最弱! 勇者ちゃん【完結】

ちゃむにい

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「何か、面白そうな依頼はないかなあ」

リーシュは依頼が貼ってあるボードを端から端まで見て回った。

「あ、これなんて良さそう」

その依頼は、特殊な花の蜜を採取するものだった。

以前にも何度か依頼を受けたことがあったが、難易度のわりには報酬が高く、人気のある依頼だった。そのため人数制限があり、リーシュが最後の1人だった。

「ラッキー……! もう昼前なのに、こんな依頼が残ってるなんて!」

旅路は順調だった。花の蜜も採取し、このまま特に問題なく依頼を達成できるかのように見えた。

――だが、その依頼は失敗した。

『リーシュ、挿れるぞ』
「師匠になら、僕の全部をあげるよぉ……!」

リーシュは偽りの幸せの中にいた。

蠢く触手は体を這いずりまわり、口の中に潜って分泌液を飲ませて、リーシュにリアルな幻覚や幻聴を見せていた。

「あっ、あっ……! し、師匠っ、乳首ばっかり触らないでっ……!」

紫色の触手はリーシェの乳首に絡み付き、きつく吸い上げた。

「帰ってこないと思ったら……こうゆうのを引く運ばっかり強いな、こいつ」

師匠ディオンは深々とため息をついた。

ゴブリンに輪姦された時も、ダンジョンの壁に挟まれた時も、戻ってきてから精神に異常をきたしたため、その記憶を消す処置が必要だった。

リーシュが辱めを受ける度に、ディオンはリーシュに「このままでは、そのうち死んでしまうかもしれない。お前はまだ若い。冒険者でなくても、出来る仕事はある」と冒険者を引退することを打診した。

けれどもリーシュは頑なに「私は勇者になるんです」とディオンの忠告を聞こうとはしなかった。

「不出来な弟子だよ、本当に」

それでもディオンはリーシュを見捨てることが出来なかった。勇者になるという夢を与えてしまったのはディオンだった。
その夢を無理やり奪い取ることは、ディオンには出来なかった。

「古代樹の花、か……」

普段は無害だが、10年に1度、養分を得るために変異することがある。

ギルド職員が今年は当たり年であることを失念して、例年通りに募集してしまい、冒険者が多数、行方不明になってしまった。

それはリーシュも例外ではなかった。

リーシュは完全に木の中に飲み込まれ、一体化してしいまい、触手の餌食となってしまっていた。無理に切り離せば、心身ともに異常をきたす可能性が高かった。

そこにはリーシュ以外にも多数の被害者がいた。触手に体を弄ばされているのに、ぐったりとしていて反応がない危険な状態の人間もいた。

(最後に派遣され、体力が残って居そうなリーシュが、最も最後の救出になるだろうな……)

ディオンは、なるべく触手は切らないように、慎重に木と人間を切り離し、被害者を病院に運んだ。

「師匠、大好きです。中に出してください……! あ、あぁっ……! すごい……! もっとぉ……! ああん!」
「……は? なんちゅー夢を見ているんだ、こいつは!?」

古代樹の分泌液による幻覚は、被害者の願望が現れることが多いというのが通説だった。

実際、リーシュ以外の人間は、想い人との性交を見ている者が多いようだった。

(……ってことは、まさかこいつ……)

ディオンの顔は、茹蛸のように真っ赤になった。

リーシュの片恋が、告白する前にバレた瞬間だった。
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