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19.決心
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母に再会した翌日、目を覚ましたカレンは顔を顰めることになった。
寝台に身体を横たえて目を閉じているうちに本格的な睡眠へと入ってしまったため、窮屈な姿勢で上掛けもないままに朝を迎えてしまったのだ。身体がギシギシと軋むし、暖かい時期とは言え、意識が覚醒した途端にぶるりと身体が震えた。
こんなにもだらしない朝の迎え方は初めてだった。
昨日の心労も抜けきっていないので今日が休日で良かった、と心底思う。
顔を洗って職員寮の食堂で朝食を摂る。王城の食堂に比べると質素な料理が多いけれど、どれも美味しくて気に入っている。
お腹が満たされたところで自室に戻ると早々に机に向かった。
(リース院長にお伝えしておかなくては)
街中で母に会ってしまったことと、彼女の思惑とを。
院長はイノール子爵がカレンの動向を探っている疑いを持っていたが、恐らく修道院への訪問は子爵夫人の独断だろうとカレンは踏んでいる。
騎士団副団長が間に入って執り成してくれたため強要はされないだろうことと、カレン自身も母の要求を飲むつもりはない旨を添えて封をする。
それを寮監の元へと持っていけば配達の手続きをしてくれる。不用意に街に出るのは危険だと身を以て知ってしまったので頼ることにした。
再び自室に戻ったカレンは寝台に腰掛けてグッと伸びをする。身体をほぐしながら今日の過ごし方を考えた。
ソフィアへ贈るリボンの刺繍はとうに済んでいる。ソフィアがハンカチの刺繍を終えたら見せてもらう約束なので、渡すとしたらそのときだろう。
では何をしようかと周囲に視線を巡らせて、机の隅に重ねた数冊の本に目が留まる。ソフィアが別の職員に薦められて購入した小説で、面白かったからと貸してくれたものだ。
何となく一番上の本を手にとってパラパラとめくってみる。時折挿絵が挟まれており、その美麗な描写が気に入ったので一番最初のページに戻って読み進めることにした。
(あぁ、何てことなの)
海難事故でヒーローが消息不明になってしまい、帰りを待ち続けるヒロインまでもが心労で倒れてしまった。
誰よりもヒーローの無事を願っているのに、裕福な生まれでないヒロインは捜索費用を捻出することもままならない。身分違いの二人の関係に葛藤しながらも、せめて彼が見つかるまではと奔走するヒロインの複雑な胸の内が切々と綴られており、カレンの瞳にじんわりと涙が浮かんでくる。
ハラハラとした気持ちでページをめくったそのとき、部屋の扉を軽快にノックする音が響いた。
瞬きで涙を散らして来訪者を確認すると、やはり相手はソフィアだった。
「カレン、この後時間はある?」
「何も予定はないわ」
「じゃあ失礼するわね」
慣れた素振りでするりと部屋に入ってきたソフィアは、カレンの目元に滲んだ水滴に目敏く気付いた。
「どうしたの? 目が赤いけれど」
「ソフィアに借りた本を読んでいたところなのよ」
「その表紙、ヒーローの騎士が行方不明になるお話ね?」
「えぇ。たった今ヒロインが倒れたところで、つい感情移入してしまって」
「わかるわ。私も泣いちゃったもの」
真っ直ぐ机まで歩いたソフィアは手に提げた小さなバスケットを胸元まで掲げて見せてきた。
「昨日美味しいケーキを見つけたの。一晩置くとしっとりして更に美味しいって評判だから奮発して買って来ちゃった。一緒に食べましょ?」
「ありがとう。お茶を淹れるわね」
気付けば窓の外の太陽はすっかり高い位置にある。いつの間にか小説に没頭していたようで、昨日の気鬱な出来事はすっかり意識の外に追いやられていた。
二人分のカップに琥珀色のお茶を注ぐ。食堂の料理人に淹れ方を教わってからは自前のポットを用意して飲むようになった。子爵家にいた頃に比べれば使用する茶葉はずっと安いものだろうが、自分で淹れたという事実が美味しくさせてくれる。
「まぁ、何て可愛らしい見た目なの」
「でしょう? 味もいいから食べて食べて」
造り付けの小さなテーブルを二人で囲む。ソフィアが取り出した箱にはひとつひとつが三角形に切り分けられた小ぶりのケーキが隙間なく綺麗に詰められていた。まぶしてある粉砂糖がほんのり淡い黄色で見た目も美しく、ふわりと空気に乗った甘い匂いも食欲を掻き立てる。
ソフィアの勧めに従って遠慮なく口に運ぶと、贅沢なバターの香りが口内に広がった。奮発した、というソフィアの言葉も頷ける。
「味が濃いのに甘すぎないのね。とても美味しいわ」
「そうなの。だから何個も食べたくなっちゃうのよ」
ケーキや小説の感想でひとしきり盛り上がり、小休止といった様子でカップに口を付けると心が落ち着いた。ここでカレンは打ち明けるか否かで迷っていた昨日の出来事をソフィアに告げる決心をした。
「実はね、ソフィア。昨日……母に会ったのよ」
「えっ、それって本当?」
「事実よ。夕方の当番に入っていたのだけど、おつかいを頼まれて街に出たら母が乗った馬車が通りがかってしまって」
「そんな偶然って本当にあるのね」
痛ましい表情で呟くソフィアに頷いてみせる。
「その……大丈夫だった? 変なことにはなってない?」
「心配してくれてありがとう。少し嫌なことは言われてしまったけれど、レグデンバー副団長が近くにいらっしゃったみたいで助けに入って下さったから大事にはなっていないわ」
「そう。それならひとまず安心ね」
騎士団副団長の仲裁となれば滅多なことにはならないだろう。
ほっと小さく息を吐くソフィアは真にカレンを案じてくれているようだ。
「母は私を伯爵様……私が後妻に入る予定だった伯爵様に引き渡したいみたい。そんなことは強制出来ないってレグデンバー副団長は仰っていたけれど」
「そうね。そんなことがまかり通ったら誘拐が横行しちゃうもの」
「でも王都にいることは知られてしまったから……街を歩くときは気を付けるわ」
「それがいいと思う。困ったことがあったら相談してね?」
「えぇ。いつも話を聞いてくれてありがとう」
家のごたごたに巻き込んでしまって申し訳ないと思う反面、カレンの現状を一番理解してくれている存在が側にいるだけで心強い。
自分に出来ることは微力だけれど、いつかソフィアの力になれれば、と心の底から思う。
「酔っ払いに絡まれそうになったときも団長と副団長に助けてもらったでしょ? 騎士様って毎年の合同訓練で見掛けるくらいだったけど、こうしてみると身近で守っていただいてるのね」
「そうね、とてもありがたいことだわ」
昨晩、寝入り端に思い出した勤務初日の記憶にも彼らはいた。
騎士団をまとめる上位騎士でありながら気安い態度で接してくれる彼らにカレンは救われている。
(私ったら、ちゃんとお礼を伝えられていないわ)
母に再会した衝撃を受け止めるのに精一杯で、その場凌ぎの言葉しか出てこなかったように思う。
(そういえばあの件も……)
合同訓練よりも前の食堂で、刺繍の入った三角巾を見ないで欲しいとレグデンバーに言ってしまった。褒め言葉の返しがあれでは失礼に当たるし、彼にしてみれば唐突な拒絶は意味不明に違いなかっただろう。
(次にお会いしたときには必ず言わなくては)
新たなケーキを摘み上げて、内心で密かに決意した。
寝台に身体を横たえて目を閉じているうちに本格的な睡眠へと入ってしまったため、窮屈な姿勢で上掛けもないままに朝を迎えてしまったのだ。身体がギシギシと軋むし、暖かい時期とは言え、意識が覚醒した途端にぶるりと身体が震えた。
こんなにもだらしない朝の迎え方は初めてだった。
昨日の心労も抜けきっていないので今日が休日で良かった、と心底思う。
顔を洗って職員寮の食堂で朝食を摂る。王城の食堂に比べると質素な料理が多いけれど、どれも美味しくて気に入っている。
お腹が満たされたところで自室に戻ると早々に机に向かった。
(リース院長にお伝えしておかなくては)
街中で母に会ってしまったことと、彼女の思惑とを。
院長はイノール子爵がカレンの動向を探っている疑いを持っていたが、恐らく修道院への訪問は子爵夫人の独断だろうとカレンは踏んでいる。
騎士団副団長が間に入って執り成してくれたため強要はされないだろうことと、カレン自身も母の要求を飲むつもりはない旨を添えて封をする。
それを寮監の元へと持っていけば配達の手続きをしてくれる。不用意に街に出るのは危険だと身を以て知ってしまったので頼ることにした。
再び自室に戻ったカレンは寝台に腰掛けてグッと伸びをする。身体をほぐしながら今日の過ごし方を考えた。
ソフィアへ贈るリボンの刺繍はとうに済んでいる。ソフィアがハンカチの刺繍を終えたら見せてもらう約束なので、渡すとしたらそのときだろう。
では何をしようかと周囲に視線を巡らせて、机の隅に重ねた数冊の本に目が留まる。ソフィアが別の職員に薦められて購入した小説で、面白かったからと貸してくれたものだ。
何となく一番上の本を手にとってパラパラとめくってみる。時折挿絵が挟まれており、その美麗な描写が気に入ったので一番最初のページに戻って読み進めることにした。
(あぁ、何てことなの)
海難事故でヒーローが消息不明になってしまい、帰りを待ち続けるヒロインまでもが心労で倒れてしまった。
誰よりもヒーローの無事を願っているのに、裕福な生まれでないヒロインは捜索費用を捻出することもままならない。身分違いの二人の関係に葛藤しながらも、せめて彼が見つかるまではと奔走するヒロインの複雑な胸の内が切々と綴られており、カレンの瞳にじんわりと涙が浮かんでくる。
ハラハラとした気持ちでページをめくったそのとき、部屋の扉を軽快にノックする音が響いた。
瞬きで涙を散らして来訪者を確認すると、やはり相手はソフィアだった。
「カレン、この後時間はある?」
「何も予定はないわ」
「じゃあ失礼するわね」
慣れた素振りでするりと部屋に入ってきたソフィアは、カレンの目元に滲んだ水滴に目敏く気付いた。
「どうしたの? 目が赤いけれど」
「ソフィアに借りた本を読んでいたところなのよ」
「その表紙、ヒーローの騎士が行方不明になるお話ね?」
「えぇ。たった今ヒロインが倒れたところで、つい感情移入してしまって」
「わかるわ。私も泣いちゃったもの」
真っ直ぐ机まで歩いたソフィアは手に提げた小さなバスケットを胸元まで掲げて見せてきた。
「昨日美味しいケーキを見つけたの。一晩置くとしっとりして更に美味しいって評判だから奮発して買って来ちゃった。一緒に食べましょ?」
「ありがとう。お茶を淹れるわね」
気付けば窓の外の太陽はすっかり高い位置にある。いつの間にか小説に没頭していたようで、昨日の気鬱な出来事はすっかり意識の外に追いやられていた。
二人分のカップに琥珀色のお茶を注ぐ。食堂の料理人に淹れ方を教わってからは自前のポットを用意して飲むようになった。子爵家にいた頃に比べれば使用する茶葉はずっと安いものだろうが、自分で淹れたという事実が美味しくさせてくれる。
「まぁ、何て可愛らしい見た目なの」
「でしょう? 味もいいから食べて食べて」
造り付けの小さなテーブルを二人で囲む。ソフィアが取り出した箱にはひとつひとつが三角形に切り分けられた小ぶりのケーキが隙間なく綺麗に詰められていた。まぶしてある粉砂糖がほんのり淡い黄色で見た目も美しく、ふわりと空気に乗った甘い匂いも食欲を掻き立てる。
ソフィアの勧めに従って遠慮なく口に運ぶと、贅沢なバターの香りが口内に広がった。奮発した、というソフィアの言葉も頷ける。
「味が濃いのに甘すぎないのね。とても美味しいわ」
「そうなの。だから何個も食べたくなっちゃうのよ」
ケーキや小説の感想でひとしきり盛り上がり、小休止といった様子でカップに口を付けると心が落ち着いた。ここでカレンは打ち明けるか否かで迷っていた昨日の出来事をソフィアに告げる決心をした。
「実はね、ソフィア。昨日……母に会ったのよ」
「えっ、それって本当?」
「事実よ。夕方の当番に入っていたのだけど、おつかいを頼まれて街に出たら母が乗った馬車が通りがかってしまって」
「そんな偶然って本当にあるのね」
痛ましい表情で呟くソフィアに頷いてみせる。
「その……大丈夫だった? 変なことにはなってない?」
「心配してくれてありがとう。少し嫌なことは言われてしまったけれど、レグデンバー副団長が近くにいらっしゃったみたいで助けに入って下さったから大事にはなっていないわ」
「そう。それならひとまず安心ね」
騎士団副団長の仲裁となれば滅多なことにはならないだろう。
ほっと小さく息を吐くソフィアは真にカレンを案じてくれているようだ。
「母は私を伯爵様……私が後妻に入る予定だった伯爵様に引き渡したいみたい。そんなことは強制出来ないってレグデンバー副団長は仰っていたけれど」
「そうね。そんなことがまかり通ったら誘拐が横行しちゃうもの」
「でも王都にいることは知られてしまったから……街を歩くときは気を付けるわ」
「それがいいと思う。困ったことがあったら相談してね?」
「えぇ。いつも話を聞いてくれてありがとう」
家のごたごたに巻き込んでしまって申し訳ないと思う反面、カレンの現状を一番理解してくれている存在が側にいるだけで心強い。
自分に出来ることは微力だけれど、いつかソフィアの力になれれば、と心の底から思う。
「酔っ払いに絡まれそうになったときも団長と副団長に助けてもらったでしょ? 騎士様って毎年の合同訓練で見掛けるくらいだったけど、こうしてみると身近で守っていただいてるのね」
「そうね、とてもありがたいことだわ」
昨晩、寝入り端に思い出した勤務初日の記憶にも彼らはいた。
騎士団をまとめる上位騎士でありながら気安い態度で接してくれる彼らにカレンは救われている。
(私ったら、ちゃんとお礼を伝えられていないわ)
母に再会した衝撃を受け止めるのに精一杯で、その場凌ぎの言葉しか出てこなかったように思う。
(そういえばあの件も……)
合同訓練よりも前の食堂で、刺繍の入った三角巾を見ないで欲しいとレグデンバーに言ってしまった。褒め言葉の返しがあれでは失礼に当たるし、彼にしてみれば唐突な拒絶は意味不明に違いなかっただろう。
(次にお会いしたときには必ず言わなくては)
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