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婚約者
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「マリオン。貴方に恋人が出来たって噂を聞いたんだけど、本当なの?」
学校の欠席が続き、どうやら保護者にその知らせが届いたようだ。敬愛する兄が学校だけは卒業しなさいと矢の様に催促するので、重い腰を上げて、久しぶりに学校に行った。
すると、マリオンが登校するのを待っていたのか、婚約者のセリーヌに詰め寄られ、マリオンは顔色を変えた。火の無いところに煙は立たないというけど、どこからそんな噂が漏れたんだろうと思った。婚約者はマリオンに興味がないのだと思っていたけれど、血相を変えたような顔色を見ると、そうでもないようだ。
婚約者のセリーヌは女性をこよなく愛する性癖があった。
彼女の住む屋敷のメイドは美少女ばかりが採用され、セリーヌの手が付いていない女は居ないと言われるぐらいだった。
そして、マリオンは、それが真実だと知っていた。初めて婚約者としてマリオンに挨拶した時に、セリーヌ自身が「私、女の子が好きなの」とマリオンに告白したからだ。「父様! 僕の婚約者、すっごい可愛いね……!」と浮かれていたマリオンを地獄の底に落とすには十分な威力があった。
マリオンはセリーヌ好みの、まるで少女のような顔立ちだったからこそ、婚約者として選ばれたようなものだった。けれど、年々男らしい体に成長していくマリオンに、セリーヌの興味は次第に薄らいでいってしまった。そのことが、マリオンにとっては、悲しくて苦しくて、たまらないことだった。
セリーヌに拒絶されるのが怖くて、食事を控えたこともあった。これ以上成長したくないと、何度思ったことか。だが、そんな努力も虚しく、セリーヌに逢う機会さえ減っていった。最後に逢ったのは、いったいどのくらい前だろうか、思い出すことも出来ない程だ。
「……ごめんね、セリーヌ。報告が遅くなっちゃって」
「そう。つまり噂は正しいってことなのかしら?」
「自分勝手で申し訳ないけど、婚約は破棄したいんだ。……僕はニーナを愛してしまった。体の関係もあるから、もう彼女は妊娠しているかもしれない」
「いいわよ。――なんて言うと思った? だめよ、マリオン。そんなの親が許さないわ。私達、お友達でしょう? 私にも至らないところは沢山あるだろうけど、どうか我慢してもらえないかしら?」
セリーヌの言葉に、マリオンは絶望した。婚約を破棄することが難しいということは、前々から分かっていた。親の期待が、それだけ大きかったからだ。
それでも、親に溺愛されているセリーヌが同意すれば、破棄出来るかもしれないと、僅かな可能性に期待していたけれど、希望は潰えてしまった。
学校の欠席が続き、どうやら保護者にその知らせが届いたようだ。敬愛する兄が学校だけは卒業しなさいと矢の様に催促するので、重い腰を上げて、久しぶりに学校に行った。
すると、マリオンが登校するのを待っていたのか、婚約者のセリーヌに詰め寄られ、マリオンは顔色を変えた。火の無いところに煙は立たないというけど、どこからそんな噂が漏れたんだろうと思った。婚約者はマリオンに興味がないのだと思っていたけれど、血相を変えたような顔色を見ると、そうでもないようだ。
婚約者のセリーヌは女性をこよなく愛する性癖があった。
彼女の住む屋敷のメイドは美少女ばかりが採用され、セリーヌの手が付いていない女は居ないと言われるぐらいだった。
そして、マリオンは、それが真実だと知っていた。初めて婚約者としてマリオンに挨拶した時に、セリーヌ自身が「私、女の子が好きなの」とマリオンに告白したからだ。「父様! 僕の婚約者、すっごい可愛いね……!」と浮かれていたマリオンを地獄の底に落とすには十分な威力があった。
マリオンはセリーヌ好みの、まるで少女のような顔立ちだったからこそ、婚約者として選ばれたようなものだった。けれど、年々男らしい体に成長していくマリオンに、セリーヌの興味は次第に薄らいでいってしまった。そのことが、マリオンにとっては、悲しくて苦しくて、たまらないことだった。
セリーヌに拒絶されるのが怖くて、食事を控えたこともあった。これ以上成長したくないと、何度思ったことか。だが、そんな努力も虚しく、セリーヌに逢う機会さえ減っていった。最後に逢ったのは、いったいどのくらい前だろうか、思い出すことも出来ない程だ。
「……ごめんね、セリーヌ。報告が遅くなっちゃって」
「そう。つまり噂は正しいってことなのかしら?」
「自分勝手で申し訳ないけど、婚約は破棄したいんだ。……僕はニーナを愛してしまった。体の関係もあるから、もう彼女は妊娠しているかもしれない」
「いいわよ。――なんて言うと思った? だめよ、マリオン。そんなの親が許さないわ。私達、お友達でしょう? 私にも至らないところは沢山あるだろうけど、どうか我慢してもらえないかしら?」
セリーヌの言葉に、マリオンは絶望した。婚約を破棄することが難しいということは、前々から分かっていた。親の期待が、それだけ大きかったからだ。
それでも、親に溺愛されているセリーヌが同意すれば、破棄出来るかもしれないと、僅かな可能性に期待していたけれど、希望は潰えてしまった。
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