよ」
「やですねー、お客さんを迎えるんだから立つのは普通じゃないですか!」
「でもミリヤさんしか立ってないですよ?」
「座りっぱなしだから、みんな腰痛持ちなんですよ! 一番若い私は大丈夫ですガッ――」
「「「……」」」
「ミリヤさんは急な体調不良のようで、私が担当いたします。レナーテです。よろしくお願いします」
「いえ、急に一人抜けると大変ですね」
「そうなんですよ。たまにこうなるので困ったもので。ギルド長が下りてきてもあまり役に立ちませんし。それで、えっとケネスさんでしたね。ギルド長に用があるということで間違いないですか?」
「はい。『先日の件で』と言えば分かると思います」
「上にいると思いますが、一応確認してきます。しばらくお待ちください」
「分かりました」
レナーテさんか。前にも向かって右に座っていた女性だね。一瞬でミリヤさんを締め落としたよね、チョークスリーパーで。怖いから触れなかったけど。
そのレナーテさんはミリヤさんを引きずって奥へ行った。
「あら~、ケネスさん、お久しぶりですねぇ」
「お久しぶりです、マノンさん。お元気でしたか?」
他に誰も人がいないからか、マノンさんがカウンターから出てきて僕の目の前まで来たけど、近いよ。
「ええ、体の方は元気ですよ。ミリヤちゃんに恋人ができて、ここは少し騒がしくなりましたけど」
愁いを帯びた表情でマノンさんが一歩近付く。
「らしいですね。先日ルボルさんから聞きました。どんな人なんですか?」
僕が一歩下がる。
「若い冒険者の男性ですよ。かなり見込みがありそうですねぇ」
マノンさんがさらに一歩近付く。
「いや、あの、マノンさん? そこまで近付く必要はないのでは?」
僕がさらに一歩下がる。
「あら~、人と話をする時は正面から目をしっかりと見て話すのが普通ですよねぇ」
マノンさんが一歩近付く。近い近い。
「あっ、マノンさん! 何をしてるんですか!」
戻ってきたレナーテさんが声をかけてくれたから、とりあえずマノンさんが止まってくれた。
「マノンさん……ここ数日、やたらと短いスカートを履いているかと思ったらそういうことですか……」
「だって~、レナーテちゃん。ケネスさんが来るって聞いたら~、それはもう……ね~、ケネスさん?」
「ね~って……僕に聞かれても困りますけど、どういうことなんですか?」
「それが、あの人とは別れたんですよ。結婚前から私より若い恋人がいたのは知っていましたけど、あまり粗略に扱われるとねぇ。そもそも、結婚してから一度も会ってくれないんですよねぇ。おかしいなと思っていたら、あんなことだったなんて」
頬に手を当てて少し困ったように……って、重い内容を気軽に話しますね。
「久しぶりに会って、そんな生々しい話をされても困るんですが」
「それで、そんな時にミリヤちゃんが恋人を作って毎晩ウハウハらしいんですよねぇ。私よりもずいぶん若いのに。それを聞いているこっちは、ねぇ?」
「それでなんで僕なんですか?」
「それは、前から気にしていましたよ。それに、回し蹴りはお好きですよねぇ?」
「おーい、マノン。そろそろ落ち着けや」
「ルボルさん、助かりました……」
受付に下りてきたルボルさんに呼ばれて執務室までやってきた」
「マノンのやつは気立てはいいんだが、少し気が強くてな」
「あれは……気が強いって言うんですか?」
「ギルドの受付の仕事なんて半分は苦情処理だからな。適当に受け流すか、言い返すか、あるいは手を出すか。あいつの場合は足も出すなあ。まあそのあたりだろう。気立てもいいし人当たりもいいが、気が強いし腕っ節も強い。そこに来て旦那の浮気だそうだ。どうやら結婚した時から気付いていたらしいが……それでピリピリしていた時期もあって、ついに旦那とその相手をボコボコにして町から追い出したらしい。俺の紹介で結婚した形だから申し訳なくてな……」
「ボコボコって……」
「まあ、あのおっとりした見た目だからな。気を許して油断したらイチコロってやつだ。戦闘でも日常でもな。でも気立てがいいのは間違いねえ。ミリヤは貰い手が見つかったが、マノンが空いた。どうだ? 尽くす女だぞ?」
「いえ、遠慮します」
「いい女だと思うんだがなあ。明らかにミリヤよりは静かでいいぞ。年は少し上かもしれんが」
「ケネス、マノンさんはかなりの実力者ですよ。目端も利きますね」
「回し蹴りをしながら~マスターの目線を追えるとは~なかなかですよ~」
「助け船を出してよ……」
あの時『ありがとうございました』って思ったのがこう返ってくるとは……。
「まあマノンはそのうち持ち帰ってくれ。退職願は預かっているが、今のところ保留だが、いなくなったら退職扱いだ。それで、この前のことだが、領主には報告済みだ。余計なことをしないようにも言ってある。それでこれが、順番がごちゃごちゃだが、例の報酬だ」
「何があってもマノンさんを持ち帰らせる気かもしれませんが、いりませんよ? それに人手が足りないって言ってたじゃないですか」
「そうか? 仕方がない。それじゃ本人に任せる。お前を追いかけて行ったら諦めてくれ。で、あれから森はどうなった?」
「……魔素を吸収する丸太を追加で置いてきました。今後も暇を見て追加します。置いた周辺の魔素はちゃんと減っているようなので、しばらくは様子見ですね」
「ギルドの方で人員を募集できればいいんだが、その作業に耐えられそうなやつがいなくてな」
「あの森は過酷ですからねえ」
「ああ、そう言えば、ミロシュに会ったんだよな。元気にしてたか?」
「はい、たまたまですが、大聖堂に行ったらミロシュさんに話しかけられました。蛇に噛まれて冒険者をやめたという話を聞いたので、ひょっとしてルボルさんを知ってるかなと思って聞いたら当たりでした。アシルさんという方と途中まで一緒だったと言っていましたね。それと、ルボルさんとレオニートさんに手紙を送ると言っていました。僕が急いでこちらに来たので入れ違いになったと思いますけど」
「そうか。アシルは東の出身だと言ってたからそっちに戻ったかもしれねえな。もし会ったらよろしく言っといてくれ」
「会う可能性は低いですけどね」
「万が一会ったら、でいいさ」
キヴィオ市でレオニートさんと会ったこと。そのおかげでラクヴィ市でマイカと会えたこと。さらにそのおかげでレオンツィオ殿下と会ったこと。そのあたりはルボルさんのおかげでもあるので伝えておいた。もちろん僕とマイカの前世のことは言っていない。
最後に、今後もたまにナルヴァ村を訪れることを伝えてギルド長室を出た。
一階に下りるとマノンさんは自分の席に戻っていた。ミリヤさんはいない。レナーテさんは別の冒険者の相手をしている。
「ケネスさん、今後もよろしくお願いしますねぇ」
「はい、また来ることもありますからね」
「あら~、頻繁に来てくださってもかまいませんのに」
「一応旅の途中ですから」
「おや~、ナルヴァ村にはたまに来てくださるんですよねぇ?」
ルボルさん、なんで余計なことを言うんですか……。
「たまにですよ」
「ええ、それでかまいませんよ。その時には、構ってくださいねぇ?」
胸の前で手のひらを合わせ、首を傾げながらにっこり。
「あっはっは……それでは失礼します!」
無理無理無理。ヤンデレとは言わないけど、何かが怖い。とりあえずギルドを出た。
「あー、怖かった」
「でもケネス、あそこまで想ってくれる相手はそうはいないとおもいますが」
「形は少し違いますが~エリーさんと同じですよ~」
「エリーはあそこまで病んで……ないことはないか……似てるのかなあ……似てるね……」
「はい。カローラ様もマイカさんも基本的には同じです。おそらくですが、私もカロリッタさんもよく似たものだ思います。愛情表現の方法は違いますが、大きく違うわけではありません。周りを押しのけて自分だけ愛されたいのではなく、みんなと一緒に自分も愛してほしいという感じですね」
「よくあれで分かったね」
「女の直感です」
「だからって愛情を押しつけられてもね……」
「でも~マノンさんのことは~嫌いじゃないですよね~」
「嫌いじゃなければいいってわけじゃないでしょ?」
「それはもちろんですが……この世界はそれなりに過酷です。生きていくだけならなんとかなりますが、それでは人生に全く余裕がなくなります。生活に余裕のある人が余裕のない人の面倒を見ることは、どこでも当たり前のように行われています。だからケネスはより多くの女性の面倒を見るべきだ、というのがみんなの考えです」
「いきなりそんなこと……って、みんな?」
「はい、そうです。ケネス隊の総意です」
「ケネス隊って、ひょっとして前に言ってた、お互いに協力するってやつ? そもそも、いつできたの?」
「かなり前からですね~。骨格部分は~エリーさんが合流する前に~リゼッタさんと二人で考えました~。マリアンさんとセラさんとキラさんは~まだ手を出されていないので正式な妻ではありませんが~その考えには賛成してくれてますよ~」
「こっちにも一言くらい相談してよ」
「あの頃のケネスは一夫一妻にこだわっていました。それでは救われるべき人が救われないだろうと考えた結果です」
「一体どこまで増やすの?」
人助けをするのはいいんだけど、あまり押しかけられるのもねえ。別にマノンさんは僕が助けたわけじゃないし。
水戸の御老公の後ろに、助けられた人がぞろぞろ付いて歩くのはおかしいでしょ? 「ありがとうございました」「いえいえ、どういたしまして。お気を付けて」って別れるものじゃないかなあ。僕がおかしい?
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