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第四章 第三部
一年後
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あー忙しい。忙しいと口に出しても仕事が減るわけじゃないけど、どうして口に出したくなるんだろうね。忙しいけど子供が生まれるなら屋敷に戻るよ。
◆ ◆ ◆
ふぎゃ~~~~
ああ~~~~
「双子かな?」
「おそらくそうでしょう」
「どんどん増えるからね」
なんとか間に合ったようで、イェルンと二人で待っていると産声が聞こえた。どうやらエルケも安産のようだ。また名前を決めないとね。この一年はすごくバタバタした。
◆ ◆ ◆
「これで文字通り大人になりました~」
「エルケ、よかったですね」
「ありがとうございます、リゼッタ様~」
「今日からは『様』じゃありません」
「そうでした、リゼッタさん」
妻同士は様は付けないという決まり事がある。全員が平等なんだそうだ。
「ケネス、エルケさんが入ったことでちょうど収まりが良くなりましたね」
「収まり? 中途半端な人数なんだけど」
「一つは空席です。これで円卓の妻が完成しました」
円卓の妻?
「円卓の騎士のように言われてもね。それに数が違うし」
「最後の席には呪いがかかっていますので、必ず空席になっています」
「そこでいきなり物語に忠実になられても」
アーサー王の物語に登場する円卓の騎士の人数と座席の数は文献によって違う。おそらく一番よく聞く話では、円卓にある席の数はキリストと一二人の使徒に見立て、一三あったとされるというもの。常に一つだけ空席があるけど、その席はキリストを裏切ったユダの席とされ、ここに座ると呪いに冒されるという。円卓の数にも騎士の数にも色々なバリエーションがあるけど、円卓にある座席には必ず一つは空席があることになっている。
「では僭越ながら、このヴァウラが残り一席に座らせていただきましょう。呪いなど、私にとっては大した脅威ではありません」
「いえいえ、そこは旦那様の胃袋をしっかりと掴んでいる、このシルッカのものです」
あー、円卓の騎士は一二人ってわけでもないけど、余計なことを口にするとどんどん増えるから、この際一二人ってしておいた方がいいんだろうか。
◆ ◆ ◆
そんなことがあったのが去年の夏。ユーヴィ男爵領とキヴィオ子爵領が合併してユーヴィ=キヴィオ辺境伯領になった少し後のこと。
今もエルケの出産が終わったけど、先日カローラとセラとキラにもまた生まれたから、もう屋敷の中が子供だらけで、わちゃわちゃになっている。この屋敷だけじゃなくて、去年から領内がベビーブームなんだけどね。やっぱり生活が改善された影響かな。
ギルドの方を見ると、レナーテさんのところは生まれて、ミリヤさんも……そろそろ? セニヤさんもいつの間にか結婚してお腹が大きくなってきたし。
あれから僕の妻も何人か増えた。想像できると思うけど、シュチェパーンカ、ヴァウラ、シルッカの三人。それぞれお腹が大きくなっている。マリーには手を出してない。まだ九九九年あるからね。
「旦那様、お子様が増えるのは喜ばしいことですが、そろそろ領地の件について決めなければ、もっとややこしいことになります」
「半分は自分のせいなんだけど、彼らにはもう少し他を頼ってくれてもいいと思うんだけどね。イェルンとしてはどう思う?」
「国としても旦那様を頼るのが一番だと判断されたわけでしょう。お受けするしかないと思いますが」
「それは分かってるんだよ。でもね……」
リゼッタの予知夢と関係あるのかないのか分からないけど、去年の秋に北のレブ男爵と南のサガード男爵から、キヴィオ子爵領と同じように自分たちの領地も編入してほしいという連絡があった。でもそんな話、普通は断るでしょ。でも二人とも本気で頼んできた上に、すでにレオンツィオ殿下にお伺いを立てていた。どうやら僕の性格が見抜かれていたらしい。
彼らとすれば、自分たちの領地を差し出す代わりに、それぞれの領都の市長を任せてもらえることになる。そうすれば燃料箱を使ったエネルギーシステムが使えることになり、正直なところ生活はずっと向上する。
貴族として領主をしているのと、僕の部下として一部地域を預かるのを比べれば収入としては減る。でも不安がなくなるのが一番のポイントなんだそうだ。
北街道と南街道が開通したことによって人の流れは良くなった。レブ男爵領からもサガード男爵領からも人が来るようになった。うちからももちろん出かけていったし、どんどん交流が増えた。だからこそ違いが気になってきたというのが理由だそうだ。
ユーヴィ=キヴィオ辺境伯領は、ユーヴィ市だけではなくマイラ市もキヴィオ市も、それ以外の小さな町や村にでさえ燃料箱を使ったシステムが行き渡っている。レブ男爵領のエレーダ町から少し西にできたクツナ町、サガード男爵領のサガード市から北西にできたマリーナ市にもある。
僕が主導したんじゃなくてギルドが積極的に導入したわけなんだけどね。でも生活レベルの向上というのは領主にとっては一つの目標だから、レブ男爵とサガード男爵が編入の話を切り出すのは分からないでもない。だから今年に入ってからその二つを編入した。でもね……。
「ローラ男爵とコトカ男爵も言ってくるとは思わなかった」
ローラ男爵領はレブ男爵領の北、コトカ男爵領はサガード男爵領の南ね。もう一つ外側になる。ユーヴィ男爵時代に直接的なやり取りはなかったね。キヴィオ子爵領を挟んでいたから。
「いいのではないでしょうか。北はローラ男爵領、ポルツ男爵領、ムスト子爵領、ティーダ男爵領、ラネール男爵領、カルース男爵領、シムーナ子爵領、南はコトカ男爵領、キーユ男爵領、タリニア子爵領、ラップ男爵領、オグタ男爵領、ロッタ子爵領、このあたりまでは旦那様の勢力下にあると考えてもいいのではないかと。おそらく雪崩を打って編入の申し入れをしてくるかと」
「勢力って言うのはやめてよ。さすがにこの国の西側から北側にかけてごっそり持っていかれると、陛下も殿下も困ると思うよ」
イェルンが挙げた名前だけで、南部の海に近いあたりを除いて、この国の西部の三分の一近くになる。そこからさらに王都の北の方まで含まれている。直轄領とラクヴィ侯爵領を北から西にかけてぐるっと囲うようになる。いや、やらないよ。
シムーナ子爵は僕が炭酸のことを伝えた時には会わなかったけど、マリアンがシムーナ市の北の山に住んでいたことが分かると手紙を送ってきた。実はシムーナ市でもマリアンのことは一部で知られていたようだった。特徴的な服装をしていたからね。そのマリアンが僕の妻ってことが殿下から伝わって、という流れになる。
領主としては領地だけ広くなっても目が行き届かなければ意味がない。でもうちの場合はギルド職員たちが頑張っているおかげで、広がった部分はきっちりと発展させてくれるから、ユーヴィ地方とキヴィオ地方、レブ地方、コトカ地方で差がなくなってきている。
キヴィオ地方は広いから町の外に住んでいる人も多くて、さすがにその人たちの面倒までは見きれないけど、とりあえず全ての市町村に燃料箱のシステムは行き渡った。生活レベルは王都よりも明らかに上になっている。レブ男爵もコトカ男爵も、以前よりもやり甲斐が出たと言ってくれている。でもね……。
「ケネス、悩んでも悩まなくても結果は同じですよ」
「ちょっとくらい悩まないと、どんどん先へ進むじゃない」
「それで状況が悪くなるならともかく、結局はいい方向へ向かっているなら問題ないでしょう。ケネスは考えすぎです」
「リゼッタはもう少し考えてもいいと思うよ」
嫌みとか悪口とかじゃなくて、僕に何でもさせようとするからね。
「それですが、カローラさんに調べてもらったところ、私に[予知夢]というスキルが付いていました。やたらと夢ばかり見たからでしょう」
「嫌な予感がするんだけど」
「素晴らしい予感でした。以前にも言ったと思いますが、周辺の貴族領を全て編入して、さあこれでフェリン王国から独立、という流れになっています。その先は今でも見えません」
「聞くのが怖いけど、実際にはどのあたりが入るの?」
「先ほどのイェルンの言葉にも出ましたが、北はローラ男爵領、ムスト子爵領、ティーダ男爵領まで、ペレクバ湖沿岸地域の西半分です。その先のラネール男爵とカルース男爵は位置的に難しいということで遠慮しているようです」
「遠慮ね」
それって条件さえ揃えば入りたいってことだよね。
「南はコトカ男爵領、キーユ男爵領、タリニア子爵領まででした」
「そこで止まったか」
「はい。それ以外にはポルツ男爵とシムーナ子爵が手を上げていましたが、間に邪魔なラクヴィ侯爵領があるので飛び地でもいいかという話が出ていました」
「飛び地はダメ。やり始めたらキリがないから」
ポルツ男爵領はラクヴィ侯爵領の北、シムーナ子爵領はラクヴィ侯爵領の北東。どうしても間にラクヴィ侯爵領が入る。僕が直轄領の町の領主にならないかと話を持ちかけられた時に断ったからね。飛び地でもいいから入れてほしいという話を受け入れれば矛盾が生じるから。
「そうように話が進んでいましたが、誰かが『ラクヴィ侯爵領を壁で囲ってしまえばいいだろう』と言っていたのは覚えています。レブ男爵だった気がしますね」
「あの人ははっきり言う人だからね。でも封じ込んでどうするの。戦争になるよ?」
「戦争になっても勝てるだろうという前提で動いていましたね」
「勝てるだろうけどね」
負けることはないけど、勝てばいいって問題じゃない。戦争を起こしたらダメ。
「先輩、そうなればおそらく侯爵領の西側半分はこちらに付くでしょう。敵対するのは父と兄、もしかしたら母、それとデボラさんくらいでしょうか。デボラさんは息子さんの扱い次第ではこちらに付くかもしれません。テスさんは間違いなく先輩に抱かれにやって来ます」
「実家がなくなっていいみたいな言い方はやめようよ」
「所詮は実家というだけですので。今の私の家はここです。貴族にとっては実家というのは一番近い他人ですから」
「重い言葉だね」
確か貴族には、嫁いだ先を死に場所と思えって言葉があったと思う。でもテスさんは微妙で、未だに僕にアピールしてくるから。デボラさんはテスさんに無理やり連れてこられそう。
「旦那様、どうぞお入りください。エルケ様もお子様たちもお元気です」
助産師のテクラが部屋から出て僕たちを案内してくれる。
「ありがとう。さて、領地のこともあるけど、とりあえずエルケと子供たちの顔を見るよ」
◆ ◆ ◆
なかなかケネスの思ったように事態は進まず、あれよあれよという間に彼を取り巻く環境は変わっていきました。ここから二五年が経ち、彼の周囲がどうなったかを見てみましょう。
─────────────────────
いきなりですが、実は次が最終話です。
◆ ◆ ◆
ふぎゃ~~~~
ああ~~~~
「双子かな?」
「おそらくそうでしょう」
「どんどん増えるからね」
なんとか間に合ったようで、イェルンと二人で待っていると産声が聞こえた。どうやらエルケも安産のようだ。また名前を決めないとね。この一年はすごくバタバタした。
◆ ◆ ◆
「これで文字通り大人になりました~」
「エルケ、よかったですね」
「ありがとうございます、リゼッタ様~」
「今日からは『様』じゃありません」
「そうでした、リゼッタさん」
妻同士は様は付けないという決まり事がある。全員が平等なんだそうだ。
「ケネス、エルケさんが入ったことでちょうど収まりが良くなりましたね」
「収まり? 中途半端な人数なんだけど」
「一つは空席です。これで円卓の妻が完成しました」
円卓の妻?
「円卓の騎士のように言われてもね。それに数が違うし」
「最後の席には呪いがかかっていますので、必ず空席になっています」
「そこでいきなり物語に忠実になられても」
アーサー王の物語に登場する円卓の騎士の人数と座席の数は文献によって違う。おそらく一番よく聞く話では、円卓にある席の数はキリストと一二人の使徒に見立て、一三あったとされるというもの。常に一つだけ空席があるけど、その席はキリストを裏切ったユダの席とされ、ここに座ると呪いに冒されるという。円卓の数にも騎士の数にも色々なバリエーションがあるけど、円卓にある座席には必ず一つは空席があることになっている。
「では僭越ながら、このヴァウラが残り一席に座らせていただきましょう。呪いなど、私にとっては大した脅威ではありません」
「いえいえ、そこは旦那様の胃袋をしっかりと掴んでいる、このシルッカのものです」
あー、円卓の騎士は一二人ってわけでもないけど、余計なことを口にするとどんどん増えるから、この際一二人ってしておいた方がいいんだろうか。
◆ ◆ ◆
そんなことがあったのが去年の夏。ユーヴィ男爵領とキヴィオ子爵領が合併してユーヴィ=キヴィオ辺境伯領になった少し後のこと。
今もエルケの出産が終わったけど、先日カローラとセラとキラにもまた生まれたから、もう屋敷の中が子供だらけで、わちゃわちゃになっている。この屋敷だけじゃなくて、去年から領内がベビーブームなんだけどね。やっぱり生活が改善された影響かな。
ギルドの方を見ると、レナーテさんのところは生まれて、ミリヤさんも……そろそろ? セニヤさんもいつの間にか結婚してお腹が大きくなってきたし。
あれから僕の妻も何人か増えた。想像できると思うけど、シュチェパーンカ、ヴァウラ、シルッカの三人。それぞれお腹が大きくなっている。マリーには手を出してない。まだ九九九年あるからね。
「旦那様、お子様が増えるのは喜ばしいことですが、そろそろ領地の件について決めなければ、もっとややこしいことになります」
「半分は自分のせいなんだけど、彼らにはもう少し他を頼ってくれてもいいと思うんだけどね。イェルンとしてはどう思う?」
「国としても旦那様を頼るのが一番だと判断されたわけでしょう。お受けするしかないと思いますが」
「それは分かってるんだよ。でもね……」
リゼッタの予知夢と関係あるのかないのか分からないけど、去年の秋に北のレブ男爵と南のサガード男爵から、キヴィオ子爵領と同じように自分たちの領地も編入してほしいという連絡があった。でもそんな話、普通は断るでしょ。でも二人とも本気で頼んできた上に、すでにレオンツィオ殿下にお伺いを立てていた。どうやら僕の性格が見抜かれていたらしい。
彼らとすれば、自分たちの領地を差し出す代わりに、それぞれの領都の市長を任せてもらえることになる。そうすれば燃料箱を使ったエネルギーシステムが使えることになり、正直なところ生活はずっと向上する。
貴族として領主をしているのと、僕の部下として一部地域を預かるのを比べれば収入としては減る。でも不安がなくなるのが一番のポイントなんだそうだ。
北街道と南街道が開通したことによって人の流れは良くなった。レブ男爵領からもサガード男爵領からも人が来るようになった。うちからももちろん出かけていったし、どんどん交流が増えた。だからこそ違いが気になってきたというのが理由だそうだ。
ユーヴィ=キヴィオ辺境伯領は、ユーヴィ市だけではなくマイラ市もキヴィオ市も、それ以外の小さな町や村にでさえ燃料箱を使ったシステムが行き渡っている。レブ男爵領のエレーダ町から少し西にできたクツナ町、サガード男爵領のサガード市から北西にできたマリーナ市にもある。
僕が主導したんじゃなくてギルドが積極的に導入したわけなんだけどね。でも生活レベルの向上というのは領主にとっては一つの目標だから、レブ男爵とサガード男爵が編入の話を切り出すのは分からないでもない。だから今年に入ってからその二つを編入した。でもね……。
「ローラ男爵とコトカ男爵も言ってくるとは思わなかった」
ローラ男爵領はレブ男爵領の北、コトカ男爵領はサガード男爵領の南ね。もう一つ外側になる。ユーヴィ男爵時代に直接的なやり取りはなかったね。キヴィオ子爵領を挟んでいたから。
「いいのではないでしょうか。北はローラ男爵領、ポルツ男爵領、ムスト子爵領、ティーダ男爵領、ラネール男爵領、カルース男爵領、シムーナ子爵領、南はコトカ男爵領、キーユ男爵領、タリニア子爵領、ラップ男爵領、オグタ男爵領、ロッタ子爵領、このあたりまでは旦那様の勢力下にあると考えてもいいのではないかと。おそらく雪崩を打って編入の申し入れをしてくるかと」
「勢力って言うのはやめてよ。さすがにこの国の西側から北側にかけてごっそり持っていかれると、陛下も殿下も困ると思うよ」
イェルンが挙げた名前だけで、南部の海に近いあたりを除いて、この国の西部の三分の一近くになる。そこからさらに王都の北の方まで含まれている。直轄領とラクヴィ侯爵領を北から西にかけてぐるっと囲うようになる。いや、やらないよ。
シムーナ子爵は僕が炭酸のことを伝えた時には会わなかったけど、マリアンがシムーナ市の北の山に住んでいたことが分かると手紙を送ってきた。実はシムーナ市でもマリアンのことは一部で知られていたようだった。特徴的な服装をしていたからね。そのマリアンが僕の妻ってことが殿下から伝わって、という流れになる。
領主としては領地だけ広くなっても目が行き届かなければ意味がない。でもうちの場合はギルド職員たちが頑張っているおかげで、広がった部分はきっちりと発展させてくれるから、ユーヴィ地方とキヴィオ地方、レブ地方、コトカ地方で差がなくなってきている。
キヴィオ地方は広いから町の外に住んでいる人も多くて、さすがにその人たちの面倒までは見きれないけど、とりあえず全ての市町村に燃料箱のシステムは行き渡った。生活レベルは王都よりも明らかに上になっている。レブ男爵もコトカ男爵も、以前よりもやり甲斐が出たと言ってくれている。でもね……。
「ケネス、悩んでも悩まなくても結果は同じですよ」
「ちょっとくらい悩まないと、どんどん先へ進むじゃない」
「それで状況が悪くなるならともかく、結局はいい方向へ向かっているなら問題ないでしょう。ケネスは考えすぎです」
「リゼッタはもう少し考えてもいいと思うよ」
嫌みとか悪口とかじゃなくて、僕に何でもさせようとするからね。
「それですが、カローラさんに調べてもらったところ、私に[予知夢]というスキルが付いていました。やたらと夢ばかり見たからでしょう」
「嫌な予感がするんだけど」
「素晴らしい予感でした。以前にも言ったと思いますが、周辺の貴族領を全て編入して、さあこれでフェリン王国から独立、という流れになっています。その先は今でも見えません」
「聞くのが怖いけど、実際にはどのあたりが入るの?」
「先ほどのイェルンの言葉にも出ましたが、北はローラ男爵領、ムスト子爵領、ティーダ男爵領まで、ペレクバ湖沿岸地域の西半分です。その先のラネール男爵とカルース男爵は位置的に難しいということで遠慮しているようです」
「遠慮ね」
それって条件さえ揃えば入りたいってことだよね。
「南はコトカ男爵領、キーユ男爵領、タリニア子爵領まででした」
「そこで止まったか」
「はい。それ以外にはポルツ男爵とシムーナ子爵が手を上げていましたが、間に邪魔なラクヴィ侯爵領があるので飛び地でもいいかという話が出ていました」
「飛び地はダメ。やり始めたらキリがないから」
ポルツ男爵領はラクヴィ侯爵領の北、シムーナ子爵領はラクヴィ侯爵領の北東。どうしても間にラクヴィ侯爵領が入る。僕が直轄領の町の領主にならないかと話を持ちかけられた時に断ったからね。飛び地でもいいから入れてほしいという話を受け入れれば矛盾が生じるから。
「そうように話が進んでいましたが、誰かが『ラクヴィ侯爵領を壁で囲ってしまえばいいだろう』と言っていたのは覚えています。レブ男爵だった気がしますね」
「あの人ははっきり言う人だからね。でも封じ込んでどうするの。戦争になるよ?」
「戦争になっても勝てるだろうという前提で動いていましたね」
「勝てるだろうけどね」
負けることはないけど、勝てばいいって問題じゃない。戦争を起こしたらダメ。
「先輩、そうなればおそらく侯爵領の西側半分はこちらに付くでしょう。敵対するのは父と兄、もしかしたら母、それとデボラさんくらいでしょうか。デボラさんは息子さんの扱い次第ではこちらに付くかもしれません。テスさんは間違いなく先輩に抱かれにやって来ます」
「実家がなくなっていいみたいな言い方はやめようよ」
「所詮は実家というだけですので。今の私の家はここです。貴族にとっては実家というのは一番近い他人ですから」
「重い言葉だね」
確か貴族には、嫁いだ先を死に場所と思えって言葉があったと思う。でもテスさんは微妙で、未だに僕にアピールしてくるから。デボラさんはテスさんに無理やり連れてこられそう。
「旦那様、どうぞお入りください。エルケ様もお子様たちもお元気です」
助産師のテクラが部屋から出て僕たちを案内してくれる。
「ありがとう。さて、領地のこともあるけど、とりあえずエルケと子供たちの顔を見るよ」
◆ ◆ ◆
なかなかケネスの思ったように事態は進まず、あれよあれよという間に彼を取り巻く環境は変わっていきました。ここから二五年が経ち、彼の周囲がどうなったかを見てみましょう。
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いきなりですが、実は次が最終話です。
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