12 / 32
子供
しおりを挟む
「困りましたね。どうしましょう、メイリン?」
「もう少し様子を見たらどうかしら……。ニーナが卵を産んだとしても、どうせ蝶人間が増えるだけよ。貴方も、あの侍従みたいに、ご主人様の怒りを受けたくないでしょう?」
「それは勿論。私にも養わないといけない家族が居ますから……」
「学校の欠席が続けば、侯爵家に手紙が届くでしょう。それまでに、どうやって報告するかを考えないといけませんね」
少し前にマリオンが侍従に下した強烈な罰は、メイド達にとっては恐怖でしかなかった。解雇された侍従が送り込まれた先は、死んだほうがマシだと噂される場所だったからだ。それこそ人としての尊厳を踏みにじるような行為が平然と行われているのだという。
(きっとご主人様はご存知ないんでしょうね……)
知っていたら、そんな場所に送り込まなかったはずだ。
マリオンは貴族の子息ではあるが、メイドなどの使用人にも、分け隔てなく接する優しさがあった。侍従がニーナを凌辱していた事が発覚した時に、侍従が少しでも反省の態度さえ示してくれていたら、そんな場所に侍従を送ることはなかっただろう。
侍従は項垂れながら、この屋敷を去っていった。きっと今頃、自分が犯した罪を――同意なしの性行為が、どれほどの重い罪なのか、ニーナと同じ立場になって、ようやく理解したのではないだろうか。
「……ご主人様、明るくなられましたよね」
「私もそう思うわ。今のご主人様があるのは蝶人間のおかげよ。だから、蝶人間を無暗に取り上げるような行為は控えないといけないわ」
(ご主人様には、セリーヌ様よりもニーナのほうがお似合いかもしれない……。蝶人間を飼い始める前よりも、ずっと表情が明るいわ。きっとニーナが、心の支えとなっているのね)
勤続年数の長いメイリンは、幼い頃からマリオンが婚約者に冷たくあしらわれ、落ち込んでいる姿を見続けていたため、マリオンとニーナの関係を好意的に受け止めていた。ふさぎ込んで部屋に閉じこもるマリオンに、元気になって欲しかったけれど、ただのメイドであるメイリンは無力だった。
これだけ夢中になれる存在は、今後現れないかもしれない。ニーナは、今のマリオンにとって希望であり、生きる意味でもあった。そのような存在を取り上げてしまえば、どのような変化がマリオンに訪れるのか想像するだけで、メイリンは恐ろしかった。
ニーナに見せる、輝くような笑顔は、学校に通い始めてから見ることもなくなってしまった。だからこそ、メイリンは嬉しかった。
(私、ご主人様の笑顔を見るためにメイドをしているようなものだもの……)
子供の居ないメイリンにとって、マリオンは子供同然の存在だった。マリオンの幸せを守ることが、メイリンにとって生き甲斐だった。
メイド達が様子見を始めてから2か月後、ニーナは大きな葉の裏に卵を3個産み付けた。侍従の子という可能性もあったが、そうでないことをマリオンは確信していた。
マリオンは、蝶人間の資料は片っ端から集めていて、蝶人間の妊娠期間なども調べ上げていた。そのため、ニーナが産んだ卵は、有精卵であるならマリオンの子で間違いなかった。
マリオンは歓喜して、ニーナを抱き上げ「絶対孵化させてみせるからね!」と叫んだ。
「もう少し様子を見たらどうかしら……。ニーナが卵を産んだとしても、どうせ蝶人間が増えるだけよ。貴方も、あの侍従みたいに、ご主人様の怒りを受けたくないでしょう?」
「それは勿論。私にも養わないといけない家族が居ますから……」
「学校の欠席が続けば、侯爵家に手紙が届くでしょう。それまでに、どうやって報告するかを考えないといけませんね」
少し前にマリオンが侍従に下した強烈な罰は、メイド達にとっては恐怖でしかなかった。解雇された侍従が送り込まれた先は、死んだほうがマシだと噂される場所だったからだ。それこそ人としての尊厳を踏みにじるような行為が平然と行われているのだという。
(きっとご主人様はご存知ないんでしょうね……)
知っていたら、そんな場所に送り込まなかったはずだ。
マリオンは貴族の子息ではあるが、メイドなどの使用人にも、分け隔てなく接する優しさがあった。侍従がニーナを凌辱していた事が発覚した時に、侍従が少しでも反省の態度さえ示してくれていたら、そんな場所に侍従を送ることはなかっただろう。
侍従は項垂れながら、この屋敷を去っていった。きっと今頃、自分が犯した罪を――同意なしの性行為が、どれほどの重い罪なのか、ニーナと同じ立場になって、ようやく理解したのではないだろうか。
「……ご主人様、明るくなられましたよね」
「私もそう思うわ。今のご主人様があるのは蝶人間のおかげよ。だから、蝶人間を無暗に取り上げるような行為は控えないといけないわ」
(ご主人様には、セリーヌ様よりもニーナのほうがお似合いかもしれない……。蝶人間を飼い始める前よりも、ずっと表情が明るいわ。きっとニーナが、心の支えとなっているのね)
勤続年数の長いメイリンは、幼い頃からマリオンが婚約者に冷たくあしらわれ、落ち込んでいる姿を見続けていたため、マリオンとニーナの関係を好意的に受け止めていた。ふさぎ込んで部屋に閉じこもるマリオンに、元気になって欲しかったけれど、ただのメイドであるメイリンは無力だった。
これだけ夢中になれる存在は、今後現れないかもしれない。ニーナは、今のマリオンにとって希望であり、生きる意味でもあった。そのような存在を取り上げてしまえば、どのような変化がマリオンに訪れるのか想像するだけで、メイリンは恐ろしかった。
ニーナに見せる、輝くような笑顔は、学校に通い始めてから見ることもなくなってしまった。だからこそ、メイリンは嬉しかった。
(私、ご主人様の笑顔を見るためにメイドをしているようなものだもの……)
子供の居ないメイリンにとって、マリオンは子供同然の存在だった。マリオンの幸せを守ることが、メイリンにとって生き甲斐だった。
メイド達が様子見を始めてから2か月後、ニーナは大きな葉の裏に卵を3個産み付けた。侍従の子という可能性もあったが、そうでないことをマリオンは確信していた。
マリオンは、蝶人間の資料は片っ端から集めていて、蝶人間の妊娠期間なども調べ上げていた。そのため、ニーナが産んだ卵は、有精卵であるならマリオンの子で間違いなかった。
マリオンは歓喜して、ニーナを抱き上げ「絶対孵化させてみせるからね!」と叫んだ。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる