新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

文字の大きさ
162 / 278
第三章 第三部

不屈の闘志

しおりを挟む
 我々は勝ちしか狙いません。だからこそ何度足止めをされても最終的な勝利を目指す。それが我々のです。具体的に言えば玉の輿領主様の妻か愛人の座

 周りからは『不屈の闘志ザ・ドーントレス』などと勝手に呼ばれているようですが、不屈という言葉を使う時点でダメです。我々は負けは認めていません。負けても最終的に勝つのではなく、負けることなく勝ちを狙います。負けるのではなく踏ん張って耐えているのです。

「それは詭弁では?」
「すべては気の持ちようです」

 そう、すべては気の持ちようです。負けたら負けです。勝たなければ。だからこそ仲間の連携を強めます。

《チャーリーよりシエラへ。タンゴを視認》
《こちらシエラ、了解。オスカーとリマはポイント・エコーに待機》
《こちらオスカー、了解》《リマも了解》
《シエラよりジュリエットへ、待機は完了か?》
《ジュリエットよりシエラへ。アルファ、ブラボー、デルタ、ゴルフ、ロミオ、ヴィクターが待機済み》
《シエラ、了解。おのおの、奮戦せよ》



《……という状況であります》
《サラン、ありがとう》

 ギルドへやってくると、たまに誰もいないのに気配を感じることがある。彼女たちはギルド職員よりも諜報員の方が向いてるんじゃないかな?

 エレベーターポイント・エコーに向かうと思わせておいてそのまま倉庫に向かう。

《そろそろ情報が漏れていると考えないのでありましょうか?》
《薄々はバレていると思っているのかもしれないけどね》

 倉庫に入ったら奥へ進み、そのまま自分の執務室まで[転移]で移動。もう少ししたら諦めてエレベーターから出るだろう。

《閣下、そろそろ十分では?》
《方向性がおかしいのは分かっているんだけどね。彼女たちがやる気をなくさないようにするのも大事かなと思ってね》
《閣下はおかしなところで部下に配慮をするのでありますね》
《性格なんだよ》

 地図があるからどこに人がいるかは分かるようになっている。それにしても、誰がNATOのフォネティックコードを? ちなみに国によって違うけど、タンゴはT、シエラはSだから、それぞれの頭文字が目標ターゲット狙撃手スナイパーを表し、特殊部隊などが好んで使う。シエラは……服飾ギルドにいる、あのキリッとした秘書タイプの職員か。

《オスカーよりシエラへ、タンゴをロスト》
《またか……。シエラより各員、散開せよ》



 やはり今回も無理でしたか。そう簡単に撃墜できるターゲットだとは思っていませんが、そろそろ手応えが欲しいところです。そろそろ仕事に戻——

「シュチェパーンカさん、また仕事中に持ち場を離れてお散歩ですか?」
「え? あ、いえ、ギルド長、そういうわけ、では……」
「そういうわけでもないのなら、先ほどからそこで何をしていたのですか?」
「そ、それはその……」
「前回もそうでしたが、私にも言えないような理由で仕事をサボるのであれば、ここを辞めていただくことも考えなければなりませんが」
「そ、それは……」

 ここで辞めさせられたら領主様にアピールする機会が一つ失われてしまいます。

「それが嫌なら、また罰ですね」
「え? ひょっとしてまたあれですか?」
「ええ、意外と評判がいいのですよ。シュチェパーンカさんはスタイルがいいので映えますからね」
「ギルド長、少し体調が悪いので今日のところは——」
「そこの二人、あなたたちも首が嫌なら彼女を捕まえなさい」
「「はい」」
「ちょ、ちょっと……」



◆ ◆ ◆



「領主様、いかがですか?」
「いかがですかと聞かれてもね……」

 ペトラさんに会議室に呼ばれたかと思えば、目の前にある台の上で服飾ギルドの女性職員が三人立っている。三人が着ているのはドレスと言えばドレスだけど、そうでないと言えばそうでない何か。水着とドレスの中間くらい? 一応言っておくと、ストリップとかそういうのじゃないから。僕たち以外にも周りには職員が一〇人ほどいて、クリップボードを手に何かをチェックしている。

「シュチェパーンカさん、領主様の前ですよ。もう少し足を広げて堂々と胸を張りなさい。手は体の横で少し離して」
「ギルド長、そうは言ってもこれ以上は……」
「普段の気の強さはどこに行ったのですか? もっとしっかりと前を向きなさい。オフェリアさんとレンカさんは堂々としていますよ」

 ここにいるのはシエラとオスカーとリマか。あの中にいた三人だね。

「ギルド長、もっと際どいのはありませんか?」
「ポロリしてもいいですか?」

 ポロリは自分からするんじゃないと思うんだけど、絶対どこかに日本人がいるよね。ちなみにその服でポロリしようとすれば破るしかないでしょう。胸元を思いっきり引っ張っているけど、ほら、下にいた職員が怒ってる。

「この三人は仕事はできるのですがたまにサボることがあって、それで今回はこのように罰を与えています。ここで試作している服の品評会も兼ねています」
「罰って言いますけど、二人は喜んでいるような気がしますけどね」
「いえ、主犯はシュチェパーンカさんのようなので、彼女が反省すればそれでかまいません。二人はついでです」
「「ついで⁉」」



「それにしても、よくこんな罰を思いつきましたね」
「娘に相談したらところ、新作発表も兼ねたこのような罰の案を出されました。真面目な女性ならこういう罰が効果的だろうと」
「発案はミレナさんでしたか。たしかにこれは効き目がありますね」

 周りにいるのは女性ばかりとは言え、さすがに囲まれて見られれば恥ずかしいだろう。気の強そうな女性がモジモジしているのはギャップがね。好きな人は好きだろう。僕にはそういう趣味はないけど。

「それで、呼ばれたから来ましたけど、僕はここで彼女たちを見て何をしたらいいんですか?」
「どうしたらサボらなくなるかを考えていただければと」
「それなら、彼女たちを見ながら話をする必要はないんじゃないですか?」
「今日は新作発表がありましたので、ついでに見ていただいて目の保養になればいいと思っていましたが……。そうですね……シュチェパーンカさんはともかく、オフェリアさんとレンカさんは、奥様方に比べれば一段どころか五段も六段も落ちるでしょうか」
「「ひどっ!」」
「それは冗談として、彼女たちは何度もサボっていますので、一度キッチリ言い聞かせるにはどうしたらいいかと思いまして。目の前で自分たちの罰について相談されるのは嫌なものでしょう」
「それはそうですね。でも、キッチリねえ」

 彼女たちが何のためにサボっているかは分かっていて、それを見て見ぬフリをしていたのは僕の責任か……。迷惑というほどではないと思っていたけど、それで何度も仕事をサボるのなら罰は必要。何かこう、彼女たちにだけ極めて効果的な罰は……。

「それなら、サボれない場所に配属を変えましょうか。王都の公営商店とか」
「え? そ、それは……」

 まさかそう言われるとは思っていなかったようで、シュチェパーンカさんが明らかに動揺している。

「何か問題がありましたか?」
「い、いえ……」

 しょぼんとしてしまった。彼女が好きとか嫌いとかはないけど、ちゃんと働いてもらわないとね。王都の勤務も交代制だから、行ったら行きっぱなしじゃないし。

「それとも、例えばその台ごと担がれて町中をパレードすることになるのとどちらがいいですか?」
「台ごと担がれる方がいいです!」
「あ、そう?」
「はい!」

 そうくるとは思わなかった。

「さすが領主様ですね。衆目に晒して辱めを与えるとは。やはり噂は本当でしたか」
「いや、これだけ見られるのが嫌なら王都に行く方を選ぶと思ったからなんですけどね、って噂って何ですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...