Jimmelle & Rayman I

あにらむあみにむ

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37.It’s Okay

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 「ねぇ、レイちゃん……ジメルと喧嘩でもした?」
 資材の買い出し先での飲食店、食事中に唐突に聞いてきたのは制作スタッフのリーさんだった。
 すこしだけ驚きながら、咀嚼していたご飯を呑み込んで答える。
 「いや、してないけど……そう見える?」
 「っていうか、あいつが目に見えて落ち込んでんのが気になるのよ。ここ最近なんだか苛々してたのが、今度は急に沈んでるじゃない」
 思わず、少し感動した。表に見えにくい彼の態度の変化を、自分だけでなく他のスタッフも気にかけてくれていたことに。
 「……ちょっと、なに笑ってんのよ」
 訝し気な目をしてリーさんに指摘される。つい破顔してしまっていたらしい。
 「いやぁ、ジムをよく見てくれてるんだなぁって」
 「……レイちゃんがその調子じゃ、喧嘩ってわけじゃなさそうね」
 呆れたような顔で溜息を吐かれたが、それでも彼女が気付いて、気にしてくれていたことが嬉しく感じる。
 「てっきり、レイちゃんがあいつの過保護にうんざりして何か言ったかして、“ああ”なってんのかと思ったけど……」
 「放っておけば落ち着くかしら?」と、再び食事を進めながらリーさんが聞く。
 「うーん……実のところ、僕は全く知らないとは言えないんだ。彼が落ち込んでいる理由について」
 言葉を選んで話したのに、さらり「でしょうね」と受けて流される。
 「別に、どうにかしてって言ってるわけじゃないのよ。仕事はいつも通りにできてるし、何より、ジメル自身が表に出さないでしょ。
 でも、あたしとかチコは、ほら、ここまで一緒にやってたらどうしても、いつもと違うのはなんとなく気付いちゃうから」
 リーさんとチコさんは、長い付き合いのスタッフだ。ジムのこともよく見て、気付いてくれている。ジムはアトリエ内でも人間関係を深めようとはしないが、それでも共に働いた年月の分、関係は築かれているのだ。
 「ジムのことを心配してくれているんだよね」
 笑って言うと、リーさんは眉を寄せながら困ったような顔をする。
 「何かあるわけじゃないし、顔を突っ込むわけじゃないけど、でもそれでレイちゃんが困ってたら嫌だし……」
 だんだんと要領を得なくなってきた言葉と弱まる語気。
 少しの沈黙と、溜息と、観念したような表情。
 「……そうね、心配なんだわ」
 その言葉と気遣いが、嬉しい。
 笑みを自覚しながら眺めていると、リーさんも仕方ないような顔をして笑っていた。
 「ありがとう、リーさん。
 ジムとは、少しずつ話していくつもり。僕も、まだ考えが足りていないところがあるから、すぐではないけど……」
 「ええ、わかってる。あたしたちは、多分、あんたたちが変わらずデザイナーとマネージャーをやってくれてれば、それでいいんだわ」
 何気なく言われた言葉を、静かに、頭にじわりと滲み込ませる。これは多分、自分が覚えておくべき言葉。彼ら――アトリエのスタッフ達が、安心していられる条件。であるならば、それは自分の本分だ。
 だが、そうでなくとも――。
 「うん。それなら大丈夫」
 落ち着きと自信をもって、笑って答えられることだった。
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