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良心
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「思ったより、魔族って便利な体ね」
ジゼルは魔族になった。だが、危惧していたように、瘴気に意識を乗っ取られることはなかった。人間だった頃よりも体も強靭になり、魔力も上がった。聖女として稀有の力を持ち、数多の瘴気を祓って人間に褒め称えられていたジゼルは「歴代最高と名高い先代魔王様より純度が高く、魔力が驚くほど多い」と、魔族も震えあがるほどの魔力を有していた。
今までは補助系の魔法しか使えず、子供達や夫の陰に隠れるだけだった。それが一夜にして、共に人間と戦える体になったのだ。
ジゼルは喜々として空を飛び、地を駆けた。
名実ともに魔王ジゼルの誕生だった。聖女としての称号も残したままだったので、聖と魔を併せ持つ魔王の誕生に、人間は恐怖した。
今まではジゼルの寿命を待てば、聖女を再び召喚出来る可能性があった。しかし、人間は魔王ジゼルを倒さなければ聖女も勇者も、永久に召喚できなくなってしまった。
「嗚呼! 風のように走るのって、なんて気持ちがいいことなのかしら! 魔族も悪くないわね」
ジゼルは、子供たちに聖都の統治を任せ、夫と共に魔界を旅した。そこには手つかずの大地と自然、そして豊かな生態系がジゼルを待っていた。ジゼルは旅をすることにより、魔界のことが以前よりも好きになった。だからこそ、魔界を荒らす人間を目の敵にするようになった。
「いやぁね。まだ居るなんて……」
「油断してると、どこからともなく村を作りますからね。この先の森に居た人面樹は手が折れた状態で見つかりました」
「人面樹の枝と皮は、魔法の触媒として高く売れるらしいわね」
ジゼルは人間狩りをした。人間を1人でも残していたら、すぐに増えてしまう。だからこそ、根絶やしにした。
そうやって土地を追われた人間は、ジゼルを泣いて憎んだ。
「ジゼル! 貴様も人間だったはずだ! 何の罪もない女や子供を凌辱させて、男を殺めるだなんて、良心はないのか!?」
「あるわよ? でもね。その他大勢のために生きることはやめたの。……人生は一度きりしかないのよ。私は自分を犠牲にしてまで他者を尊ぶことはしないわ。これからは自分のために生きるのよ」
叫ぶ男の顔に見覚えがあったジゼルは、柔らかな笑みを浮かべた。
(私も何も罪はなかったけど、男に凌辱させられたし、心を殺されたわ。女は、男に犯され涙する私に鞭を加え、ただ見ていただけ。誰も私に手を差し伸べてくれなかった。同罪よ)
その男は、ジゼルに犬用の首輪を付けて凌辱し、村の男にジゼルを売り、尊厳を踏み躙った憎い男だった。
(……こんな男でも、所帯を持ったのね。本当に理不尽な世界だわ)
村中の男の肉便器にされたことをジゼルは思い出し、怒りがふつふつと湧いてきた。
「そもそも、人間が魔界に居るから瘴気なんて貯まるんでしょう?」
ジゼルは人間が魔界に侵入しないように、長い壁を作った。そして監視の為に人間界と魔界の境目に築城し、魔王として栄華を極め、君臨し続けたのだった。
ジゼルは魔族になった。だが、危惧していたように、瘴気に意識を乗っ取られることはなかった。人間だった頃よりも体も強靭になり、魔力も上がった。聖女として稀有の力を持ち、数多の瘴気を祓って人間に褒め称えられていたジゼルは「歴代最高と名高い先代魔王様より純度が高く、魔力が驚くほど多い」と、魔族も震えあがるほどの魔力を有していた。
今までは補助系の魔法しか使えず、子供達や夫の陰に隠れるだけだった。それが一夜にして、共に人間と戦える体になったのだ。
ジゼルは喜々として空を飛び、地を駆けた。
名実ともに魔王ジゼルの誕生だった。聖女としての称号も残したままだったので、聖と魔を併せ持つ魔王の誕生に、人間は恐怖した。
今まではジゼルの寿命を待てば、聖女を再び召喚出来る可能性があった。しかし、人間は魔王ジゼルを倒さなければ聖女も勇者も、永久に召喚できなくなってしまった。
「嗚呼! 風のように走るのって、なんて気持ちがいいことなのかしら! 魔族も悪くないわね」
ジゼルは、子供たちに聖都の統治を任せ、夫と共に魔界を旅した。そこには手つかずの大地と自然、そして豊かな生態系がジゼルを待っていた。ジゼルは旅をすることにより、魔界のことが以前よりも好きになった。だからこそ、魔界を荒らす人間を目の敵にするようになった。
「いやぁね。まだ居るなんて……」
「油断してると、どこからともなく村を作りますからね。この先の森に居た人面樹は手が折れた状態で見つかりました」
「人面樹の枝と皮は、魔法の触媒として高く売れるらしいわね」
ジゼルは人間狩りをした。人間を1人でも残していたら、すぐに増えてしまう。だからこそ、根絶やしにした。
そうやって土地を追われた人間は、ジゼルを泣いて憎んだ。
「ジゼル! 貴様も人間だったはずだ! 何の罪もない女や子供を凌辱させて、男を殺めるだなんて、良心はないのか!?」
「あるわよ? でもね。その他大勢のために生きることはやめたの。……人生は一度きりしかないのよ。私は自分を犠牲にしてまで他者を尊ぶことはしないわ。これからは自分のために生きるのよ」
叫ぶ男の顔に見覚えがあったジゼルは、柔らかな笑みを浮かべた。
(私も何も罪はなかったけど、男に凌辱させられたし、心を殺されたわ。女は、男に犯され涙する私に鞭を加え、ただ見ていただけ。誰も私に手を差し伸べてくれなかった。同罪よ)
その男は、ジゼルに犬用の首輪を付けて凌辱し、村の男にジゼルを売り、尊厳を踏み躙った憎い男だった。
(……こんな男でも、所帯を持ったのね。本当に理不尽な世界だわ)
村中の男の肉便器にされたことをジゼルは思い出し、怒りがふつふつと湧いてきた。
「そもそも、人間が魔界に居るから瘴気なんて貯まるんでしょう?」
ジゼルは人間が魔界に侵入しないように、長い壁を作った。そして監視の為に人間界と魔界の境目に築城し、魔王として栄華を極め、君臨し続けたのだった。
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