マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム

第42話 負けミーコ

　０３：１５。
　今宵もミーコ学園のＰＴＡ会議が始まろうとしている。

：そろそろか？
：待機中
：今日の挨拶は何だろうか
：これを見ないと眠れない
：ミーコの配信が最近のモーニングルーティン
：終電で帰った後にミーコの声を聞くとマジで染みる

　ミーコを待っています。
　生徒達は、配信画面に表示された文字を見ながら待っていた。

『……』

：おっ
：舞ってた
　
『…………』

：？
：どうした？

　いつもなら登場と同時に挨拶をするミーコ。だが今日は何も言わない。梅干を食べたような顔をして、無駄に忙しく動き回っている。

：ミュート芸助かる
：かわいい

　０３：１７。

『むにゅぅぅぅぅ～！』

　ミーコ、吠えた。

『にゅぅぅぅぅ～！』

：なんだなんだｗｗｗ
：かわいい
：どうしたｗｗｗ
：理事長さん！？

『…………』

：止まった
：なんだったんだ……
：ミーコ？

『むにゅぅぅぅ”ぅ”ぅ”』

：またｗｗｗ
：なんなんこれｗ
：かわいい
：作業用ＢＧＭ提供たすかる

『あ、忘れてた』

：急に人間の言葉喋るじゃん
：草

　ミーコは配信画面を操作した。
　突然の暗転。その後、真っ暗な画面にコメントが流れ始める。

：なんだこれｗｗｗ
：謎技術

　画面の左上、穴が空いた。
　そこからミーコの上半身が現れる。

：かわいい

　ミーコが動きを見せる。

『かわいい？　ヌヒヒッ、ありがと～』

：！？
：！！！？！？
：えっ！？

　ミーコは「かわいい」という文字を見ていた。
　その文字に目線を向け、右から左に流れる動きを完璧に追っていたのだ。

：なにこれｗｗｗ
：おもしろ
：たのしい

『わーい。生徒諸君、喜んでる～』

　ミーコは楽しそうな笑顔で言った。

『でもこれじゃない。間違えちゃった』

　謎の空間は消滅した。
　今度はミーコとホワイトボードが現れる。

　ドーン！　という効果音。
　ホワイトボードに「３３－４」という文字が現れた。

：な阪関
：今日の戦績か？
：ちょっと待ってさっきの謎技術解説して

『むにゅぅぅぅぅぅ～！』

：またｗｗｗ
：なんなんほんとｗｗｗ
：かわいい

『……レート２８００くらいから急に勝てなくなった』

：あー、そういうことか
：待って早くない？　もう２８００？

『……なんか同じ人にばっかり当たる』

：ぽよテトあるあるやな
：人口がね……

『テト～！』

：もしかしてテト勢にぼこされた？

『むにゅぅぅぅぅ～！』

：負けボイスたすかる
：かわいい
：販売してくれ

『明日は勝つぅぅぅぅぅ！』

：明日？　日付変わる？

『寝る！』

：草
：新しいｗｗｗ

　……

：本当に終わったｗｗｗｗ
：えｗｗｗｗ
：ｗｗｗｗｗ
：草
：なんでｗｗｗｗｗ
：ええええｗｗｗｗｗ



　――大会まで、残り９日。