幼馴染の終わり方 ― 当人たちより周りが先に気づく恋 ―

伊藤 生ちゃん

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第6章 翌朝の白波坂

第6章 翌朝の白波坂

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 翌朝。  
 白波坂の空気は、昨夜の衝突が嘘みたいに澄んでいた。

 守は少し早めに家を出た。  
 彩香に会うのが気まずいわけではない。  
 ただ、昨日の言葉が胸に残っていて、どう顔を合わせればいいのか分からなかった。

 坂を半分ほど登ったところで、前方に見慣れたポニーテールが揺れているのが見えた。

 彩香だった。

 彼女も守に気づいたのか、振り返る。  
 目が合った瞬間、二人とも“きょとん”とした表情になった。

「あ……おはよ、守」

「……おはよう」

 言葉はそれだけ。  
 でも、昨日のような張り詰めた空気はなかった。

 彩香は少しだけ視線をそらし、歩幅を守に合わせる。

「昨日のこと……ごめん。ちょっと言いすぎたかも」

「いや、彩香が言ったこと、全部正しかった」

「えっ……」

 彩香が驚いたように守を見る。  
 守は前を向いたまま、少しだけ頬をかいた。

「俺、昔からそうやし。  
 自分のことはどうでもいいって思ってた。  
 でも……彩香に言われて、ちょっと考えた」

「……そっか」

 彩香の声は柔らかかった。  
 怒っているわけでも、責めているわけでもない。  
 ただ、守の言葉を受け止めている声だった。

 しばらく沈黙が続く。  
 けれど、その沈黙は昨日とは違っていた。

 気まずさではなく、  
 “元に戻りつつある距離”の沈黙。

「ねぇ守」

「ん」

「今日さ、帰りも一緒に帰ろ?」

「……あぁ」

 守は短く答えたが、胸の奥が少しだけ温かくなった。

 白波坂の朝日が、二人の影を並べて伸ばしていく。  
 昨日の衝突は、確かに痛かった。  
 でもその痛みが、二人の距離をほんの少しだけ近づけていた。

 幼馴染としての“当たり前”が、  
 またひとつ形を変えた朝だった。
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