幼馴染の終わり方 ― 当人たちより周りが先に気づく恋 ―

伊藤 生ちゃん

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第4章 すれ違う心の温度

第4章 すれ違う心の温度

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 白波坂を並んで歩くのは、もう何百回目か分からないはずなのに、その日の空気はどこか違っていた。

 彩香は、レジで守を見た時の胸のざわつきを思い出していた。
 守は、彩香が何も言わず隣にいることに、いつも以上に意識を向けていた。

 沈黙は続く。
 けれど、その沈黙は気まずさではなく、言葉にできない何かを共有しているような静けさだった。

「……今日、バイトだったんだな」

 守がぽつりと口を開いた。
 普段なら言わないような、少しだけ踏み込んだ言葉。

「うん。レジ、混んでてさ。疲れたけど……守が来てびっくりした」

「そうか」

 短い返事。
 でも、彩香はその一言に、守の不器用な優しさを感じた。

「守ってさ、工業の実習とか大変でしょ? 油の匂い、ちょっとついてたよ」

「……悪い」

「悪くないよ。なんか、守らしいなって思っただけ」

 彩香が笑う。
 その笑顔に、守の胸がまた少し熱くなる。

 白波坂の上に差し込む夕陽が、二人の影を重ねた。

「ねぇ、守」

「ん」

「高校違っても……こうして一緒に帰れるの、なんか嬉しいね」

 守は答えられなかった。
 言葉にしたら、何かが変わってしまいそうで。

 代わりに、ほんの少しだけ歩幅を合わせた。

 彩香は気づいていない。
 守の中で、幼馴染としての“当たり前”が、もう当たり前ではなくなっていることに。

 そして守も気づいていない。
 彩香の胸の奥でも、同じように何かが変わり始めていることに。

 白波坂の夕陽は、二人の影をゆっくりと伸ばしながら、静かに一日を終わらせていった。
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