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第三章 第二部
習うより慣れろ
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「閣下、これは……」
ここは僕が大きなものを作るのに使っている倉庫の一つ。今日は見本として住宅を魔道具仕様に変える魔化ユニットを見せている。床に広げて、それをみんなで見てもらい、質疑応答のような形で解説していく。
「昨日みなさんに見てもらった一戸建ての住宅がありました。あの基本部分がこれです」
「これはどこがどうなっているのですか?」
まあケーブルだらけだからパッとは分からないね。
電気の配線と違うのは、直流とか交流とか、マイナスとかプラスとか、細かいことは何も考えなくてもいいということ。繋がってさえいれば魔力は流れるんだよね。だからどこかに繋がっていれば魔道具は使える。
「まず分けてみましょう。これがキッチンの部分です。ここがお風呂、ここがトイレ、これは大丈夫ですね?」
「はい」
「基本的には魔道具と魔道具を繋げているだけです。これがその線です」
両端に端子があるケーブルのようなものをジェナさんに見せる。
「……なるほど、確かにこれも魔道具ですね。魔道具を使って魔道具を接続する形ですね」
「そうです。例えば水を出す魔道具がありますが、あれも見方を変えれば水を出す、止める、水量を変えるする、温度を変える、このように複数の魔道具が組み合わさったものです。このキッチンでは、魔力を行き渡らせるために、複数の魔道具を先ほどの線で繋いでいます。そしてお風呂やトイレなど、別の場所とも線で繋いでいます。そして全体に魔力を行き渡らせるのが燃料箱です」
「つまり、我々の知っている魔道具を組み合わせて規模を大きくしているだけとも考えられますね」
「はい、基本はそうですよ。昨日見てもらった中で、何か新しいものはありましたか? 僕は既存のものを組み合わせているだけです。ただし、何と何を組み合わせるかによって別の使い方ができるようになることもあります」
「ひょっとして閣下はそれをさらに広げて、この町の建物をすべて繋げることを考えていらっしゃるのではないでしょうか?」
いい考えだね。ジェナさんが言ったのは、いわゆる電線に相当するもの。さすがに張り巡らすのは無理だし、メンテナンスの手間を考えたら今くらいがちょうどいいから、その案は没になった。
「そこに気付きましたか。それも考えましたが、どのように線を繋げるか、どこを通すかが問題になります。また線が切れた場合の修理の手間や、その間に魔道具が使えなくならないように二重三重にして冗長性を持たせることを考えれば、建物単位が今のところは一番管理がしやすいかなと思っています」
「たしかに。順調に使えている時は問題ありませんが、何かがあった時のことを考えれば、大きくしすぎないことも大切ですね」
「この町の人口は、独立時からかなり増えましたが、それでも現在でおよそ三〇〇〇人です。これくらいなら今のやり方ができます。でも王都のように一五万人もいれば無理です。燃料箱を今の五〇倍用意するのは現実的ではありません。それならジェナさんの言うように、町全体を繋ぐ方が無駄が省けます」
「閣下、ふと思ったのですが、大森林の魔素でしたか、それはなくならないのですか?」
「そうですね……燃料箱を一万個用意して、それを毎月すべて充填するとしますと……今の段階で溜まっている魔素だけで三〇〇年は問題ありません」
「どんどん追加されているのでなくなることはないと思ってもいいのですか?」
「今のところは、ですね。もしなくなるとしても、それまでに新しいやり方を考えればいいだけの話なので、無理に大森林の魔素を使う必要はありません。こういう言い方はどうかと思いますが、僕は単に大森林の魔素を減らすことで魔獣の暴走を減らそうとしてるだけです。結果として吸い出した魔素の使い道がないので、燃料として使おうとしているだけなんですよ」
魔素の量は調節できる。それなら、領内の特定の場所の魔素を濃くすれば、大森林から吸い出せなくても問題ないと思うかもしれないけど、さすがにこれだけの量は作れない。だからもし大森林の魔素がなくなりそうなら、その前には別の方法でエネルギーを作り出す方法を考えないといけない。それは何百年も何千年も先の話になるだろうけど。
「マスター、調子はどうですか~?」
「みんなさすがに王宮で働いていたから、基本は問題ないね。後は実地と応用かな」
「そのあたりは~マスターが得意なところですからね~」
「ケネス様、その方は……」
おずおずと浮いて近付いてきたのは妖精のアニエッタさん。
「僕の妻の一人でカロリッタです。アニエッタさんと同じ妖精ですね」
「カロリッタです~」
「初めまして、アニエッタです。あの、カロリッタ様は普段からそのお姿ですか?」
「そうですよ~。小さくなる理由がないので~」
「疲れとか不調とかはありませんか?」
「ないですね~。むしろ小さくなる方法を忘れそうですね~」
「カロリッタの小さい姿っていつから見てなかったっけ?」
「盗賊退治の頃までは外を歩く時は小さくなってましたね~」
「そうだった。去年の夏くらい?」
「「「「夏⁉」」」」
妖精たちがざわついた。
「それくらいでしょうか~」
「大きな姿をそれだけの期間維持できるコツはありますか?」
「コツですか~。基本は魔力量の問題ですよね~。とりあえず魔力量を増やしましょう~」
「魔力を増やす……増やすコツはありますか?」
「妖精に限りませんが~空になる直前から回復すれば~全体量は伸びるんですよ~。体を大きくするにはかなりの魔力が必要です~。でも減りすぎると具合が悪くなるので~みんなはあまり使いません~。だからいくら経っても伸びないんですよね~」
「命の危険があると聞きましたが、それはどうなのですか?」
これも意外と誤解があるんだよね。魔力が尽きたから死んでしまうのではなくて、たまたま魔力が尽きた時の状況が悪かっただけ。例えば貧血で倒れたから死ぬわけじゃなくて、貧血で倒れた場所が交差点だったらどうなるかという話。魔力切れで気を失ったところに魔獣が来てガブッとやられたら、魔力切れで死んだから魔獣に食べられたと周りには思われるわけ。
「滅多に死ぬことはありませんよ~。使い切っても気絶するくらいですから~。ただ~戦闘中に切れると危ないですね~。できれば家の中で訓練して~ギリギリまで使ってから寝るのが一番でしょうか~。ギリギリを攻めると~けっこう伸びますよ~」
「ギリギリを攻める……」
そう言えば、一般的な魔力の増やす訓練方法って聞いたことがなかったね。
「例えば~水属性なら~桶の水を凍らせるとか~。火属性なら~桶の水を沸かすとか~。風属性なら~部屋の中の空気を動かしたり~土属性なら土を固めたり崩したりとかでしょうか~。あえて苦手な属性を使って~魔力を無理矢理に減らすというのもありですね~。桶の水を沸かして~凍らせて~を繰り返すのが手っ取り早いです~。そうすると~苦手な属性の才能が~意外に伸びるかもしれませんよ~」
「なるほど。とりあえず安全な場所で限界まで減らすわけですね」
「どうせ一晩寝たら回復しますからね~。それなら使い切ってから寝て成長に繋げる方がいいですね~」
「カロリッタ、もしよければ彼女たちに魔道具作りや魔法を鍛える指導をしてくれない? まずは魔化ユニットを作れるくらいになってほしいんだけど」
「いいですよ~。魔道具ならお任せください~」
カロリッタってこういう口調だから分かりにくいけど、細かいことがものすごく得意だからね。あまりやらないけど。
「ではみなさん、僕がいない間はカロリッタに教えてもらってください。元々は職業訓練学校の教員をする予定でしたので、十分な力はあります」
「ではビシビシいきますよ~」
◆ ◆ ◆
「彼女たちがいずれ教員をしてくれると助かるなあ」
訓練学校では魔法関係は教えていない。教えられる人がほとんどいないのが現状。魔法使いギルドはないからね。現役の冒険者に教えてもらうのは仕事に行くなと言っているようなものだから無理。そもそもユーヴィ市周辺は町が小さい、人が少ない、物が動かないなどの悪条件が揃っていたから冒険者が少なかったんだよね。魔法が使える冒険者はさらに少ない。生活魔法くらいならなんとか、という人が多いかな。そんな中でもミリヤさんの恋人のジャンは頑張っていると聞いている。
とりあえずこの領地には魔法使いが少ない。そうなるとうちの妻たちが教えることになるけど、みんなそれなりにやりたいことをやっているし、体調の問題もあるから。
そんな中でカロリッタは色々な点で特殊と言えば特殊。カローラによって僕のために作られた守護妖精で、リゼッタとは違う意味で僕を一番に考えている。基本的に僕が頼んだことを嫌とは言わない。店を手伝いつつ魔獣を狩ってあちこちで売り払ってもらっている。
去年考えていたのとはずいぶん違う形になったけど、店の方も順調だ。四月から服飾美容店の二号店と三号店をオープンしている。この二店は販売のみで、二号店は町の東寄り、三号店は西寄りにある。少し時間がかかったのは、建てるのをこの町の大工と左官に頼んだからだ。
職業訓練学校で礼儀と読み書き計算を学んだ人を本店で受け入れ、店のことを学ばせたら二号店と三号店に振り分ける。
本店と違うのは、二号店と三号店は男性用の服も置くようになったこと。ギルドの制服が町に知れ渡ったことで、あのような服を着たいという人が増えたからだ。
ギルドの制服のようなきっちりしたものだけではなく、僕やミシェルが履いていたようなカーゴパンツなども販売していて、主に職人に人気が出ている。しっかりした生地で作られていて、少し硬いけど簡単には破れたりしないし、ガシガシ洗っても大丈夫。
ちなみに店の名前は『ケネス服飾美容店』から『公営服飾美容店』に変わった。公営になったからね。そして店を増やす際にヘルガさんが店長になるのを希望したので、彼女の家の横に新しく建て、そこを二号店とすることになった。彼女の夫は雑貨屋を経営していて、夫は雑貨屋、妻は公営服飾美容店で店長として働くことになった。
公営服飾美容店で販売する服は値段をやや高めに設定してある。これは他の衣料品店を潰さないため。服飾美容店で学んだ人たちが独り立ちをし始め、あちこちで店を始めているから、住み分けが必要になる。エリーの弟子たちの店を見て回ったけど、素材に関しては少し劣ったものを使っているけど、デザインはかなり洗練されてきた。
町中の衣料品店で扱われている服の素材は、職業訓練学校の授業の際に作られたものが多い。もちろん全然ダメなものは取り除かれるけど、一定の水準を超えているものは服飾ギルドに回され、それを必要とする衣料品店などが購入することになっている。
マノンとセラとキラがやろうとしていた飲食店は見合わせることになった。マノンは悪阻が出ているし、カローラとセラはそろそろ作る時期だからね。体を動かすのは悪いことではないけど、妊娠すると味覚が変化するそうだから。
◆ ◆ ◆
「ご主人様、その際はぜひこの超最新型の拘束具をお使いください」
「……超最新型?」
「アレイダに渡したものをご主人様専用にしました。あれは汎用品でしたので」
「あの時のあれか……」
欲しいって言うから結婚祝いとしてあげたら、「やはりお持ちでしたね」って言われたんだよね。マジックバッグの中身は共用だからね。勝手に入ってるんだよ。
「まず、どれだけ引っ張っても肌を傷めない安心設計。鎖の部分は魔力で作られていて、ご主人様の魔力に反応して形が変わるようになっています。いつでもどこでもお望みのままです。そしてそのまま私はママになりますね」
「誰が上手いこと言えと。それに無駄に高い技術力」
「先生、その際は私にもよろしくお願いします」
「セラ、カローラに影響されなくてもいいんだよ。セラがそれを付けるとかなり背徳感があるから。そもそも拘束具って必要?」
「一通りのことを体験して、自分に向いていることを探しているところです」
「努力の方向を間違えてはいけない」
ここは僕が大きなものを作るのに使っている倉庫の一つ。今日は見本として住宅を魔道具仕様に変える魔化ユニットを見せている。床に広げて、それをみんなで見てもらい、質疑応答のような形で解説していく。
「昨日みなさんに見てもらった一戸建ての住宅がありました。あの基本部分がこれです」
「これはどこがどうなっているのですか?」
まあケーブルだらけだからパッとは分からないね。
電気の配線と違うのは、直流とか交流とか、マイナスとかプラスとか、細かいことは何も考えなくてもいいということ。繋がってさえいれば魔力は流れるんだよね。だからどこかに繋がっていれば魔道具は使える。
「まず分けてみましょう。これがキッチンの部分です。ここがお風呂、ここがトイレ、これは大丈夫ですね?」
「はい」
「基本的には魔道具と魔道具を繋げているだけです。これがその線です」
両端に端子があるケーブルのようなものをジェナさんに見せる。
「……なるほど、確かにこれも魔道具ですね。魔道具を使って魔道具を接続する形ですね」
「そうです。例えば水を出す魔道具がありますが、あれも見方を変えれば水を出す、止める、水量を変えるする、温度を変える、このように複数の魔道具が組み合わさったものです。このキッチンでは、魔力を行き渡らせるために、複数の魔道具を先ほどの線で繋いでいます。そしてお風呂やトイレなど、別の場所とも線で繋いでいます。そして全体に魔力を行き渡らせるのが燃料箱です」
「つまり、我々の知っている魔道具を組み合わせて規模を大きくしているだけとも考えられますね」
「はい、基本はそうですよ。昨日見てもらった中で、何か新しいものはありましたか? 僕は既存のものを組み合わせているだけです。ただし、何と何を組み合わせるかによって別の使い方ができるようになることもあります」
「ひょっとして閣下はそれをさらに広げて、この町の建物をすべて繋げることを考えていらっしゃるのではないでしょうか?」
いい考えだね。ジェナさんが言ったのは、いわゆる電線に相当するもの。さすがに張り巡らすのは無理だし、メンテナンスの手間を考えたら今くらいがちょうどいいから、その案は没になった。
「そこに気付きましたか。それも考えましたが、どのように線を繋げるか、どこを通すかが問題になります。また線が切れた場合の修理の手間や、その間に魔道具が使えなくならないように二重三重にして冗長性を持たせることを考えれば、建物単位が今のところは一番管理がしやすいかなと思っています」
「たしかに。順調に使えている時は問題ありませんが、何かがあった時のことを考えれば、大きくしすぎないことも大切ですね」
「この町の人口は、独立時からかなり増えましたが、それでも現在でおよそ三〇〇〇人です。これくらいなら今のやり方ができます。でも王都のように一五万人もいれば無理です。燃料箱を今の五〇倍用意するのは現実的ではありません。それならジェナさんの言うように、町全体を繋ぐ方が無駄が省けます」
「閣下、ふと思ったのですが、大森林の魔素でしたか、それはなくならないのですか?」
「そうですね……燃料箱を一万個用意して、それを毎月すべて充填するとしますと……今の段階で溜まっている魔素だけで三〇〇年は問題ありません」
「どんどん追加されているのでなくなることはないと思ってもいいのですか?」
「今のところは、ですね。もしなくなるとしても、それまでに新しいやり方を考えればいいだけの話なので、無理に大森林の魔素を使う必要はありません。こういう言い方はどうかと思いますが、僕は単に大森林の魔素を減らすことで魔獣の暴走を減らそうとしてるだけです。結果として吸い出した魔素の使い道がないので、燃料として使おうとしているだけなんですよ」
魔素の量は調節できる。それなら、領内の特定の場所の魔素を濃くすれば、大森林から吸い出せなくても問題ないと思うかもしれないけど、さすがにこれだけの量は作れない。だからもし大森林の魔素がなくなりそうなら、その前には別の方法でエネルギーを作り出す方法を考えないといけない。それは何百年も何千年も先の話になるだろうけど。
「マスター、調子はどうですか~?」
「みんなさすがに王宮で働いていたから、基本は問題ないね。後は実地と応用かな」
「そのあたりは~マスターが得意なところですからね~」
「ケネス様、その方は……」
おずおずと浮いて近付いてきたのは妖精のアニエッタさん。
「僕の妻の一人でカロリッタです。アニエッタさんと同じ妖精ですね」
「カロリッタです~」
「初めまして、アニエッタです。あの、カロリッタ様は普段からそのお姿ですか?」
「そうですよ~。小さくなる理由がないので~」
「疲れとか不調とかはありませんか?」
「ないですね~。むしろ小さくなる方法を忘れそうですね~」
「カロリッタの小さい姿っていつから見てなかったっけ?」
「盗賊退治の頃までは外を歩く時は小さくなってましたね~」
「そうだった。去年の夏くらい?」
「「「「夏⁉」」」」
妖精たちがざわついた。
「それくらいでしょうか~」
「大きな姿をそれだけの期間維持できるコツはありますか?」
「コツですか~。基本は魔力量の問題ですよね~。とりあえず魔力量を増やしましょう~」
「魔力を増やす……増やすコツはありますか?」
「妖精に限りませんが~空になる直前から回復すれば~全体量は伸びるんですよ~。体を大きくするにはかなりの魔力が必要です~。でも減りすぎると具合が悪くなるので~みんなはあまり使いません~。だからいくら経っても伸びないんですよね~」
「命の危険があると聞きましたが、それはどうなのですか?」
これも意外と誤解があるんだよね。魔力が尽きたから死んでしまうのではなくて、たまたま魔力が尽きた時の状況が悪かっただけ。例えば貧血で倒れたから死ぬわけじゃなくて、貧血で倒れた場所が交差点だったらどうなるかという話。魔力切れで気を失ったところに魔獣が来てガブッとやられたら、魔力切れで死んだから魔獣に食べられたと周りには思われるわけ。
「滅多に死ぬことはありませんよ~。使い切っても気絶するくらいですから~。ただ~戦闘中に切れると危ないですね~。できれば家の中で訓練して~ギリギリまで使ってから寝るのが一番でしょうか~。ギリギリを攻めると~けっこう伸びますよ~」
「ギリギリを攻める……」
そう言えば、一般的な魔力の増やす訓練方法って聞いたことがなかったね。
「例えば~水属性なら~桶の水を凍らせるとか~。火属性なら~桶の水を沸かすとか~。風属性なら~部屋の中の空気を動かしたり~土属性なら土を固めたり崩したりとかでしょうか~。あえて苦手な属性を使って~魔力を無理矢理に減らすというのもありですね~。桶の水を沸かして~凍らせて~を繰り返すのが手っ取り早いです~。そうすると~苦手な属性の才能が~意外に伸びるかもしれませんよ~」
「なるほど。とりあえず安全な場所で限界まで減らすわけですね」
「どうせ一晩寝たら回復しますからね~。それなら使い切ってから寝て成長に繋げる方がいいですね~」
「カロリッタ、もしよければ彼女たちに魔道具作りや魔法を鍛える指導をしてくれない? まずは魔化ユニットを作れるくらいになってほしいんだけど」
「いいですよ~。魔道具ならお任せください~」
カロリッタってこういう口調だから分かりにくいけど、細かいことがものすごく得意だからね。あまりやらないけど。
「ではみなさん、僕がいない間はカロリッタに教えてもらってください。元々は職業訓練学校の教員をする予定でしたので、十分な力はあります」
「ではビシビシいきますよ~」
◆ ◆ ◆
「彼女たちがいずれ教員をしてくれると助かるなあ」
訓練学校では魔法関係は教えていない。教えられる人がほとんどいないのが現状。魔法使いギルドはないからね。現役の冒険者に教えてもらうのは仕事に行くなと言っているようなものだから無理。そもそもユーヴィ市周辺は町が小さい、人が少ない、物が動かないなどの悪条件が揃っていたから冒険者が少なかったんだよね。魔法が使える冒険者はさらに少ない。生活魔法くらいならなんとか、という人が多いかな。そんな中でもミリヤさんの恋人のジャンは頑張っていると聞いている。
とりあえずこの領地には魔法使いが少ない。そうなるとうちの妻たちが教えることになるけど、みんなそれなりにやりたいことをやっているし、体調の問題もあるから。
そんな中でカロリッタは色々な点で特殊と言えば特殊。カローラによって僕のために作られた守護妖精で、リゼッタとは違う意味で僕を一番に考えている。基本的に僕が頼んだことを嫌とは言わない。店を手伝いつつ魔獣を狩ってあちこちで売り払ってもらっている。
去年考えていたのとはずいぶん違う形になったけど、店の方も順調だ。四月から服飾美容店の二号店と三号店をオープンしている。この二店は販売のみで、二号店は町の東寄り、三号店は西寄りにある。少し時間がかかったのは、建てるのをこの町の大工と左官に頼んだからだ。
職業訓練学校で礼儀と読み書き計算を学んだ人を本店で受け入れ、店のことを学ばせたら二号店と三号店に振り分ける。
本店と違うのは、二号店と三号店は男性用の服も置くようになったこと。ギルドの制服が町に知れ渡ったことで、あのような服を着たいという人が増えたからだ。
ギルドの制服のようなきっちりしたものだけではなく、僕やミシェルが履いていたようなカーゴパンツなども販売していて、主に職人に人気が出ている。しっかりした生地で作られていて、少し硬いけど簡単には破れたりしないし、ガシガシ洗っても大丈夫。
ちなみに店の名前は『ケネス服飾美容店』から『公営服飾美容店』に変わった。公営になったからね。そして店を増やす際にヘルガさんが店長になるのを希望したので、彼女の家の横に新しく建て、そこを二号店とすることになった。彼女の夫は雑貨屋を経営していて、夫は雑貨屋、妻は公営服飾美容店で店長として働くことになった。
公営服飾美容店で販売する服は値段をやや高めに設定してある。これは他の衣料品店を潰さないため。服飾美容店で学んだ人たちが独り立ちをし始め、あちこちで店を始めているから、住み分けが必要になる。エリーの弟子たちの店を見て回ったけど、素材に関しては少し劣ったものを使っているけど、デザインはかなり洗練されてきた。
町中の衣料品店で扱われている服の素材は、職業訓練学校の授業の際に作られたものが多い。もちろん全然ダメなものは取り除かれるけど、一定の水準を超えているものは服飾ギルドに回され、それを必要とする衣料品店などが購入することになっている。
マノンとセラとキラがやろうとしていた飲食店は見合わせることになった。マノンは悪阻が出ているし、カローラとセラはそろそろ作る時期だからね。体を動かすのは悪いことではないけど、妊娠すると味覚が変化するそうだから。
◆ ◆ ◆
「ご主人様、その際はぜひこの超最新型の拘束具をお使いください」
「……超最新型?」
「アレイダに渡したものをご主人様専用にしました。あれは汎用品でしたので」
「あの時のあれか……」
欲しいって言うから結婚祝いとしてあげたら、「やはりお持ちでしたね」って言われたんだよね。マジックバッグの中身は共用だからね。勝手に入ってるんだよ。
「まず、どれだけ引っ張っても肌を傷めない安心設計。鎖の部分は魔力で作られていて、ご主人様の魔力に反応して形が変わるようになっています。いつでもどこでもお望みのままです。そしてそのまま私はママになりますね」
「誰が上手いこと言えと。それに無駄に高い技術力」
「先生、その際は私にもよろしくお願いします」
「セラ、カローラに影響されなくてもいいんだよ。セラがそれを付けるとかなり背徳感があるから。そもそも拘束具って必要?」
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