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第三章 第二部
新しい隣人
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「旦那様、キヴィオ市冒険者ギルドのレオニート殿がいらっしゃいました」
「レオニートさんが? 部屋に入ってもらって」
「かしこまりました」
ちょうど家で来月以降の諸々について、ああだこうだと考えていた時だった。ギルドにいることが増えたけど、屋敷の執務室の方が人が来ないから集中しやすい。たまにエルケがじゃれつきに来るくらいだ。それもどうかと思うけど。
しばらくするとイェルンに案内されてレオニートさんがやって来た。
「男爵様、ご無沙汰しております」
「久しぶりですね。レオニートさんがここまで来るとは、それほどの用事ですか?」
「キヴィオ子爵の使いとして参りました。こういうことなら私よりも向いている人がいると思うのですが」
「僕の知り合いだからでしょうか」
「どちらかと言えば、性格を知っていることの方が大きいでしょうか」
「自分ではそれほど危険な性格をしているとは思っていないのですが」
僕が何かをしたのは、前パルツィ子爵くらいじゃないかな。あれもマイカが一度徹底的にやってくださいと言ったからなんだけどね。僕としては無視して町から出てもよかったんだけど。
「危険ではないでしょう。何をするか分からないところはあるでしょうが。普通はいきなり森を切り拓いて道を通したりはしないと思いますよ」
「まあその自覚はありますね。それよりも、子爵の使いということは、領都の移転の件ですよね」
「はい、こちらが手紙です」
手紙は二通。一通はパダ町とヴァスタ村の譲渡するという通知で、もう一通はキヴィオ市の移転場所の説明。一通目は公式のもの、二通目は私的なものだ。
「たしかに受け取りました。これでまた動きやすくなりますね」
「次はなにをするつもりなのですか?」
「隠す必要もないのでもう言ってしまいますけど……ああ、この話は今のところは子爵とレオニートさんだけに止めておいてください」
「ええ、お約束します」
「夏からはレブ市との間に、山の北を迂回する北街道を通します。それから、これは来年になるでしょうが、ヴァスタ村からサガード市の間に南街道を通します」
「本当に道ばかりですね」
レオニートさんは呆れたような顔をしたけど、仕方ないじゃない。他にやりようがないんだから。
「キヴィオ市のように移転する場所がないですからね。まずは道を作って、外から人を呼び込まなければどうしようもありません」
「人を呼ぶと言えば、あのバナナとパイナップルは妻も喜んでいますよ。そこまで高価でないのも助かります」
「キヴィオ市くらいまでならそれほど高くはならないでしょうね」
「うちもあのような特産品ができればいいのですが」
レオニートさんは少し考えるような素振りをした。冒険者ギルドに特産品って、ギルド限定の剣とか? 新京極土産の木刀みたいな。『キヴィオ市』って書いた剣と盾と甲冑とか……売れないだろうね。
「何か冒険者ギルドで作ったりするのですか?」
「実はまだ内示の段階なのですが、男爵様には伝えてもいいと言われていますのでこの場で言いますね。キヴィオ市の移転後に、旧キヴィオ市の代官を任命される予定になっています」
「それはおめでとうございます。それと、その男爵様はやめません?」
「ではケネス殿くらいにしましょうか」
「ではこちらもレオニート殿で」
キヴィオ市が正式に移転すれば、移転先が新キヴィオ市になる。これまでのキヴィオ市は新しい名前が付くけど、旧キヴィオ市という名前も使われる。
レオニートさんは旧キヴィオ市の代官になり、冒険者ギルドのギルド長には別の人が就くそうだ。
「それで特産品作りですか」
「ええ。役人は三分の一ほどが残り、他は新キヴィオ市に移ります。人も少しずつ移動していくでしょうから、いずれ人口はかなり減りますし、土地が余ることになりそうです。やはり何か特徴がないと厳しくなりそうですね」
「でも食べ物に限定すると、保存や輸送で問題が出ることもあります。例えば、あのバナナは強く触れたりすると、そこからすぐに黒くなりますからね」
「そこなのですが、元からそれほど特徴がある町ではないのですよ。規模はそれなりの町ですが」
キヴィオ市は二万人を超えているから、このあたりでは一番大きい。その下となると男爵領ばかりだから、急に少なくなるからね。
「そうなると、家具、焼き物、ガラス……」
「ガラスですか?」
「ええ、ガラスです。これは試しに作ったものですが……」
僕が取り出したのは切り子のグラス。薩摩切子? 江戸切子? 試しに作っただけだから歪んでいるけど。
「これは……削っているのですか?」
「ええ、まずは透明なガラスを吹きます。その上に色ガラスを薄く乗せて合わせます。透明な層まで研磨することで、このように模様が出せます」
「たしかに色ガラスはありますが、これほど鮮やかな赤は見たことがありません。色を付けようとしてもなかなか成功しないそうです。何かの都合で色が付くこともあるようですが」
「おそらくですが、染めに使うような染料を加えているのでは? それではガラスの熱に負けて変化してしまいますので、熱で変化しても大丈夫なものを使いますね。この色ガラスは地面の中にあったものを使っています」
「地面の中ですか。……砂……石……鉄……」
「近い。ポケットの中にあるかもしれませんね」
「ポケットの中? ……硬貨?」
「はい、銅が使われています。こちらも銅です」
「これも鮮やかな青……」
「ガラスに色が付くのはそこに不純物が入っているからです。主に金属ですね。他にはその時の空気の量、具体的には酸素という成分ですが、その量によっても色が変わります」
レオニートさんは二つのグラスをまじまじと見ている。
「では、我々が普段見ている色ガラスの色は何なのでしょうか?」
「元々ガラスはわずかに色が付いています。厚くなれば緑っぽくなりますね。僕の知っているガラスは……このあたりで使われる名前は実はよく知らないのですが、珪砂を原料に、炭酸ナトリウムと炭酸カルシウムという二種類の白い粉を入れます。薄い緑以外の色が付くなら、どこかで何らかしらの物質が入っているのでしょうね。この二つのグラスはどちらも銅を使っていますが、色の出し方が違います。銅を入れればいいというわけではありません。それと金を使うともっと鮮やかな赤になるそうですが、溶かすのが難しいので試したことはありません」
「それを口にしたということは、キヴィオ市でやってもいいということでしょうか?」
「ええ、どうぞ。ガラスについて知っていることは後日まとめてお渡しします。残念ながらユーヴィ市にはガラス職人はいません。キヴィオ市ならそれなりの人数が揃っていると思いますので、領都移転後の産業にできるのではないですか?」
レオニートさんは口元に手をやって考えている。
「そうなると、やはり鍛冶師ギルドやガラス職人ギルドなどに協力してもらうことになりますね」
「そうなるでしょうね」
「するとやはり、ユーヴィ市のようにギルドをまとめた方がやりやすいのでしょうか?」
「いや、すでに今のやり方で問題ないなら大丈夫だと思いますよ。うちは人が足りなかっただけですから。ルボルさんが受付にいたくらいですからね」
「それはよほどの事態でしょうね」
あのころはかなり大変だったみたいだね。
「そうそう、話がズレましたが、ガラス職人と鍛冶師、薬剤師、そのあたりで何人かずつ集めて調査させればいいんじゃないでしょうか。競わせても面白いですね。そこを一つの組織にするんです。そこで分かった情報は町で管理して外に出さない。そんな感じでしょうか」
「なるほど、横の関係を密にするわけですね」
「そうですね。それでもし横の繋がりがどんどん密になって、もしギルドをくっつけようと思ったら、その時にまとめればいいと思いますよ。おかしな話ですが、建てる場所はできると思いますので」
「たしかにそうですね。あまり先のことばかり考えても仕方ありませんね」
「僕もそうですが、今できることをするだけですよ」
「ええ。ではこのあたりでお暇します」
「いずれまた、隣人としてお邪魔します」
「ええ、お待ちしています」
キヴィオ市ねえ。そう言えば、あの調査はどうなったかな?
「カロリッタ、何か分かった?」
諜報活動好きなカロリッタにそのあたりのことは調査してもらっていた。姿が消せるし小さくなれるし、何か起きてもその場で対処できるからね。
「やっぱり~キヴィオ市より東の~いくつかの町の町長や~キヴィオ市の役人や商人ギルドの一部が~結託しているようですね~」
「やはり賄賂的なアレかな?」
「ブラックなんとかって塗料よりも真っ黒ですね~。マスターが~領主になったころにですね~キヴィオ市からパダ町方面の物資の値段を上げて~ユーヴィ市を干上がらせるつもりだったようです~。干上がったら高値で売りつけるつもりだったようですね~。余所の領地になったので~取れるだけ取ってしまえというか~盗れるだけ盗ってしまえ~って感じですね~」
忙しすぎてあまり動けなかったころかな。街道工事のチェックをして、ギルドをまとめて、職業訓練学校の準備をしつつ、町や村を回って栽培指導や環境改善をして……。領主になりたてで先のことが全然考えられなくて、対処療法ばっかりだったね。動けるようになったのは三月くらいからだったかな。とりあえず商人ギルドだけは警戒しておこうか。
「そう思っていたら~マスターが街道を通してしまい~意味がなくなったみたいですね~」
「それじゃあパダ町にもあまり物資が行ってなかったのか」
「そうなりますね~。だからマスターに感謝しているのは間違いないようです~」
それなら街道を通してからもパダ町を通って物を運んでいたのは間違いじゃなかったか。
「忘れないうちにキヴィオ子爵にはチクっておきましたので~特に何もする必要はないと思いますよ~」
「ありがとう。一つ手間が省けた。ところで、今さらだけどどうやって調べたの?」
「魔法で頭の中を~チョイチョイ~と覗いただけです~」
「なるほど。僕に使わないようにね」
「もう忘れているかもしれませんが~マスターには[耐性(全特)]が付いているので~通じる魔法なんてないですよ~」
「あ、そうだった」
チョイチョイね。僕も最初のころは頭の中を覗かれてたね。それで色々とバラされたけど……頭の中に入れるのって僕だけじゃなかったっけ?
「でもカロリッタって、他人の頭の中に入れた? あれって僕だけじゃなかった?」
「ふっふ~。人は成長するものですよ~。マスターのおかげで~諜報活動に使える魔法うあスキルが増えてきています~」
「あ、そうなんだ」
「それぞれ独自に成長しているようですね~。カローラさんは~被虐方面が伸びていますね~」
「それは成長とは関係ないんじゃない?」
「レオニートさんが? 部屋に入ってもらって」
「かしこまりました」
ちょうど家で来月以降の諸々について、ああだこうだと考えていた時だった。ギルドにいることが増えたけど、屋敷の執務室の方が人が来ないから集中しやすい。たまにエルケがじゃれつきに来るくらいだ。それもどうかと思うけど。
しばらくするとイェルンに案内されてレオニートさんがやって来た。
「男爵様、ご無沙汰しております」
「久しぶりですね。レオニートさんがここまで来るとは、それほどの用事ですか?」
「キヴィオ子爵の使いとして参りました。こういうことなら私よりも向いている人がいると思うのですが」
「僕の知り合いだからでしょうか」
「どちらかと言えば、性格を知っていることの方が大きいでしょうか」
「自分ではそれほど危険な性格をしているとは思っていないのですが」
僕が何かをしたのは、前パルツィ子爵くらいじゃないかな。あれもマイカが一度徹底的にやってくださいと言ったからなんだけどね。僕としては無視して町から出てもよかったんだけど。
「危険ではないでしょう。何をするか分からないところはあるでしょうが。普通はいきなり森を切り拓いて道を通したりはしないと思いますよ」
「まあその自覚はありますね。それよりも、子爵の使いということは、領都の移転の件ですよね」
「はい、こちらが手紙です」
手紙は二通。一通はパダ町とヴァスタ村の譲渡するという通知で、もう一通はキヴィオ市の移転場所の説明。一通目は公式のもの、二通目は私的なものだ。
「たしかに受け取りました。これでまた動きやすくなりますね」
「次はなにをするつもりなのですか?」
「隠す必要もないのでもう言ってしまいますけど……ああ、この話は今のところは子爵とレオニートさんだけに止めておいてください」
「ええ、お約束します」
「夏からはレブ市との間に、山の北を迂回する北街道を通します。それから、これは来年になるでしょうが、ヴァスタ村からサガード市の間に南街道を通します」
「本当に道ばかりですね」
レオニートさんは呆れたような顔をしたけど、仕方ないじゃない。他にやりようがないんだから。
「キヴィオ市のように移転する場所がないですからね。まずは道を作って、外から人を呼び込まなければどうしようもありません」
「人を呼ぶと言えば、あのバナナとパイナップルは妻も喜んでいますよ。そこまで高価でないのも助かります」
「キヴィオ市くらいまでならそれほど高くはならないでしょうね」
「うちもあのような特産品ができればいいのですが」
レオニートさんは少し考えるような素振りをした。冒険者ギルドに特産品って、ギルド限定の剣とか? 新京極土産の木刀みたいな。『キヴィオ市』って書いた剣と盾と甲冑とか……売れないだろうね。
「何か冒険者ギルドで作ったりするのですか?」
「実はまだ内示の段階なのですが、男爵様には伝えてもいいと言われていますのでこの場で言いますね。キヴィオ市の移転後に、旧キヴィオ市の代官を任命される予定になっています」
「それはおめでとうございます。それと、その男爵様はやめません?」
「ではケネス殿くらいにしましょうか」
「ではこちらもレオニート殿で」
キヴィオ市が正式に移転すれば、移転先が新キヴィオ市になる。これまでのキヴィオ市は新しい名前が付くけど、旧キヴィオ市という名前も使われる。
レオニートさんは旧キヴィオ市の代官になり、冒険者ギルドのギルド長には別の人が就くそうだ。
「それで特産品作りですか」
「ええ。役人は三分の一ほどが残り、他は新キヴィオ市に移ります。人も少しずつ移動していくでしょうから、いずれ人口はかなり減りますし、土地が余ることになりそうです。やはり何か特徴がないと厳しくなりそうですね」
「でも食べ物に限定すると、保存や輸送で問題が出ることもあります。例えば、あのバナナは強く触れたりすると、そこからすぐに黒くなりますからね」
「そこなのですが、元からそれほど特徴がある町ではないのですよ。規模はそれなりの町ですが」
キヴィオ市は二万人を超えているから、このあたりでは一番大きい。その下となると男爵領ばかりだから、急に少なくなるからね。
「そうなると、家具、焼き物、ガラス……」
「ガラスですか?」
「ええ、ガラスです。これは試しに作ったものですが……」
僕が取り出したのは切り子のグラス。薩摩切子? 江戸切子? 試しに作っただけだから歪んでいるけど。
「これは……削っているのですか?」
「ええ、まずは透明なガラスを吹きます。その上に色ガラスを薄く乗せて合わせます。透明な層まで研磨することで、このように模様が出せます」
「たしかに色ガラスはありますが、これほど鮮やかな赤は見たことがありません。色を付けようとしてもなかなか成功しないそうです。何かの都合で色が付くこともあるようですが」
「おそらくですが、染めに使うような染料を加えているのでは? それではガラスの熱に負けて変化してしまいますので、熱で変化しても大丈夫なものを使いますね。この色ガラスは地面の中にあったものを使っています」
「地面の中ですか。……砂……石……鉄……」
「近い。ポケットの中にあるかもしれませんね」
「ポケットの中? ……硬貨?」
「はい、銅が使われています。こちらも銅です」
「これも鮮やかな青……」
「ガラスに色が付くのはそこに不純物が入っているからです。主に金属ですね。他にはその時の空気の量、具体的には酸素という成分ですが、その量によっても色が変わります」
レオニートさんは二つのグラスをまじまじと見ている。
「では、我々が普段見ている色ガラスの色は何なのでしょうか?」
「元々ガラスはわずかに色が付いています。厚くなれば緑っぽくなりますね。僕の知っているガラスは……このあたりで使われる名前は実はよく知らないのですが、珪砂を原料に、炭酸ナトリウムと炭酸カルシウムという二種類の白い粉を入れます。薄い緑以外の色が付くなら、どこかで何らかしらの物質が入っているのでしょうね。この二つのグラスはどちらも銅を使っていますが、色の出し方が違います。銅を入れればいいというわけではありません。それと金を使うともっと鮮やかな赤になるそうですが、溶かすのが難しいので試したことはありません」
「それを口にしたということは、キヴィオ市でやってもいいということでしょうか?」
「ええ、どうぞ。ガラスについて知っていることは後日まとめてお渡しします。残念ながらユーヴィ市にはガラス職人はいません。キヴィオ市ならそれなりの人数が揃っていると思いますので、領都移転後の産業にできるのではないですか?」
レオニートさんは口元に手をやって考えている。
「そうなると、やはり鍛冶師ギルドやガラス職人ギルドなどに協力してもらうことになりますね」
「そうなるでしょうね」
「するとやはり、ユーヴィ市のようにギルドをまとめた方がやりやすいのでしょうか?」
「いや、すでに今のやり方で問題ないなら大丈夫だと思いますよ。うちは人が足りなかっただけですから。ルボルさんが受付にいたくらいですからね」
「それはよほどの事態でしょうね」
あのころはかなり大変だったみたいだね。
「そうそう、話がズレましたが、ガラス職人と鍛冶師、薬剤師、そのあたりで何人かずつ集めて調査させればいいんじゃないでしょうか。競わせても面白いですね。そこを一つの組織にするんです。そこで分かった情報は町で管理して外に出さない。そんな感じでしょうか」
「なるほど、横の関係を密にするわけですね」
「そうですね。それでもし横の繋がりがどんどん密になって、もしギルドをくっつけようと思ったら、その時にまとめればいいと思いますよ。おかしな話ですが、建てる場所はできると思いますので」
「たしかにそうですね。あまり先のことばかり考えても仕方ありませんね」
「僕もそうですが、今できることをするだけですよ」
「ええ。ではこのあたりでお暇します」
「いずれまた、隣人としてお邪魔します」
「ええ、お待ちしています」
キヴィオ市ねえ。そう言えば、あの調査はどうなったかな?
「カロリッタ、何か分かった?」
諜報活動好きなカロリッタにそのあたりのことは調査してもらっていた。姿が消せるし小さくなれるし、何か起きてもその場で対処できるからね。
「やっぱり~キヴィオ市より東の~いくつかの町の町長や~キヴィオ市の役人や商人ギルドの一部が~結託しているようですね~」
「やはり賄賂的なアレかな?」
「ブラックなんとかって塗料よりも真っ黒ですね~。マスターが~領主になったころにですね~キヴィオ市からパダ町方面の物資の値段を上げて~ユーヴィ市を干上がらせるつもりだったようです~。干上がったら高値で売りつけるつもりだったようですね~。余所の領地になったので~取れるだけ取ってしまえというか~盗れるだけ盗ってしまえ~って感じですね~」
忙しすぎてあまり動けなかったころかな。街道工事のチェックをして、ギルドをまとめて、職業訓練学校の準備をしつつ、町や村を回って栽培指導や環境改善をして……。領主になりたてで先のことが全然考えられなくて、対処療法ばっかりだったね。動けるようになったのは三月くらいからだったかな。とりあえず商人ギルドだけは警戒しておこうか。
「そう思っていたら~マスターが街道を通してしまい~意味がなくなったみたいですね~」
「それじゃあパダ町にもあまり物資が行ってなかったのか」
「そうなりますね~。だからマスターに感謝しているのは間違いないようです~」
それなら街道を通してからもパダ町を通って物を運んでいたのは間違いじゃなかったか。
「忘れないうちにキヴィオ子爵にはチクっておきましたので~特に何もする必要はないと思いますよ~」
「ありがとう。一つ手間が省けた。ところで、今さらだけどどうやって調べたの?」
「魔法で頭の中を~チョイチョイ~と覗いただけです~」
「なるほど。僕に使わないようにね」
「もう忘れているかもしれませんが~マスターには[耐性(全特)]が付いているので~通じる魔法なんてないですよ~」
「あ、そうだった」
チョイチョイね。僕も最初のころは頭の中を覗かれてたね。それで色々とバラされたけど……頭の中に入れるのって僕だけじゃなかったっけ?
「でもカロリッタって、他人の頭の中に入れた? あれって僕だけじゃなかった?」
「ふっふ~。人は成長するものですよ~。マスターのおかげで~諜報活動に使える魔法うあスキルが増えてきています~」
「あ、そうなんだ」
「それぞれ独自に成長しているようですね~。カローラさんは~被虐方面が伸びていますね~」
「それは成長とは関係ないんじゃない?」
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