気仙沼で生きる

三日月李衣

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気仙沼で生きる

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「ごめんね、これ以上一緒にいられない」
と彼はそっと言った。

 私は彼の声が震えていたことに気付いた。彼と私は高校の同級生で、気仙沼に住んでいた。
 彼はいつも優しくて、何でも話し合って解決しようとするタイプだった。

 でも今日の彼の姿は違っていた。

 自分に何か訴えかけられるものがあったのか、彼は落ち着かなかった。私はその理由を探るため、彼に向き合った。

「どうして?」
 と私が尋ねると、彼がシャツの裾を握りしめて小さくなった声で答えた。
「好きな人が出来たんだ。僕は男なんだけど……」
 私はその言葉に驚いた。そんな事があるのかと、知っていた彼を思い描く事が出来なかった。

 でも、彼が困っている時は必ず彼を支えようと、私は彼の手を握った。

「それで、どうしたいの?」
 彼は少し考えた後、小さく頷いた。
「彼に告白したい。でも彼は僕達の関係を害するかもしれない」

 私は彼の言葉を理解した。気仙沼市では、同性愛者というのはまだ認知されていない。

何しろ、田舎なのだ。

「でも、好きな人には伝えた方が良いと思う。その時、彼に本気で向き合ってもらえるかもしれないし……」
 彼は私の手を握りしめて、ありがとうと言った。


 そして、数日後、彼はその人に告白した。答えははっきりしなかったようだが、彼は後悔しなかった。


 自分の気持ちを素直に表現し、解放されたようだった。

 私達はその後も一緒に、気仙沼市で暮らした。それでも、彼と私たちの気持ちは変わらなかった。
 彼の他にも、私達の周りには同性愛者がいた。

 ただ、それは私達の秘密の世界では表に出す事は無かった。

 気仙沼市とは言わずとも、田舎では異質な人に対して、差別や偏見がまだまだ生じる事がある。

 でも、彼と私達は、それを受け止めて、お互いに支え合った。

 今でもたまに彼が私の家に遊びに来る。彼は色々な恋愛や人生のことを語ってくれる。

 私は彼にとって、どんなときも居場所になれるようにしたいと思っている。

彼と私の様に、同性愛者として生きている人達は、誰にも負けない強さを持っている。

 私達は、気仙沼市で暮らす人たちの中でも、違和感を感じつつ、生きている。

 彼と私達は自分達の道を進んでいこうと、前向きに生きている。

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