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第四章 第三部
最終話:新米エルフとぶらり旅
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「ということで、案内役と一緒に森から出てきたエルフは王様になりました」
僕は孫たちに話を聞かせる。これは僕の昔話。もちろん異世界から来たという話は隠して、遠い遠いところから来たという風に話を変えて。
「父上」
そうしていると、部屋にクリスが入ってきた。
「帰ってきているなら少しは手伝ってくださいよ」
「クリス、僕には屋敷や旅行記があるからね。砦の一つくらいパパッと作れるでしょ?」
「砦は作れますけどパパッとは無理です。父上と違って魔力が続きません」
「そこは精進だね」
「精進って……誰に父上や母上たちのようなことできるんですか……」
「練習すればするほど伸びるよ。それは間違いないから」
クリスがリゼッタ譲りのジト目で僕を見る。息子は母親に似るね。もう魔力はこの国の標準からするとずば抜けている。でもさすがに僕達やマリアンのレベルじゃない。ステータス上では文字化けせずに数字として読めるくらい。でも鍛えれば必ず向上するから、本当に日々の訓練が重要なんだよね。
「大変なら子供たちを鍛えて、さっさと継がせたらいいよ。継ぎたかったらそれでよし。継ぎたくなければそれでもよし。みんなそうじゃない。そう簡単に国は滅びないから」
「いえ、別に国王が嫌なわけではないですよ。大変なだけで」
僕が辺境伯になってから二年後、フェリン王国の西側三分の一近くが分離独立した。その国の名前はレス王国。結局僕が折れて、辺境伯領に周囲の貴族領を取り込んだ形だね。それで僕が初代国王になった。それから二〇年後、クリスが僕の後を継いで第二代国王になった。それが三年前。
フェリン王国の方は僕が辺境伯の間にイザイア陛下が退位してレオンツィオ殿下が戴冠した。そして先王のイザイア陛下は現在はマイラ市に家を建てて引っ越し、毎日温泉と観劇を満喫している。
完全に政治から離れたということで、元王妃様も一緒に来た。僕に恨みでもあるだろうと思っていたらそんなことはなく、自分や息子たちが悪いやつらに利用され続けた責任を感じていたらしい。貴族って派閥やら何やらでがんじがらめだから、仕方がないところはある。
レス王国の方は、現在は西側に向けて領土を広げている。クリスがやっているのはその仕事。西側というのはもちろん大森林の方だね。「レス」というのはこのあたりで森をあわらす言葉。ぴったりかなと思って国の名前にした。
魔素が多くて溜まりやすい場所には魔獣が発生しやすい。それなら見晴らしを良くして空気を循環させればいい。魔素は空気の成分の一つだから。そのようなことをクリスは考え、森の入り口から順番に木を切り倒しつつ、平地を広げていっている。広げたところに砦を作って、そこを拠点にさらに広げる。街道を通して町を作るのと基本は同じかな。
森林破壊? 全部焼き払うとかじゃないからね。そもそもフェリン王国もレス王国も、森を切り拓いて作った場所だし、大森林だって相当な広さがある。全部の木を切り倒すのは無理だから、砦の周辺以外は間伐になっている。
その際に僕が手を出さずに済むいい方法がないかと思っていたら、案外あっさりと見つかった。それがアリソンの率いるエルフの精鋭軍団「レス王国開拓騎士団」。別名「中二病騎士団」。アリソンが大森林で若いエルフたちを鍛え、実戦投入した。怪我人はいたけど死者は出なかった。魔力が多いから、鍛えればすぐに伸びた。
エルフは引きこもりだけど、それは人生に意義を見いだしていなかったから。やりたいことが見つかれば集中力は意外にすごい。訓練を始めたら訓練ばっかり。突進してきたホーンラビットの角を右手で掴み、上から落ちてきたスピアバードの嘴を右手で掴み、バックスネークをジャンプで躱して足で踏み潰すくらいに成長した。もちろんその後にニヤリと笑うのは忘れない。
騎士団のみんなが手にしているのがアロンダイト、エクスカリバー、クラウ・ソラス、グラム、ダーインスレイヴ、フラガラッハ、ミスティルテイン、レーヴァテイン、天之尾羽張、天羽々斬村正、村雨など、いい感じに拗らせた感じが素晴らしい。アリソンの愛剣はデュランダル。全部作ったのは僕だけど、名前は彼らが自分で付けていた。みんな受け取った瞬間に跪くからすごかったよ。
大森林以外の場所として、マノンの息子のカレルがユーヴィ市長、マイカの息子のカイトがマイラ市長になっている。カレルはルボルさんの孫と、カイトはレオニートさんの孫と結婚した。
セラの娘のソフィヤはキヴィオ市長のボフミルと結婚した。エリーの息子のケヴィンは魔道具製作をしているけど、僕とエリーの血を継いでいるからか、料理関係の魔道具ばっかり作っている。仕事にするなら楽しい方がいいね。
ジミーを始めとした魔物たちが暮らす町ペルソノイは、ナルヴァ市とユーヴィ市のちょうど中間に作った物流拠点の町オーヴェ市と繋いでいる。オーヴェ市の町中ではオークとゴブリンとコボルドは見かけるね。ユーヴィ地方以外ではそれほど交流が進んでいるとは言い難いけど、そこは時間の問題かな。
僕の話? 国王になる前にフェリン王国とクルディ王国の各所を回ったね。それから二〇年ほど国王をしたらクリスに王位を譲って、それからは旅三昧。帰ったら孫たちに話を聞かせるのが楽しみかな。
前に屋敷にいた使用人たちは、僕が国王になると城に移った。城はユーヴィ市のすぐ北西に建て、城を囲うように町を大きくした。屋敷があった場所は記念館として使われている。レス王国とユーヴィ市の歴史を学べる場所だね。
「まあいいです。それより、ポリーナさんから原稿はできていないのかと催促が来ています。僕に話を持ってこられても困るんですが。ちゃんと言っておいてください」
「そちらにも顔を出すよ」
文句の言い方もリゼッタに似てきたね。
ポリーナさんはあれからしばらく役者をしながら劇場の運営に関わっていたけど、仕事を辞めてからは児童館向けの絵本や児童書を作っている。僕は色々な国に出かけているから、そのあたりを本にできないかと相談をされていた。今は文化芸術大臣のはず。
マイカやカロリッタと一緒に日本の漫画やアニメなんかを元にした話もあったけど、どうしても世界が違うと価値観も違って無理が出ることもある。悪の組織を盗賊団や悪徳商人に置き換えることはできるけど、ロボットとかは通じないからね。ゴーレムで押し通せるかもしれないけど、ゴーレムだって一般的じゃないから。
その点でこの世界の話ならまだそこまで改変しなくてもいいし、理解もしやすい。そういうわけで、世界各地を回って話を集めるのが僕の今の仕事。もちろん管理者としておかしな場所がないかのチェックもきちんとしている。別の大陸に行ったら行ったでしばらく冒険者として活動して、それから別の場所に移動。そんなことをここしばらくやっている。
恐れていたような、僕がフェリン王国を乗っ取るようなことも起きず、ラクヴィ侯爵領を落とすようなこともなかった。でも途中でマイカの妹であるエレナがいきなりやって来て、まあ驚きには事欠かなかったね。
「あの時は私もビックリしました。連絡がなかったですからね」
「姉さんを驚かそうと思いまして」
「先輩に惹かれるのは分かりますけど、エレナはそんなに先輩と話をしてました?」
「話をしたのは全部で一八回です。二人だけで話をしたことはありませんでした。初めてお会いした時はショックで動けませんでしたけど、それを除けば合計で七時間一二分三七秒です。お茶を出したカップは宝物にして楽しんでいました。兄は自分を倒してから行けと言いましたので倒しましたし、母に相談したら子供を産むまでは戻ってくるなということでしたから、その通りにしたまでです」
「私が言うのもあれですけど、病んでますよね」
「血ですね」
こうやって話をしているのを見ると双子にしか見えない。二人とも一八歳で止まったからね。ちなみにあの時はベッドに入ったらマイカが二人いてビックリ。その瞬間にエレナにベッドに引きずり込まれた。エレナはマイカと見た目はそっくりなのに武闘派だった。そこはアンナさんの血が強いらしい。むしろマイカが前世の影響が強すぎる感じかな。病み具合は同じだけど。
エリーとマノンとシルッカの子供たちは、みんなすでに独立した。
「血は争えませんね」
「その言葉がピッタリですねぇ」
「お城で美味しいものばかり食べていましたから」
「でも食材ハンターになるのはどうかと思いますが。ケヴィンは魔道具の道に進みましたが」
「マールの夢はあの人を超えることが目標だそうです。あまり無茶はしてほしくないですねぇ」
「旦那様が豚を探しにクルディ王国まで行った話はすでに有名ですからね。料理人としては新しい食材は夢ですので。カトカはどこにいるのやら」
三人の長女は料理人をしつつ、食材を捜して旅をするようになった。どの国のどの地方にどのような食材があるか、それを調べるのがライフワークになっている。移動は徒歩もあるけど、[転移]の魔道具も使っている。
カローラとカロリッタ、ヴァウラの子供たちは、魔法を教えたり魔道具作りを教えたり、順当と言えば順当かな。
「[転移]の魔道具が一つの目標になっていますね」
「あれはなかなか大変ですからね~」
「私が見たところ、あのような神具レベルのものを、よそ見をしながらポンポンと作って子供たちに渡すケネス様がおかしいのは分かりますが、うちの子たちもさすがと言ったらいいのか」
「さすがご主人様の子種ですね。子供たちも国宝レベルの魔道具なら作れるようになりましたから」
「それでもマスターは~異世界への移動ができないんですよね~」
「そこは権限を与えれば今すぐにでも可能だと思いますが、カローラさんは考えてはいないのですか?」
「ご主人様があまり欲しがっていませんからね。今は保留段階です。いつでも付与できますよ」
僕はここから別の世界にいけなくても十分。もうこの世界だけでお腹いっぱいかな。とりあえず子供たちには何かあったら帰ってこられるように[転移]を使える魔道具を渡している。妻たちに渡した指輪ほど高性能じゃないけど、地続きなら問題なく帰ってこられると思う。
マリアンとセラとキラは完全に土いじりが趣味になった。ガーデニングというレベルではなく、完全な庭師。そこにマリーも加わっている。
「このアーチは素晴らしいじゃろ」
「ここのツタの処理はどうするです?」
「クルッと巻く?」
「そうじゃな。こうクルッと巻いてデザインの一部にすればいいじゃろなあ」
「そっち向きじゃなくて、こっち側はどう?」
「あ、そっちじゃな。さすがマリーじゃ」
四人は庭園のデザインを話し合っている。マリアンは元々ドレスのデザインをしていたけど、ポリーナさんと一緒に舞台に関わるようになり、そこから趣味を広げてデザイン全般を手がけるようになった。そこにセラとキラの土いじりや植物を育てる趣味が加わり、こうやって庭園の設計をしている。そこのガーデンテーブルもマリアンが作ってたね。マリーは全体的な監修という立場かな。
でも和洋折衷なんだよね、全般的に。背もたれのないベンチと日よけの傘。いや、赤い毛氈がかけられた床几台と野点傘。お茶席かな?
「シュチェパーンカさんもフロレスタさんもお代わりはどうですか?」
「ありがとうございます、ジェナさん」
「では遠慮なく頂きます」
ある意味では非常に落ち着いた三人。タイプは違うけど仲がいい。シュチェパーンカは結局デートの度に倒れてしまい、介抱しているうちに、まあ情が移った感じだろうか。元々がきっちりしているので、ジェナと二人で僕の秘書をしていた。フロレスタはいつも子供たちと一緒に庭でひなたぼっこをしている。
そして僕が現在進行形でやっているのは、隠居用の屋敷の増築。
王位はクリスに譲った。僕は先王ということになるけど、口は出さないようにしている。放り出したわけじゃないよ。国が僕の手を離れただけ。大抵のことは僕じゃなくても問題なくなったからね。それで、前の異空間の家はクリスに別荘として渡して城と繋いだから、僕たちは新しい異空間の方に引っ越した。
前の異空間はクリスと奥さんたち、それに使用人たち、要するに王城で働く人たちの慰安のための場所に使ってもらっている。少し手を入れてね。サランの訓練施設とかはいらないから。
そういうわけで、新しい異空間に新しい屋敷を建て、そこを隠居先として妻たちと一緒に暮らしながら旅を始めている。
建物は前の家とほとんど同じ構造にしたけど二回りくらい大きくして、さらに温泉旅館と一体化した。今はその裏手に別棟を建ててるんだよね。
庭は日本庭園になっている。でもマリアンたちがデザインしているから西洋風の要素も入って、ジヴェルニーにあるモネの庭のようになっている。そこでみんなが何か所かに分かれてお茶会をしてるんだけどね。
前の異空間からサランたちとミツバチたちは引っ越してきた。牧場の方もこっちに作ったし、基本的には前と同じかな。家の管理や子供たちの世話のために新しく使用人を雇ったけど、僕のことを知っているからか、特に驚いてはいなかったね。元使用人の子供が多いから。
「ケネス、一八巻が届きました」
「一九巻の入稿は数日で終わりま~す。とりあえず休憩に来ました~」
「誤字脱字はなかったよ、パパ」
「表現が気になった場所だけチェックを入れました」
「ほとんどなかったけど」
「ありがとう。少し休憩しようか」
リゼッタとエルケはいつも通り。ミシェルとカリンとリーセのちびっ子三人組は見た目が中学生くらいになった。手を出して成長が止まったわけじゃないよ。三人とも実年齢は三〇歳を超えたけど魔力が多すぎるから、一五歳くらいから成長がゆっくりになっている。でも見た目に引きずられるのかまだまだ子供っぽい。
どうも[魔力手]を使って三人を抱きかかえて空を飛んだりしたけど、あれをすると僕が触れた相手が僕の体の一部のように扱われて、それが魔力量を引き上げる訓練と同じ効果があるらしい。国王になる前は三人を連れてあちこちに行ったからね。カリンとリーセは普通に生まれて普通に育ったけど、魔力量に関しては一〇歳になる前にヴァウラさえ超えてしまった。二人の魔力量を調べた瞬間にヴァウラの表情が消えた。リゼッタとカローラは平然としていたけど。
このメンバーは僕のアシスタントのようなことをしている。リゼッタが持ってきてくれたのは、各地を旅してそれをまとめた旅行記。退位してからの趣味になっている。グルメガイドと文化体験記がごっちゃになっていて、内容は雑多だね。その中の体験記などを元にしてポリーナさんが台本にしたり絵本にしたりしている。旅行記のタイトルはまあ分かると思うけど、『新米エルフとぶらり旅』。その名前を付けたのはリゼッタ。僕のことをよく分かってるね。
「ケネスのことなら何でも分かります」
「そう? 今から何をすると思う?」
「まずは私を抱きしめます。それから三人にくっつかれます」
「それは分かるんじゃなくて希望じゃないの?」
実際に抱きしめようと思っていたから間違いじゃないけどね。
「そうかもしれませんが。少し前に生えた[未来視]が思ったよりも便利で。頼りすぎるのも問題ですが」
「未来視‼ お姉ちゃん、パパと私はどうなってる?」
「「私たちはどうなっていますか?」」
「そうですね……。三人とも、頑張ればいいことがありそうですね。来年あたり」
「「「‼」」」
「あんまり焚きつけないでくれる⁉」
そして三人に抱きつかれる僕。年齢的にも子供じゃないんだから色々とマズい……ん? 年齢的には問題ないのかな? いやいや、違う違う。
でもまあ、妻がいて子供がいて孫がいて、子供や孫の友達が遊びにきて、何とも楽しいじゃない。ようやく「のんびり」と「旅」が両立できるようになった。この惑星は大きいから回り尽くすには時間がかかりそう。『新米エルフとぶらり旅』は何巻になるかな?
─────────────────────
これをもちまして『新米エルフとぶらり旅』はここで一度終わらせていただきます。書き始めた頃に目標と考えていた一〇〇万字に到達できたのもみなさんのおかげです。手直ししたり短編を書いたりはするかもしれません。それではまた別の作品で。
僕は孫たちに話を聞かせる。これは僕の昔話。もちろん異世界から来たという話は隠して、遠い遠いところから来たという風に話を変えて。
「父上」
そうしていると、部屋にクリスが入ってきた。
「帰ってきているなら少しは手伝ってくださいよ」
「クリス、僕には屋敷や旅行記があるからね。砦の一つくらいパパッと作れるでしょ?」
「砦は作れますけどパパッとは無理です。父上と違って魔力が続きません」
「そこは精進だね」
「精進って……誰に父上や母上たちのようなことできるんですか……」
「練習すればするほど伸びるよ。それは間違いないから」
クリスがリゼッタ譲りのジト目で僕を見る。息子は母親に似るね。もう魔力はこの国の標準からするとずば抜けている。でもさすがに僕達やマリアンのレベルじゃない。ステータス上では文字化けせずに数字として読めるくらい。でも鍛えれば必ず向上するから、本当に日々の訓練が重要なんだよね。
「大変なら子供たちを鍛えて、さっさと継がせたらいいよ。継ぎたかったらそれでよし。継ぎたくなければそれでもよし。みんなそうじゃない。そう簡単に国は滅びないから」
「いえ、別に国王が嫌なわけではないですよ。大変なだけで」
僕が辺境伯になってから二年後、フェリン王国の西側三分の一近くが分離独立した。その国の名前はレス王国。結局僕が折れて、辺境伯領に周囲の貴族領を取り込んだ形だね。それで僕が初代国王になった。それから二〇年後、クリスが僕の後を継いで第二代国王になった。それが三年前。
フェリン王国の方は僕が辺境伯の間にイザイア陛下が退位してレオンツィオ殿下が戴冠した。そして先王のイザイア陛下は現在はマイラ市に家を建てて引っ越し、毎日温泉と観劇を満喫している。
完全に政治から離れたということで、元王妃様も一緒に来た。僕に恨みでもあるだろうと思っていたらそんなことはなく、自分や息子たちが悪いやつらに利用され続けた責任を感じていたらしい。貴族って派閥やら何やらでがんじがらめだから、仕方がないところはある。
レス王国の方は、現在は西側に向けて領土を広げている。クリスがやっているのはその仕事。西側というのはもちろん大森林の方だね。「レス」というのはこのあたりで森をあわらす言葉。ぴったりかなと思って国の名前にした。
魔素が多くて溜まりやすい場所には魔獣が発生しやすい。それなら見晴らしを良くして空気を循環させればいい。魔素は空気の成分の一つだから。そのようなことをクリスは考え、森の入り口から順番に木を切り倒しつつ、平地を広げていっている。広げたところに砦を作って、そこを拠点にさらに広げる。街道を通して町を作るのと基本は同じかな。
森林破壊? 全部焼き払うとかじゃないからね。そもそもフェリン王国もレス王国も、森を切り拓いて作った場所だし、大森林だって相当な広さがある。全部の木を切り倒すのは無理だから、砦の周辺以外は間伐になっている。
その際に僕が手を出さずに済むいい方法がないかと思っていたら、案外あっさりと見つかった。それがアリソンの率いるエルフの精鋭軍団「レス王国開拓騎士団」。別名「中二病騎士団」。アリソンが大森林で若いエルフたちを鍛え、実戦投入した。怪我人はいたけど死者は出なかった。魔力が多いから、鍛えればすぐに伸びた。
エルフは引きこもりだけど、それは人生に意義を見いだしていなかったから。やりたいことが見つかれば集中力は意外にすごい。訓練を始めたら訓練ばっかり。突進してきたホーンラビットの角を右手で掴み、上から落ちてきたスピアバードの嘴を右手で掴み、バックスネークをジャンプで躱して足で踏み潰すくらいに成長した。もちろんその後にニヤリと笑うのは忘れない。
騎士団のみんなが手にしているのがアロンダイト、エクスカリバー、クラウ・ソラス、グラム、ダーインスレイヴ、フラガラッハ、ミスティルテイン、レーヴァテイン、天之尾羽張、天羽々斬村正、村雨など、いい感じに拗らせた感じが素晴らしい。アリソンの愛剣はデュランダル。全部作ったのは僕だけど、名前は彼らが自分で付けていた。みんな受け取った瞬間に跪くからすごかったよ。
大森林以外の場所として、マノンの息子のカレルがユーヴィ市長、マイカの息子のカイトがマイラ市長になっている。カレルはルボルさんの孫と、カイトはレオニートさんの孫と結婚した。
セラの娘のソフィヤはキヴィオ市長のボフミルと結婚した。エリーの息子のケヴィンは魔道具製作をしているけど、僕とエリーの血を継いでいるからか、料理関係の魔道具ばっかり作っている。仕事にするなら楽しい方がいいね。
ジミーを始めとした魔物たちが暮らす町ペルソノイは、ナルヴァ市とユーヴィ市のちょうど中間に作った物流拠点の町オーヴェ市と繋いでいる。オーヴェ市の町中ではオークとゴブリンとコボルドは見かけるね。ユーヴィ地方以外ではそれほど交流が進んでいるとは言い難いけど、そこは時間の問題かな。
僕の話? 国王になる前にフェリン王国とクルディ王国の各所を回ったね。それから二〇年ほど国王をしたらクリスに王位を譲って、それからは旅三昧。帰ったら孫たちに話を聞かせるのが楽しみかな。
前に屋敷にいた使用人たちは、僕が国王になると城に移った。城はユーヴィ市のすぐ北西に建て、城を囲うように町を大きくした。屋敷があった場所は記念館として使われている。レス王国とユーヴィ市の歴史を学べる場所だね。
「まあいいです。それより、ポリーナさんから原稿はできていないのかと催促が来ています。僕に話を持ってこられても困るんですが。ちゃんと言っておいてください」
「そちらにも顔を出すよ」
文句の言い方もリゼッタに似てきたね。
ポリーナさんはあれからしばらく役者をしながら劇場の運営に関わっていたけど、仕事を辞めてからは児童館向けの絵本や児童書を作っている。僕は色々な国に出かけているから、そのあたりを本にできないかと相談をされていた。今は文化芸術大臣のはず。
マイカやカロリッタと一緒に日本の漫画やアニメなんかを元にした話もあったけど、どうしても世界が違うと価値観も違って無理が出ることもある。悪の組織を盗賊団や悪徳商人に置き換えることはできるけど、ロボットとかは通じないからね。ゴーレムで押し通せるかもしれないけど、ゴーレムだって一般的じゃないから。
その点でこの世界の話ならまだそこまで改変しなくてもいいし、理解もしやすい。そういうわけで、世界各地を回って話を集めるのが僕の今の仕事。もちろん管理者としておかしな場所がないかのチェックもきちんとしている。別の大陸に行ったら行ったでしばらく冒険者として活動して、それから別の場所に移動。そんなことをここしばらくやっている。
恐れていたような、僕がフェリン王国を乗っ取るようなことも起きず、ラクヴィ侯爵領を落とすようなこともなかった。でも途中でマイカの妹であるエレナがいきなりやって来て、まあ驚きには事欠かなかったね。
「あの時は私もビックリしました。連絡がなかったですからね」
「姉さんを驚かそうと思いまして」
「先輩に惹かれるのは分かりますけど、エレナはそんなに先輩と話をしてました?」
「話をしたのは全部で一八回です。二人だけで話をしたことはありませんでした。初めてお会いした時はショックで動けませんでしたけど、それを除けば合計で七時間一二分三七秒です。お茶を出したカップは宝物にして楽しんでいました。兄は自分を倒してから行けと言いましたので倒しましたし、母に相談したら子供を産むまでは戻ってくるなということでしたから、その通りにしたまでです」
「私が言うのもあれですけど、病んでますよね」
「血ですね」
こうやって話をしているのを見ると双子にしか見えない。二人とも一八歳で止まったからね。ちなみにあの時はベッドに入ったらマイカが二人いてビックリ。その瞬間にエレナにベッドに引きずり込まれた。エレナはマイカと見た目はそっくりなのに武闘派だった。そこはアンナさんの血が強いらしい。むしろマイカが前世の影響が強すぎる感じかな。病み具合は同じだけど。
エリーとマノンとシルッカの子供たちは、みんなすでに独立した。
「血は争えませんね」
「その言葉がピッタリですねぇ」
「お城で美味しいものばかり食べていましたから」
「でも食材ハンターになるのはどうかと思いますが。ケヴィンは魔道具の道に進みましたが」
「マールの夢はあの人を超えることが目標だそうです。あまり無茶はしてほしくないですねぇ」
「旦那様が豚を探しにクルディ王国まで行った話はすでに有名ですからね。料理人としては新しい食材は夢ですので。カトカはどこにいるのやら」
三人の長女は料理人をしつつ、食材を捜して旅をするようになった。どの国のどの地方にどのような食材があるか、それを調べるのがライフワークになっている。移動は徒歩もあるけど、[転移]の魔道具も使っている。
カローラとカロリッタ、ヴァウラの子供たちは、魔法を教えたり魔道具作りを教えたり、順当と言えば順当かな。
「[転移]の魔道具が一つの目標になっていますね」
「あれはなかなか大変ですからね~」
「私が見たところ、あのような神具レベルのものを、よそ見をしながらポンポンと作って子供たちに渡すケネス様がおかしいのは分かりますが、うちの子たちもさすがと言ったらいいのか」
「さすがご主人様の子種ですね。子供たちも国宝レベルの魔道具なら作れるようになりましたから」
「それでもマスターは~異世界への移動ができないんですよね~」
「そこは権限を与えれば今すぐにでも可能だと思いますが、カローラさんは考えてはいないのですか?」
「ご主人様があまり欲しがっていませんからね。今は保留段階です。いつでも付与できますよ」
僕はここから別の世界にいけなくても十分。もうこの世界だけでお腹いっぱいかな。とりあえず子供たちには何かあったら帰ってこられるように[転移]を使える魔道具を渡している。妻たちに渡した指輪ほど高性能じゃないけど、地続きなら問題なく帰ってこられると思う。
マリアンとセラとキラは完全に土いじりが趣味になった。ガーデニングというレベルではなく、完全な庭師。そこにマリーも加わっている。
「このアーチは素晴らしいじゃろ」
「ここのツタの処理はどうするです?」
「クルッと巻く?」
「そうじゃな。こうクルッと巻いてデザインの一部にすればいいじゃろなあ」
「そっち向きじゃなくて、こっち側はどう?」
「あ、そっちじゃな。さすがマリーじゃ」
四人は庭園のデザインを話し合っている。マリアンは元々ドレスのデザインをしていたけど、ポリーナさんと一緒に舞台に関わるようになり、そこから趣味を広げてデザイン全般を手がけるようになった。そこにセラとキラの土いじりや植物を育てる趣味が加わり、こうやって庭園の設計をしている。そこのガーデンテーブルもマリアンが作ってたね。マリーは全体的な監修という立場かな。
でも和洋折衷なんだよね、全般的に。背もたれのないベンチと日よけの傘。いや、赤い毛氈がかけられた床几台と野点傘。お茶席かな?
「シュチェパーンカさんもフロレスタさんもお代わりはどうですか?」
「ありがとうございます、ジェナさん」
「では遠慮なく頂きます」
ある意味では非常に落ち着いた三人。タイプは違うけど仲がいい。シュチェパーンカは結局デートの度に倒れてしまい、介抱しているうちに、まあ情が移った感じだろうか。元々がきっちりしているので、ジェナと二人で僕の秘書をしていた。フロレスタはいつも子供たちと一緒に庭でひなたぼっこをしている。
そして僕が現在進行形でやっているのは、隠居用の屋敷の増築。
王位はクリスに譲った。僕は先王ということになるけど、口は出さないようにしている。放り出したわけじゃないよ。国が僕の手を離れただけ。大抵のことは僕じゃなくても問題なくなったからね。それで、前の異空間の家はクリスに別荘として渡して城と繋いだから、僕たちは新しい異空間の方に引っ越した。
前の異空間はクリスと奥さんたち、それに使用人たち、要するに王城で働く人たちの慰安のための場所に使ってもらっている。少し手を入れてね。サランの訓練施設とかはいらないから。
そういうわけで、新しい異空間に新しい屋敷を建て、そこを隠居先として妻たちと一緒に暮らしながら旅を始めている。
建物は前の家とほとんど同じ構造にしたけど二回りくらい大きくして、さらに温泉旅館と一体化した。今はその裏手に別棟を建ててるんだよね。
庭は日本庭園になっている。でもマリアンたちがデザインしているから西洋風の要素も入って、ジヴェルニーにあるモネの庭のようになっている。そこでみんなが何か所かに分かれてお茶会をしてるんだけどね。
前の異空間からサランたちとミツバチたちは引っ越してきた。牧場の方もこっちに作ったし、基本的には前と同じかな。家の管理や子供たちの世話のために新しく使用人を雇ったけど、僕のことを知っているからか、特に驚いてはいなかったね。元使用人の子供が多いから。
「ケネス、一八巻が届きました」
「一九巻の入稿は数日で終わりま~す。とりあえず休憩に来ました~」
「誤字脱字はなかったよ、パパ」
「表現が気になった場所だけチェックを入れました」
「ほとんどなかったけど」
「ありがとう。少し休憩しようか」
リゼッタとエルケはいつも通り。ミシェルとカリンとリーセのちびっ子三人組は見た目が中学生くらいになった。手を出して成長が止まったわけじゃないよ。三人とも実年齢は三〇歳を超えたけど魔力が多すぎるから、一五歳くらいから成長がゆっくりになっている。でも見た目に引きずられるのかまだまだ子供っぽい。
どうも[魔力手]を使って三人を抱きかかえて空を飛んだりしたけど、あれをすると僕が触れた相手が僕の体の一部のように扱われて、それが魔力量を引き上げる訓練と同じ効果があるらしい。国王になる前は三人を連れてあちこちに行ったからね。カリンとリーセは普通に生まれて普通に育ったけど、魔力量に関しては一〇歳になる前にヴァウラさえ超えてしまった。二人の魔力量を調べた瞬間にヴァウラの表情が消えた。リゼッタとカローラは平然としていたけど。
このメンバーは僕のアシスタントのようなことをしている。リゼッタが持ってきてくれたのは、各地を旅してそれをまとめた旅行記。退位してからの趣味になっている。グルメガイドと文化体験記がごっちゃになっていて、内容は雑多だね。その中の体験記などを元にしてポリーナさんが台本にしたり絵本にしたりしている。旅行記のタイトルはまあ分かると思うけど、『新米エルフとぶらり旅』。その名前を付けたのはリゼッタ。僕のことをよく分かってるね。
「ケネスのことなら何でも分かります」
「そう? 今から何をすると思う?」
「まずは私を抱きしめます。それから三人にくっつかれます」
「それは分かるんじゃなくて希望じゃないの?」
実際に抱きしめようと思っていたから間違いじゃないけどね。
「そうかもしれませんが。少し前に生えた[未来視]が思ったよりも便利で。頼りすぎるのも問題ですが」
「未来視‼ お姉ちゃん、パパと私はどうなってる?」
「「私たちはどうなっていますか?」」
「そうですね……。三人とも、頑張ればいいことがありそうですね。来年あたり」
「「「‼」」」
「あんまり焚きつけないでくれる⁉」
そして三人に抱きつかれる僕。年齢的にも子供じゃないんだから色々とマズい……ん? 年齢的には問題ないのかな? いやいや、違う違う。
でもまあ、妻がいて子供がいて孫がいて、子供や孫の友達が遊びにきて、何とも楽しいじゃない。ようやく「のんびり」と「旅」が両立できるようになった。この惑星は大きいから回り尽くすには時間がかかりそう。『新米エルフとぶらり旅』は何巻になるかな?
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これをもちまして『新米エルフとぶらり旅』はここで一度終わらせていただきます。書き始めた頃に目標と考えていた一〇〇万字に到達できたのもみなさんのおかげです。手直ししたり短編を書いたりはするかもしれません。それではまた別の作品で。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
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スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
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こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
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