110 / 278
第三章 第一部
予定通りに進むことと進まないこと
しおりを挟む
人は忙しすぎると余計なことを考えないそうだけど、僕は忙しすぎると食べることを考えるね。領主として休憩時間も取れないほど忙しいわけでもないけど、あれこれ一度に進めているから、一度予定が狂うと調整が難しくなってくる。
何の予定が変わったかというと、森の開拓の予定。ギルド職員によると、開拓の現場にいるドワーフたちが増えたらしい。ゴルジェイさんに言わせると、ドワーフという種族は仕事の匂いにつられて集まってくるそうだ。さすがにユーヴィ市側や森の中に現れることはなかったけど、キヴィオ市側に訪ねてきたそうだ。
「どれくらい増えましたか?」
「三〇〇人前後です。彼らの話によると今後も増える恐れがあります」
「どのあたりから来たか聞いていますか?」
「キヴィオ子爵領が多いですが、レブ男爵領やサガード男爵領からも来ているようです」
「北と南からもやって来ている感じか……」
「彼らはきちんとこちらに報告してから仕事を始めました。仕事をしてくれていますので食事も出しています。ただ宿舎が足りなくなりそうです」
後からやって来たドワーフたちにはチェーンソーはないので、斧を使って切り倒した木の枝を落としたり周りを片付けたりという作業をしていたようだ。なるべく均等に移動してもらったらしい。
「宿舎の方は準備しておきます。食事は今のところは足りていますか?」
「今の人数なら三か月ほどは大丈夫です」
「それならこちらで不足分は準備します。増えた人は名前をチェックしておいてください。賃金が変わりますので。それと、できる限り作業場ごとの人数を均等にしてください」
さらに追加のチェーンソーとカプセルホテルを作って職員に渡しておく。食事についても万が一に備えて追加を準備することにした。
◆ ◆ ◆
ケネス服飾美容店。勝手に僕の名前が使われた店。
建物のオーナーは僕で、店の代表がエリー、副代表はマリアンということになっている。最初はエリーとマリアンの夢だった服屋を作るはずだったけど、いつの間にか働きたくても働く場所がない女性に仕事を与えるような場所になっていた。それはそれで悪いことじゃないけど、人数的にもいっぱいいっぱいになっている。
道に面した側は店で、店の裏にある建物を研修施設のようにしているけど、礼儀作法と読み書き計算を身に付けた人の中で、手に職を付けたいわけじゃなくてお金が必要という人はギルドでの仕事を始めてもらっている。その中にはさっそく開拓現場に派遣された人もいるらしい。
ギルド職員が派遣でこちらに来ることはなくなったけど、従業員の募集は続けてもらっている。今後もそのままでいいのかという話だ。
「先輩、ここは職業訓練学校を急いだ方がいいんじゃないですか?」
「場所も予算もあるけど教える教員が足りないんだよ。そもそも何を教えるかも全部は決まってないんだよね。集まった教員次第になるのかな。もしくは希望の応じて教員を集めるかのどちらかだね」
「とりあえず染織と仕立てはエリーさんかマリアンさん。飲食関係はマノンさんとセラさんとキラさん。読み書き計算の基本はカローラさんと私で始めましょうか。もしくは店の卒業生に声をかけるかですね。リゼッタさんには無理をしてもらっては困りますし、カロリッタさんは販売がありますから」
「それしかないね。そのあたりを基本にしつつ、もし他に学びたいことがあれば応相談で。カロリッタは忙しいけどこのままよろしくね」
「大丈夫ですよ~。お腹いっぱいもらってますから~。ふっふ~」
カロリッタには予算確保のために直轄領にある町に魔獣の素材を売りに行ってもらっている。一ヶ所に大量に持ち込むと価値が下がるし、ギルドの予算がショートしては困るだろうから、町を順番に回ってもらっている。カロリッタなら盗賊が出ようが魔獣が出ようがまったく問題ない。問題は僕の睡眠時間の方だ。
「ミシェルが働くのはもう少し大きくなってからだね」
来月に誕生日が来れば六歳になる。大人に囲まれているからか、言葉遣いも大人びてきた。前に屋台で売り子をした経験があるからか、最近は働きたいと言っている。
「でも、おっとをたすけるのはつまのつとめだって、ヤコミナさんからきいた」
「それはヤコミナがレンスの妻だからだよ」
「わたしがパパのつまになればいい。カリンとリーセもいっしょにパパのつまなればいいっていわれた」
「それもヤコミナが言ったの?」
「ううん、フェナさん」
「フェナはちゃっかりしてるね」
「恐れ入ります。それがここで生きていくために必要な素養でございます」
側に控えていたフェナが悪びれもせずにそう言った。
フェナは言葉はきれいで礼儀正しい。彼女は女性の働く場所が少ないこの町で生活するために教養を身に付け、夜逃げした代官の二つ前の代官の愛人に収まって子供まで産んでいる。現在は孫もいる状態だそうだ。子供と孫はキヴィオ市で働いていると聞いている。
フェナはミシェルが僕の子供じゃないことも知っている。子供のいる寡婦を妻にして母娘一緒に面倒を見るのはなかなかできないと変な感心の仕方をされたけど、妻にするためにミシェルを助けたわけじゃないよ?
「それも、そのうち変えたいと思うよ。働きたい人が自由に働けるように。そのためには人が足らない。もう少しかき集められたらいいんだけど、いきなり増やしても、まだ仕事が十分にないからね」
「不謹慎なことを口にしますが、もし旦那様が国王になれば、もっと国が栄えるように思えます」
そう言ったのはイェルン。言いたいことは分からなくはない。チートを駆使すればできると思うけど、それはできない。力業で町を大きくしたからといって、その発展が続くとは限らない。続くためには地力を底上げしておく必要がある。
「僕は自分の領地は責任を持って育てるけど、国全部はさすがに無理。目が行き届かないからね。それに既得権益を失うことを恐れる人は多いよ。反感を買ってまでうちのやり方を広めたいとは思わないね。この領地が僻地にあり、何よりもしがらみが少ないから引き受けた、というのが正直なところかな」
「しがらみでございますか?」
「そう。貴族的なしがらみね。直轄領にある町を一つもらっても、同じことはできないと思うよ。周りが敵だらけになる恐れもあるから」
「そうなりますか……」
「イェルンだって、いきなりやって来た新人が『あなたのやり方は間違っている。私のやり方の方が確実にこの家は良くなります』と言ったところで信用できないでしょ? 自分のやり方を否定されるようなものだからね」
「ではこの領地のやり方を広めることはないのでしょうか?」
「積極的に広めたりはしないけど聞かれたら答えるよ。だからいつの間にかそれが広まってることはあるかもね。そしてどこから始まったのかを調べてみたらユーヴィ市だったということはあるかもしれない」
いくら穏やかな人でも、貴族というのは先祖や自分がやってきたことに誇りを持っている。あの穏やかそうなスーレ子爵だって、いきなり別のやり方を押し付けられれば反発するだろう。それに前のパルツィ子爵のようなのもいるしね。まずはじっくりとこの町を育てる。他の町と積極的に協同するとすれば、一定の結果が出てからだろうね。
◆ ◆ ◆
現場の確認に行くと、ゴルジェイさんから声をかけられた。
「領主殿、一度王都に戻してもらいたい。向こうの引き継ぎを済ませて、人材を確保をしてきます」
「誰か一緒に戻りますか?」
「いや、ワシ一人で十分。帰りは何人か連れて帰りますから、迎えに来てくれると助かります」
「ではとりあえず向こうに行きましょうか」
「便利なもんですなあ」
「これがあるから領主ができるというのはありますね」
ゴルジェイさんと王都に戻り、店の前に三日後の朝に迎えに来ることにした。ギルド長候補たちは今回は開拓には参加していないので、どこかにいるだろうということだ。それ以外にも手の空いている職人がいれば声をかけてくれるように頼んだ。特に女性が手に職を付けられる仕事を教えられる人も探してほしいと無茶な注文もしておいた。
それから僕の方は再びユーヴィ男爵領に戻り、三つの開拓場所に問題がないのを確認すると、ユーヴィ市に戻って職業訓練学校を作ることにした。
◆ ◆ ◆
「鍛冶と陶芸はさすがに別の建物がいいね。左官や大工も家具職人も広い空間が必要だから別にした方がいいかな。室内だけで完結できそうなものは一つの建物に入れる。そんな感じでいいと思うよ」
「陶芸はとにかくホコリっぽくなりますねー。火い使いますしー。左官も似た感じやと思いますー」
「熱と音もが漏れないようにできる? さすがに完全には無理だろうけど」
「まったく漏れないといざという時に危険じゃありませんか?」
アシルさんとフランシスさんのアドバイスを元に、訓練学校の建物を作る。仮に職業訓練学校と呼んでいるけど、細かい内容はまだ決まっていない。統一した決まりは設けず、ある程度の内容はそれぞれの分野の教員に任せることになる。
この世界では、職人のところにを訪ねて弟子入りするしか技術を身に付ける機会がないから、この訓練学校では弟子を受け入れる師匠を集めておく形になる。
受け入れる人は大きく分けると二種類。一つはお金を稼ぎたい人。もう一つは手に職を付けたい人。
言い方は悪いけど、手に職を付けるよりもお金を稼ぎたい人は、基本的な行儀作法と読み書き計算を覚え、ギルドの職員、または店の販売員として働いてもらう。店もそのうち二号店を出すつもりだから。
手に職を付けたい人も、基本的な礼儀作法、そして読み書き計算は必ず覚えてもらう。その上で個々の技能を身に付けてもらう。
個々の技能には、読み書き計算、織り、染め、仕立て、料理、代筆など、これまで店で教えていたものもあれば、陶芸、木工、家具製作、大工、左官、鍛冶など、これまでになかったものもある。
木工、家具製作、大工、左官、鍛冶については、この町に住んでいる職人たちにも教員を務めてもらうことになっている。彼らも自分の工房があるので、いつもここで教えるというわけじゃない。
でも職人だって年がら年中仕事があるわけでもないので、同じ技術を教える教員のうち、少なくとも一人は教えに来るということになっている。後進も育てられるし、手が空いている時に収入があれば助かるという話だった。
ドワーフの作業員の中にも大工や左官などをしていた人もいるので、すでに先行して町の中で建物の改修工事などをしてもらっている。
土木関係以外で教えた経験がある人もいたので、訓練学校が完成したら教員として呼ぶことになっている。その人たちの家も必要なわけで、今後は住宅事情が変わりそうだ。とりあえず建築資材だけは大量に用意してある。開拓している森の木だね。
木を切り倒して街道を通す。いずれ石畳を敷く作業もあるし、木が倒れても道を塞がない程度の幅は持たせたい。そうすれば大量の木材が集まる。その木材の皮を剥いて丸太にし、魔法で乾燥させて建材として使える状態にする。そこまでは現地で進めてもらっている。
予定通りに進んでいることもあれば進んでいないこともある。訓練学校は予定通りに進むかな?
何の予定が変わったかというと、森の開拓の予定。ギルド職員によると、開拓の現場にいるドワーフたちが増えたらしい。ゴルジェイさんに言わせると、ドワーフという種族は仕事の匂いにつられて集まってくるそうだ。さすがにユーヴィ市側や森の中に現れることはなかったけど、キヴィオ市側に訪ねてきたそうだ。
「どれくらい増えましたか?」
「三〇〇人前後です。彼らの話によると今後も増える恐れがあります」
「どのあたりから来たか聞いていますか?」
「キヴィオ子爵領が多いですが、レブ男爵領やサガード男爵領からも来ているようです」
「北と南からもやって来ている感じか……」
「彼らはきちんとこちらに報告してから仕事を始めました。仕事をしてくれていますので食事も出しています。ただ宿舎が足りなくなりそうです」
後からやって来たドワーフたちにはチェーンソーはないので、斧を使って切り倒した木の枝を落としたり周りを片付けたりという作業をしていたようだ。なるべく均等に移動してもらったらしい。
「宿舎の方は準備しておきます。食事は今のところは足りていますか?」
「今の人数なら三か月ほどは大丈夫です」
「それならこちらで不足分は準備します。増えた人は名前をチェックしておいてください。賃金が変わりますので。それと、できる限り作業場ごとの人数を均等にしてください」
さらに追加のチェーンソーとカプセルホテルを作って職員に渡しておく。食事についても万が一に備えて追加を準備することにした。
◆ ◆ ◆
ケネス服飾美容店。勝手に僕の名前が使われた店。
建物のオーナーは僕で、店の代表がエリー、副代表はマリアンということになっている。最初はエリーとマリアンの夢だった服屋を作るはずだったけど、いつの間にか働きたくても働く場所がない女性に仕事を与えるような場所になっていた。それはそれで悪いことじゃないけど、人数的にもいっぱいいっぱいになっている。
道に面した側は店で、店の裏にある建物を研修施設のようにしているけど、礼儀作法と読み書き計算を身に付けた人の中で、手に職を付けたいわけじゃなくてお金が必要という人はギルドでの仕事を始めてもらっている。その中にはさっそく開拓現場に派遣された人もいるらしい。
ギルド職員が派遣でこちらに来ることはなくなったけど、従業員の募集は続けてもらっている。今後もそのままでいいのかという話だ。
「先輩、ここは職業訓練学校を急いだ方がいいんじゃないですか?」
「場所も予算もあるけど教える教員が足りないんだよ。そもそも何を教えるかも全部は決まってないんだよね。集まった教員次第になるのかな。もしくは希望の応じて教員を集めるかのどちらかだね」
「とりあえず染織と仕立てはエリーさんかマリアンさん。飲食関係はマノンさんとセラさんとキラさん。読み書き計算の基本はカローラさんと私で始めましょうか。もしくは店の卒業生に声をかけるかですね。リゼッタさんには無理をしてもらっては困りますし、カロリッタさんは販売がありますから」
「それしかないね。そのあたりを基本にしつつ、もし他に学びたいことがあれば応相談で。カロリッタは忙しいけどこのままよろしくね」
「大丈夫ですよ~。お腹いっぱいもらってますから~。ふっふ~」
カロリッタには予算確保のために直轄領にある町に魔獣の素材を売りに行ってもらっている。一ヶ所に大量に持ち込むと価値が下がるし、ギルドの予算がショートしては困るだろうから、町を順番に回ってもらっている。カロリッタなら盗賊が出ようが魔獣が出ようがまったく問題ない。問題は僕の睡眠時間の方だ。
「ミシェルが働くのはもう少し大きくなってからだね」
来月に誕生日が来れば六歳になる。大人に囲まれているからか、言葉遣いも大人びてきた。前に屋台で売り子をした経験があるからか、最近は働きたいと言っている。
「でも、おっとをたすけるのはつまのつとめだって、ヤコミナさんからきいた」
「それはヤコミナがレンスの妻だからだよ」
「わたしがパパのつまになればいい。カリンとリーセもいっしょにパパのつまなればいいっていわれた」
「それもヤコミナが言ったの?」
「ううん、フェナさん」
「フェナはちゃっかりしてるね」
「恐れ入ります。それがここで生きていくために必要な素養でございます」
側に控えていたフェナが悪びれもせずにそう言った。
フェナは言葉はきれいで礼儀正しい。彼女は女性の働く場所が少ないこの町で生活するために教養を身に付け、夜逃げした代官の二つ前の代官の愛人に収まって子供まで産んでいる。現在は孫もいる状態だそうだ。子供と孫はキヴィオ市で働いていると聞いている。
フェナはミシェルが僕の子供じゃないことも知っている。子供のいる寡婦を妻にして母娘一緒に面倒を見るのはなかなかできないと変な感心の仕方をされたけど、妻にするためにミシェルを助けたわけじゃないよ?
「それも、そのうち変えたいと思うよ。働きたい人が自由に働けるように。そのためには人が足らない。もう少しかき集められたらいいんだけど、いきなり増やしても、まだ仕事が十分にないからね」
「不謹慎なことを口にしますが、もし旦那様が国王になれば、もっと国が栄えるように思えます」
そう言ったのはイェルン。言いたいことは分からなくはない。チートを駆使すればできると思うけど、それはできない。力業で町を大きくしたからといって、その発展が続くとは限らない。続くためには地力を底上げしておく必要がある。
「僕は自分の領地は責任を持って育てるけど、国全部はさすがに無理。目が行き届かないからね。それに既得権益を失うことを恐れる人は多いよ。反感を買ってまでうちのやり方を広めたいとは思わないね。この領地が僻地にあり、何よりもしがらみが少ないから引き受けた、というのが正直なところかな」
「しがらみでございますか?」
「そう。貴族的なしがらみね。直轄領にある町を一つもらっても、同じことはできないと思うよ。周りが敵だらけになる恐れもあるから」
「そうなりますか……」
「イェルンだって、いきなりやって来た新人が『あなたのやり方は間違っている。私のやり方の方が確実にこの家は良くなります』と言ったところで信用できないでしょ? 自分のやり方を否定されるようなものだからね」
「ではこの領地のやり方を広めることはないのでしょうか?」
「積極的に広めたりはしないけど聞かれたら答えるよ。だからいつの間にかそれが広まってることはあるかもね。そしてどこから始まったのかを調べてみたらユーヴィ市だったということはあるかもしれない」
いくら穏やかな人でも、貴族というのは先祖や自分がやってきたことに誇りを持っている。あの穏やかそうなスーレ子爵だって、いきなり別のやり方を押し付けられれば反発するだろう。それに前のパルツィ子爵のようなのもいるしね。まずはじっくりとこの町を育てる。他の町と積極的に協同するとすれば、一定の結果が出てからだろうね。
◆ ◆ ◆
現場の確認に行くと、ゴルジェイさんから声をかけられた。
「領主殿、一度王都に戻してもらいたい。向こうの引き継ぎを済ませて、人材を確保をしてきます」
「誰か一緒に戻りますか?」
「いや、ワシ一人で十分。帰りは何人か連れて帰りますから、迎えに来てくれると助かります」
「ではとりあえず向こうに行きましょうか」
「便利なもんですなあ」
「これがあるから領主ができるというのはありますね」
ゴルジェイさんと王都に戻り、店の前に三日後の朝に迎えに来ることにした。ギルド長候補たちは今回は開拓には参加していないので、どこかにいるだろうということだ。それ以外にも手の空いている職人がいれば声をかけてくれるように頼んだ。特に女性が手に職を付けられる仕事を教えられる人も探してほしいと無茶な注文もしておいた。
それから僕の方は再びユーヴィ男爵領に戻り、三つの開拓場所に問題がないのを確認すると、ユーヴィ市に戻って職業訓練学校を作ることにした。
◆ ◆ ◆
「鍛冶と陶芸はさすがに別の建物がいいね。左官や大工も家具職人も広い空間が必要だから別にした方がいいかな。室内だけで完結できそうなものは一つの建物に入れる。そんな感じでいいと思うよ」
「陶芸はとにかくホコリっぽくなりますねー。火い使いますしー。左官も似た感じやと思いますー」
「熱と音もが漏れないようにできる? さすがに完全には無理だろうけど」
「まったく漏れないといざという時に危険じゃありませんか?」
アシルさんとフランシスさんのアドバイスを元に、訓練学校の建物を作る。仮に職業訓練学校と呼んでいるけど、細かい内容はまだ決まっていない。統一した決まりは設けず、ある程度の内容はそれぞれの分野の教員に任せることになる。
この世界では、職人のところにを訪ねて弟子入りするしか技術を身に付ける機会がないから、この訓練学校では弟子を受け入れる師匠を集めておく形になる。
受け入れる人は大きく分けると二種類。一つはお金を稼ぎたい人。もう一つは手に職を付けたい人。
言い方は悪いけど、手に職を付けるよりもお金を稼ぎたい人は、基本的な行儀作法と読み書き計算を覚え、ギルドの職員、または店の販売員として働いてもらう。店もそのうち二号店を出すつもりだから。
手に職を付けたい人も、基本的な礼儀作法、そして読み書き計算は必ず覚えてもらう。その上で個々の技能を身に付けてもらう。
個々の技能には、読み書き計算、織り、染め、仕立て、料理、代筆など、これまで店で教えていたものもあれば、陶芸、木工、家具製作、大工、左官、鍛冶など、これまでになかったものもある。
木工、家具製作、大工、左官、鍛冶については、この町に住んでいる職人たちにも教員を務めてもらうことになっている。彼らも自分の工房があるので、いつもここで教えるというわけじゃない。
でも職人だって年がら年中仕事があるわけでもないので、同じ技術を教える教員のうち、少なくとも一人は教えに来るということになっている。後進も育てられるし、手が空いている時に収入があれば助かるという話だった。
ドワーフの作業員の中にも大工や左官などをしていた人もいるので、すでに先行して町の中で建物の改修工事などをしてもらっている。
土木関係以外で教えた経験がある人もいたので、訓練学校が完成したら教員として呼ぶことになっている。その人たちの家も必要なわけで、今後は住宅事情が変わりそうだ。とりあえず建築資材だけは大量に用意してある。開拓している森の木だね。
木を切り倒して街道を通す。いずれ石畳を敷く作業もあるし、木が倒れても道を塞がない程度の幅は持たせたい。そうすれば大量の木材が集まる。その木材の皮を剥いて丸太にし、魔法で乾燥させて建材として使える状態にする。そこまでは現地で進めてもらっている。
予定通りに進んでいることもあれば進んでいないこともある。訓練学校は予定通りに進むかな?
1
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる