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最初の一歩
人生ゲームを作った日(4)
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朝だ。朝になった。
4日目の朝だ。
俺に残された時間は、とうとう半分を切った。
「……」
体を起こすと、すぐさま誰かと目が合った。
誰かって、みさき以外に居ないけどな。
「……いくか」
「……ん」
軽く背伸びをして、俺達は昨晩のうちに用意しておいた荷物を持って部屋を出た。
時刻はまだ6時前、早朝と呼べる時間だ。
肌寒い空気に身を小さくしながら、俺達は静かな道を歩いた。
みさきの朝は早い。眠りが浅いのか、いつも俺より早く起きている。早起きしたみさきは何をするでもなく俺の寝顔を見ているそうだが……そんなに面白い寝顔をしているのだろうか? 少しだけ不安だ。
俺達の目的地は近所の公園だ。あのボロアパート、電気はもちろん水道も通っていないから、顔を洗うだけでも外に出る必要がある。昨日は俺が寝坊したせいで遅い時間に、というか保育園に送り届ける途中で寄るという形になったが、普段はこの時間に出かけている。
非常に面倒だし寒くて嫌なのだが、みさきの美容を考えると欠かすことは出来ない。だってこいつ、将来は絶対美人になる。だから俺には、みさきのお肌を守る義務がある……あるのだ。
「……つめたい」
蛇口を軽く捻って、チョロチョロと水を出した。みさきはそれを可愛らしい両手にためて、これまた可愛らしく顔を洗う。
やべぇな、これCMとかに使えるんじゃねぇの?
オファーとか来たらどうする!?
子役、子役か……いやでもあの業界悪い噂しか聞かねぇしな。水へ溶けて流れて何処へも行けないって話だ。グロリアスデイズなんて無いんだよ。グロテスクなアフターデイズだけが待っているんだよ。そんな危ないとこにみさきを行かせるワケにはいかねぇ!
「……ん?」
なに? と首を傾けるみさき。天使だ、天使としか形容できねぇ。
「いや、なんでもない」
俺は気持ちを静める為、水道から出る残酷なくらい冷たい水に頭を突っ込んだ。
「くぅぅぅ、つめてぇ」
あまりに冷たくて、思わず笑いが零れた。それは冷たい水に頭を突っ込んだことによる後悔からか、それともみさきを見てCMがどうとか騒いだ自分に対する呆れか……まったく、どうかしてるぜ。
ふとみさきの方を見ると、俺と同じように水に突っ込む準備を済ませていた。
「待て、はやまるな!」
果たして、俺達は二人して水浸しになった。
「たく、風邪ひいたらどうするんだよ」
くちゅん、と可愛らしいクシャミをするみさきの頭を用意したタオルで拭く。
「……」
しょんぼりと口を一の字にするみさき。
……こうして見るとやはり天使だな。
将来は間違いなく美人になる……将来、将来か。
「みさきは将来の夢とかあるのか?」
「……ゆめ?」
「ああ、お花屋さんとか、ケーキ屋さんとか?」
「……んん?」
ピンと来ない様子のみさき。
「まぁ、まだ早いよな」
みさきは将来、何になるのだろうか。
なんて、考えても仕方ない。俺に出来るのは、みさきが何か目標を見つけた時に手を貸すくらいだ。逆に選択肢を奪うようなことにならないようにしないとな。そういう意味でも、絶対に人生ゲームを完成させなければ……ああクソっ、意図的に意識を逸らしていたってのに。
「……ん?」
何を考えてるの? そんな風に首を傾けるみさき。
「なんでもない。さっさと歯を磨いて帰るぞ、このままじゃ本当に風邪ひいちまう」
「……ん」
みさきと一緒に歯を磨きながら、俺はプログラムについて考え始めた。ゲームが完成する未来が少しも想像できないくらい進展が無いけれど、考える以外に出来ることは無い。絶対に完成させるんだ。
この日も、俺はパソコンと睨み合った。
だけど進展は無かった。
4日目の朝だ。
俺に残された時間は、とうとう半分を切った。
「……」
体を起こすと、すぐさま誰かと目が合った。
誰かって、みさき以外に居ないけどな。
「……いくか」
「……ん」
軽く背伸びをして、俺達は昨晩のうちに用意しておいた荷物を持って部屋を出た。
時刻はまだ6時前、早朝と呼べる時間だ。
肌寒い空気に身を小さくしながら、俺達は静かな道を歩いた。
みさきの朝は早い。眠りが浅いのか、いつも俺より早く起きている。早起きしたみさきは何をするでもなく俺の寝顔を見ているそうだが……そんなに面白い寝顔をしているのだろうか? 少しだけ不安だ。
俺達の目的地は近所の公園だ。あのボロアパート、電気はもちろん水道も通っていないから、顔を洗うだけでも外に出る必要がある。昨日は俺が寝坊したせいで遅い時間に、というか保育園に送り届ける途中で寄るという形になったが、普段はこの時間に出かけている。
非常に面倒だし寒くて嫌なのだが、みさきの美容を考えると欠かすことは出来ない。だってこいつ、将来は絶対美人になる。だから俺には、みさきのお肌を守る義務がある……あるのだ。
「……つめたい」
蛇口を軽く捻って、チョロチョロと水を出した。みさきはそれを可愛らしい両手にためて、これまた可愛らしく顔を洗う。
やべぇな、これCMとかに使えるんじゃねぇの?
オファーとか来たらどうする!?
子役、子役か……いやでもあの業界悪い噂しか聞かねぇしな。水へ溶けて流れて何処へも行けないって話だ。グロリアスデイズなんて無いんだよ。グロテスクなアフターデイズだけが待っているんだよ。そんな危ないとこにみさきを行かせるワケにはいかねぇ!
「……ん?」
なに? と首を傾けるみさき。天使だ、天使としか形容できねぇ。
「いや、なんでもない」
俺は気持ちを静める為、水道から出る残酷なくらい冷たい水に頭を突っ込んだ。
「くぅぅぅ、つめてぇ」
あまりに冷たくて、思わず笑いが零れた。それは冷たい水に頭を突っ込んだことによる後悔からか、それともみさきを見てCMがどうとか騒いだ自分に対する呆れか……まったく、どうかしてるぜ。
ふとみさきの方を見ると、俺と同じように水に突っ込む準備を済ませていた。
「待て、はやまるな!」
果たして、俺達は二人して水浸しになった。
「たく、風邪ひいたらどうするんだよ」
くちゅん、と可愛らしいクシャミをするみさきの頭を用意したタオルで拭く。
「……」
しょんぼりと口を一の字にするみさき。
……こうして見るとやはり天使だな。
将来は間違いなく美人になる……将来、将来か。
「みさきは将来の夢とかあるのか?」
「……ゆめ?」
「ああ、お花屋さんとか、ケーキ屋さんとか?」
「……んん?」
ピンと来ない様子のみさき。
「まぁ、まだ早いよな」
みさきは将来、何になるのだろうか。
なんて、考えても仕方ない。俺に出来るのは、みさきが何か目標を見つけた時に手を貸すくらいだ。逆に選択肢を奪うようなことにならないようにしないとな。そういう意味でも、絶対に人生ゲームを完成させなければ……ああクソっ、意図的に意識を逸らしていたってのに。
「……ん?」
何を考えてるの? そんな風に首を傾けるみさき。
「なんでもない。さっさと歯を磨いて帰るぞ、このままじゃ本当に風邪ひいちまう」
「……ん」
みさきと一緒に歯を磨きながら、俺はプログラムについて考え始めた。ゲームが完成する未来が少しも想像できないくらい進展が無いけれど、考える以外に出来ることは無い。絶対に完成させるんだ。
この日も、俺はパソコンと睨み合った。
だけど進展は無かった。
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