新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

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第三章 第二部

ユーヴィ男爵邸の使用人たち(一)

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 我が家の使用人の数がなんだかんだで増えた。僕が領主になった時に屋敷に残っていたのは、執事のイェルンの下に男性使用人が四人と女性使用人が四人の合計九人だった。後から聞いたら代官と一緒にいなくなった使用人もいたそうだ。

 最初からいた中の一人であるアレイダは、エリーの兄のロベールさんと結婚し、今はこの国の一番東にあるヴァリガ市にいる。辞めたアレイダの代わりとして白い宿木亭の看板娘シルッカが入り、カローラがミシェルたちの家庭教師としてジェナを引っ張ってきて一〇人になった。そして今後は貴族の屋敷としての体裁を整えるため、そして秋からのベビーラッシュに備えるため、さらに一二人が追加された。正直なところこんなに必要ないと思うけど、雇用を与えるという点では重要になる。

 例えば乳母兼家庭教師として雇った二人は、子育ての経験があって読み書き計算もできて礼儀正しい。子供がある程度の年齢になるまで長期で雇うことになっているけど、ユーヴィ市にだって子育て経験者は多い。でもそれが仕事には繋がらない。誰でもできることだと思われているからね。

 まだ領主になって半年も経ってないから仕方ないけど、もう少ししたら本格的に雇用についてはなんとかしなければいけない。今のところ、職業訓練学校は上手くいっているようで、それなりの技術を身につけた職人が出てきたらしいけど、この町だけではどうしても仕事が少ない。他の町や他の貴族とも連携して、人材を活用できる方法を見つけないと。



 現在の使用人と職種を見て、他に必要な使用人がいないかどうかを考える。職種と言っても、あくまでその仕事が中心というだけで、手が空いていれば何でもすることがほとんどだ。職歴と仕事の内容で給与はみんな違うけど、それ以外の待遇は基本的に同じ。門衛だけは夜間の仕事もあるから少し違うけどね。イェルンとフェナの二人には、リゼッタに相談の上で必要に応じて人を雇う許可を与えている。クビにするのは僕が許可してからだけど。

 独身で寮に入りたいなら入れるし、通いでいいならそれでもいい。既婚者には家も用意してあるので、イェルンは妻のイレーナと、レンスは妻のヤコミナ、娘のカリンとリーセと一緒に暮らしている。フランカは既婚だけど夫が町の衛兵をしているから、通いのままになっている。

 とりあえず今の使用人はこうなっている。

 イェルン 執事
 フェナ 家政婦長

 ジェナ 秘書、家庭教師(魔法)

 シルッカ 料理長
 シャンタル 料理人
 フランカ 料理人

 テクラ 助産師、乳母
 ティネケ 助産師、乳母
 モニク 乳母、家庭教師
 サスキア 乳母、家庭教師

 エルケ 一般女中
 リーサンネ 一般女中
 ティルザ 一般女中

 エーリク 庭師、御者
 サンデル 庭師、御者
 シーラ 厩舎係、御者

 レンス 守衛
 セース 守衛
 ティース 守衛
 マリウス 守衛
 エト 守衛
 マレイン 守衛



 庭師は庭の手入れだけじゃなくて、来客があった場合は家の中まで案内するし、屋敷の中に花を飾るのも仕事だから、礼儀作法やセンスも必要らしい。この二人は職業訓練学校の卒業生だ。

 エーリクとサンデルの二人は庭師として雇われているけど、必要に応じて御者をしてもらうこともある。動物も好きで、馬の世話もしたことがあるそうなので、いざとなればその仕事も任せられる。二人とも立派な体格をした男性だけど、子供の頃から花を育てるのが好きだったらしく、募集を見て真っ先に応募したらしい。

「まさに天職です」
「同じく」

 うちの庭はいつでも花が咲き乱れている。実はここは管理者として調節したわけじゃなく、マリアンのアドバイスに従っただけだ。

「鱗を粉末にして土に混ぜれば植物がよく育つぞ。しかも長持ちする。混ぜるのはちょびっとじゃぞ、ちょびっと。塩をまぶすようにパラパラっとな。あまりたくさん入れるととんでもないことになるからのう」
「例えば?」
「一瞬で育って一瞬で枯れて種が落ちる。それをひたすら繰り返す」
「気を付けるよ」

 何かの間違いで敷地がびっくり花畑のようになったら困る。間違えないように、調味料を入れるような穴の開いた容器を作り、そこに鱗の粉末を入れた。食卓塩みたいになったけど気にしない。僕しか使わないから。



 厩舎係はシーラという女性。馬の世話のために厩舎で寝泊まりすることも多いから、一般的には大変な仕事だ。なぜ女性が申し込んだのかと思ったら理由は簡単だった。

「馬人のシーラです。馬の考えていることが分かります」

 確かに馬の耳と尻尾がある。面長じゃないし、耳と尻尾を隠せば人間と違わない。栗毛を後ろで束ねたやや背が高い女性で、マリーと並んだらいいコンビになりそう。

「まさに適任だね。うちの馬たちは頭がいいから迷惑をかけることは少ないと思うけど、よろしくね」
「旦那様、この子たちの頭の良さはおかしいくらいです。掛け算も割り算もできますよ」
「そういう子たちなんだよ。雌二匹は妊娠中だから、そちらの面倒も見てくれるかな?」
「え? あ、はい、承知しました」

 一応貴族として馬車を使う場面もある。一人だけなら[転移]で移動するけどね。

 馬たちはここと異空間を行ったり来たりする。屋敷の厩舎と異空間の厩舎を繋いでいるから、走りたい時は向こうで走り、こっちに戻って寝ることが増えている。シーラにも異空間のことは教えているので、馬の様子を見るために試しに向こうに行ってみた。

「旦那様、私も走っていいですか?」
「いいけど、そんなに目を輝かせるようなこと?」
「これだけ広くて何もなくて安全な場所はありません」
「……ああ、そうか。そうだったね」

 かなり安全になったとは言っても、町の外にはまだ魔獣や野獣が出るからね。好きなだけ走ったらいいと思う……って足が速い。さすが馬人。彼女も御者ができるそうだから、必要に応じて任せようと思う。



 最初からいた女性使用人たちは、フェナが食事係、フランカとアレイダとエルケが掃除担当だったけど、アレイダが結婚して抜けた。使用人を増やす際にフェナを家政婦長にして、正式に女性使用人のまとめ役になってもらった。そしてアレイダの代わりに入ったシルッカを料理長にして、新しく入ったシャンタルをその下に、そしてフランカを補佐にした。

 シルッカは厨房にいることが多く、レパートリーを増やすためにエリーやマイカと話をすることが多い。ちなみに料理の腕前は、さすが宿屋の娘だけあって上手だった。後はレパートリーを増やすだけ。

「マイカ様、男性を落とすにはまず胃袋を掴むべきですね」
「でもうちで一番料理が上手なのが先輩ですよ」
「そうでした……」

 シルッカはまだ僕を狙っているみたいだけど、そう簡単には狙わせない。僕に近寄らないようにするために彼女を忙しい調理長にしたわけじゃないけど、結果としてそうなった。



 新しく来たシャンタルは服飾美容店で料理の勉強もしていたから、腕前の方は問題ない。

「服飾美容店を出ても料理の勉強ができるようで嬉しいです」
「エリーは暇があれば自分で作るからね。色々と教わったらいいよ」

 シャンタルは料理好きで、いずれは店を持ちたいらしい。それまでにお金を貯めつつ料理のレパートリーをさらに増やしたいそうだ。



 フランカは主婦だけあって料理は上手だから、できれば彼女に料理長を任せたかったけど、町の衛兵をしている夫のことがあるからどうしても屋敷に来る時間帯が日によって違う。それに子供ができているからあまり無茶はさせたくない。そういうわけでシルッカとシャンタルの補佐ということにした。

「旦那様、申し訳ありません」
「いや、いいんだよ、それは。復帰のタイミングも任せるからね。子供が生まれたらうちの子供たちと一緒に乳母に面倒を見てもらってもいいし、しばらく家の方で子育てしてから復帰してもらってもいいから」
「ありがとうございます」



 エルケはこれまでと同じように主に掃除を担当する一般女中という扱いになった。来年にはまあ、どうやら使用人じゃなくなることになりそうだ。その話を忘れてくれたらいいんだけど、無理だろうね。

 エルケの部下となったのがリーサンネとティルザの二人。まだ若くて、使用人の中で最年少の二人。今のところは掃除が中心。一般女中とは要するに雑用担当。食事の準備や掃除など、一通りのことをしてもらう。蜂蜜搾りも仕事の一つ。うちの家族は自分の部屋は自分で掃除するから、それ以外の場所を掃除することになる。掃除用の魔道具もあるからそこまで仕事が多くはない。

「エルケ先輩を見習い、頑張って旦那様にアピールします」
「我々の努力をよく見ていてください。スカートの中を見ていただいてもかまいません」
「そこは頑張らなくていいよ、本当に」
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