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24.正当
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会場へ戻ると、既に来場者はおらず、スタッフ達が塊になって話していた。
「あ! 戻ってきた!」
俺たちの姿を認めてどいつからか声が上がる。
『レイさん、ジンメルさん、すいません、大丈夫でしたかぁ!?』
臨時スタッフが喋っているのを聞いてタブレットを取り出す。
『アツシくん? 大丈夫だけど……えっと、何が?』
『俺、さっき案内した人レイさんの知り合いだって言うからレイさんが外に出ちゃったって言っちゃったんですけどそしたらその人いつの間にか居なくなってて、それを聞いたジンメルさんがすっげぇ勢いで外出てっちゃったから俺なんかすげぇヤバいことやっちゃったんじゃないかってめっちゃ不安で、二人ともなんか帰ってくるの遅いし俺ヤバい人仕向けちゃったんじゃないかって思って――』
『解った。大丈夫だから。心配しないで』
情報量が多い。翻訳された文は長い上に文法がおかしなところがあるが、多分、合っているのだろう。情けない顔で見てくる臨時スタッフと目が合う。
『ジンメルさん……』
「……ギャラリーストーカーだ」
「こら、ジム!!」
「なんてことを言うんだ」と怒るレイから視線を外して無言を貫く。
『ギャラりー……ストーかー……?』
「あー……作品目当てじゃなくて、アーティストと個人的なつながりを持ちたがる人のことね」
臨時スタッフの疑問にスタッフの一人が答える。スタッフの言葉は耳では解らなかったのか、そいつは端末を取り出して翻訳を確認していた。こいつが俺に対しては何故翻訳ツールを殆ど使わずに済んでいるのか甚だ疑問に思う。
「あのね、皆、そういうのじゃないよ。実際に僕の知り合いだったんだ。何も問題は起きてない」
「10年近く交流も無いような奴が、お前が有名になってきた途端に二度も展示会に来て作品に何も触れもせず会場外まで追いかけて、いきなり“また昔みたいに友達になりましょう”ってか」
「実に美しい友情だ」と付け加えるとレイは怒ったような顔をして何か言うところだったが、それより早くスタッフ達の声が上がった。
「う~ん、レイさん、これは私もジンメルさん寄りだなぁ」
「んー、まだジメルが過保護な可能性も捨て切れないけど、ちょっとレイちゃん不利かも」
スタッフ達の視線を浴びて、レイが言い淀む。考えた末に出した言葉はこうだった。
「た、確かに、また関わるのは……嫌だった……けど、それも断ったし、それに危ない人というわけではなかったよ」
「あー駄目ね」「アツシ、レイさんってこういう感じだから、気を付けてね」『あー……なるほど……?』
民意に当てられたレイはそれからも少し抗議をしていたが、間もなく悔し気に呻くだけに終わった。
――目が合う。
顎を上げ、鼻で笑ってやった。
「あ! 戻ってきた!」
俺たちの姿を認めてどいつからか声が上がる。
『レイさん、ジンメルさん、すいません、大丈夫でしたかぁ!?』
臨時スタッフが喋っているのを聞いてタブレットを取り出す。
『アツシくん? 大丈夫だけど……えっと、何が?』
『俺、さっき案内した人レイさんの知り合いだって言うからレイさんが外に出ちゃったって言っちゃったんですけどそしたらその人いつの間にか居なくなってて、それを聞いたジンメルさんがすっげぇ勢いで外出てっちゃったから俺なんかすげぇヤバいことやっちゃったんじゃないかってめっちゃ不安で、二人ともなんか帰ってくるの遅いし俺ヤバい人仕向けちゃったんじゃないかって思って――』
『解った。大丈夫だから。心配しないで』
情報量が多い。翻訳された文は長い上に文法がおかしなところがあるが、多分、合っているのだろう。情けない顔で見てくる臨時スタッフと目が合う。
『ジンメルさん……』
「……ギャラリーストーカーだ」
「こら、ジム!!」
「なんてことを言うんだ」と怒るレイから視線を外して無言を貫く。
『ギャラりー……ストーかー……?』
「あー……作品目当てじゃなくて、アーティストと個人的なつながりを持ちたがる人のことね」
臨時スタッフの疑問にスタッフの一人が答える。スタッフの言葉は耳では解らなかったのか、そいつは端末を取り出して翻訳を確認していた。こいつが俺に対しては何故翻訳ツールを殆ど使わずに済んでいるのか甚だ疑問に思う。
「あのね、皆、そういうのじゃないよ。実際に僕の知り合いだったんだ。何も問題は起きてない」
「10年近く交流も無いような奴が、お前が有名になってきた途端に二度も展示会に来て作品に何も触れもせず会場外まで追いかけて、いきなり“また昔みたいに友達になりましょう”ってか」
「実に美しい友情だ」と付け加えるとレイは怒ったような顔をして何か言うところだったが、それより早くスタッフ達の声が上がった。
「う~ん、レイさん、これは私もジンメルさん寄りだなぁ」
「んー、まだジメルが過保護な可能性も捨て切れないけど、ちょっとレイちゃん不利かも」
スタッフ達の視線を浴びて、レイが言い淀む。考えた末に出した言葉はこうだった。
「た、確かに、また関わるのは……嫌だった……けど、それも断ったし、それに危ない人というわけではなかったよ」
「あー駄目ね」「アツシ、レイさんってこういう感じだから、気を付けてね」『あー……なるほど……?』
民意に当てられたレイはそれからも少し抗議をしていたが、間もなく悔し気に呻くだけに終わった。
――目が合う。
顎を上げ、鼻で笑ってやった。
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